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『君の心を守ると誓って』 |
Stille Nacht, heilige Nacht. 煌く夜、白雪は舞う。 旭の吐息は微熱を孕み、ほわりと白む。緊張、しちゃってるのかな。気軽に振 り返ることができそうにない。ロアンと顔を合わせるのが、ちょっぴり 怖かっ た。二歩先をキープして、肩越しに他愛ない言葉を重ねてみる。 「今日は楽しかったよね」だなんて、旭は終わったことのように楽しげに物語る。 これでおしまい? 贅沢で我侭なジレンマ。だって、今でさえハートビートが止まらない。 やがて不意に、沈黙の一時が訪れた。なんとなく心地よい。 目と目が逢瀬する。 ふっとロアンは微笑すると片膝をつき、騎士の如く優雅に頭を垂れた。そして 旭の手を、そっと握って引き寄せる。すっかり、ふたりの手は寒空のせ いで冷 たくなっていた。ロアンの手は旭より一回り大きくて、包まれると、ほんのりあ たっかい。 期待に高鳴る胸の苦しさを抑えるように、旭はきゅっと胸元で片手を握る。 ロアンの赤い瞳が、微かに揺らいだ。旭の不安が伝播したのか。 赤。 好きな色、嫌いな色、今この時だけは一番怖い色といえる。 何を望み、何を夢見る。 捧げられる、清き接吻。 「君の心を守ると誓って」 冷たかった手が雪解けてゆく。 血は巡り、心は躍る。 乙女のジレンマは加速する――。 Stille Nacht, heilige Nacht. |
ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963) 喜多川・旭(BNE004015) |
担当VC:大河あい 担当ST:カモメのジョナサン |