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綿菓子めいた淡い粉雪が舞い、雪の城の小部屋を彩る。 抱き締めた温もりをひと欠片も零さぬように、重ねた掌の熱が解けて消えぬように。葛葉 祈(BNE003735)は彼を抱く腕に愛おしさを籠め、安羅上・廻斗(BNE003739)お彼女の手を握る掌へと緩やかに力を込めた。 二人きりで過ごしたいと思い、願った想いは嘘ではないことを示す為に。 不安が消えたわけではないけれど、告げてくれた言葉を信じる為に。そして、真白な世界で過ごし、二人で交わした言葉を確かめあうように、ずっと――。 沈黙の中、もう余計な言葉は要らなかった。それでも、祈はそっと口を開く。 「ねぇ、廻斗」 祈が彼の名を呼び、どうかしたのかと首が傾げられた。すると祈は首を振り、ただ呼んでみたかっただけなのだと小さく微笑む。このひとときが心地良く、ひたすらに愛しい。 この刻だけは絶対に離れたりはしないし、彼が雪のように消えてしまうことなんてない。 先は視えず、未来すら解らないままでも――今日という日の記憶は絶対。そうして、二人の間にふたたび穏やかな沈黙が訪れる。雪白の世界には今、確かな想いが満ちていた。 |
安羅上・廻斗(BNE003739) 葛葉 祈(BNE003735) |
担当VC:ガクハル 担当ST:犬塚ひなこ |