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『雪空に微笑んで』 |
「寒いね、宗一くん」 「ああ、寒いな。……雪も降ってるし」 深々と雪が降る。今年はホワイトクリスマスであったから、きっと街は賑わっているだろう。 それでも彼等は、街の喧騒から離れ静かな時を過ごしていた。 他愛もない会話を繰り返しながら雪の降る静かな街並みを二人揃って歩く。 沢山の事を話したかった。剣の道の下、禍を斬り続けてる絢堂・霧香(BNE000618)にとってこの時間はとても貴重なものだった。 剣を手に戦場を駆ける結城・宗一(BNE002873)にとっても恋人である霧香と共に過ごせる時間は掛け替えのないものだ。 何もなくて良い。飾りっ気のないクリスマスだけれど。 普段通りの羽織袴が歩むたびに揺れる。宗一の黒いコートも合わせて揺れた。 ぎゅ、と握りしめた指先に力を込める。伺う様に見上げてくる視線に、優しく微笑めば、霧香は頬を染める。 あのね、と言う事も。それから、と紡ぐ事も。 話したい事は沢山あるけれど、何を言えばいいのか判らなくて。 幸せばかりが溢れだすから、気持ちを伝える一番の言葉が判らなくて。 「ねえ、宗一君」 「何だ?」 「――ううん、何もないよ」 そっと視線を逸らせば力の込められる指先が、其処から伝わる熱が暖かくて。触れる雪が赤らんだ頬で溶かされてしまいそうで。 何もなくて良い、それでも君と居られる事だけが幸せだから。 |
結城・宗一(BNE002873) 絢堂・霧香(BNE000618) |
担当VC:蒼井 担当ST:椿しいな |