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<蝮原 咬兵>

 男の決断は何時でも重みを持つモノだ。
 背負っている荷物の量、為してきた何かの業。
 それが人並み以上になれば一層、当然の事。
「本気ですか? 咬兵さん」
「ああ」
 問う部下の問いに蝮原咬兵は少しだけ億劫そうに頷いた。
 時村邸襲撃(あれ)から、幾らか。戻るべき場所に戻らなかった蝮原を組織は探しているのかも知れない。しかし、都会の暗闇。僅か五名の一行が身を隠すにコンクリートの森は十分過ぎた。
「他に手が無ぇ」
「確かにそりゃ……そうですけど」
 歯切れの悪い山田の声に蝮原は構わない。
 構わないで言葉を続けた。ゆっくりと紫煙を吐き出しながら。
「行くも地獄、帰るも地獄なら行くしかねぇだろ。
 問題は『どっちの方がマシ』で、『どうすればお嬢を取り返せるか』だ」
 フィクサード組織は元々一枚岩では無い。蝮原自身も不測の事態をまるで予期していない訳では無かった。それが故に相良邸には彼が信頼する右腕、左腕とも言うべき岩井と河口の二人を残したのだ。しかし、結果から言えば黄咬砂蛇では相手が悪すぎた。予期しなかった相手が予期しなかった規模で『やらかした』以上、備えは結果的に無意味なものになったと言わざるを得ない。
「砂蛇の姿が消えたって事はコントロールが外れたって事だ。俺達と同じようにな。つまり、フィクサード側でどうにかなるモンじゃねぇ」
「……」
 押し黙るもう一人の部下、伊東に蝮原は言う。
「九条とリベリスタの話じゃ、火吹の野郎が死んだらしい。
 となりゃ、相当頭に血が上ってるのは間違いねぇよ」
 黄咬砂蛇は情のある男では有り得ないが、『ヴォルケーノ』と『岩喰い』の二人の『兄弟』が特別なのは知れた話である。
「黄咬砂蛇はバカじゃねぇ……バカだ。
 奴の事はそれなりに知ってるがな、消えたとなれば次は……復讐だろ。切り札になるお嬢を早々傷付けてるとは思わねぇ。やるなら、俺の目の前で。そういう奴だからな」
 蝮原の言葉はその実半分は希望的観測だった。そうであって欲しいという願望に過ぎなかった。だが部下は口を挟まない。
「兎に角、決めた事だ」
 蝮原は言ってまた大きく息を吐き出した。
「……馬鹿な大将だぜ。他の奴等もあんまり馬鹿で呆れるぜ……」
 彼は苦笑交じりに独白した。
 言葉を吐き出す厳つい彼の顔には表情が無い。
 表情が無いが、鋭敏な誰かならそこにある何かに気付いただろうか?
「石炭も、蘭子も他のヤツも今でも俺に任せると来たもんだ。
 嫌になるぜ。どうしたら俺は連中に報いられる?
 無責任に信頼しやがって。あんまり馬鹿で嫌気が差すぜ……」