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今宵の獲物は?

●狩人
「はぁ……はぁ……っ」
 息を荒げながら裏路地を逃げ惑う姿、ブレザー姿の女子高生だが今の状態は明らかに異質だった。
 所々破けた制服からは、白い素肌が露出しており、避けた表皮からは鮮血が滴る。
「な、何なのよ!?」
 憔悴しきった声で呟く嘆きは、誰に届くわけでもない。
 角を曲がると共に、小さな溝につま先が躓けば崩れる様に地面を転がり……彼女の頭上を何かが通り過ぎた。
 ガキィンッ!と甲高い音が響けば、前方の地面に赤黒い杭が深々と突き刺さっている。
 もし転ばなかったら……小さな頭部が花火の様に爆ぜていた事だろう。
「い、嫌ァァァッ!」
 泣きべそかきながらもがく様に走り出す少女。何度もつんのめり、転びそうになりながらも逃げ回るも何処からともなく杭が襲い掛かれば柔肌を切り裂く。
「はぁ……はぁ……っ」
 倉庫の中へと逃げ込めば、コンテナに凭れ掛り、ずるずると滑り落ちる体は尻餅をつく。
 窓もない、四方は壁に覆われている。幾らコンクリートの壁を撃ち抜ける攻撃であっても目標が見えねば攻撃出来ない筈、この安全地帯で息を整えようという事だろう。
 だが、それが愚かな考えだというのは……直ぐに身を持って知る事になる。
 壁を貫通し、飛翔する杭は迷う事無く少女の太腿を貫き、地面に打ち付けてきたのだ。
「っはぁ……っ!?」
 だくだくと溢れる鮮血、頭を焼き焦がすような激痛。
 全ての出来事に混乱しつつも、今すべき事は逃げる事、それは分かっていた。
 突き刺さった杭には返しがついており、リノリウムの床へ完全に食い込んで抜ける様子はない。
 必死に抜こうと全力で引っ張り続けるも、混乱した彼女にそんな事実を理解する事は不可能だ。
「ひっ……!?」
 カツン、カツン……と響き渡る足音。直感的にそれが、危険なモノだと察すれば、少女は必死に杭を抜こうと試み続ける。
「抜けて、抜けてよ!抜けてぇっ!!」
 近づく足音、そして途切れた音。
 ハッとして見上げた先には……異形の姿となった男の姿があった。
 腕には人ならざぬ何かが纏わりつき、手首の付け根からはパイプ状の物体が飛び出ているのだ。
 緩慢な動きでそれを向けられた瞬間、少女は理解する。
「ぁ……」
 筒の中には足に突き刺さったものと同じ、赤黒い杭。
 だが、理解する頃には遅いのだ。
 美しい四肢を残し、少女の清楚な顔はこの世から消えてしまったのだから。
 
●狩人同士の戦い
「……これが、この先に起きる未来の姿という事よ」
 この先に起こるであろう悲惨な未来を紡いだ『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、瞳を閉ざした。
 色んな出来事を目にしてきた彼女といえど、惨たらしい死の瞬間は心身に毒である。
「元々は傭兵として戦っていた人みたいだけど……戦場で戦えない体にされたらしいわ。 そんな中革醒し、心が廃れるがままエリューションになった、というところね」
 在り来たりな結果を紡ぎ、瞳を開くと説明は続く。
「フェーズは2、戦士級ね。 腕に生まれた銃の様な器官を使って攻撃するようだけど……これがまた厄介で、一方的に弄れる様な獲物が出てこない限り、姿を現さないの」
 映像が切り替わり映し出されたのは、今回のターゲットだ。
 エリューションの右腕から伸びた管が頭部へとつながり、右目も気色悪く変化をしている。
「遠くから狙撃する様にこの目で狙い……この腕で撃つ、さながら生体狙撃銃ね。 あの娘にトドメをさす時に姿を現したのは、逃げれないとわかったからでしょうね。 獲物の死に様をよく見たいが為に……」
 外見相違ない悪趣味な行動にイヴの表情も歪み、明らかな嫌悪感を示す。
「狙撃ポイントは倉庫通りの監視ビル屋上。 それに配下を連れている様子もないし、近づきさえすればどうにかなるわ」
 つまり、戦うよりはその事前。どうやって取り付くかというところが重要だろう。
 攻撃されるだけされて、逃げられては堪ったものではない。
「少々厄介だけど、お願いできるかしら?」
 狩るか狩られるか、危険な遊びの始まりとなりそうだ。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:常陸岐路  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年11月15日(火)23:04
 戦いの舞台となるのは、とある裏路地に面した倉庫通りとなります。
 エリューションのいるのは倉庫通りの東側にある監視ビル、戦うにはここの屋上まで接近する必要があります。
 倉庫通りは全体がライトアップされており、暗い部分が少ないです。ライトを破壊してしまうと、危険を察知して逃げ出してしまうので気をつけましょう。
 正面から接近し、攻撃の意思を感じ取られるとエリューションは逃げ出してしまいます。
 逆に、獲物が視野にいる間は逃げる事はありません。また、視野に入らないように移動すれば気付かれず接近する事も可能ですが、気配を察知する事にもある程度長けているので、3人以上の気配を感じ取ってしまうと、警戒するので不意打ちとまでは行かないでしょう。
 屋上にいるエリューションは特に姿が見えづらいようにする様な事はしていないので、目が利けば視認する事も可能です。
 自身の背後にあたる東側は全く見ていませんが、南北と西は順々に見渡しているので、見渡す動きを観察し、利用するのも手でしょう。
 監視ビルに侵入し、屋上に上がればエリューションの背後に出れますので気付かれなければ不意打ちも出来ます。
 攻撃手段については、イヴが言っていた通り腕についた器官で遠距離攻撃を仕掛けてきます。威力は高く、距離が離れていれば高い命中率もあり、単純ながら危険な攻撃です。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
プロアデプト
オーウェン・ロザイク(BNE000638)
ナイトクリーク
アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)
ソードミラージュ
雪白 凍夜(BNE000889)
ナイトクリーク
黒部 幸成(BNE002032)
デュランダル
神守 零六(BNE002500)
クリミナルスタア
セシウム・ロベルト・デュルクハイム(BNE002854)
スターサジタリー
ユウ・バスタード(BNE003137)
デュランダル
エクス キャリー(BNE003146)

● 撒き餌
 夜の闇が倉庫通りを包むと、明かりは街灯と照明のライト。
 所々照らされる中を、屋上に居座る狩人が目を光らせ獲物を探す。
 血に飢えた本能、戦いへの渇望、そして強い勝利への欲望。
 只管勝利すべく戦いを求める獣は、必ず倒せる獲物だけを狙っているのだ。
 外道へ墜ちたエリューションの瞳に映ったのは、『人間魚雷』神守 零六(BNE002500)である。
 囮役としてあえて姿を晒しているなどと、考える事もなく狙いは彼一つに絞られていく。
 
(「掛ったみたい……動くとしようかな……」)
 双眼鏡いらずの鋭い瞳でエリューションを観察する『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)は、その右腕が動き出したのを捉える。
 コンテナの陰から伺うと、左腕で右腕をライフルのように支え照準を合わせていく様で確信を得た。
 傍にいるのは、本日初の戦いを迎える一人『虎人』セシウム・ロベルト・デュルクハイム(BNE002854)だ。
 くいくいと手招きするアンジェリカを見れば、静かに近づき、彼女の後に続く。
(「僕は雲に……いや雲などと言う高尚なものでは意識を入れ込めない。僕は虫だ……そこらに転がっている虫になるんだ」)
 嘘のように消えていく彼の気配に、アンジェリカは少々驚きを感じが……彼の少々ネガティブな思考回路に気付く事はないだろう。
 
 まるで何かの重機が動き出したかのような音が屋上から響いた後……穏やかな夜は終わりを告げた。
 ガァンッ!と響く破裂音、そして夜闇に溶け込む巨大な杭が真っ直ぐに神守へと飛翔していく。
 僅かに体を反らす動きを、何気ない仕草に混ぜ込みながらギリギリの回避を自然と装う。
「うわぁっ!?」
 勿論それだけで回避しきるのは不可能だ、杭は太腿へ擦過傷を刻みながらコンクリートへと沈む。
 偶然避けた運の良さ。たとえよく見える目でも遠くにいる彼の微細な動きまで見抜くことは出来ない。
「な、なんだよこれ……!?」
 勿論分かりきってはいるが、それらしい反応を示しつつ、わざと背を彼へ向けた。
 杭を確かめようとしゃがみ込むフリ、ゾワリと背筋から感じる嫌な気配にグッと堪えながら自然を装い続ける。
「どこから飛んで……っ!?」
 立ち上がれば横に一歩逸れ、辺りを見渡す。
 その動きで直撃は回避され、今度は脇腹を淡く削られていく。
「くそっ!! あそこか!」
 屋上の方を見上げてから、一気に走り出す神守を瞳に捉え続けるエリューション。その顔には……悪意に満ちた笑みが浮んでいた。
 必死に逃げ惑い、致命傷にならぬ程度の直撃を受けながらも神守は耐え続ける。
 仲間達が到着し、この痛みと怒りを何倍にもして叩き返せる瞬間まで倒れるわけには行かない。
 彼の瞳には強い意志がしっかりと宿っていた。
 
(「動き出したようだな」)
 エクス キャリー(BNE003146)も一般人を装いつつ移動をしていたが、コンクリートを砕くだけの音を聞けば見えずとも分かる。
 気配を絶つ技を持ち合わせていなかった為、先行しているアンジェリカ達より後方から進んでいた。
 だが、ここで走り出して気付かれては意味がない。焦る気持ちを抑えつつ、今はゆっくりと進むまでだ。
 音に驚き、逃げ出す素振りを見せつつも向かう先はビルの方向。それらしく、それらしく……演技を重ねながら移動を続けていく。
 作戦開始のメールが届くのを待ちわびながら。
 丁度直ぐ傍の宙を滑る『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)も、戦闘に気付き低空飛行を続けていく。
(「あれが私のはじめての相手ですか。多分、そのお顔は一生忘れませんよ……なんて、ふふっ」)
 距離が詰まれば、歪んだエリューションの顔が見えた。
 こちらに気づく事無く獲物へ愉快そうに射撃を繰り返す様は、戦士というよりは最早獣のようだ。
 確かに忘れられそうにない、ユニークな顔だろう。
 彼女も今回が初の戦いとあって、動きも慎重である。
 柱状の建物やオブジェクトを盾に、視野に映らないよう飛行を続ければ、目的地は直ぐ傍だ。
 同じくして『復讐者』雪白 凍夜(BNE000889)もビルへと静かに接近し、気配を絶ちながら目標ポイントへと急ぐ。
(「一方的な暴力に酔いしれやがって……待ってろ、今直ぐ殺し合いにしてやるからよ」)
 間違った力の使い方は、彼の心を波立せていく。
 それは過去の苦い思い出からだろうか、それは彼にしか分からない。
 獲物を握り締める手の力は一層強まり、素早く、それでいて見つからぬ様、頭の中は落ち着かせて走っていく。
 
 その頃、『Dr.Faker』オーウェン・ロザイク(BNE000638)と『無影絶刃』黒部 幸成(BNE002032)はビルへと到着してた。
 ボートを隣接させる船着場がビルの裏まで繋がっている部分があり、所々貨物で塞がっていたが物質透過で難なく進み、今に至る。
(『柵は低く、突き落とすのに問題ないね。 Eは囮に夢中だよ。』)
 2人の携帯電話に届いたのはアンジェリカのメッセージ。最高の好機と屋上へと静かに進む二人は、屋上の床から迫出るかの様に近づいていく。
(「背後がお留守だ、軍人かぶれめ」)
 エリューションの狙いは完全に神守一人、周りのことなど殆ど気にしていない様子。
 音を立てず静かに屋上に到達すれば、ちらっと視線を黒部へと向ける。
(「仕掛けるので御座るな」)
 作戦は先ずはオーウェンから一撃、そしてもし失敗すれば自分がカバーする。
 頭の中で確認すれば、ハンドサインでOKを示し、作戦開始だ。
(『此れより敵に仕掛けるでござる。各々落下予定地点へ急行されたし』)
 獲物を抜き、準備に入るオーウェンの傍で、アクセスファンタズマから他のメンバーへメッセージを送信する黒部。
 送信完了をアイコンタクトで意思疎通すれば、二人は静かにエリューションの背後から迫っていった。
 
● 狩り時
 エリューションの背後から静かに距離を詰めるオーウェンは、狙いをしっかりと定め、床を蹴る。
 その瞬間もしっかりと杭の発射音と重ね、ギリギリまで悟られない様に徹底した不意打ちだ。
 自分に掛る僅かな影に気付いたエリューションではあったが、既に遅い。
 構えたナイフを振るい袈裟切りを浴びせ、傷口から広がるように衝撃波が生まれると、その体は錐揉み柵に激突する。
 甲高い金属音が響き、頭部に強力な打撲を与えつつも勢いのった体は、留まらずビルから放り出されていく。
「さて、下にいくか」
 視野からエリューションが消えれば、再び2人は床を擦り抜け下へと向かう。
 そしてエリューションは重力に引っ張られ、事態の変化へ思考が追いつかず落下するだけだった。
 
「お、落ちてきたっ!」
 メッセージを受け取り、落下ポイントに姿が見えたのはアンジェリカ、セシウム、ユウ、3人。
 雪白は到着はしているものの、訳あって姿を隠していた。
 セシウムの戦く声に空を見上げる3人、ぐっと獲物を握り締め緊張が走る。
 まるで地震が起きたかのようなけたたましい音と共に、あっという間に地面に叩きつけられたエリューションだが……この程度でへこたれる様子はない。
「いくぞっ!」
 同じくして姿を現したのは、全力疾走で近づくエクスだ。
 落下の衝撃で少々フラフラしながらも立ち上がるその姿へ、大剣を構え突撃する。
 その大剣に煌々と光が灯り始め、鍔から登っていくそれは刀身全体を包み込んでいた
 敵からすれば、気付けばすぐ目の前にエクスの姿があるのだから度肝を抜かれ、回避は間に合わない。
 全重心が乗る一点、そこへその光が集まっていけば全力で振り抜いた刃がエリューションの脇腹を薙ぐ。
「グァァァァァッッ!!」
 絶叫しながら吹き飛ばされるエリューションは傍にあったコンテナへ激突し、金属製のフレームに綺麗に型が食い込んでいた。
「悪いけど、遠慮なくいくよ……」
 そこへ追い打ちを仕掛けるようにアンジェリカは黒いオーラの塊を放つ、しかし一撃を食らい鈍るどころか危機感を感じたエリューションの動きは素早い。
 直撃は叶わず、僅かながらにダメージを与える結果に終わってしまった。
(「僕にだって……意地がある!」)
 素早く構えた小型銃の狙いは正確に脚を狙い、一斉発射の弾丸が吹き荒れる。
 爆音を響かせ撒き散らされた弾丸は、荒々しい形相とは異なり、吸い込まれる様に大半が直撃していく。
 エリューションの脚部からはだくだくと黒い液体が零れ、思わず片膝着き、体勢が崩れた。
「さっきまでのお返しだっ!」
 先程散々追い回された神守も上空から迫り、チェーンソーから溢れんばかりの電撃が飛び散らせ、渾身の一撃を振り下ろした。
 勢いと重力、そしてズタズタに切り裂く刃の動きに迸る電流と、何層にも重なった破壊力が一気にエリューションの破壊に掛る。
 庇い手でダメージを押さえようとしているが、それにすら深い裂傷を負わせながら胸板を切り裂き、黒き飛沫が飛び散った。
「ウガァァァッ!!」
 勢い止まらぬリベリスタ達の攻撃に、エリューションは憤り満載の咆哮を響かせ、深い傷を与えた神守へ右腕を突きつけようとしていく。
「もう狩られねぇとでも思ったか?」
 ずっと身を潜めていた雪白が、エリューションの背後から迫る。
 全て出揃ったと油断した瞬間をつく、二度の奇襲を狙った攻撃だ。
 下から掬い上げるような切り上げ、そして横薙ぎ、袈裟切りと3連撃の刃はそれだけでない。
 一撃からは無数の攻撃が広がり、刃が束の様にエリューションを切り裂く。
 縦横無尽にきりつける動きに、手応えを感じたが……敵はその全てを左腕で受け止めていたのだ。
「チッ……腐っても殺人鬼か」
 極限の取捨選択を見せたエリューションに、気を引き締め刃を構えた。
 
●重なる力
 攻撃が途切れた瞬間に、一番距離が離れていたセシウムに向け、エリューションの反撃が始まった。
 ガァンッ!と、再び響く発射音。闇を走る杭は真っ直ぐに彼の体へ向かう。
「うぐっ……!?」
 横っ飛びに回避を試みるが肩を抉られ、地面を転がる。
 あと少しずれていたら、その鋭い痛みではなく、気付けぬほどの痛みと共に動けなくされていただろう。
「年貢の納め時で御座る」
 オーウェンと一緒に地上に到着していた黒部は呼び出した影を操り、攻撃の準備を念入りに終えていた。
 奇襲が終わり、向こうのペースが取り戻されそうな瞬間にこの一撃を与えたかったからだ。
 両手を合わせる音が合図となり、体から生まれる光の糸と黒い影が一斉に動き出し、エリューションの体を捉える。
 周辺の柱やコンテナ等に引っ掛け、360度全方向から伸びる攻撃は回避の余地すら与えない。
 ギリギリと全身を絡めとり、引き上げ、宙に吊るした状態で身動きを封じてしまう。
「これで動けぬで御座ろう!」
 締め付けられる痛みに剥き出しの憤怒が零れ、無理矢理右腕を動かしながら、エリューションは黒部に反撃をしようとしていた。
「私の初めての戦闘も、ここで終わらせましょうね」
 ゆったりとした口調でユウは小銃の狙いを定める。
 黒部と同じく、攻撃には参加しなかったがその分驚異的な集中力を発揮し照準は狙い通り。
 引き金を絞ればマズルフラッシュと共に弾丸が放たれ、慣れた手つきで反動制御を続け照準を崩さない。
 寸分違わず右腕を全ての弾丸が穿ち、黒い液が破裂するように弾傷から噴出し腕が踊る。
 攻撃を攻撃で叩き潰す攻めの一手。カコンと空マガジンを落とすと共に、右腕は酷い有様となっていた。
「これで終わりだよ……」
 その隙に接近したアンジェリカが、両手をエリューションの胸元へ押し付ける。
 黒いオーラが心臓の辺りに張り付くと、脈動に合わせる様に光が点滅し、それは徐々に加速していく。
 使い物にならなくなった左腕を叩き付けようとしているが、絡みついた糸に上手く動けず、もがくばかりだ。
 バックステップで距離を取り、右手に残った僅かな黒い光を握り締めると共にエリューションに張り付いた光は爆ぜる。
 強烈な閃光と共に、全てを焼き尽くす死の光がエリューションでも命の元と成ろう心臓周辺を消し去り、その力が衝撃波となって辺りに溢れかえていく。
 砂埃を撒き散らし……晴れた頃には、彼等の勝利を物語るエリューションだったものが散乱していた。
 
●戦い終わり……
 エリューションであったものは、その存在を維持出来なくなった為か泥のように解け始めていく。
「あなたの罪を許す事はできないけど、せめて傷ついたあなたの心が癒されて旅立てますように……」
 アンジェリカの優しげな言葉、そして紡がれるのはエリューションへの鎮魂歌だった。
(「……多分あんたの所為で死んだ奴も、あんたのお陰で救われた奴も居たんだろうさ」)
 彼女の歌声を耳にしつつ、雪白は消え逝く屍を見下ろす。
(「でもあんたは自分すら救えない存在になっちまった。 だからもう終わりだ、いい冥土の土産も聞けて満足だろ?」)
 戦った相手は、もしかしたら自分達と共に戦っていたかもしれない存在でもある。
 運命なんてものは分からない、戦い終わった後、彼の心には怒りの感情も残っていなかった。
「戦士の覚悟なき者よ、来世は平凡で幸せな人生を送るとよう御座ろう……」
 見送る言葉と共に合掌する黒部。
 融けていく姿も見えなくなり、残ったのは彼らだけだ。
「しんみりしてるところすみません……その、周りの状態はどうするのかなと」
 周りを見れば結構酷い爪痕が残っている。
 屋上の柵は一部大破、コンクリートの地面には無数の皹が入った落下跡、杭の突き刺さった跡はここ以外にも神守が逃げ回っていた場所にもあるだろう。
 そして先程の糸で食い込んだ細い跡も柱やコンテナにちらりほらりと。
「……よし、帰るぞ。皆!」
 エクスがきぱっと切り替えした。
 帰るというよりは最早逃亡だ、だが見つかって事の説明もし様がない出来事でもある。
 満場一致の結果、そそくさと倉庫通りから撤退を開始。
 再び人に見つからぬ様、気をつけながらのひっそりとした帰り道となるだろう。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 初のリプレイとなりましたが、満足いただけたでしょうか?
 こういった形でご参加頂いた方々にメッセージをお伝えするのも何分初めてなので、何を伝えればいいかとアワアワしてしまいます。
 プレイングに関しては特に引っかかるところはありませんでした、寧ろ突き落とすという考えは私としては想定していなかったのでとても勉強になりました。
 次回は書きやすいものをやる予定なので、もしお気に召したらば是非参加頂ければと思います。
 ではでは、ご参加有難う御座いました。