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都会の狩猟者、三羽烏!

●三羽烏VS三羽烏
 北高の三羽烏。
 それはこの界隈の高校では、知らぬものの無い不良達であった。
 喧嘩が強く3人のリーダーを務めるシンヤ。
 すばしっこくて手先の器用なテツオ。
 頭が切れて頭脳担当であるナオキ。
 いささか流行りから遅れた向きもあるが、狂暴さも相俟って教師も手が付けられず、警察も手を焼く存在だ。高校の制服が学ランで、いつも3人でつるんでいることから、誰ともなしに「三羽烏」と呼ぶようになった。
 とある深夜、彼らは例によってたまり場にしている駐車場に集まろうとしていた。付近の住人も既に諦めて何も言ってこないために、彼らの縄張りとも言える場所だ。
「っかしいな。ナオキの奴、先に来ている筈なんだが」
「便所にでも行ってるんじゃないっすか?」
 シンヤとテツオは一緒に駐車場にやって来た。ナオキは先に集合場所に来ているとのことだが、姿が見えない。時間にはしっかりした男なので、遅れるということはそんなに無い。
「ま、その内来るだろ。たまたまだな、たまたま」
「そっすねー。それにしても、なんか今日はヤケにカラスがうるさいっすね」
 テツオが怖々と空を見る。夜中に鴉の鳴き声がすること無いわけでは無いが、妙に近くに響いているのだ。
 そんなテツオをシンヤは軽く小突く。
「バーカ、そんなもんにビビッてんじゃねーよ」
「はは、そっすね。……ん? アレ、なんか何か滑るな……」
「おい、な……なんだ、こりゃあよぉ!?」
 シンヤが叫ぶのも無理は無い。その場にはナオキの代わりに、先客がいた。彼らにやり返しに来た喧嘩相手などでは無い。3羽の人ほどもある巨大な鴉が、何かを啄ばんでいたのだ。
 そして巨大な猛禽は、シンヤの問いに答えるように、爛々と輝く赤い瞳を向けてくる。
「し、シンヤさん。なんすか、こいつら!」
 その不気味な姿に、テツオは腰を抜かしてしまう。
 だが、シンヤは違った。鴉の内、1羽が嘴に咥えているものがナオキの眼鏡だと悟った時、彼の中の何かが切れた。
「テメェェェェェェェェェェェェェェェッ!!」
 シンヤの中の喧嘩で培った勘は、勝てない相手であることを告げていた。だが、社会からつま弾きにされるもの同士の仲間意識がそれを無視する。
 だが、結果は無常だった。シンヤの勘が告げたとおりだ。鴉同士が戦ったら、数が多い方が勝つのは道理だろう。

●鴉を倒し、鴉を救え
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」
 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はブリーフィングルームに集まったリベリスタ達に会釈すると、全員に資料を配る。
「皆さんにお願いしたいのは、エリューション・ビーストの退治です。このままだと、3人の男子高校生が犠牲になることが予見されています。罪の無い……とは言いづらいのですが」
 犠牲者になるのは3人の不良高校生。彼らがたむろしている駐車場に現れるエリューション・ビーストが現れるのだ。彼らの行いは感心できるものでは無いが、それは殺されても良い理由にはならない。
「現れるのは鴉が元になったエリューション・ビーストで、フェイズは2まで進行したものが3体です。人間大に成長していて、それなりの戦闘力を持っています」
 攻撃方法はその鋭利な嘴。その嘴で突かれた傷は、致命的な流血を招くだろう。また、元が鴉であるということは、飛行も可能ということだ。
「エリューション化の影響で極めて攻撃的な性質になっていますが、知性はそこそこにあります。おそらく、耐久力の低そうな相手から優先して攻撃してくるはずです。もっとも、防ごうとするものがいれば、諦めると思われます」
 攻撃的な性質なので、恐らくは倒れるまで戦うだろう。裏を返せば、逃げられる心配は無いということだ。
「駐車場にエリューション・ビーストが来た所で戦いに持ち込むのが良いですね。被害者達が現れるのに対して、余裕を持って戦えるはずです。幸いと言うか、付近の住民も被害者達を恐れて、多少の騒ぎでは現れません」
 駐車場には明かりもあるし、足場も悪くない開けた場所である。真正面からの戦いが一番有効なはずだ。
「もし、戦いが終わった後で余裕があるなら、被害者達に注意しても良いかも知れませんね。強面の方や『そっちの筋』っぽい方がすごめば、彼らも考えるでしょう」
 和泉はクスリと笑って冗談を飛ばす。だが、その後にすぐさま表情を引き締める。
「説明は以上です。皆さん、気をつけて行ってきてください」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:KSK  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年11月15日(火)23:03
皆さん、こんにちは。喧嘩上等世界征服、KSK(けー・えす・けー)です。
今回はE・ビーストと戦っていただきます。

●目的
 E・ビースト3体の撃破

●戦場
 不良達がたまり場にしている駐車場です。
 周辺住民は不良達を恐れているので、多少の物音を出しても出てきません。
 駐車場に向かえば不良達の集合前にE・ビーストと遭遇できます。
 車がそんなに多いわけでもないので、わざわざ壊しに行かない限り、周りへの被害は考えなくても良いでしょう。

●E・ビースト
 ・エリューション化した鴉
  エリューションによって巨大化した鴉。爛々と輝く赤い瞳が不気味です。
  攻撃方法は嘴での近接攻撃です。流血状態を招く可能性があります。
  また、「飛行状態」で戦うことが出来ます。ただし、近接攻撃しか出来ないので、3m以上の飛行は行いません。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
インヤンマスター
依代 椿(BNE000728)
覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
ホーリーメイガス
レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)
スターサジタリー
劉・星龍(BNE002481)
クリミナルスタア
泰和・黒狼(BNE002746)
クリミナルスタア
山川 夏海(BNE002852)
インヤンマスター
駒井・淳(BNE002912)

●狩猟者達の夜
「三羽烏なぁ。わかりやすい呼称付けるんはえぇけど、それって当人らを調子付かせるだけやないの?」
 夜の駐車場を前にして、煙草を口に咥えたまま『イエローシグナル』依代・椿(BNE000728)は呟く。ちなみに、煙草に火は点けていない。何かを咥えていると安心出来るだけだ。
 それに対して、煙草を吸いながら答えたのは黒ずくめの青年、『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)だ。
「『鴉』が『鴉』を共食いにする。ふと、そんなことを思いつきましたが、片方の『鴉』を守らなければなりませんね」
 淡々と答えているようだが、周囲に対する警戒を怠っていない。ターゲットであるエリューション・ビーストの不意打ちに無関係な一般人の闖入。用心しなくてはいけないことなどいくらでもある。
「不良達には反省して貰うとしても、見捨てて良い命ではないですしね……と、目標確認です」
 『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)の言葉に、一行は緊張を走らせる。疾風の千里眼が巨大な鴉の姿を捉えたのだ。どうやら、羽を休めている様子ようだ。おそらく予知された未来では、そこにやって来た不良達を餌として喰らったのだろう。
 だが、予知された未来を防ぐためにリベリスタ達はやって来たのだ。
「まずは鴉退治。これを何とかしなきゃ、その後もなにもないしね。さぁ頑張ろう!」
 『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)は、自分の横にしたポニーテールを揺らせて、仲間に呼びかける。彼女の様子を見ていると、これから戦うエリューション・ビーストよりも、襲われるはずの不良達を恐れているようにも見える。
「どうやら、こっちに気付いたようだな。後にやる事も控えている。早々に済ませよう」
 『悪手』泰和・黒狼(BNE002746)が手甲の様子を確かめながら、周りに注意を促す。彼の名前は取り様によっては鴉にも通じる。特に親近感があるわけでもないのだろうが、何か思う所はあるのかもしれない。
 バサッバサッ
 急に羽根の音が近づいてきたと思うと、リベリスタ達の頭上に鴉が姿を現す。どうやら、飛行能力は決して退行していない様子である。
「カァーッ! カァーッ!」
「カァーッ! カァーッ!」
「カァーッ! カァーッ!」
 鴉達が鳴き声を上げる。それは狩人の仕草だった。獲物の前に狩人が姿を現すのは、獲物を確実に仕留めることが出来ると考えているから。それを獲物に知らしめようとしているのだ。
「良く育った鴉だね。これ以上人の味を覚える前に狩らないといけないね」
 だが、ここに集まったのは獲物等ではなかった。山川・夏海(BNE002852)は表情1つ変えずに呟く。彼女の中に渦巻くのはエリューションに対する尽きない憎悪。
「今日の血は化け鴉か。さて、どんな味かな」
 『背任者』駒井・淳(BNE002912)は化け鴉の味を想像して、思わず舌なめずりする。そう、彼がここに来たのは血を味わうため。断じて、鴉の餌などになるためではない。
「狩猟者……か。良かろう、そちらがその心算なら……貴様らに対しての狩猟者もまた、此処に存在する事を教えてやる」
 『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)は二振りの剣を構えて闘気を滾らせる。他のリベリスタ達も、既に戦闘準備を終えている。
 そう、ヒトをエリューションが狩るように、エリューションを狩るのがリベリスタ。かくて、闇の中で狩猟者達の戦いが始まったのだった。

●狩りの始まり
 夜の闇の中、機先を制したのはエリューションである鴉達だった。彼らは夜空に不吉な雄叫びを上げると、爛々と目を赤く染めてリベリスタ達に襲い掛かる。襲い掛かる様子に迷いは無く、また狙うべき標的を見る目に間違いも無い。野性の本能がそれをさせるのなら、間違いなく優秀な狩猟者だ。
 しかし、鴉達の行く手を拓真、疾風、黒狼、夏海の4人が阻む。何故ならば、獲物がどのように動くか読むのも狩猟者の技量。リベリスタ達もまた、狩猟者だからだ。
「貴様の相手はこの俺だ! 行くぞ!」
 拓真は鋭く剣を抜き放ち、鴉を切り刻む。まさしく疾風の剣閃だ。
「犠牲者を生み出す前に倒す! 変身!」
 疾風は幻想纏いを起動し、その身に戦闘服を纏うと、流れる水の如き構えを取る。そして、鋭い嘴を腕に受けながら、鴉に叩き込んだ。
 もし、これが1対1の戦いであれば、勝敗の行方は分からなかっただろう。だが、この場には共に戦う仲間がいた。続けて疾風を狙った鴉の動きが唐突に止まる。鴉の周囲には呪印が取り巻いていた。
「大人しくしろ、今から味を見てやる!」
 鴉に呪印を放ったのは息を荒げながら集中する淳だ。彼は道を外した『子供達』などに興味を持っていない。ここに来たのはあくまでも、鴉の血に興味を持ったからに過ぎない。
 淳と最も対極のスタンスなのは、ある意味で夏海かもしれない。エリューションに対する憎しみを込めて、ただひたすらに拳を打ち込むのが彼女のスタイル。その矜持は彼女に揺ぎ無い力を与えてくれる。
「その翼、叩き折るッ!」
「応ッ!」
 夏海の動きに合わせて、黒狼が掌打を放つ。先ほど、鴉の嘴が彼の身体を貫いたはずだが、その動きに微塵の揺らぎも見えない。
 夏海の攻撃で生まれた死角からの攻撃を鴉はかわすことが出来なかった。そこに破壊的な気が流れ込み、内側から爆ぜる。即席にしては十分すぎるコンビネーションだ。
「これは気ぃ入れていった方がえぇなぁ」
 戦局を眺めていた椿はおもむろに咥えていた煙草に火をつける。集中する時に行う、彼女の癖だ。相手を過大評価するわけでは無いが、油断するわけにもいかない。素早く印を結ぶと、周囲に護りの結界を展開した。
「うん、追いついてみせないとね」
 仲間達に翼の加護を与えたレイチェルは、ふわりと浮かび上がると戦況を眺める。敵の攻撃は苛烈だが、自分達も負けていない。そして、ここから仲間の勝ちを固めるのが自分の仕事だ。そんな思いを胸に、黒狼へ光り輝くオーラを与える。これで余裕が生まれるはずだ。
(『三羽烏』が来るまでに戦闘で片をつけておかないと)
 心の中で星龍は目的を確認し、集中力を高めていく。そして、集中力の高まりと比例するように、鴉の速度が落ちていく。いや、星龍の意識の中で物事を認識する速度が上がっているのだ。
 その集中が頂点に高まった時、星龍は凝縮された一瞬の中で、引き金を弾く。
 タァン
 魔力を込めた弾丸は鴉に避けることすら許さず、頭部を貫く。
(まずは1匹目)
 星龍は心の中で呟くと、次の目標に狙いを定めた。

●狩られるのは誰だ!?
 仲間を倒されてなお、鴉達は勢いを緩めなかった。いや、そもそも「仲間」という意識を持たない彼らにしてみれば、後で喰らうべき食料が増えただけ。流れる血も自身を興奮させる材料でしかないのかもしれない。
「カァーッ!!」
 大きく鳴き声を上げた鴉達は鋭く切り込み、拓真と夏海の身体を貫く。鋭い一撃は防具の隙間を穿ち、2人は痛苦に顔を歪める。
「こ、のっ……!」
「済まない、此方を頼む」
 かろうじて拓真と夏海が立ち上がると、すぐさま仲間が割って入り、2人を庇う。
 この戦いの勝敗を大きく分けたものがあるとするなら、それは狩猟者としての経験だった。たしかに、鴉達は野生の本能で的確な攻撃を行い、個々の戦闘力も決して低くない。しかし、自分達の持つ能力を理解し、十全に使い切れていないのも事実だ。
 然るに一方、リベリスタ達は己の戦い方を理解し、その上で互いの足りないものを互いに補い合う戦術を構築している。互いに疲弊の色は見えるが、いや互いに消耗してきたからこそ、その差が大きく見えるようになってきた。
「あぁ、任せておけ」
「被害者がどんなに困った人でも、それも救うべき命だ。負けるわけには行かないよ」
 レイチェルの詠唱に応じて、戦場に福音が響き渡る。強力な癒しの力によって、仲間達の傷はみるみる消えて行く。回復があることを頼りに、黒狼は体を大きく開き、防御を捨てた攻撃を行う。自分が倒れても、仲間達が敵を倒せばいい。この覚悟は、鴉達には決して望むべくも無いものだ。
「ガァァァァァァァ!!」
 傷ついた仲間の代わりに前に出た淳は、二刀のナイフで鴉の身を切り裂き、血を啜り取る。口元の笑みは満足の笑みか、あるいは鴉への嘲りの笑みなのか。
 さらにもう一押しとばかりに、星龍のライフルが火を吹き、鴉の羽根が弾け飛ぶ。
「隙ありです!」
 舞い散る羽根が戦場に飛ぶ。その一瞬の隙を疾風は見逃さなかった。可変式モーニングスター[響]とMP7A1C[空牙]を構えると、空に飛び、鋭い蹴りを放つ。鴉は防御の暇も与えられず、真っ二つに切り裂かれた。
「悪いんやけど、うちらの本番はピンチになってからなんよ」
 先ほど仲間を庇って傷ついた怪我を抑えながら微笑むと、ラヴ&ピースメーカーを抜き放ち、氷の魔弾を叩き込む。柔らかな笑顔とは裏腹に、その凍気は残った最後の1羽の鴉の身体を苛む。
 と、その時、彼女の後ろから下がっていた拓真が出て来る。傷は癒えたものの、身体からは血が流れ続けている。行けるのかという仲間達の無言の問いに、彼は剣で答える。輝くオーラを纏った剣が閃くと、鴉の身体から血が噴き出す。
「この程度がなんだ、怯んでなるものか」
 拓真は強い意志を秘めた瞳で鴉を睨み付ける。はじめて、鴉の赤い瞳に恐怖が浮かぶ。それは狩猟者として自由に振舞っていた鴉が初めて知った恐怖だった。そして、恐怖を知った鴉はすぐさま飛んで逃げようとする。元が鳥である以上、飛ぶという一点においては、鴉の方が勝っている。
「その命、もらうよッ」
 だが、結果として鴉の学習は一瞬遅かった。誰も気付かぬ間に、仲間すら気付かぬ間に、夏海が鴉の背後に回り込んでいた。音も無く現れた彼女は、一挙動で鴉の首を掻っ切る。急な出来事だったので、鴉は断末魔の悲鳴すら上げることは出来なかった。
 こうして、2つの狩猟者達の戦いは、とても静かに、静かに、終わりを告げたのだった。

●狩りの終わりに後始末
「何なのだ、てめぇらは!」
 シンヤの声が真夜中の駐車場に響く。今にも殴りかからんばかりの勢いだ。
「どーもどーも、こんばんわぁ。自分らがシンヤさんとテツオさんやね? うちらはそうやな……お掃除係みたいなもんやね」
 満面の笑みを浮かべて答える椿は、煙草に火をつけながら優雅に挨拶をする。しかし、服には血がべったりと付いているので正直怖い。足元には猿轡を噛まされ、縄でふん縛られたナオキが無様に転がっている。
 椿の後ろには黒いスーツに身を包んだ男達が並んでいた。夏海1人がやや浮いているといえば浮いているが、どう見ても『その筋の人』達だ。黒狼の瞳が金色に光ったのを見て、テツオが軽く悲鳴を上げる。
「これは自業自得やよ。うちらの邪魔したんやからね。理解せんでもえぇよ。コンクリ抱いてもろて、お魚さんと遊ぶのに変わりはあらへんから」
「シ、シ、シンヤさん! これやばいっすよ!」
「関係あるか!」
 怯えるテツオを振り払って、シンヤが椿に殴りかかろうとした時だ。星龍が無言で撃った銃がシンヤの足を掠める。半歩でも余分に動いていれば、足は使えなくなっていただろう。外したのだ、わざと。
「魔王の異名を取る姐さんは本気だよ? 組を動かせばちょろいちょろい」
 軽い口調で話す夏海。だが、テツオとシンヤは確信する。逆らったら殺される、と。それでも、ナオキだけでも助けたい。そんな相反する感情の中で身動きも出来ない。
「この辺にしておこう。彼らも反省しているようだ」
 そしてある程度の時間、沈黙が続いたところで、拓真が取り成すような口調で椿に話しかける。その言葉に、場の空気が緩む。
「しゃーないな。適当にやっとき」
 椿は踵を返して、夏海と星龍を連れて駐車場の奥へ引き返していく。拓真の言う通り、十分に「力を振るわれる恐怖」を理解させたと判断したのだろう。
「今日は俺達の“面子”を立てて退いてくれると嬉しいんだがな」
 『その筋の人』らしく不良達に拓真が言うと、不良達は自分の命が助かったことに気付く。その言葉にこくこくと頷くしか出来ない。
「覚えておくといい。力で他者を踏みつけるだけの者は、程なく同様に踏みつけられ終わるものだ」
 言葉で言って理解出来るかは分からないが、それでも言葉にしないと伝わらないこともある。だから、黒狼は伝えた。
「同じ力なら誰かを無軌道に傷つける暴力よりも、誰かを護る力であった方が良い。そういうことだ」
 疾風も言葉を重ねる。あるいは自分自身の持つ力への想いだったのかもしれない。
 彼らの言葉が不良達に届いたかは分からない。だが、何かしらの影響も間違いなくあったはずだ。何故ならこの日以降、北高の三羽烏と呼ばれる少年達が、縄張りにしていた盛り場に姿を現すことは減ったのだから。

 そんな未来の話はさておいて。
 この最後の一幕に参加しなかった淳とレイチェルは、物陰から様子を伺っていた。
「フゥ」
 鼻を鳴らすように息を吐き出す淳。せっかく味わった血の味を『子供達』などと関わって汚したくない。そんな理由で参加しなかった彼にとっては、不良達がどうなろうと知ったことでは無い。ここに残っていたのも、血の残り香を楽しみたかっただけだ。
 だが、レイチェルは違った。正直、敵性エリューションよりも不良という連中の方がよっぽど怖かった。それでも、ちゃんと不良達がもっと危険な闇に踏み込んでしまうのも哀れというもの。それゆえに、遠くから様子を眺めていたわけだが……。
「……猿轡かませて転がしとくとか、なにそれこわい」
 思わず口に出してから、その台詞が仲間達に聞こえていないか、周囲を見渡してしまう。
 敵性エリューションよりも、不良よりも、怖いものは存在する。都会の闇は、まだまだ深いようだ。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
皆様、『都会の狩猟者、三羽烏!』にご参加いただきありがとうございました。
途中、鴉君達の出目が良く、「ヤバくね?」というシーンもありましたが、しっかりとした戦術のお陰で見事に撃破されました。

今回はラストの後始末のシーンを書いていて楽しかったです。
夜中出会ったら、自分は全力で逃げますね。

それでは、今後もご縁がありましたら、よろしくお願いします。
お疲れ様でした!