●ノコギリギリ 郊外のトンネルが閉鎖された。 老朽化だとか、杜撰な設計が判明したからとか、そんな『一般的』な理由ではない。 トンネル内が傷だらけになっていたのだ。 まるで―― トンネルの中で巨大な刃物を滅茶苦茶に振り回した様な。 あまりにも不自然で、『常識的』に考えれば有り得ない傷跡。出来事。 急遽閉ざされた暗いそこから、夜になれば聞こえるのは……刃物が暴れるけたたましい音と、不気味でおぞましい咆哮。 ●ばらばら 「サテ……こんにちは皆々様、毎度お馴染みメカッこフォーチュナのメルクリィですぞ」 そう言って愛用事務椅子をくるんと回してリベリスタ達へ向き直ったのは名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)――そしてその手にはゴッツいチェーンソー。 リベリスタの血の気がサァッと引いた。 フォーチュナがニヤッと笑った。 「クククククひはははハはハハッ、まぁ、そうビックリしないで下さいよ、『今日の任務は私に切り刻まれる事ですぞー!』とかじゃないんで。因みにこれは購買で買ってきた奴です。値引き交渉しましたがアッサリ断られました。 ……ま、取り敢えず今からじーっくり説明しますんで耳かっぽじってお聴き下さい」 よっこらせ。重いチェーンソーを卓上にゴトンと置いて、それから武骨な機械の指でモニターを手早く操作する。 かくして映し出されたのは――巨大な異形。 その荒々しい表情には完全に理性の面影はなく、何より特徴的なのは筋肉が盛り上がった両腕、巨大で武骨なチェーンソーと一体化したそれであった。 「ノーフェイスフェーズ2『電鋸男』。今回は皆々様にコイツを討伐して頂きますぞ。 『電鋸男』は非常に荒々しい気性をしとります。見た目の通り馬鹿みたいに力が強くって半端なくタフネスですぞ。 完全に理性がぶっ飛んでますんで巧みな戦略で攻めてくる、って事ァありませんが……兎に角、攻撃力が高い。殺傷力が高い。一撃が重い。チェーンソーの攻撃には流血とノックB、更に追加効果として弱点が伴う場合がありますぞ。 防御に自信のない方は庇って頂くなりヒット&アウェイするなり対策しといた方が良いでしょうな。 それと『電鋸男』はブレイク効果のある咆哮を上げたりしますぞ。ノーダメージですが、範囲は全体です。 ちなみに配下エリューションはいません。正にガチンコバトルですな! ……エネミーデータについてはこんなモンですな」 それじゃ次に場所について説明しますぞ、とメルクリィがモニターを操作すれば、『立ち入り禁止』の看板やテープで封鎖されたトンネルが画面上に展開された。 中々大きなトンネルだ。中も広く、長い。 そして目に付くのは、トンネル内に付けられた荒々しい傷跡。あのノーフェイスが力任せにやったのだろう、抉る様な切り口は天井にまで達していた。 「今回の戦場となるのは、この郊外の閉鎖されたトンネルですぞ。 閉鎖理由は『電鋸男』がトンネル内を滅茶苦茶にしたからです。老朽化とかではないんで、崩落の心配はありませんぞ。そこんとこはご安心を。 ですが、地面が抉れてる所でズッ転ける可能性があります。お気を付け下さいね。 時間帯は深夜、トンネル内は真っ暗闇の一寸先は闇……何の対策も取らないと何も出来ないまま挽き肉にされちゃいますぞー? 暗視とか暗視スコープとか発光とか懐中電灯とか……まぁその辺は皆々様にお任せ致しますぞ。それと一般人は来ません。 ――以上で説明はお終いです。よろしいですか?」 組んだ膝上に機械の手を重ね、メルクリィがリベリスタ達を見渡した。フォーチュナの肩にある輪状のアンテナが緩やかに回っている。 「皆々様の事なんて全然心配じゃないんだからねっ! と言えば嘘になります、正直。 ですが、私は皆々様を信頼しとります。皆々様はやればできる子って知ってます。 ……おっと、御託が長くなりましたな! まぁ要はアレです。応援しとりますぞ! お気を付けて行ってらっしゃいませ。フフフ。」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月13日(日)22:12 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●クラクラ暗闇 深い夜。トンネルの前。立ち入り禁止――ぽっかりと深い黒がこちらを覗いていた。 「どっかのゲームじゃ神様すら殺せるらしいけど、神様を喰べちゃうゲームもあるらしいし、最近は巷の神様も大したことないのかしら……っと、変なこと考えてる暇はないわね。余計な被害が出る前に片付けましょ」 乗り付けたバイクを傍ら、『後衛支援型のお姉さん』天ヶ瀬 セリカ(BNE003108)はトンネル周辺の地図から視線を上げて電気施設を探した。見付けた。上手くすれば明かりを復活させられるかもしれない、が。 「……駄目か」 少し無理そうだ。それに明かりを点けると人がやって来るかもしれない。 「物騒な相手ですがどこかの神のようにバラバラにされたくはないですね」 愛銃Angel Bulletの短い銃身で肩を緩く叩きながら『Star Raven』ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)は仲間達の先頭に立ち、暗視によってガランドウの闇を見澄ました。 ヒュォオ、トンネルから吹き抜けて来る冷たくも生温かい風。それはヴィンセントの黒翼を、『吶喊ハルバーダー』小崎・岬(BNE002119)のツーテールにした茶髪を靡かせた。 黒のハルバード、アンタレスを古いアスファルトに突く。じっとトンネルを見詰めて脳内で繰り返すのはイメージトレーニング、愛斧の振り方。行動の仕方。 「チェーンソーほど外連味に溢れた物もそうはないよねー。武器とエンジン、どっちも男の子の浪漫だからねー」 覚悟を決めたら行くとしよう。一歩踏み出し「今回は2連戦だしねー」なんてニヤリと。 「ノコギリナー……ナイフ状にできたりエンジンの部分速度にまわせればイイノニ……デキネーカナ?」 腰に取り付けた懐中電灯をパチンと点けた『音狐』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)はボンヤリとしたオッドアイで暗闇を見据えた。 まぁ、相手がエンジン部を速度に回そうがジェットを取り付けていようが。 「ノコヨリ私ノホウガ速い」 音狐に付いて来れるものか。躊躇い無く歩き出す。 「電鋸男……金曜の夜に現れるっていう覆面男じゃないんだよね~?」 と言うのはどうでもいいけれど。『超絶悪戯っ娘』白雪 陽菜(BNE002652)は重火砲8.8 cm FlaK 37を担ぎ直し、驚異的な集中によって射手としての感覚を研ぎ澄ます。 「郊外のトンネルって聞くとどうしてもTVの幽霊特番を思い出しちゃう……」 その目は闇を見抜く鷹の目、敵影の早期発見に備える。 続々と進んで行く仲間達。その背中、待ち受ける闇を『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)は静かに視界に収めていた。 低フェーズエリューションに潜む性質があって良かった、と思う。もしこの先に待ち受ける異形が街に出たら夥しい被害者を出す事など火を見るより明らかだ。 彼が罪を犯す前に止めなければ。 吹き抜けるのは不穏な風と冷たい空気。 「真夜中のトンネルって、ほんと不気味ね……」 みにくいアヒルの子の絵本を抱きしめて、取り付けたランプを頼りに『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(BNE002166)は周囲を用心深く見渡した。 一歩の毎に、嫌な空気。 敵が居るのもあるけれど、そうじゃないのも居そうな暗さ、不気味さ。 「ささっと倒れてもらって、ささっと帰りましょ……! べ、べつに怖いって訳じゃ……」 そこでハタと気が付く。仲間達が随分先に行ってしまっている事に。 「わわ、置いてかないで……!」 くわくわ、一生懸命追いついた。 リベリスタ達は闇の中。 ぽっかり黒い闇の中。 ――咆哮が響いた―― ●鋸ギリギリ 真っ先に敵影を捉えたのは陽菜であった。目配せで注意を促せば、誰もが戦闘体勢に入る。 「美しくない。全くもって美しくない。その姿も、その行動も。僕の趣味の真反対を行っていると言っても過言ではないよ?」 討伐依頼だから勝手に過去を想像してそれに同情してやる演技をしなくても良いのは楽だけれど。『大人な子供』リィン・インベルグ(BNE003115)は射手の感覚を研ぎ澄ませヘビーボウを構えた。 さっさと潰すに限る。この世界をより美しいものに近付ける為にも。 ギィイイイイ゛イ゛イ゛。 ガガガガガ。 駆動音。騒音。凶悪。 灯りに気付いた電鋸男がやって来る。 牙を剥き、血走る目で辺りを睥睨し、暴れる刃物を引き摺って。 暗闇の中、チェーンソーがトンネルを抉る火花が見える。 かくして現れた。 巨大な異形が、不気味な異形が。 「ひゃぁぁぁ……! で、でっかいぃ……!」 その物々しい雰囲気にあひるは思わず翼を縮込めて半歩後退する。 でも、こんな所で怖気づいちゃ駄目だ。位置する場所は一番後列、決して隠れている訳じゃない、本当なんだからっ。 (で、でも、大きすぎない……?) 見上げる電鋸男が腕を振り回せば容易く天井にまで達するだろう。その武器である両腕もまた巨大で、ノーフェイスの殺意と敵意が剥き出しに現れている様に感じられた。 「うわぁ……」 セリカは暗視ゴーグル越しの光景、そのベタさに呆れ返っている。だがボヤボヤしている暇は無い、注意深く辺りを見渡し足元の確認を行う。自分も仲間も転んでしまわぬように。 電鋸男が近付いてくる。ヴィンセントとキリエが光源確保の為に懐中電灯をそれの足元に転がした――瞬間、鼓膜を殴り付けられたかの様な衝撃がリベリスタ達を襲った。 「……――ッ!!」 凄まじい爆音、咆哮、威嚇、空気が戦慄く音の暴力。 それはリベリスタ達の強化術すらぶっ飛ばしてしまう。 ここまでの異形となっては死しても家族の元には帰れまい。 その手では抱きしめる事さえ出来ないのだから。 前衛に布陣しながらキリエは思う。向上する集中領域、回る脳味噌。脳髄。 その視界の両端、二つの影が飛び出した。翼を広げて上昇するヴィンセントと――目で追う事すら許さない、一条の残像。身体能力のギアを高めた音狐。 敵の大きさ、場の幅や高さを確認したリュミエールは壁や天井すら自らの足場に駆け抜ける。 だが電鋸男はそれを見逃さない。天井を掠りながら大きく振るわれたチェーンソー、それは彼女を真っ二つに―― 「遅ェーヨ」 残像。高速3次元戦闘。音狐は空間を支配する。 捕ったのは電鋸男の背後頭上、集中してから閃かせるのは刹那で無限の猛攻、瞬攻、音速の刃で電鋸男の動きを封じる。 その間に飛行で上から、と見せかけて黒翼を翻し、ヴィンセントは電鋸男の下横を飛び抜けた。 ――未だ鼓膜にチリチリと響くのは先の咆哮。咆吼なんてただの音、気を強く持って冷静になれば臆するに足りない。が、流石に迫力があった。 等、思いつつ。解除覚悟、咆哮誘発を狙って射手としての感覚を研ぎ澄ませる。敵の背中、3m未満の高度に下がりつつAngel Bulletを真っ直ぐ向ける。 やられっぱなしは面白くない。 「血だるまにしてやります」 トリガーを引く。放つ弾丸。貫通弾、走る血潮がヴィンセントの足元に散らばった。 血が出るのか疑問だったが電鋸男にも血はある様だ。 (名古屋さんを思い出します) 機械男の肩のアレ。なんて、再び愛銃を構えて。 「みんなに、あひるの翼を、おすそわけ……」 体内魔力を活性化させたあひるが皆へと翼の加護を授ける。小さな翼、あひると同じ碧の翼が皆の背に生えた。 これであの咆哮が行われるまで足場の心配は無い。 そうと決まれば攻めるのみ。リュミエールとヴィンセントが斬り込んで行ったのを見届け、岬とキリエが前に立つ。 「よーし、いっちょやるかー」 岬は全身に破壊的な闘気を漲らせ、リュミエールの速度とヴィンセントの弾丸に翻弄されている電鋸男を見澄ました――手にした相棒、アンタレスの紅睨と共に。 刹那、鋭く振るうのは漆黒の邪刃。黒の軌跡は真空刃を生み、貪欲な猛獣の如く躍り掛かる。喰らい付く。切り裂き、斬り裂き、血を啜る。 脳へ届いた痛みに電鋸男が理性の飛んだ目玉を岬達へと向けた。轟刃の一振りでリュミエール達を牽制すると、一歩。 不気味な声を上げながら、暴音を上げながら、狂気の刃を大きく振るった。 「ぐッ……!」 それは防御に身構えたキリエの体を容赦無く切り裂く。毟る。血。しかしキリエは倒れない。装備が厚いお陰だ――代わりに動きは遅くならざるを得ないが、その分戦況を冷静に分析出来る。 キリエの目に焦りは無い。不安は無い。 自分の役目は、サポート役として一手を確実に仲間に繋げる事。 「……どこに立っていても、する事自体はさして変わらないな」 フ、と口元に笑みを浮かべて敵の動きを鋭く読む。精度の高い予測の下に踏み出す、踏みこむ、突きたてるダガーの一撃は電鋸男の隙を完全に突いた。 「いたいの、いたいの……飛んでけ……!」 あひるの詠唱が清らかなる微風を生み出し、キリエの傷を癒した。 あひるの前方。並んだ三つの銃口、射手達の眼光。 「まさかのサジタリーズだね~」 それは8.8 cm FlaK 37。 「ちゃちゃっと片付けちゃいましょ」 それはライフル。 「やれやれ、見れば見るほど美しくない」 それはヘビーボウ。 撃つ。 狙い澄ました正確無比の弾丸達。それは差し詰め3$シュート。 それは的確に電鋸男の腕を穿った。 痛みに苦しむ呻き声、流れる血液、それでも――チェーンソーの轟きは、勢いは鈍くなる気配を見せない。成程フォーチュナの言っていた「とても力が強くタフ」というのは嘘ではないらしい。 だが、寧ろ狙い甲斐があるというものだ。射手達は眼光鋭く再び照準を合わせる。 最中も振り回される刃。幸い息のあった連携のお陰か攻撃をまともに食らった者はいない。だが、その恐ろしい一撃は掠めるだけでも激痛が走り、意識が遠のいた。 それでも、あひるの祈りが福音となりリベリスタ達を癒してゆく。消費した精神力はキリエが供給する。 射手達は電鋸男の腕を狙い討ち続け、高速3次元戦闘を繰り広げるリュミエールはソニックエッジを、岬は疾風居合い斬りを力の限り叩き込む。 戦線は健在。 健在、だった。 咆哮。血だらけの刃が唸り、 「―― !」 ソードエアリアルを放つべく飛び掛かったリュミエールに、Angel Bulletを構えるヴィンセントに、迫る。 しまった、回避を、いや間に合わない、防御を、あぁ高速回転している刃 が 目の 前に―― 無慈悲な轟閃は、 斬り千切る。 薙ぎ払う。 意識と肉ごと狩り獲って、二人を彼方へ吹っ飛ばした。 激しい流血、血飛沫、地面に叩きつけられて生温かい赤の海に沈む二人。 不味い。 キリエは己が機械の心臓が止まったかの様な心地がした。 あの二人をすぐ回復せねばならない事は明白。流れる血液は二人の体力をどんどん奪ってゆく。 だが、しかし。 あの二人の元へヒーラーが回復を施す為にはキリエかあひるが近寄らねばならない。吹っ飛ばされた二人の場所はあひる達の射程外。 では、近付く為には? ……電鋸男へ嫌でも接近せねばならない。二人が電鋸男の背後を取った事が徒になった。遥か後方へ吹っ飛ばされた事が、そして、この幅はあるとはいえ『筒状の地形』が。 不幸中の幸い――それは電鋸男が弱った者から叩き潰す様な理性を持ち合わせていなかった事か。 咆哮。地響きと駆動音を立てて迫り来る。咄嗟に岬とキリエがブロックの為に前へ出るも――薙ぎ払われる。壁に叩き付けられる。全身が軋む、血反吐を吐く。意識が、黒く赤く、白く。 かくして、電鋸男は後衛陣へ到達する。 「……!」 凍りつく三人の射手とヒーラーの表情。振り上げられる巨刃。 咄嗟にリィンが1$シュートを放った。が、それは振り下ろされる。 彼を叩き潰し、あひるの体を深く抉り裂く。 「うぅッ……!」 「皆下がって! 速く、速く速くッ!!」 牽制射撃しながらセリカが声を張り上げる。 「しっかりしてあひるっ……!」 陽菜は膝を突きかけたあひるに肩を貸し、急いで後方へと下がった。 暴力的な咆哮が全身を打つ。 もう一度振り上げられた刃――それには確かに罅が入っていた。 あと少し、でも、今はそれどころでは。あと少し、なのに。 セリカの眼前に振り上げられた刃が映った。 「…… あ」 刹那だった。 二条の弾丸が、振り下ろされる暴刃を完全に粉砕する。 立ち上る硝煙、Angel Bullet――フェイトを使ってヴィンセントが立ち上がった。 「バラバラになるのはてめーのほうですよ、っと」 血唾を吐き捨て不敵に笑う。 同じく、運命を消費してリィンも次の矢を構えた。 「こんなところでこんな相手にくたばるなんて、僕自身が許さない」 攻撃する。猛攻、次は反対の腕を貰おうか。 そして、軌跡の福音が鳴り響く。愛する仲間達の為に、彼女は歌う。 「すぐに出血も治すから…みんな、もうちょっと、頑張ってね……!」 あひるの祈りは傷を癒す。こんなところで倒れてる場合じゃない。 倒れる事なんて許さない。自分が、自分の背負うフェイトが。 セリカも陽菜も攻撃に加わる。キリエと岬も立ち上がる。 「かみは言っている、ここで死ぬ定めではないとー」 一回バラバラにされたからって執念深いよねー。なんて、岬は笑ってアンタレスを振り上げた。振るった。真空刃、それと同時にキリエの気糸が、4つの銃口が。 撃ち抜いた。 完全に、討ち砕いた。 ●シンシン深夜 「チェーンソー、モイデ持ッテ帰リテーンダガ」 「残念、僕らが砕いちゃったよ」 「ナンダッテェ……イテテ モット丁寧ニ運ビヤガレッテンダ」 「仰せの儘に」 重傷を負ったリュミエールに肩を貸し、トンネルから出つつリィンは苦笑を。 「よし、次はボスの758さんだねー。戦場の説明とか無かったけどきっとNAGOYAなんだろー」 元気いっぱいの岬は「首を洗って待っているがいいー」とアンタレスをズビシと彼方へ差し走り出す。 一方、トンネルの中ではあひるとキリエが物言わぬ骸と化した電鋸男の傍にいた。 「来世ではきっと、運命に愛されるように……。もう、血祭りはしないでね?」 きっと天国いけるように。あひるはしゃがんで手を合わせる。 「彼にはトンネルが自分を抑圧する何かに見えていたのだろうか?」 キリエは呟く。理性を失った彼が苦しんでいたように思えてならない。 (彼の死は家族にどの様に伝えられるだろう) そもそも、死んだ事すら伝えられないのかもしれない。 行方不明。永遠の失踪。そのまま月日が流れて、誰もが彼の事を忘れてしまうのだろうか。 そんな二人の背後に迫る、一つの胡乱な影。 (こんな何もない所に派遣されたとしても、アタシの悪戯心の火は消せないよ……) 恒例の悪戯タイム。クスクス、陽菜の黒い笑み。 真っ赤な塗料のカラーボールを自らの頭にぶつければ――『血祭り血みどろ』状態の完成! トントン、二人の肩を叩く。 振り返る二人。 そこには血みどろの少女―― 「 …… !」 「くわっ…… きゃああーーーー!!」 キリエは真っ青に、あひるはパニックに。 大成功♪陽菜のブイサインと笑顔が輝いた。 「……?」 トンネル内から響いてきた悲鳴に眉根を寄せ、暗視ゴーグルでそれを見たセリカはヤレヤレと息を吐く。 そのまま黒髪を靡かせ正面へ顔を戻した。もう一度、深く息を吐いて。 「ふぅ、ミッション完了っと。そろそろ本気で冷え込んでくる季節ねぇ」 冷たい空気。冬の気配。 早く帰ろう。 静かな夜風が吹き抜けた―― 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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