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祝福と浄化の門出をキミに

●非信仰主義の終着点
 壊れたシンボル、崩れた壁面。
 荒廃した園は因縁を産み、因縁は争いを生み、争いは全てを奪っていった。
 奪われた場には既に人影も、縁も、神もない。
 ――なれば、築け。
 喪失の地に花を。傷ついた世界に愛を。
 受け容れる準備を、其処に。
 世界は再生を始めている。子らは誕生を待っている。
 誓いを。愛を、ここに。

●誓っちまえよカップル
「――というわけで、ウェディングドレスとタキシードを着て愛を誓うだけの簡単なお仕事です」
「「「ウェディングプランナー乙」」」
 何だか荘厳な音楽と荒廃した教会のムービーが流れたと思ったら、途中から結婚式っぽいムービーが流れ、睦まじい仲の男女が新婦の前で、それ結婚式じゃねえか。
 総ツッコミを受けて尚、『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000201)の笑顔は崩れなかった。っていうか、その脇にあるドレスとタキシード何スか。あとその巻かれた絨毯っぽいやつ。

「これら三つは、全てアーティファクトです。総称『ピュリフィケイト・フィールズ』。タキシード、ドレス、ヴァージンロードのワンセットを同時に使用し、愛を語る事で半径1kmの空間の神秘による侵食の可能性を大きく減ずることができる、優れたものです……といっても、限度があるために今回の使用は特例、なのですが」
 そんなとてつもないアーティファクトがあるのなら、世界に使って回れよ。
 そのツッコミを吐きかけた一人は、特例の一言に喘ぐように言葉を飲み込んだ。
「何だよ、そんなもん持ちだしてまで解決する『特例』って」
「――『ガーデン』、と呼ばれた地をご存知の方は居らっしゃるでしょうか。居らっしゃらなくても問題ありませんが。まあ、簡単に言ってしまえば、一人のフィクサードが数年越しに実現したノーフェイスの楽園にして、増殖性革性現象の温床となった危急の地、とでも申しましょうか。今回はその地の浄化と、教会として再使用するに当たっての修繕作業の仕上げが目的です」
 やっと目的が出たと思ったら、目的地が目的地だった。切った張った殺しあった場を愛しあい睦み合う楽園に仕立て上げるとは、流石アーク、あざとい。

「という訳で、皆さんにはそれぞれの立場に合わせて行動することができます。
 一つは、『ピュリフィケイト・フィールズ』による浄化作業。まあ、睦み合ってくれれば問題ないです。
 二つ目、『ガーデン』の修復作業。壁面の修繕と花壇のベースは再生してありますから、花の種や球根、あとはオブジェクトの配置なんかを行なって頂ければ。
 あとは……不要でしょうが、調査をすることもできますし、誓いを聞き届ける神父の真似事もいいでしょう――但し、愛する二人を邪魔せぬよう。状況が成立しない限り、アーティファクトも効果を発揮しませんから」

「どんな顔して作業すればいいんだよ……」
「笑えば八方幸せかと」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年11月19日(土)23:41
『ガーデン』の最終話がこんなのとか、怒られる気しかしない。

●行動目的
・『ピュリフィケイト・フィールズ』による浄化、とは名ばかりのイチャつき
 タキシードとドレスは神秘の何やかんやで大体普通に着こなせます。
 結婚式を正規の手順で行おうとしなくても、睦み合ってくれればアーティファクトがやってくれます。順番守ってくださいね。

・『ガーデン』の修復作業に従事する
 基本的な損壊は大体修復されているので、花壇に花を植えたり補修したり、飽くまで『ガーデン』の復興を念頭に置いた行動をお願いします。

NG:『ピュリフィケイト・フィールズ』使用中のカップルの仲を壊すような行為、必要以上のカップルへの接触
 友人として会話に興じるには問題ありません。遠巻きから「ヒャッハー! リア充だー!」ごっこしても構いません。
 但し、明確な儀式妨害にあたる行為は全面禁止とします。

●イベントシナリオのルール
・参加費は50LPです。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・プレイング字数は200文字。リプレイでの登場は保証されません。
・獲得リソースはVery easy相当です。

 あいしあえー。
参加NPC
 


■メイン参加者 0人■
■サポート参加者 36人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
マグメイガス
アリス・ショコラ・ヴィクトリカ(BNE000128)
クロスイージス
ミルフィ・リア・ラヴィット(BNE000132)
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
ナイトクリーク
源 カイ(BNE000446)
ソードミラージュ
天月・光(BNE000490)
デュランダル
源兵島 こじり(BNE000630)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
プロアデプト
遠野 うさ子(BNE000863)
デュランダル
桜小路・静(BNE000915)
覇界闘士
宮藤・玲(BNE001008)
覇界闘士
レイ・マクガイア(BNE001078)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
プロアデプト
イスカリオテ・ディ・カリオストロ(BNE001224)
ソードミラージュ
ルア・ホワイト(BNE001372)
クロスイージス
アウラール・オーバル(BNE001406)
マグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
デュランダル
蘭・羽音(BNE001477)
スターサジタリー
八文字・スケキヨ(BNE001515)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
ナイトクリーク
シルキィ・スチーマー(BNE001706)
プロアデプト
讀鳴・凛麗(BNE002155)
スターサジタリー
立花・英美(BNE002207)
スターサジタリー
結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)
デュランダル
ジース・ホワイト(BNE002417)
スターサジタリー
ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
スターサジタリー
白雪 陽菜(BNE002652)
クリミナルスタア
烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)
ナイトクリーク
ジル・サニースカイ(BNE002960)
ホーリーメイガス
桃谷 七瀬(BNE003125)
プロアデプト
樹 都(BNE003151)

●閑かな世界に新たな祈りの入り口を

 割れ砕けたステンドグラス。一つと言わず砕かれた椅子。壁面を無数に貫いた石膏の槍の跡。修復されたとはいえ、それらの跡は実際に対峙した人間ならば一つ残らず覚えていて不思議ではない闘争の残滓。
 絶望があって争いがあって因縁があって決着を見た。朝陽が差し込むそこに足を踏み入れた天乃は、予想外の先客に僅かに首をかしげた。
「おはよう……早い、ね」
「おはよう。少しでも早く終わらせようと思ったら、いてもたってもいられなくなっちゃって」
 丁度、ひと通りの掃除を終わらせたばかりだった悠里が天乃へ笑顔を向ける。どれほど早く着いたのかはさておくとして、天乃はその光景に感じた違和感の正体に、遅まきながら気付くこととなった。
 くすみ、崩れ、存在感を希薄にしていたこの地に取り込まれる光が多いのも、床がそれを弾いて輝くのも、すべては彼の尽力による結果だったのだろう。そう思うと、少しだけ嬉しくもあり。
「おっはよー! ここはあたいに任せてもらおうかー!」
 背後から景気よく現れるシルキィに、驚きこそしないまでも不思議な感触を感じていたりもするのだった。

 修復の手順は、主に花壇の整備と内部への手入れに分けられる。
 整備に於いての内部の大幅な改装は、居並ぶ恋人達や参列者を大いに驚かせた――シルキィの全力演出も含め――が、それについては別に語ることにしよう。
 花壇の手入れに赴いた面々が、決して独り身の群体ではなかったことも、今回の一件では特筆すべき事項だろう。

「今のは……超幻影による未来の予想図ですか?」
「ああ。エイミーのアイデアを参考に考えてみたんだ。俺はハーブも入れたいと思ってるんだけど」
 アウラールと英美の二人は、花壇の修復に当たっていた。恋人同士になった二人ではあったが、改まって挙式の真似事に参加するのは恥じ入る部分があったのだろう。或いは、本番までとっておくことを約束し合ったのか。
(これが屋根を覆う頃には二人はいないだろうけど……傷つき迷う者を 俺達の代りに優しく迎え入れてくれますように)
 外縁への樹木が屋根を覆う幻影も交え、アウラールは熱を込めて修復案を語る。故郷と同じように、ここが人の集う場所であれと願う想いは、何より純粋だ。
「……この花園は私たちにとっての現実ではないけど、将来の……私たちの子孫が見るかもしれない光景なんですね」
 世界は未来へ繋がっている。絆は明日を紡いでいく。
 彼が彼女の春であり、互いがかけがえの無い存在であるのなら、何れ来る『本番』は、何より祝福されるものとなるだろう。
 アウラールの唇が、英美の髪へとそっと触れられる。唇を触れることは誓いであり、女性の髪はその生命そのものだ。その口づけの意味を皆まで 語ることの愚を犯すまでもなく、彼は誓いをそこに刻んだ。

「この辺なら、苗木を植えられそうですね」
「そうだね、ここなら桜が映えそうでいいと思うのだよ」
 ヴィンセントが土を掘り、うさ子が桜の苗木を植える。淡々と、しかし着実に行われる共同作業は、二人の雰囲気そのもののようにゆっくりと進む。
 彼らの持ち寄った種は、うさ子の誕生花であるマーガレットと、ヴィンセントの誕生花である日々草とクレオメ。
 マーガレットは「貞節」「誠実」「心に秘めた愛」、クレオメは「あなたの容姿に酔う」「想像したほど悪くない」、日々草は「楽しい思い出」「友情」「楽しい追憶」……互いの誕生花というか、何というかもうお互いの想いをぶちまけてるじゃないですか。可愛いなちくしょう。
「元気に育って、綺麗な花を見せるのだよ」
 種を植えるうさ子の動きは、こころなしか焦っているようにも見えた。二人で居ることで感じる緊張感が、心拍数を上げているのだろうというのは、明らかで。
 マーガレットを撒き終えた二人は、花壇の前で語り合う。ヴィンセントの翼の手入れをしながら、うさ子は彼の過去について聞いていく。ヴィンセントはと言えば、自らの旅の道程を語ることで、身の上話の隠れ蓑としていた。それでも、当人同士にとってはその語らいだけでもうれしいものだ。
 さらりと、晩秋の風が二人の間に吹き抜ける。寒さに耐えるような素振りをしつつ、うさ子はヴィンセントに抱きつくが、彼はそれに対し、無碍に振りほどいたり硬直したりはしない。寧ろ、受け容れる寛容さを見せていたりもする。
「春になったら、日々草とクレオメのためにもまた一緒に来たいのだよ」
「そう……ですね。それがいいかもしれません」

(はて、記憶を失う前の自分にはこーゆー事する様な相手とか居たのかなぁ……?)
 そんな空気はどこ吹く風と、球根を植えまくるジニーは自らの過去に思いを馳せる。既に欠けた過去はどうあったのか。未来はどうあるのか。無計画に植えていると自覚しながら、その実、植え方には隙やミスは無いようにも見える。彼女なりの根性というやつなのだろうか。
 まあでも、浄化組だけならまだしもそこらかしこらいちゃこらいちゃこらですよ。甘ったるい空気が充満ですよ。
「うう、空気が、胸焼けが。なんか最近胸焼けする率高いわよアタシ……」
 ……ご愁傷様でございます。
●恋人達に仮初の門出を
「これはその――結婚式……というものによく似ていて……」
(形だけとはいえ結婚式って……!)
 すっかり式場仕様になった教会内で、最初に儀式を行う役割を得たのは凛麗とカイの二人だった。しかし、何分この二人は純情さにかけては相当なものがある。おそらくは、カイの気遣い故のことだろうが……いいんだよ早いとか。マリッジマゼンタぐらいにすればいいんだよ。
(カイ様のタキシード姿……こういう機会でみると、何かより特別なものに感じられます)
「凛麗さん、失礼します」
「え、ひゃ……!」
 カイのタキシード姿に見とれていた凛麗は、小さな声に続いて起きた出来事に対し、頓狂な声を上げることしか出来なかった。
 浮いている。いや、抱え上げられたのか。彼女を抱え、しかし全く意に介さぬようにしっかりとした足取りでヴァージョンロードを歩くその姿は、思いの外逞しく。
「まだ時間は掛かりますが、ちゃんと迎えに行きますから、待ってて下さいね」
 その言葉に応じるように、抱きかかえられたまま凛麗はカイの首筋へ腕を伸ばし、頬へ唇を近づける。
「カイ様――貴方の事が大好きです」
 言葉が早いか、行為が早いか。初々しくも、二人はまた一歩、階段を登ったに違いない。

「ルア、綺麗だよ」
「ありがとう、ジース。幸せよ、私」
 純白のドレスを身に纏う姉を見て、ジースは深い感慨に浸っていた。
 奇しくも、この日は彼ら双子にとっては何より重要な日。目の前で幸せそうにしているルアが、運命の寵愛を受けた日の、ちょうど一年後なのだ。
 僅かに目を伏せたジースが彼女の手を取り、バージンロードを歩いていく。待っているのは、ルアの恋人であるスケキヨだ。
 守るために、彼女の隣に立ち続けてきた。しかし、今はその位置にスケキヨが居る。自分では支え切れない分を、きっと彼なら支えてくれるだろうと。感情ではなく理性で、彼は理解している。
「俺じゃ支えれない部分の方が今は多いからさ。だから、絶対、守ってやってほしい。……ルアを、よろしくお願いします」
「勿論。このガーデンやルアくんのように、強く優しく、もっと綺麗に。これからも素敵な思い出を、沢山、作ってみせるよ」
 白いタキシードに身を包んだスケキヨは、深々と頭を下げるジースへ、仮面の下から笑顔を向ける。決してからかうとか、はぐらかすとかそんなことではない。相手と向き合うことを、自分に課したが故の笑顔。それは、ジースとて気付いていたことだ。
「……今度、泣かせたらその仮面叩き割ってやるからな。覚悟しとけよ」
「フフフ、絶対にルアくんを泣かせられないね」
 照れ臭そうに言い放つジースに、スケキヨは応と口にした。踵を返し、周囲に紛れるジースを見て、
「幸せなの。スケキヨさんと一緒だから」
 幸せに涙を流すルアの瞼を拭って、抱き上げるとそのまま彼女へとキスを落とす。そのまま耳元で愛を囁くスケキヨの頬は、仮面の上からでもうっすらと染まる。気付くのは、ルアのみであろうか。
 そして、彼が用意したプレゼントは、ネモフィラを象ったイヤリング。そこに込められた想いは、互いを繋ぐに相応しいものだった、などと。今更言うまでもないだろう。

「またこの服か、こういうちゃんとしたの慣れてないから動きにくくてぎこちないんだぜ……って羽音」
「どうかな、俊介。俊介は、とても似合ってると思う、けど……」
「やっぱり綺麗だなっ!? 俺の自慢の花嫁!」
 俊介・羽音組は相変わらずのラブ度である。というか、この二人に限ったことではないが、どうやら今回、ドレスとタキシードを着たことのあるカップルが異様に多い。アトリエ・ステラは今日も順調に営業中です。
(本番じゃないのはわかってるけど、ニマニマしちゃう……♪)
 しかし、ただ着用するだけではなく実際に参列する仲間がいて、誓いを聞き届ける神父が居て、受け容れる世界があること。それは彼らにとっても緊張させる状況なのは間違いなかった。

「ここは聖域内ですからね。聖ユルシマスは全てを許すでしょう」
 ……まあほら、三高平で結婚式挙げるとか言い出すとこういうシスターとか祝ってくれるよって思えばいいんじゃないかな。レイさん全力だからつっこまないたげて。

「健やかなる時も、病める時も……あたしは、貴方の傍に。そして、永遠の愛を、誓います」
「永遠に永久に、羽音だけを愛そう」
 互いの想いを誓いに変えて、二人は唇を重ねる。
 愛おしさをそのままに抱き合った二人は、俊介を支点としてくるくると回る。レイさん、教会内でライスシャワーしないでください。何かオーラ。オーラしまって。
「俊介、屈んで?」
 回転が終わった後、羽音は囁くように彼に呼びかける。二人だけのサインを踏襲するように、二人は何度も口付けを繰り返す。誓いをより深くと言わんばかりに。

 結婚式は、なにも男女のカップルのみが行うというわけではない。同性同士であることが、恋路を阻むことなど、少なくとも三高平に於いては、性を同じくすることが恋愛を阻む理由になどなりはしないのだ。
(形式だけとはいえ、ミルフィと一緒に式が挙げられるなんて……)
(形式だけとは申せど、アリスお嬢様と式が挙げられるなんて……)
 こんな感じで。アリスとミルフィ、同じ家で長きにわたって共に暮らしてきた二人にとって、それは最早愛などという生温い言葉を超越しているのかもわからない。今回に於いては、ミルフィが何時ものツインテールを一本に纏め、凛々しく振る舞うことを自己に課している。この二人の立場であれば、妥当な組み合わせと言えなくもない。
 力強い足取りで、ミルフィがアリスの手を引いてヴァージンロードを歩んでいく。レイが無言で次のフラワーシャワーの準備を始める中、そんなものをお構いなしに二人は誓いの口付けを交わす。
「ミルフィ……泣いて……?」
 我知らず、涙を流すミルフィのそれを、アリスはそっと指で拭う。
 歴史がどうあれ、両者の立場は恋を育むにはあまりに隔絶している間柄だと言わなければならない。
 しかし、それを乗り越えて進む覚悟があるならば。愛を欠かさず育むと自らに誓うなら。
「ミルフィ、私の事……幸せにして下さいね」
「はい、アリスお嬢様……幸せに致しますわ」
 二人には、きっと幸せな未来が待っている。

「し、静さん……」
「玲、大丈夫か?」
 すっかり顔を紅潮させ、潤んだ瞳を向ける玲は、静にとって破壊力が如何ほどであったかなど考えるまでもない。
 純白の手袋に包まれて尚、玲の体温を伝えるその手のひらは静自身の緊張も引き写してか、僅かに震えているようにも感じられる。緊張か、或いは喜びに打ち震えているのかは分からない。どちらにせよ、この二人のやりとりは性別を超越した何かがありありと現れているようにも思われた。
「玲と出会って一年になるな玲の傍に居ると元気になれるよ。玲はオレの、たった一人のお姫様」
「世界に静さんが居て、俺が居て、本当に良かった」
 きらきらと光が舞う。花が舞う。……そうだよ、皆まで言うなよ悲しくなるから。
「悲しいときも嬉しい時も、二人で分かち合おう。ずっと一緒に居よう。愛してる」
「手を取り合って、どこまでも一緒に歩いて行こうね」
 そして、二人は誓いを交わす。
 抱きしめあい、指輪を買いに行く算段を楽しげに語る二人に、一体誰が割り込めようか。

「御免なさいね、付きあわせて。お父さん?」
(彼女の居ない俺が一足どころか五足くらい飛ばして新婦父親ですよ)
 三高平の守護神は鉄壁だった。何がってほら、経歴的な面で。どこがってほら、聞くなよ。隣に彼の相棒の彼女さんだよ。わかるだろ察せよ分かってくださいよ悲しいから。
「見て、あの子、ガチガチになってる」
 ヴァージンロードを快に引かれながら、こじりは恋人の元へと一歩ずつ進んでいく。何時だってそうだ。彼の少年は普段は饒舌なところがウリなのだが、何分本格的な状況というやつに至極弱い。擬似的とは言え、かなり正式な結婚式の体を取っている。そりゃ緊張もするだろう。
(どうしてこうなったかって? 聞くなよ、相棒の頼みとあらば仕方無い)
 こじりを無事、夏栖斗へと送り届けた快は、彼の胸元を小さく小突く。それが何を述べる合図かなど、今更語るまでもない。
「わかってんよ、超幸せにしてやんよ! てかおまえも彼女つくれよ!」
 ひどいなこのヴァンパイア。
「新田くんも、私みたいに可愛い彼女作りなさいよ?」
 すいません、カップル揃ってでした。

「こじりさん超可愛いね。ドレス似合ってるし、年齢大丈夫ならマジでお嫁さんにしたいくらい」
「御厨くんも、馬子にも衣装ね。何時もは寝んね臭い貴方が、今日はやけに凛々しく見えるわ」
 お互いのやりとりも、何時ものこと。そして、緊張のまま行動に移った夏栖斗がヴェールから手を滑らせるのも、何時ものことだ。
 ゆっくりと近付く唇は、静かに、そして長く結びついた後に互いの誓いを口にする。
「こじりさん、愛してる」
「I love you」
 短く。だが、再びの機を誓い合うと互いに声にせず。

「順番マダー?」
「慌てるな、急かさなくても大丈夫だ」
 カップルが次々と誓い合う現状に、そわそわと順番を待つ竜一。だが、ユーヌはと言えば至極落ち着いたものだ。竜一の手に手を絡め、落ち着かせるように握り締める。待つ間の緊張感も楽しんでいる分、彼女のほうが上手だということなのだろう。
「竜一はよく似合ってるな、格好いいぞ?」
「ウェディングユーヌたんこそ、素敵だ」
 白いタキシードとドレスに身を包む二人は、すっかり二人の世界に居る。でも何だろう、ほのかに香るこの残念臭。気のせいだね、分かってるよ。
 そして、神父役は都にバトンタッチ。手に持つそれが聖書ではなく自らの記述の書であることは、恋人達にとっては大した問題になならないだろう。っていうか、問題にすらなっていない。
「死が2人を分かつまでか、竜一が私を見限るまで共に歩もう」
「死も、決して別れじゃない。俺は死んでもユーヌたんと一緒だよ!」

「……と、竜一とユーヌは永遠ともいえる誓いをかわし。両者の唇はしっかりと結ばれたのであった。その吐息も、近いの指輪も、二人を繋ぐものとなるだろう」
 記述師、さすがの音読っぷりである。だが相手が悪い。いちゃつくなんて朝飯前の二人には、恥じ入るだなんてとんでもない。

 ところで。
 竜一の妹・虎美が竜一に懸想しているのはよく知られた話である。というか、割と周知の事実であり、じゃあ何で彼女が祝福の席に居ないの? って、当然至極に二人を認めがたいからである。入り口の影から、戸枠が軋むほどの握力で握り締める拳と婚姻届は、彼女の覚悟と勢いの証だろう。すげぇ、目に篭った気合が狂気判定でマッハだ。
 やがて、教会から出てきたユーヌがブーケを投げる。狙いは一人、快に向けてだ。彼も、周囲も、自然と受け止める体制に入っていた、筈なのだが……

「そのブーケは私のものだぁぁぁぁァ!!」
「シュゴシンッ!?(断末魔」
 虎美、全力のインタラプト。
 竜一に向けて指鉄砲……はいいから、ちゃんと謝りなさい。

「三高平市一の悪戯なお嬢様に、心からの祝福を」
「でも、こんな素敵なヴェールまで用意してくれるなんて、やっぱり優希って優しいよね~」
 陽菜に向け、白薔薇のレースを送る優希の表情は固い。仏頂面を装っているのだろうが、逆にその緊張した面持ちが、彼の今の心境を写しているようでもあり、興味深い。
 都の前に立った二人は、キスを交わすと思われたところで、ヴェールでその場面を隠す。優希は、周囲から顔を隠したままに、静かに陽菜に向けて言葉を紡ぐ。
「俺はまだ白雪のことを良く知らない。だから今は友人として、白雪の幸せを願う。……これは偽りの無い、本心だ」
 そう言って、額に口付けを落とす優希だったが、陽菜とて一筋縄で行く少女ではない。僅かな隙をついて、優希の頬へと口付けを向けた。驚いたように顔を引いた彼に、陽菜は告げる。
「友達から……ねぇ。うん、いいよ! 優希にも他に好きな人が出来るかもしれないもんね~。もしそうなってもアタシは優希一筋で行くけどぉ」
 悪戯っぽく笑う彼女に、顔を真っ赤にしつつ引っ張っていく優希。そんな二人の光景を記述する都の目がどんなものだったか……は、想像にお任せしよう。

「……綺麗だ、とても」
「拓真さんこそ、とても似合っていらっしゃいます」
 悠月と拓真の二人は、以前『ガーデン』での戦いに参じた者たちである。こと、悠月にとって一連の事件はその全てを自らの経験として収めたものであり、そこに至る想いは感慨深いものがあるだろう。
 互いに恥じ入りつつ、歩き出そうとする二人の胸元には、七瀬の用意した花一輪。すべてのカップルにそれぞれ趣の異なる花を用意している辺りは、流石といっていいのだろう。
 そして、二人を迎え入れるのは、二人の共通の知人であり盟主でもあるイスカリオテ。神秘探求を第一義とする彼にとって、この機会はまたとない探求の機であると同時に、他者を祝福するという奇異な機会でもあると言っていい。
「病める時も健やかなる時も、喜べる時も悲しめるの時も、富める時も貧しい時もこれを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「俺、新城拓真は……風宮悠月と共に、歩んで行く事を誓います」
「……私、風宮悠月は……新城拓真と共に在る事を誓います」
「ならば宜しい。己が良心と最も誇る物にその誓いを刻みなさい。今この瞬間の真実を、私が記し私が許そう。かくあれかし」
 イスカリオテの穏やかな確認に、互いの緊張を乗せた誓いが応じる。満足気に頷いたイスカリオテの『かくあれかし』は、彼らにとって大きな意味を持つことだろう。
「悠月、君を……愛している。この世界で、誰よりも」
「私も……あなたを愛しています、拓真さん」
 互いの言葉に篭る間は、この機への喜びか。静かに近付く二人の口付けを祝福するように、天井近くから七瀬の散らす花が舞い、いつの間にやら設置された祝砲が音を立てて祝福する。
 二人の願いは、確かに浄化を確約する神秘の一滴となって地に満ちたことだろう。

●祝福と未来への祈りをアナタと

「結婚するとかは想像つかないけど、みんなが喜んでるを見るのはいいなぁ」
 祝砲の引き金を引きながら、光は祝福を受けるカップル達を桐と共に眺めていた。ガーデンの修復作業もさることながら、再利用可能な祝福をいくつも設置していったのは、単に二人の功績である。
 祝福では腹は満たされぬとばかりに桐の作ってきた弁当を頬張る光は、非常に幸せそうでもあり。
 桐は、ウェディングドレスを眺めながらぼんやりと想いを馳せていた。
「まさか桐ぽん! ウェディングドレスを着たいとかいわないよね?」
「ウェディングドレスが着たいとか流石に思いませんよ? ただ、何時かは私達も誰かと式をあげるのかな、と」
 そんな桐に敏感に反応した光は、ジト目で彼の脇をつつくが、さしもの桐でもそんな感慨はなかったようで一安心である。
「まっ、桐ぽんのタキシードっていうのも想像付かないけどね」
 ……そこは、言わないお約束でもなかろうか。二人の仲を象徴する出来事であるといえば、そうなのだろう、きっと。

「やーっと、壁画が描き終わりましたよー!」
 歓喜の余り声を張り上げた鳥頭森、その正面にでかでかと描かれた壁画は……誰あろう桃子・エインズワース。
「聖母の微笑、菩薩の慈悲深さ、女神の美しさ……! さぁ、皆さん桃子様を崇めよー、奉れー、なのですよ!」
 当社比千パーセント、ここまでくると詐欺とかどうでもよく一つの意地ですらあるだろう。っていうか、翼の影に微妙に梅子も混じってる辺り芸が細かい。幾ら何だって、これはもう何ていうか根性の一品だろう。誰も真似しねえよこれ。
 彼の足元に並ぶ折れた筆の数が、その根性の有り様をありありと写していた……のかなあコレ。

 儀式が終わり、一人また一人とガーデンから去っていく。
 しかし、天乃は祭壇へ向け、静かに歩を進めていった。

 そこは、嘗て激戦を交わした場所。そこは、彼女の血を沸き立たせた敵が革醒した場所。
 彼女の短い黙祷は、誰も聞き入れず、誰も知らぬままに完遂された。
 残された『女神様』の示した誓いの文字は、修復されて跡形もない。ただ、そこは新たな祝福を受け容れる、世界の器と相成った。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 人数少なかったはずなんですよ。砂糖入れも多めに用意した筈なんですよ。
 ドラム缶2缶で足りませんでした。
 いや、マジでもうちょっと描写したかったけどこれ以上は何ていうか、砂糖ぱねぇ。