●燻る野望 シアワセ塾。 大量の信者を抱える異能力者の教団。 のし上がれるニオイがした。俺の本能が告げた――『これはチャンスだ』と。 で、入ってみた。俺以外の奴は教祖に盲信的でドン引きしたのは内緒だが、兎にも角にも俺の読みは当たっていた。 それは俺が副支部長に任命された頃の話だ。あ、言っとくが実力で副支部長の席を掴んだんだからな? 俺はこう見えて真面目な男なのだ。 おっと……話を戻そう。俺がシアワセ塾の副支部長になって間もなく、俺はトンデモねぇ情報を知っちまった。 なんでも、スゲー奴がバックに付いたとか。 そのスゲー奴は後宮・シンヤとかいう奴だ。しかも『あの』ジャック・ザ・リッパーともコネがあるらしい。 余談だが俺は『ズバッとモーニング』をリアルタイムで見てそのグロさに吐いた。一週間以上は肉を食べられなかったのはここだけの話だ。 ジャック怖ぇ。でも、上手く取り入ったら彼の言っていた『バロックナイツ』とやらにも入れるかもしれん。 これはチャンスだ……俺は心が震えるのを感じた。 その矢先だった。 アークのリベリスタ共にシアワセ塾をぶっ壊された。 知らせを聞いた俺はすぐさまドロンしたから面倒事にゃ巻き込まれなかったが……全部パーになっちまった。振り出しに戻るとは正にこの事だ。 チクショウ、アークめ。俺の努力を返せ。 チクショウめ。偉そうにしてられんのも今の内だぞ。 そして俺は作戦を練った――アークをギャフンと言わせる為の。 すぐ思い付いた。そうだ、リベリスタになろう。 そんでアークに潜入してやろう。 そして……カレイド・システムをこのダイナマイトでぶっ飛ばしてやるぜ!! 今に見てろ! アークめ! ……上手くいったら故郷に残してきた彼女と結婚しよう! ●トンデモ 「……という……、なんとまぁ、コイツはクセェーッ死亡フラグ臭がプンプンするぜと言うか三年後には確実に黒歴史ってそうと言うか……まぁそんな感じなのですよ皆々様」 そう言って事務椅子をくるんと回してリベリスタ達へ振り返ったのは『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)。 その表情はなんだか苦笑というか哀れみというか……兎に角そんなモノが浮かんでいた。 「先日、千堂様情報でカレイド・システムをフル活用してシンヤ様の勢力をブッ叩いたのは覚えてますな? その勢力の一つに『シアワセ塾』という大規模なフィクサード教団がありまして……無事、教祖や上層部の方々をやっつけた事により『シアワセ塾』は瓦解、無力化しました」 詳しくはそこに報告書のコピーがありますんで、とメルクリィは卓上の書類を視線で示し、それから説明に戻る。 「ですが……たった一人、たった一人だけ未だに活動する気満々なんですよね。 それが彼、フィクサードのモリヅカ様です。 さっきご覧頂いた、私が視たモノの通りモリヅカ様は元・シアワセ塾の副支部長です。信仰心のヘッタクレも無かったようですが。 彼、中々頭が良いというかカンが良いと言うか、小狡いと言うか……でもなんだか残念属性さんらしいですぞ。残念無念また来年ですな。 モリヅカ様はアークに喧嘩売ろうとしてます。ので、彼をとっちめてきて下さい。それが今回の任務ですぞ」 そう言うメルクリィの背後にあるモニターにはモリヅカに関する画像が沢山展開されていた。 モリヅカはまだ若いらしい。外見こそありきたりな……いや、良く見たら結構恵まれたモノだが、その目は野望にギラついているのが確かに見受けられた。 そしてその側には軽トラックがある。おそらくこの荷台にダイナマイトやらを積んでいるのだろう。 「モリヅカ様をどうするかは皆々様に任せます。軽くボコッてからネチッと説教するも良し、一芝居打って善に目覚めさせるも良し、ひたすらネチネチネチネチ説教しまくるも良し……もう二度と立ち上がれぬよう物理的な意味で足を千切るのも、文字通り殺すのも良しです。 それじゃモリヅカ様について色々説明しますね、耳かっぽじってお聴き下さい」 一言前の目が笑っていない感じとは一転、いつもの調子で機械男は説明を続ける。 「彼、ハッキリ言っちゃって弱いです! ザコザコです! ジーニアス×デュランダルで武器はハルバードなんですが、スキルはオーララッシュしか使えません。身体能力も残念です。 本人もその辺は自覚してるみたいなので、積極的に戦おうとはしないでしょーな。多分、バトルふっかけられたら十中八九逃げます。全力で逃げます。非戦スキル生存執着です。 場所はこの閉鎖されたパーキングエリア、時間帯は昼です。 この軽トラックには……箱に積めたダイナマイトとか重火器とか色々あるみたいですぞ。 一般人が通りかかるかもしれませんので、その辺も宜しく頼みますぞー」 以上で説明はお終いです。フォーチュナがニッコリと凶悪な顔面を微笑ませた。 「それでは皆々様、お気を付けていってらっしゃい! 私はいつもリベリスタの皆々様を応援しとりますぞ。フフフ。」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月11日(金)23:13 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●圧倒的な奇襲を前にモリヅカの脳は空転した。全てが彼にはどうにもできないところで推移していた と、『世界を記述するもの』樹 都(BNE003151)は記した。 ●道路は続くよ何処までも 人気の無い道。通り過ぎて行く景色。車に揺られて。 「はぁ、何だか良く分かりませんがどうにも懲りない相手の様ですね。 本当ならアークに対して逆恨み、害を加えようとした時点で始末したいところですが……」 大型ライフル銃パイルシューターの点検を行いながら『ガンランナー』リーゼロット・グランシール(BNE001266)が呆れた様に息を吐く。 なんでも相手には待っている人が居るらしい。もう一度溜息を吐く。 「……シメ上げるくらいに留めておきましょう」 構えるパイルシューター。準備は万端。 「せっかくカノジョいるのに、宗教の幹部とか爆発物使って復讐とかそんなことしてどーするんですかね。 カノジョのお父さんに紹介される時、職業なんて言うつもりなんだろう」 バックミラー越しに仲間を見渡し、4WDを運転する『蒼輝翠月』石 瑛(BNE002528)が何とはなしに口を開く。直後「間違いなくお父さんにぶっとばされますよね」と目元を笑ませた。 助手席では『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)がとある人物へ電話をかけている。 「警察の『方から』来ました。モリヅカさんのことで少しお話を……」 そんな彼女の手には数枚の写真。それはモリヅカの彼女であり、電話の相手。写真の人物をじっくり目に焼き付けながら――会話、その様を『わすれ路の鞘』志筑・沙耶(BNE003128)はもう一台の4WDから眺めていた。 「リア充は黙って幸せになってれば良いんです」 ボンヤリ遠方を眺めながら、吐息の様に。 一方の『花護竜』ジース・ホワイト(BNE002417)は『誇り』のハルバードGazaniaを収めたAFをきつく握り締める。 「いいぜ! モリヅカ! 同じデュランダルとして、ハルバード使いとして、その曲がった根性叩き直してやる!!」 士気は高い。譲れない。 「野心溢れる若者……度胸も十二分、良いではないですか」 運転手の『静かなる鉄腕』鬼ヶ島 正道(BNE000681)は緩やかに目を細めた――その眼鏡に映るのは、今や廃墟となったパーキングエリア。ポツンと見える軽トラック。 「彼はほんの少し道を誤っただけです。それに彼はまだ若い。幾らでもやり直せる筈です。是非とも彼の更正の力になりたいものですな」 なんて、憂いと僅かな涙を浮かべるその表情その声は…… 完璧な偽り、真っ赤な嘘、欺く仮面だけれども。 ●野望の人 モリヅカは三高平の地図を片手に作戦を練っていた。 最中、ポケットで鳴るのは携帯電話。開けば知らない電話番号。イタ電?切ろうかと思い、少しだけ考えて……通話ボタンを押した。 「もしもし?」 『私は今、あなたの故郷に向かっています。大切な方がいらっしゃるそうですからね。これがどういう意味かあなたにはお分かりになりますね? さて、あなたは意地を取るのか、想いを取るのか、記述させていただきましょう』 ブツン。 ツー、ツー。 「……? 何じゃこりゃ」 趣味の悪いイタ電だ。暇な奴もいるもんだ。息を吐き、携帯電話を閉じかけたところで――モリヅカの耳にエンジン音が届く。車?一般人?何だってこんな所に。折角誰も来ない様な所を選んだのに……面倒臭げに溜息、ゆるゆると発進する軽トラ。 と、再び電話が鳴る。この着信音は、愛する彼女からだ。嫌でも上がるテンション。 「もしもしミホ~? どーした♪」 『あっモリヅカ君!? さっき警察? とかから電話がかかってきて……』 「ハァ!? 警察ゥ!?」 何てこった。嫌でも下がるテンション。そして、お陰で気が付かなかった――タイヤが激しくアスファルトを擦る音、顔を上げれば目の前に激しくドリフトしながら4WD、ハンドルを切る瑛、開いている後部座席ドア、に、並ぶリベリスタ達が―― 「やあはじめましてモリヅカ君! さて早速だけど 愛 し 合 お う か」 ワァイまだこの組織残党残ってたんですね!お兄さんすっごく嬉しい☆『素敵な夢を見ましょう』ナハト・オルクス(BNE000031)の表情はイキイキと輝いていた。ついでに詠唱で現れた魔法陣も輝いて、その不健康な肌をいっそう蒼白く輝かせて。 そして、リーゼロットもまたパイルシューターの銃口を真っ直ぐ向けていた。 「まずは脚を潰し……と」 この任務の為に用意した兵器。存分に味わうが良い。 狙うはタイヤ。 魔矢が、杭が、一直線に放たれる。 「うぉあッ!?」 『ちょっと、モリヅカ君!?』 衝撃、揺れる車体、急停止、何とか持ち堪えて目を開ければ、 大きな掌。 鉄の掌。 正道の拳。 フロントガラスを易々と突き破る。 「ひい!?」 ガシャンッと派手な音。咄嗟に軽トラックから飛び出した彼を追わず、正道の鉄腕はハンドルをぐしゃりと握り潰した。 「う、うわ、うわッ……!?」 いきなりの出来事についてこない頭。どうしたの、とひっきりなしに彼女の声。見渡す360度にはリベリスタ達が立ち並び、更にその向こう側――パーキングエリアの出入り口は正道と計都が設置した車によって塞がれている。 因みにもっと向こう側には瑛が置いた赤いコーンと黄黒ロープによる工事中アピール+強結界、リーゼロットの結界。出る者も来る者も許さない。 『――ねぇ、ちょっと、凄い音したけど大丈夫なの!?』 「え、いや、その」 狼狽するモリヅカ。 そこへ、駆け寄る人影一つ。 それは、モリヅカの彼女その人。 「え ミホ お前 何でここに」 『何? さ、さっきから分かんないよ!』 「モリヅカくーん!」 「ゴメン後で掛け直すッ!」 声を聞いた瞬間にモリヅカは通話を終了してハルバードを構えた。これは別人、お前は誰だ。 鋭い睥睨に彼女の動きが止まる。顔が変わる。顔を戻した計都が不敵に笑う。 「私達はアークのリベリスタ――君が壊そうとしている代物は自衛も万全のようです。積み荷を渡して投降してくれませんか?」 一歩出たのは沙耶、柔和な表情とは裏腹にコンセントレーションにより高められた脳髄信号はいつでも戦闘を開始できる状態にあった。 「……ケッ、カレイドシステムで全部お見通しですってか。って事ァさっきのイタ電もてめーらだな。 ったく、趣味悪い事――ってオォイてめぇなに勝手に人の荷物を!!」 積み荷を渡して、と諭す沙耶を余所にせっせせっせと軽トラの物騒な積荷を遠くへ運び出して行く正道。 止めようにも睨みを利かせるリベリスタ達の所為で行動できない――その間にも正道はせっせせっせと。モリヅカが何を言おうが無言でひたすら運び出して行く。 「こ、この外道! 八人で寄ってたかっ おぶふっ」 しなるウィップがフィクサードの頬を叩いて黙らせる。カツンカツン、ヒールを鳴らして元フィクサードが歩み寄る。 「悪い子にはお仕置きするのがアークです☆ ……ところであの覆面もうかぶらないの?」 例の如くあれらしい能力なのはまあいいとして。ニッコリ笑うナハト。 交渉などで組み伏せる事は望んでおりません。 立ち止まる足。笑う金眼。ウィップをぽんぽんと手の中で弄ぶ。 ホーリーメイガスは後衛?知るか。レベルを上げて物理で以下略……物理? だと、思う。うん。 「ヘッ、積荷に一応あるが、被りてーならどうぞ勝手に被りやが」 べしーん。 「ごはァ!」 「ねぇ。君はどこまで耐えてくれるのかしら、かしら?」 びしーん。 「ぎにゃー!!」 「愛し合わなければ何も分からない。何も。何も」 ばしこーん。 「やめてぇえええ」 容赦無しのナハトの鞭捌きに後退するモリヅカ。それを素早く雁字搦めにしたのは瑛の呪印封縛であった。 「……!」 モリヅカの視界に映るのは守護結界を展開すべく印を切る瑛、いつでも杭を放てるようトリガーに指を乗せたリーゼロットの鋭い眼光、そして――溢れ出る戦のオーラを漲らせ、Gazaniaを構えたジースであった。 「さー、フルボッコの時間だ!」 計都が悪びれない笑顔を浮かべる。 あぁ俺死んだな と、モリヅカは思った。 踏みこんでくるジースをボンヤリ眺めながら。 「ハルバードはなぁ、こうやって使うんだよ! ハルバードはなぁ、相手や状況によって使い方を変えるもんなんだよ!!」 唸る花護竜の刃、フィクサードの手から弾かれる刃。 「今のお前は、本当に大切なものを見失ってる!」 突き付けられる刃。遠くに落ちた刃。 「お前が死んだら、お前を大切だと思ってくれてる人はどうなるんだよ!」 シアワセ塾なんて、お前にとってちっぽけだったんだろ!? そんな所の地位や俺らへの嫌がらせで、お前は死ぬかもしれないんだぞ!? そんな下らない事の為に、大切な人を悲しませるなよ!!」 「うるっせぇな! 下らない? 意味が無い? 知るか! 大切な人だからこそ俺は馬鹿なぐらい恰好付けてぇ! 浪漫に生きて何が悪い!!」 真っ直ぐぶつけられたからこそ、真っ直ぐぶつけ返す。目に怒気を宿らせて呪印を振り解き、そのまま跳び下がろうとする――その脚に絡み付いたナハトの鞭で転倒してしまう。 「おいクソリア充。名声欲しいならまず一人で動くな。どんな悪党にも手下は存在するわ」 軋る鞭と、活性化する体内魔力。 「……ま。火傷ぐらいは覚悟なさいよ。『シアワセ』になんてしてやらなァい」 たっぷりの愛。受け取って。 らぁぶ♥ ●5分後 ナハトの鞭と神気閃光で文字通りのフルボッコ、哀れモリヅカ戦意喪失。 並ぶ八人の前で正座。 「カノジョってどんな人? ごはん作ってもらったりするの?」 瑛の言葉に鼻血を拭い、「とても可愛くて良い人です」と小さく小さくモリヅカは答える。 「いいねーラブラブですね! 結婚考えたりしてないんですか?」 「一応……考えてます」 「へぇ! いいねー。でも、結婚考えてるならやっぱり、怪しい組織で成り上がったり、自分の強さを世間に認めさせてもカノジョは喜びませんよ?」 「……。」 「第一そんなに強くないし」 「スイマセン……」 しょげ込むモリヅカ。その背中にポンと、優しく手を置き瑛は続ける。 「女は安定感を求めるものです。カノジョを幸せにできるのは世界であなただけなんだから。 堅気の仕事見つけて、毎日地道に働いて頑張ってみたらどうですか?」 なーんて。まるで人情刑事が犯人説得してるみたいだけれど。 フィクサードが涙ぐむ。肩を震わせる。瑛はその背を優しくぽんぽんと叩いてあげる。これで色々あきらめてくれるといいんだけれど。 「ミホさんは、きっとそんなこと望んでないッスよ モリヅカさんと二人で、幸せに暮らしたい。ただ、それだけが彼女の望みッス……」 彼を覗きこむ計都が優しく諭す。 でも、と笑顔が、ちょっぴり引き攣って。 「ミホさんは可愛くって良い人なんだー。へー。結婚かー。そんなにラブラブなんだー。へー。 ……海より広いあたしの心も我慢の限界ッス」 掴む胸倉。右ストレート。 「あたしの拳は、正義の鉄槌だ! リア充爆発しろヒャッハー!!」 恐るべしリア充。非暴力主義者を暴君に変貌させた。 「がっでむ! がっでむ!」 「少し向こうで深呼吸しに行きましょうか」 リーゼロットに引き摺られ、涙目の計都さん御退場。 また痣が増えたモリヅカに溜息を吐き、ジースはその頭に拳を緩くぶつけた。 「バカやろう。……自分の命も、大切な人の事も考えろよっ。大切な人が居るなら、側で守ってやれよ。 その為には安易に死地に赴く様な真似すんじゃねぇよ、バカ!」 「バカって言った奴がバ――」 カッ! 「ああっ的が少ないっ」 「おぶっ」 ナハトの容赦無し神気閃光。不殺効果が無かったら多分死んでた、とモリヅカは思った。苦笑するジースと、微笑むナハト。 沙耶はヤレヤレと肩を竦めてからモリヅカへ向き直った。 「想い合う相手が居るなら、その人と幸せになる努力をすべき……って、それはもうやってますよね」 苦笑を挟み、正座し直した彼へ続ける。 「しかし残念ながら、向上心ばかりで方向性を見失っているように見受けられます。 君が目指していた場所、そこは彼女が生きられる世界でしたか?」 モリヅカは答えない。沙耶は続ける。 「君は挫折者です。けれど見方を変えれば、リスク無しに柵を一掃できた強運の持ち主とも言えます。 いっそ方便を真にしては? リベリスタが増える。誰かの大切な人を護る力がまた強まるという事。大歓迎です。 但しどんな夢も欲望も、大切な人に寄り添う時間と比べたら取るに足りません。どうぞお二人の為の選択を」 「……。俺にリベリスタとか、正義の味方だとかは、向いてねーよ」 溜息の如く。 そう、答えたモリヅカの 視界一杯に、正道の鉄拳。 殴り飛ばす。見事な軌跡。 「嗚呼……嗚呼ッ……! 分かっております、自分には――嗚呼、分かっておりますとも!」 ぶわぁ、流れる涙。 ぎりぃ、握り締める拳。 「『ズバッとモーニング』を見て貴方は引いてしまったでしょう……そう、その心は既に彼に対する憤りが芽生えているはずです。 ――そう、悪に対する憤り、それこそが正義ッ! 彼女と歩むべきこの素晴らしい世界にあのような輩は不要ッ!!」 目を白黒させる彼へ、あふるる熱い涙をそのままに腕を広げ、一歩。 「自分には分かっております。貴方は心の奥底では既に取るべき道を理解なされている……しかし決断が出来ない。 迷いもあれば不安もあるでしょう。受けて止めて差し上げましょうッ。さあ、来なさい……!」 一歩。更に一歩。 モリヅカもその分下がる。青い顔で。 アレ。鬼ヶ島さんそんなキャラでしたか。 ツッコミは無視。突っ走る鉄腕漢。目下ペルソナ発動中。全て嘘偽りだけれども。 「さぁ……さぁッ!!」 「ぎゃあああ! 来ぅるぅなァアアア」 走り出すモリヅカ。走り出す正道。走り出すナハト。 「さあ選びなさい。蚕として煮られる。羽化してアークの僕になる。または運良く逃げおおせるか!」 デッドオアアライブ。 鉄腕を唸らせ。鞭を振るって。 ガシャーンガシューン。 びしーんばしーん。 ヘルオアヘブン。 パーキングエリアに、フィクサードの悲鳴が延々と木霊した……。 ●×日後 それから、『フィクサードモリヅカ』の名を聴いた者はいない。 「俺と結婚して下さい!」 「……喜んで!」 幸せな夫婦が出来た事は――また、別のお話。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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