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逃れられない鋼の罠

●闇に浮かぶ悪魔の瞳
「あー、もう。何でこんなに仕事あるのよ」
 木野下愛は20代半ばのOL。仕事にそれなりのやり甲斐を覚えてきた、そんな女性だ。だが、思わぬハプニングで大幅な残業を強いられれば、愚痴の1つも出てこようというものだ。
 何とかかんとか仕事を終わらせ、今は帰り道。終電にはまだ時間があるものの、気が急いて、ついつい近道を選んでしまう。
「あ、お母さんからメール着てるよ。メールなんか確認する暇無かったもんなぁ」
 実家で両親と暮らす彼女は、毎日母親がご飯を作ってくれている。今日は帰りが遅くなったので、晩ご飯がいるのか確認のメールだ。最近使えるようになった顔文字を使ったメールが微笑ましい。
「どうしよっかなぁ。でも、やっぱり家で食べたいかな」
 愛がメールを返すと、すぐに返事があった。ひょっとしたら、返事が来るのを待っていたのかもしれない。中には最近この近辺で起こっている失踪事件のことが触れられている。
「まったく……心配性なんだから」
 愛は苦笑を浮かべて軽い返事を返し、携帯電話を仕舞おうと時だった。唐突に彼女の足に何かが引っかかり、その拍子に携帯電話を落としてしまう。
「イタ!? 何よ、これ! ……え?」
 愛の足元には糸が張り巡らされていた。それも不気味に粘つくため、彼女の不快感を煽る。
 そして、愛が固まってしまったのは、その不気味な糸が原因では無い。闇の中に不気味に光る8つの目が浮かんでいたのだ。鉄でその身体を覆ったそれは、ゆっくりと彼女に近づいてくる。その姿はさしずめ機械で作った蜘蛛と言った所か。あるいは古いSFに出てくる宇宙人の兵器か。
「ひっ」
 本能的な恐怖を感じて愛は逃げようとする。だが、足がすくんでしまい、逃げることは叶わない。
 そんな愛を、機械仕掛けの蜘蛛は顎を大きく開けて、悠々と飲み込もうとする。
 蜘蛛の口の中の漆黒の闇が、愛が最後に見た光景となった。
 その惨劇の横で、愛の落とした携帯電話はメールの着信を知らせていた。

●リベリスタ、出動せよ!
「今回お願いするのは、エリューションビーストの討伐よ」
 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は単刀直入に告げた。その口調から感情を汲み取ることは難しいが、彼女を知るものならエリューションビーストへの怒りと被害者に対する悲しみを察することが出来るはずだ。
 イヴが知った、そう遠くない未来。現れたエリューションビーストによって、会社帰りのOLが殺されることが予見された。しかも、どうやら既に他の犠牲者も出ているようだ。
「相手はフェイズ2、戦士級の相手。元になったのは蜘蛛ね。だけど、エリューション化の影響で、人と同じ位の大きさに成長して、鋼鉄の外骨格を身に付けている」
 攻撃方法はその顎での噛み付き。また、糸を固めて針のように打ち出すことも出来るようだ。
「気をつけて欲しいのは、こいつの影響でエリューション化した蜘蛛が一緒に攻撃してくること。フェイズ1で戦闘力そのものは高くないけれど、こっちの糸に絡みつかれると動きを封じられてしまうから」
 大きさは人間の子供程度。そんなものが2体付き従っているらしい。
「蜘蛛達が根城にしているのは、人気の少ない裏路地。夜に人が通りかかると向こうから出てくるし、特におびき出す工夫は必要ないわ」
 場所もそこそこに広いので、戦闘に不都合は無い。また、明かりもあるので心配は無用だ。偶然人が迷い込むのに気をつけてさえいれば、問題は無いだろう。
「……あなた達なら大丈夫だとは思うけど……一応。気を、付けてね」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:KSK  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年11月07日(月)22:44
はじめまして!
この度、登録の運びになりました新人ST、KSK(けー・えす・けー)です!
皆様の戦いの一助となれるよう、全力で頑張りたいと思います!!

そんなわけで、以下解説です。

●目的
 E・ビースト3体の撃破

●戦場
 人気の無い裏路地です。
 時間帯も夜なので、結界さえ張っておけば人に見られることは無いでしょう。
 一応、足元に糸も張られていますが、リベリスタ達の戦闘を阻害するほどのものではありません。
 イヴが示してくれたタイミングに合わせれば、特に考えることも無く愛さんを巻き込む事無く、E・ビーストと遭遇することが出来ます。

●E・ビースト
 ・ボス
  機械のような外骨格に身を包んだ巨大な蜘蛛です。
  攻撃方法は、近接戦闘に用いる牙と射撃攻撃である針があります。
  針の攻撃を喰らうと、出血状態になる可能性があります。

 ・配下
  機械のような外骨格に身を包んだ1m程の蜘蛛です。
  攻撃方法は、近接の相手に糸を吹きかけることです。
  耐久力はボスに比べて少なく、攻撃力も低いですが、麻痺を与えてきます。

純粋な戦闘シナリオです!
皆様の熱いプレイング、お待ちしています!

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
覇界闘士
衛守 凪沙(BNE001545)
スターサジタリー
望月 嵐子(BNE002377)
ホーリーメイガス
レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)
マグメイガス
百舌鳥 付喪(BNE002443)
ナイトクリーク
六・七(BNE003009)
ホーリーメイガス
ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)
スターサジタリー
リィン・インベルグ(BNE003115)

●蜘蛛の巣の中へ
 月が不気味に都会を照らす。
 遠くでは電車の行き来する音が聞こえてくる。電車の中の人々は、明日も同じように世界が続くと思っているのだろう。
 だが、ここに集まったリベリスタ達は知っている。「同じ明日」が訪れる保障など何処にも無いことを。そして、少なくとも1人の女性が、「同じ明日」を奪われること。
「既に他の犠牲者も出てる、か……。蜘蛛は好きなわけじゃないけど、苦手なわけじゃない。あたし達が食い止めるよ」
 金髪の少女、『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)は静かに呟く。戦いの準備に余念が無い辺り、彼女にその言葉を本当にするだけの力と意志があることが分かる。
「うん、暴れるEビーストを退治して犠牲を減らす、けっこうシンプルな事件だね。でも、だからこそ確実にこなしたいよ」
 その言葉に頷いたのは『食堂の看板娘』衛守・凪沙(BNE001545)だ。彼女はこのメンバーの中で、最も近接戦闘を得意とし、戦いでも最前線を務めることになっている。それだけに、気合は十分だ。
「愛さんが無事に美味しいお母さんのご飯に辿り着けるように、未熟者なりに全力で頑張らせて貰うよ」
 そんな凪沙を見て、『かぞえ歌』六・七(BNE003009)は安心したように眼鏡の奥で微笑む。自分が大した正義感を持っているとは思っていない。だが、皆が送るなんてことのない日常の尊さ、それを彼女はよく知っている。
「まぁ、いつもの依頼だね。いつものように確実に敵を倒すだけだよね」
 まったく気負わない様子で、『ガンスリンガー』望月・嵐子(BNE002377)は愛銃「Tempest」の確認をしている。これから戦う相手にも平常心で挑むその様子からは、油断も伺えない。
 一方、敵に対する嫌悪感を『大人な子供』リィン・インベルグ(BNE003115)は隠そうともしない。人が入れないよう結界の準備をしながらも、その整った幼い顔には怒りと嫌悪の色が浮かんでいる。
「仕事だから我慢するけど、こんな奴らはさっさと潰してやるに限るね」
「えぇ、人型じゃないのは余り興味わかないわね……。それとも、わたくしを悦ばせるような苦悶の表情を浮かべて下さるのかしら?」
 同じように蜘蛛に嫌悪を感じているようだが、まったく異なる表情を浮かべる『嗜虐の殺戮天使』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)。その優雅な顔に浮かぶのは、どんな手で相手をいたぶろうかという残酷な笑みだ。
「よし、行こうか!」
 そして、レイチェルの声を合図にいざ突入というタイミングで皆は、大仰な鎧に身を包んだ『イエローナイト』百舌鳥・付喪(BNE002443)が何かブツブツ呟いているのに気付く。
「あれだけ立派な蜘蛛なら、薬の材料にしばらく困らないってもんだよ。だけど、ううむ、惜しい……惜しいねえ。おっと、そろそろ頃合だね。余分な犠牲を出したくないし、突入しようかい」
 なにやら怪しげな、と言うよりも不穏な発言をしていたようだが、後半の言葉に異論を唱えるものはいない。
「蜘蛛らしく害虫だけ食べていれば良かったものを。食べる相手を間違えたことを教えてやろうか」
 『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)の淡々とした言葉に頷くと、リベリスタ達は蜘蛛の待つ裏路地の中へと突入するのだった。

●網の中でもがくもの
「キシャァァァァァァァァ!」
 リベリスタ達が入った先に待ち受けていたのは、話に聞いた通りの怪物だった。メタルフレーム化した外骨格に身を包み、獲物を求める巨大な蜘蛛。その姿は正しくエリューションの証だ。
 おそらくは蜘蛛達も待ち受けていたわけでは無いのだろう。いかにも獲物の気配に気付いて出てきたという風情だ。だが、彼らの瞳は確かにリベリスタ達を餌として認識しているようだ。不気味に蠢きながら距離を詰めてくる。
「ここまで大きくなると、可愛げも何も無くなるものだね」
「このような奴らは蟲らしく啄まれるのがお似合いだ」
 リィンの言葉に頷くと、ユーヌは素早く式神の鴉を召喚し、小蜘蛛に向かって放つ。式神に突かれた小蜘蛛は、自分を攻撃したのが彼女だと判断したのか、糸を吐き出す。
 しかし、その糸が届くことは無かった。今まで足元を確認していた嵐子が放った蜂の群れを思わせる弾丸の雨が戦場を覆ったからだ。
「蜘蛛VS蜂みたいな?」
 当の嵐子は涼しげな顔をしているが、小蜘蛛達は若干気圧されたようだ。その隙を見逃す付喪ではない。
「雷に呑まれて派手に散ると良いよ。派手にね。ちょいと焦げ臭そうだけど」
 付喪の放った雷がさらに戦場を駆け巡る。詠唱によって強化された魔力は、雷の威力をさらに増幅させる。雷に身を焦がしながら、大蜘蛛はそれでも歩みを止めない。それどころか、冷静さを取り戻したようで攻撃に切り替えてきた。
 ビュッと口から針が放たれる。だが、針などという可愛いものではない。さしずめ、研ぎ澄まされた鋼の矢といったところだろう。それが刺されば、並みの人間なら即死だろう。
「んっ、今夜も暴れよ」
 大蜘蛛の口からリベリスタ達に向かって針が放たれた、正にその時だった。ツインテールを揺らしたセーラー服の少女、凪沙が針の前に立つ。彼女は流れるような無造作な動きで、針を受け流してしまう。
「別に決まった形があるわけじゃないんだよ。あたしの我流武術の中ではね」
 全ての攻撃を受け切る覚悟で、凪沙は大蜘蛛の前に立つと、挨拶代わりと言わんばかりに炎を纏った拳で殴る。
「この程度で逃げるなよ? せっかく最高の舞台を整えてあげたんだ」
 酷薄な笑みを浮かべたリィンが素早く光弾を放つ。さすがにこれだけの猛攻を受けると、タフネスの高い大蜘蛛はいざ知らず、小蜘蛛の動きは鈍くなってくる。ましてや、今回のメンバーには他者の苦痛に敏感なものが多いのだ。
「痛いかしら? 痛いのなら……もっと存分に苦痛に呻いて下さいまし。悲鳴を上げて、顔を歪ませて……あら、もう終わりですの?」
 こうなるのは当然の結果だ。ティアリアは小蜘蛛を鉄球で叩き潰し、散った血を舐め取る。その姿は恐ろしくも美しい。
 残った小蜘蛛は苦し紛れに付喪に糸を放ち、動きを束縛する。しかし、それは足止めにもならない。レイチェルの放った神々しい光に当てられると、溶けるように束縛の糸が消えていったからだ。
「これ以上はやらせないよ」
 付喪の身体を覆う糸が消えたのを見て、七もまた大蜘蛛の前に立つ。自分の実力が周りに劣ることは百も承知だが、それでも戦いようはある。それを知っている分、彼女は間違いなく強い。
「先輩リベリスタである皆の事はもちろん、わたしはわたし自身のことも信じてるからね」
 意志を込めた瞳で大蜘蛛を睨む七。その姿はまさに、暴れるしか能の無い獣と覚悟を持って戦うリベリスタ達の差を物語っていた。

●鋼の罠を打ち破れ!
「食い足りないなら顔無やフィクサード辺りは食べごたえもあってお勧めだぞ? それも分からないなら、なんともお粗末な頭だ」
 あれから、どれだけの光が、弾丸が飛び交っただろうか。そんな中、ユーヌが不吉を纏った言葉を放ち、残った小蜘蛛が動きを止める。
「キィィィィィ……」
 小蜘蛛が力無く倒れるのを合図に、リベリスタ達は大蜘蛛を囲むように布陣を変える。
「もう逃げられることはないと思うけどね」
 そう言いながらレイチェルの投げたカラーボールが、大蜘蛛を鎧う鋼の外骨格を赤く染める。ここからは逃がさない、というリベリスタ達の意志を受けながら、大蜘蛛はなお抵抗の構えを見せる。
「逃げられるものなら逃げればいいんじゃないかな? そうでないなら……!」
 先ほどまで戦場の全体を見渡し攻撃していたリィンは、大蜘蛛1体に集中した攻撃を開始する。対象を絞った分、その攻撃は確実に相手を捕らえていく。
「止まって見えるね」
 戦い方をシフトしたのは、リィンだけではない。嵐子も一層、集中を高めて確実な射撃を大蜘蛛に叩き込む。今の彼女には世界がコマ送りのようにスローモーションで見えているのだ。
 急所らしき場所に幾度も攻撃を受けながら、それでもなお、大蜘蛛は動きを止めなかった。それは生物としての生存本能なのか。あるいは、機械の体を手に入れたが故に恐怖を捨ててしまったからなのかは誰にも分からない。1つ言えるのは、大蜘蛛にもここで倒れる気は無いということだ。
 大蜘蛛は自分に近づいてきた凪沙と七に牙を突き立て、血肉を喰らおうとする。少しでも飢えを満たし、体力を戻したいのだろうか?
「痛っ! 牙を離せってば!」
「危ない!」
 すぐさまレイチェルが輝く光のオーラを飛ばして凪沙を守る。傷そのものは問題無いが、大蜘蛛の体力が尽きていないことで、リベリスタ達に緊張が走る。
 だが、そんな中でティアリアだけは悦びの笑みを浮かべていた。先ほどよりも凄みを感じさせる表情で、大蜘蛛に鉄球を振り下ろす。彼女も小蜘蛛の糸に縛られたクチだが、胸の中で思う所があったのだろう。
「貴方達みたいに攻撃しか知らない獣に負ける謂われは無いのよ。十分に苦痛を味わったなら、さっさと潰れておしまいなさい」
 ティアリアの攻撃は与えたダメージ以上に、仲間に余裕と安堵感を与えた。サディストな所のあるメンバーには、どこか通じるものもあったのだろう。
「さて、改めて。ここは通しゃしないよっ! ってねー」
 どこかおどけたような口調で付喪は、魔法陣を描くとそこから魔力の矢を放つ。鎧で表情を窺い知ることは出来ないが、ひょっとしたら笑っているのかも知れない。
 そこから、一気にリベリスタ達の攻勢が始まった。戦いには「波」がある、と人は言う。ならば、彼らは間違いなく「波」に乗っていた。
 強烈な輝きと共に魔力が、隙を縫うように精密な射撃が、そして力強い一撃が大蜘蛛の体に刻まれていく。その「波」の前で、エリューションの抵抗など儚いものでしかなかった。
「これ以上はさせないよ、絶対に」
 今まで防御を固めていた七ですらも、ブラックジャックを片手に殴りかかっている。
 そして、「波」の狭間にいた凪沙がゆっくりと大蜘蛛の腹に手を触れる。
「あたしはまだ殴れる。まだ蹴れる。だったらまだ終わりじゃないよ。油断したね」
 凪沙は軽く息を吸った後に、大蜘蛛の内側に破壊的な気を送り込む。
 それがトドメとなり、鋼の外骨格を残し、エリューションは動きを止めた。

●蜘蛛の網から逃れた蝶は
 20代半ばのOL、木野下愛は残業がようやく終わり、帰り道を歩いていた。心配性の母から来たメールに返事を返しながら、人通りの少ない裏路地を通りかかる。
「『待ってるよ!』、ね。本気で起きてそうよね、お母さん」
 このまま返事を返すと、母は延々とメールを返してきそうだ、そんなことを思っていると、目の前から2つの人影がやって来る。
「この先で通り魔が出たらしいよ。危ないから道、変えた方が良いんじゃないかな?」
 人影の1人、女の子は愛にそんなことを言ってきた。失踪事件の話を聞いていたこともあり、愛は素直に従って道を引き返す。すると、もう1人の人影なのだろうか。そちらも背中に言葉を放ってくる。
「母親は大事にしなよ?」
 何でそんなことを言ってくるのか聞こうと振り返ると、既に2人の人影は消えていた。

「ふぅ、色々準備していたけど、使うような事態にならなくて良かったよ」
 レイチェルがアーク処理班に連絡をしつつ、ようやくといった感じで一息つく。今回の戦場にあって、勝利をもたらしたのは彼女の入念な準備があればこそだ。影の功労者と言っても差し支えないだろう。
「うん、無事に撃退できて良かったね」
 微笑み返す凪沙の身体に、致命傷と言えるものは残っていない。大蜘蛛と差し向かいになりながら、大した手傷を負わなかったのは、彼女の鍛錬ゆえか。
 微笑んでいると言えば、ティアリアも同様だ。もっとも、彼女の場合には別種の笑みなのだろうが、可憐な顔に花のような笑みを浮かべている。
「痛い思いをするのは好きではありませんが、相手に苦痛を与えるためでしたら仕方ありませんわね」
 ティアリアにしてみれば、エリューションとの命を削る戦いも、ちょっと危険な遊戯に過ぎないのかもしれない。
「無様だな、図体は飾りか。いや、もはや価値もない単なるスクラップか」
 ユーヌは蜘蛛達の死骸を見下ろして呟く。その表情には何の感慨も浮かんでいないように見えるが、戦いを終えた彼女なりの表情なのかも知れない。
「あぁ、気持ち悪かった。まったく、大きな蜘蛛なんて昼間でさえも会いたくないね」
 一方、リィンはせいせいしたと言わんばかりの様子だ。同じサディスト同士でも、戦う相手に対しては、それぞれに異なる感想が見受けられる。
 そんな中、七は蜘蛛の因子を得たビーストハーフであることもあってか、周りの者とは違う感情を抱いていたようだ。同じように蜘蛛の死骸を眺める目には優しさが篭っている。
「もし、次に普通の蜘蛛に生まれて来たときは、わたしが可愛がってあげるよ」
 勿論、今回とは別の意味でね。
 小さく呟いたところで、付喪と嵐子が戻ってきたのに気付く。
 そうして、事件が片付いたことを確認すると、リベリスタ達は帰路に着くのだった……。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
皆様、『逃れられない鋼の罠』にご参加いただきありがとうございました。
確かな戦術により、無事に蜘蛛は退治され、愛さんはお母さんのご飯を食べていることでしょう!

ドS描写など、こちらも色々と楽しませていただきました。
今後とも、頑張っていきたいと思います!
それでは、またどこかでお会いいたしましょう。

お疲れ様でした!