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<ハロウィン2011>聖魔を繋ぐ一夜の夢

●万聖節前夜
 珍しい事に『万華鏡(カレイド・システム)』で視た後の『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の様子がいつもと違う。特別際だった変化などは無いのだが、そこはリベリスタ達も短くはないつきあい……少々機嫌が良さそうであると見て取れる。
 声を掛ける。イヴは表情を少しも変えず振り返ったが、やっぱりどこか雰囲気が穏やかだ。
「31日の夜、予定はある?」
 時空を越えて真実を見定めるアレキサンドライトの瞳に真っ直ぐに見つめられ、嘘などつけるはずもない。

 万聖節前日の日没、三高平公園の一角に強固な結界が発生する。その結界は『力』を持たない人々を完全に締め出し、一種の濃密な魔的空間を形成し空間の中心部、空中にディメンションホールが発生する。
「心配は要らない。この日にディメンションホールが発生しアザーバイドが来訪するのは毎年の事」
 やっぱりイヴの表情はごくごく僅かだが柔らかい。
 それもその筈、形成されるディメンションホールは日没から翌日の日の出まで、ごく限られた時限式のものである。来訪するアザーバイドも植物が人の形に進化したかのような優美な姿をした友好的な種族だ。彼らは細い葉を連ねたような長い髪と、ウスバカゲロウの様な羽根を背から伸ばし、花びらの様に幾重にも重ねた服をなびかせ軽やかに空を舞い踊る。オレンジ色の虹彩のない瞳は大きくつぶらで、楽器の弦が震えるような声は解読不能だが敵意がないことはテレパシーを使わなくてもわかる。
「妖精の様な者達……と、思えば一番イメージがつけやすいと思う。毎年、彼らの来訪に合わせてアークの有志が踊りの輪を作ったり、屋台を出したりする。気になるのなら、行ってみるのもいいと思う」
 にこりともせずイヴは言う。けれど、きっと当日その場所で楽しむイヴの姿も見て取れるだろう……話を聞いたリベリスタ達はふとその様子を思い描いて顔をほころばせる。歩き始めたイヴはふと気が付いて足と止め、振り返る。
「知的興味、警備目的でもいい……個々の思いは咎めない」
 言い捨てて歩き出す。表情はいつも通りであったけれど、足取りはスキップをするかのように軽やかだった。






■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:深紅蒼  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年11月13日(日)22:03
 お久しぶりになりました。ストーリーテラーの深紅です。
 今回は万聖節前夜、日没から日の出まで期間限定で出現するディメンションホール付近でのお話です。

●来訪者さんって?
 このディメンションホールが存在している間、別の次元からアザーバイド達がやって来ます。彼らは妖精の様に優美で可憐な姿をしています。大きさはだいたい1メートル程度。会話は出来ませんが、身振り手振りテレパシーでの大まかな意思の疎通は可能です。彼らの目的は夜通し踊る事の様で、滞在するごく短い時間の間にこちらの世界に悪影響を及ぼす危険はありません。主食や好みはわかりませんが、例年甘い飲み物やお菓子ならごく少量受け取って摂取します。どちらかといえば高級品を好むようですので、何かしら用意していると近寄ってくるかもしれません。

●どんなイベント?
 アークでは職員有志が夏祭りの様な屋台を出したり、率先して踊りの輪を作ったりします。リベリスタの皆さんも日頃の責務を忘れて楽しんでいただけたらと思います。
 屋台は焼きそばやお好み焼き、林檎飴のような食べ物系から射的、輪投げ、ボール投げ、くじ引きの様なもの、似顔絵、手相占い、紙芝居、楽器演奏などがあり、踊りは盆踊りからフォークダンス、ヒップホップ、ブレイクダンスも披露していただくスペースがあります。アザーバイド達も楽しい事には興味を示しますので、空でのダンスを中断して鑑賞するなんてこともあるかもしれません。
 総じて危険はなくディメンションホールは日の出には消滅しますが、その時刻まで参加する義務はありません。割と自由に過ごしていただけると思うので、お一人で、大切な人と、仲間達と、素敵な時間をお過ごしいただきたいと思います。

●特別な注意
・今回のイベントシナリオには真白イヴが参加します。心密かにこの夜のお祭り騒ぎを楽しみにしているみたいです。一緒に楽しい時間が過ごせたら良いなぁと思いますが、彼女はなかなか難しいです。
・このイベントシナリオに参加したキャラクターがハロウィン専用SD商品を所有している場合、挿絵として挿入される可能性があります。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。(このタグでくくっている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCを構いたい場合も同じですが、IDとフルネームは必要ありません。名前でOKです。
・内容は絞った方が描写が良くなると思います。
参加NPC
 


■メイン参加者 0人■
■サポート参加者 29人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
デュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
デュランダル
石川 ブリリアント(BNE000479)
ソードミラージュ
天月・光(BNE000490)
ホーリーメイガス
カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
デュランダル
遠野 御龍(BNE000865)
デュランダル
桜小路・静(BNE000915)
覇界闘士
宮藤・玲(BNE001008)
インヤンマスター
門真 螢衣(BNE001036)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
ソードミラージュ
ルア・ホワイト(BNE001372)
マグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
スターサジタリー
八文字・スケキヨ(BNE001515)
クロスイージス
レナーテ・イーゲル・廻間(BNE001523)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
ホーリーメイガス
大石・きなこ(BNE001812)
ホーリーメイガス
翡翠 あひる(BNE002166)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
ホーリーメイガス
レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)
プロアデプト
レイチェル・ガーネット(BNE002439)
クリミナルスタア
関 狄龍(BNE002760)
クリミナルスタア
烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)

津布理 瞑(BNE003104)

アルジェント・スパーダ(BNE003142)
   

●聖と魔の狭間の夜
 万聖節を明日に控えた夜。かつて一年の最後の夜には世界中の魔者達が最も穢れたその夜を跳梁跋扈し、人々は祈り震えながら家の扉を堅く閉じて聖なる日の夜明けを待った……のかどうか。夜も光の消えなくなった昨今、穢れた夜もたんなる1つのイベントに過ぎなくなった。仮装してバカ騒ぎを楽しむ日となった夜にもごく僅かな奇跡がある。
 日没とともに開いたゲートからすぐに最初の1人が現れる。そして列をなして現れる。おとぎ話の妖精に似た透き通る繊細な羽根を背に持つ小さな人型のアザーバイド達は、緩やかに空を飛びターンする。それが今宵最初のダンスだった。

「……描いて貰おうか。記念に」
 出店を覗きながら歩いていた拓真が不意に立ち止まる。みれば急ごしらえの小さな店にベレー帽をかぶった壮年の男が穏やかな笑顔を浮かべて座っている。
「はい」
 どちらが先に描いてもらうか、互いに譲り合って決まらなかったがベレー帽の絵師がレディファーストで、と悠月を指名する。サラサラと絵筆を走らせて出来上がった似顔絵は少しデフォルメが効き過ぎていたが充分に2人の特徴が画面に溢れている。
「俺ってこうなのか?」
「私……笑っていますね」
 愛おしそうに絵を見つめながら悠月がつぶやく。どちらの絵も楽しそうに嬉しそうに機嫌よく笑っている。こんな穏やかな顔をしているのかと拓真は内心驚いていた。きっとそれは側にいてくれるから、だと思う。
「……行こうか、まだ時間はある」
 重ねた手に温もりが伝わる。
「そうですね。せっかく用意したアイリッシュケーキを食べていただきましょう」
 飛び交うアザーバイド達の方へと、悠月と拓真は足を向け歩き始めた。

「ゲーセンも出禁じゃつまんねーっての。まぁ、ここが面白いかはわかんねぇーけど」
 フラフラと出店をひやかすように歩く瞑。即席の会場も出店も、そして頭上を飛び交うアザーバイド達にもそれなりの関心はあるのだが、どうにも素直にそれを出せない。ついつい憎まれ口の1つでも叩きながらふらつく事になってしまう。

「……平和だな」
 漆黒の髪を夜風に揺らしアルジェントは黄金の瞳で油断なくあちこちに視線を投げる。僅かに感じる違和感。人畜無害な存在なのだと過去のデータが示していても、アルジェントの様な男は頭上を数多のアザーバイドに占拠されつつ居るのは落ち着かない。不意に背後に気配が浮かべば、意識するより先に手が得物を操り攻撃してしまうかもしれない。そう言う風に生きてきたのだから。

 その3人をどの様に形容したら適切な表現となるのだろうか? 愛らしい少女と狐の扮装をした無鉄砲そうな青年、そして……空を飛び交うアザーバイド達とは少し違う漫画やアニメーションで目にする妖精の姿を模した扮装をしたオッサンだった。だが、内面の葛藤はどうあれ、青年もオッサンも少女をはさんで手を繋ぎ屈託のない破願を披露している。
「これで雷音もめろめろでござる!!」
「妖精かわいいといいな。あと、横はみるな。病気になるから」
「もー。ふたりとも心配だ。変なところにいっちゃだめなのだ」
 キリりと表情を引き締めて歩く雷音だが、目の前を踊りながら通り過ぎてゆくアザーバイドの可憐な姿に目を奪われる。
「妖精さんだ、はなしかけていいかな?」
 握った手に力を込めて見上げる雷音。
「うむ、雷音がしたいならしてもいいでござるよ! なんせ拙者も今日は妖精でござるからな!」
 空を行くアレとコレを同族だと言い張るのはかなり無理があるのだが、虎鐵の太鼓判に雷音は空を仰ぐ。
「あの、アップルパイどうですか? お口にあうといいのですが」
「それうちの妹の手作り、おいしいぜ?」
 夏栖斗は差し出したパイの1片を手に取り、鋭角な方から口に運んでアザーバイド達の目の前で食べて見せる。それに毒味の効果があったのか、1人、また1人と小さなあざー達がお皿に舞い降りアップルパイを千切って口にする。
「うわ~」
 嬉しそうに微笑む雷音とアザーバイド達の光景を見つめる虎鐵と夏栖斗。
「可憐すぎて……天使でござる!」
「楽しかったか? らいよん」
 悶絶しそうになりながらも写真を撮る虎鐵を押しのけ、夏栖斗が聞く。
「うん!」
 雷音は振り返って笑った。

●小さな隣人達
 世界を繋ぐ門が開き、そこから小さなアザーバイド達が踊り出て来る。悠里が椀の様な形にした手の中に金平糖を入れてかざすと、気が付いた1体が空中を滑る様に舞い降りて来る。
「悠里さんはとても優しい方ですね」
 優しい声音でカルナが言う。
「カルナちゃん、もし良かったら僕と友達になってくれないかな?」
「おや、私は既に信頼出来る友人だと思っていたのですが……一方的な思い違いだったようで残念です」
 目を日開いた悠里の顔に衝撃と動揺、悔恨と羞恥。様々な感情が浮かんでは消え、消え残る感情に新たな感情がのしかかる。
「冗談です。少し悪戯めいた事を言ってみました」
 あっさりと白状したカルナはこちらこそよろしくと微笑みかける。
「もう、びっくりしたな。そうだ、友達同士なのにさん付けもなんだから僕のことは悠里って呼んでくれると嬉しいな」
「悠里………な、なんだか少し恥かしいですね。あ、私の事もちゃん付けは無しですよ?」
「えー、カルナちゃんはカルナちゃんって感じだよ」
「駄目です!」

「どうだ! このセレブ御用達の宝石の如く洗練された菓子の数々。もはやこれはこの次元の至宝!」
 山と詰むほどではないが、それでも竜一はかなり頑張っていた。見る間にアザーバイド達が舞い降りてくる。困惑して竜一を見上げてくる様はあどけなく、思わず抱きしめたくなってしまう。
「開けられねぇのか? ちょっと待ってろ」
 ぐっと思いを堪えつつ竜一は高級そうな包み紙を解く。

「待ってるだけなんてナンセンス!」
 欲しいモノは奪いに行く。仲良くなりたいなら他人より目立つ! じっとしているのは性に合わない。終が導きだした答えは……キラリと銀色の反射光が目を惹く。複数のシェーカーが宙を舞い、背に回した手に正確にキャッチしそのまま手早くグラスに注ぐ。色とりどりのカクテルが早業の様に出来上がり、次々と空のグラスを満たしていく。華麗で華やかなパフォーマンスカクテル! それが終の選んだ術だった。クールにそして格好良く。笑顔の裏に隠された血の滲むような努力は微塵も覗かせない。
「どう?」
 甘い香りのピンク色のカクテルにアザーバイドがふわりと舞い降りる。

●ミッドナイト・イヴ
 光はイヴになにやら包みを手渡す。
「……何?」
 受け取って中を確かめたイヴは光に視線を戻しもう一度同じ言葉をつぶやく。
「光さん、そろそろ行きますよ」
 桐の声が光を呼ぶ。
「イヴちゃなら絶対似合う! 衣装作りはばっちりだ! 開場で会おうな! あ、イヴちゃも楽しめよ!」
 光は手にしていたキャンディをイヴの手に乗せ、ブンブンと手を振って走り去っていく。
「よーし! イヴたん踊ろう!」
 満面の笑みを浮かべて差し伸べる竜一の手を見つめ、イヴは慎重の1歩退く。
「竜一、変わらない」
 醒めたイヴのオッドアイ。それもまた竜一の心の奥底を激しくかき立てる。
「イヴさん、イヴさん♪ 一緒に射的しませんか?」
 真反対からのハガルの誘いにイヴは無言で手を差し出した。その手に『お手』と手を乗せると、イヴは静かに払いのける。
「お金……」
「勿論です! それでイヴさんの決定的シーンを最適位置か…」
「早く」
 短く言葉を遮られる。
「……えい」
 脱力したかけ声とともにイブが放った弾はへろへろと飛ぶが失速して地に落ちる。
「銃を構えたイヴさんも萌えですよ!」
「写真?」
 不思議そうな顔をしているイヴにハガルは胸を反らす。
「たくさんたくさん思い出を作って残すのですよ。そうすれば振り返った時きっとすっごく誇らしいです」
「トリックオアトリぃートぉ♪ イヴちゃん、お菓子の代わりにこれあげるねぃ♪ そうだぁ、イヴちゃんお手すきならあたしと一緒に踊ろうよぉ!」
 御龍は今射的で手に入れたばかりのウサギのぬいぐるみと手を両方差し出す。
「罠? 餌?」
「ウサギは純粋にプレゼントだよぉ! そしてダンスも純粋に誘ってみただけぇ」
 御龍は目を見開いていう。その目がキラキラしているのはあちこちにぶら下がった簡易照明のせいばかりではないだろう。
「上手じゃなくても……いいなら」
「ひゃっほぉ~~!」
 おずおずと差し出したイヴの手を取り、御龍は静かに……だがすぐに激しい情熱の舞踊へとイヴを誘った。

●踊れ、輪になって
 10月最後の夜は……割と暖かくて例年と比べてもぐっと過ごしやすい夜だった。とはいえ、夜が更けるにつれて気温は下がり肌を露出する扮装をしている者達も外衣を羽織ったりしている。けれど根性のすわった参加者がここにいた。
「寒くないにゃん! だってダンスを続けてるからにゃん!」
 確かに水着に猫耳という姿ながらもその張りのある肌は鳥肌などたてておらず、うっすらと汗さえ浮かんでいる。
「一緒に踊らないにゃん?」
 滑るように降りてきたアザーバイドとコラボレーションするように、更に激しく身体を揺らす。
「きゃーーーーー!」
 小さいけれどしっかり肌を覆っていたごく小さな布が外れ、きなこは悲鳴をあげてしゃがみ込んだ。

 レナーテと快はお揃いの黒く長いローブにとんがり帽を合わせた魔法使いの仮装をして、それぞれ持参してきた包みを見せ合う。
「マドレーヌなんかの焼き菓子が食べやすそうかしらって思ったんだけど……」
 早くから準備した手作りの菓子からは少し甘い香りがする。
「お菓子かあ。こういうのでいいのかな」
 快の包みの中には様々な形をした和三盆の落雁が花を咲かせている。早くもその甘い香りに惹かれたのか、空を舞うアザーバイド達の流れが変わる。
「素敵よね」
 ぽつりとレナーテがつぶやく。次元を異にする存在との邂逅は多くの場合悲劇を生む。こうして穏やかに時を重ねる事も出来ると言う事を忘れたくはないとレナーテは思う。
「可愛い魔女さん、お手をどうぞ」
 ワルツの優雅な音が始まると快が手を差し伸べる。微笑んでその手に手を重ね、レナーテと快が華麗にステップを刻む。
「こんな感じで、踊れてるかな?」
「ええ、大丈夫。寧ろ思ってたより上手かも、ね?」
 快の肩に添えていた手を挙げると、アザーバイド達が舞い降りてくる。踊る2人の周囲をアザーバイドが輪舞を描く。

「珍しい踊りね。こう? それからこう?」
 目の前を行き過ぎる可憐なアザーバイド達の動きを真似ようと、螢衣はぎこちなく腕を振り動かす。高価なチョコレート菓子のおかげか、螢衣はすっかり来訪者達の踊りの輪の中にいた。もしアザーバイド達が皆このような存在であれば……とも思う。なんとか振りを覚えると次は螢衣が教える番だ。
「まさかパラパラをアザーバイドに教える日がくるとは思わなかったわ」
 手のひらを返したり戻したりする動きを一斉に真似されるのは、なんともこそばゆく楽しい。
「この箒で飛べるなら良いのですが」
 ちょっぴり残念そうに螢衣は笑う。

「わぁ♪ すごいの! すごいの! 綺麗!」
 幻想的な光景に思わずルアは走り出す。見慣れたいつもの場所なのに、全く違う世界にいるかのような不思議な光景。それはきっと空を飛ぶアザーバイド達のせいだろう。それでも視界の中にスケキヨがいればどこだって怖くはない。
「スケキヨさん! 早く早く!」
 愛らしいアリスの服を着たルアが手招きをする。
「フフフ、なんだか珍しい体験だね」
 スケキヨは物珍しそうに周囲を見渡す。日本の夏祭りのような出店と、アザーバイト達の空を駆けるダンス、そして沢山の仮装した者達もダンスの輪を作っている。
「ボク達も踊ろうか?」
 ずっとずっとルアだけを見つめていたいけれど、ルアと一緒に普通の時間に魔法をかけ、特別な夜にしてみたい。
「スケキヨさんが居ればどんなことだって素敵になるの」
 そっと伸ばして指先がスケキヨの腕を掴む。
「だから、ずっと一緒にいようね」
 来年もその又次の年もずっと先まで……2人は笑って手を取り合うと、踊りの輪の中へと消えていった。

「寒暖コンビですよ?」
「雪兎なんだぞ!」
 と、丈の短い小袖風の衣装で幼い雪女風に装った光は自己主張し、桐は沖縄の守護獣、シーサーの着ぐるみ姿で想像上の咆吼をマネてみる。ごくごく生真面目になりきる桐の姿はかなりレアだ。
「兎はダンスは得意だぞ!」
 自己申告した光も、無言で踊り始めた桐もなかなか素人離れした身体の動きを見せる。そのダンスに誘われたのか、彼らの頭上にアザーバイド達が集まり始めた。
「一緒に踊りませんか?」
 桐の手招きに更にアザーバイド達が距離を詰める。不意に桐が動きを止め、光に笛を差し出した。
「リズムに合わせて吹いてみたらいいですよ?」

「レイの魔女姿、似合ってるよ。すごくかわいい♪」
 愛らしいクマの着ぐるみを着たレイチェルの青い瞳が、同じ名を持つ少女を褒める。手を取り合って踊る2人は、一瞬たりとも立ち止まる事はなくクルクルとすれ違い寄り添い、位置を変えて踊り続ける。
「レイチェルさんだって可愛いです」
 赤い瞳にぎこちなく、でも一生懸命踊るレイチェルの姿が映り込む。ほんの少しだけわざとタイミングを外して差し述べた手も、必死にフォローしてくれる。その真剣さがグッとくる。
「さすがにちょっと踊りにくいや。でも、みんな楽しそうにしてるし、あたし達も、今夜は思い切り楽しもっ♪」
「熊さんと魔女、そして妖精……ふふ、なんだか童話の世界みたいですね」
 魔女姿のレイチェルへとアザーバイト達が寄ってくる。持参してきた甘い菓子の移り香りに惹かれてきたのだろうか。
「ね、一緒に踊ろうよ」
 着ぐるみのレイチェルがフィナンシエを差し出してみる。
「こちらにどうぞ」
 2人の指先にチョコンとアザーバイトが降り立った。

 踊りの輪の中に義経と弁慶の扮装をしたフツとあひるの姿があった。淡い光を放ちながら空を舞うアザーバイド達と、地上から柔らかい光を放つ照明の光がなんでもない筈の夜を不思議で幻想的な世界へと変えている。
「お、良い感じの曲に変わったぜ! 行こう、あひる」
「え? わ、わああああぁ」
 弁慶であるフツは義経……というよりは童水干風の装いから牛若丸の仮装をしたあひるの手を強く引き輪の中心に飛び出した。途端に踊っていた者達の視線が2人へと集中する。思わずあひるの頬が赤くなる。どうしてこう突拍子もない事をしでかすのだろう。
「行くぜ!」
 墨染めの衣を翻しアップテンポの音楽に合わせてフツが激しく踊る。黒い瞳が輝いている。その目だけを見つめていたら、沢山の視線も気にならなくなるだろうか。
「じゃ、ふっくん取ってよね」
 絶対に欲しい射的の景品、それをギュッと抱きしめるシーンを思い描き、あひるも水干を揺らしてフツの踊りに合わせていった。其れも是も過ぎてしまえば煌めく思い出に変わっていく。

「うりゃりゃーーー!」
 ここが武闘場ならば、それは気合いのこもった裂帛の声。次元を越えた異邦人達との一夜限りのお祭りに響き渡るのはなんともちぐはぐな感じがするが、狄龍は少しも間違ってはいない。ハロウィン仕様の特別あつらえの衣装に身を包み、高速でダンスを披露している。
「スーパーハイスピード盆踊りだー!」
 本人が宣言しているようにその動きは全て盆踊りでの定番の所作であった。演歌がハードロックにアレンジされてしまったかのように変貌していても、だ。
「テクノのビートで踊り狂えー!」
 バイタリティ溢れる狄龍の踊りはまだまだ終わらない。

「わわっ、あれはルアちゃんとスケキヨさん! 向こうにいるのはあひるちゃんとフツさんだよね。可愛いし格好いいなぁ。わっ、悠月さんと拓真さん、雷音ちゃんと虎鐵さんもいるよ。ほらほら!」
 テンションあがりまくりな玲は一時もじっとしていない。遠目友人知人を見つけては、飛び跳ねたり、背伸びをしたり身を乗り出す。
「危ない!」
 バランスを崩し地面に転げそうになった玲の身体を支えたのは、静だった。2人ともどこかコミカルな王子と姫君の衣装だが、並べてみればなるほどお揃いの装いだ。
「ごめんね、静さ……」
 玲の唇を指先でそっと封じる。
「お手をどうぞ、姫」
 恭しく礼をして手を差し出す静に玲もキチンとお辞儀をしてから手を重ね、踊り出す。互いの癖を知り尽くした2人だから、打ち合わせなどしなくても自然と呼吸が合い動きが揃う。繋いだ手を伸ばし、抱き寄せ、そしてふわりと玲の身体が浮く。
「あ……」
 宙を滑る玲の軌跡にアザーバイドの踊り手達がなぞるように列をなす。祝福のキスを交わした2人は飛び交うアザーバイド達にも花輪とマカロンのプレゼントを投げた。

「妖精さんと踊る空間かと思ったら、らぶらぶちゅっちゅタイムだった。なにをいってるかわからねーとおもうが私もわからん!」
 ブリリアントは魂の叫び! とばかりにシャウトする。右を向いても左を見ても、正面も背後もことごとく! ことごとく恋人達の素敵空間ではないか! 実際はブリリアントが思う程恋人だらけというわけではないのだが、1組いれば5組分ぐらいの破壊力を周囲にもたらすのが熱愛というものだ。
「うむっ、おどりあかすぞ! 盆踊れ、リベリスタ!」
 ブリリアントは『わんだふるすぺさるでりしゃすぼんおどりー!』と自称する超高速ダンスを披露し続ける。

 気合いも根性も体力もあるリベリスタ達の祭典は夜明けまで続けられた。暗かった東の空が青く、そして闇を払拭し始めると1人、また1人とアザーバイド達はゲートから去ってゆく。
「また来年……」
 リベリスタ達に見送られ、小さな妖精の様な隣人達は異なる世界へと帰って行き……そして新しい万聖節の朝がやってきた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お待たせいたしました。ハロウィンの夜の素敵な一時を皆様にご報告いたします。
思い出はもっともっと沢山あって、皆様の胸の中にもう大切にしまってあるのだと思いますが、ここにも刻まれています。ずっと時が過ぎた後も、思い返していただけると幸いです。

 ご一緒させていただき有り難うございました。