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歪曲芸師によるエチュード2nd改

●ミタミライ
 あの森の奥にある池には、深夜になると『変な靄』が出るとか出ないとか。
 やれ池で溺れ死んだ女のお化けだの宇宙人の所為だの、好き勝手な噂が流れているが――

 最近、二人の人間が忽然と姿を消した事。
 捜査に当たっていた警官が一名、調査に出たきり行方不明になっている事。

 これは神秘秘匿の名の下に揉み消された、紛れもない『事実』である……。

●カエルウンメイ
「良い子のリベリスタ皆々様こんにちは、メタルフレームフォーチュナのメルクリィですぞ。
 初めましての方はドーゾ宜しく、そうでない方もドーゾ宜しく」
 事務椅子をくるんと回してリベリスタ達へ向いたのは『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)。
 ニヤリと人相の悪い顔を笑ませて集まった一同を見渡すと、
「ハイ、そんな訳でして今回の任務は戦闘経験の浅い方や肩慣らしをしたい方にドンピシャァなイージー系ですぞ。
 ……ん? 何で3ndじゃないんだァって? お察し下さい。
 サテサテ、今回の内容はちょいとばかし一捻り、しかしポイントさえ押さえればらくらくちんちんチョベリグばっちぐーな感じです。
 ……ま、大まかーな言えばですね」
 メルクリィがモニターをちょちょいと手早く操作する。
 そしてモニターに現れたのは無駄にスタイリッシュなフォントの文字であった。
 曰く、

『一般人に取り憑いたE・エレメントをやっつけよう! 且つ一般人は助けて下さい。』

「――ですぞ!」
 態々モニターに映す必要はあったのだろうか……というリベリスタのモヤモヤした気持ちを余所に、お気楽な機械男は卓上に置かれた資料を指先でトンと叩くと説明を始める。
「E・エレメントフェーズ1『灰の霧』。数は三。霧のエリューションです。
 これは生き物に取り憑いて操る能力を持っとりましてな、一般人が三名ばかし乗っ取られちゃってます」
 ちょっとご覧下さい、と漸く例のフォントを引っ込め代わりにモニターに映し出したのは三名の人間。
 セーラー服の女子高生と背広のサラリーマン、それから警官だろう。どれも虚ろな目をして不自然な恰好で――そう、まるで糸で操られているかの様な。
 だが良く見れば彼らの身体から灰色の靄の様なモノが漂っている。これが例のエリューションなのだろうか。
「はい、ご覧の通り。このモヤモヤ~っとしてるのが『灰の霧』です。
 一般人を救う――『灰の霧』を引っ剥がす為にはこのモヤモヤ部分を攻撃して下さい。ある程度のダメージを受けると憑依対象から離れます。
 一般人達は『灰の霧』によってやや身体能力が高められてますが……くれぐれも! 直接一般人に渾身のメガクラッシュ叩き込んだり本気のフレアバーストをぶっ込んだりしないで下さいね。最悪死にます。一般人さんが。
 あ、ついでに『灰の霧』はエリューションにゃ取り憑けないんで、皆々様が操られる事ァないんでご安心を。
 彼らのデータはそこの資料にも纏めてありますが、一応私の口からも大まかに説明しときますね」
 そう言いながらフォーチュナが軽くモニターを操作すれば、画面上に『灰の霧』に関する様々な画像が展開された。
「『灰の霧』自体は一般人に憑依している時も勿論攻撃してきますぞ。毒を伴う複数攻撃があるんでお気を付け下さい。
 ですが能力値的にゃそんなビビる必要もないですぞ。一撃二撃でオシャカになる事ァ先ず有り得ないです。取り憑かれた一般人の方もエリューションに取り憑かれているとは言え『一般人』ですしね。かと言って油断や傲りは絶対駄目ですぞ? キミとボクとのオヤクソク。
 そうそう、一般人達は『灰の霧』の憑依が解けたら気絶しちゃいますぞ。憑依の間の記憶もないんで神秘秘匿の云々~辺りは問題ナシです。
 でもアフターフォローはちゃんとしてあげて下さいね。人が通りそうな所まで運ぶとか救急車呼ぶとか。放置ダメゼッタイ。
 それじゃ次に場所について説明しますそ、耳かっぽじってお聴き下さい」
 メルクリィが展開した画像の一つをズームする。それは薄靄の漂う池であった――周りは鬱蒼と木々に囲まれ、あまりスペースは無いようだ。池の上にでも立たない限り、目一杯布陣して広々と戦う事は出来ないだろう。
「今回の戦場となるのはこちら、森の中にある池とその周辺です。
 多分、この森部分な池の周りで戦う事になるかと思いますが……何分、鬱蒼と茂ってますので広々~と戦えないかと。狭い&細い、そして視界も悪い。狭いよ暗いよ。
 木から木へ、とか池の上から、とか罠仕掛けちゃうぜ、とか作戦は皆々様にお任せしますぞ。
 時間帯は夜、光源類は一切無い上に薄く靄が出てますんで暗ーい視界悪ーい、何か対策を考えとかないとフルボッコフラグがおっ立ちますぞー。
 取り憑かれてる三名以外の一般人はほぼ来ないと言って良いでしょうな。
 ――以上で説明はお終いです。宜しいでしょうか?」
 メルクリィが一同を見渡した。それから、返ってきた頷きに対して満足げに微笑むと意気揚々に言い放つ。
「ではでは皆々様、お気を付けて行ってらっしゃいませ!
 私はいつもリベリスタの皆々様を応援しとりますぞ。フフフ。」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ガンマ  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年11月19日(土)23:44
●目標
 E・エレメントフェーズ1『灰の霧』×3の討伐
 一般人の救出

●登場
E・エレメントフェーズ1『灰の霧』×3
 灰色をした霧のE・エレメント
 取り憑いたモノを操る事が出来る(革醒したモノには取り憑けないようだ)
 ある程度のダメージを受けると憑依対象から離れる
主な戦法:
 近接対象を障気で攻撃
 遠距離複数対象へ障気を漂わせる。毒を伴う場合あり

一般人『女子高生』
 『灰の霧』に取り憑かれている
 『灰の霧』によって身体能力もやや高められている
 『灰の霧』が行う特殊能力攻撃が他より強い
主な戦法:
 『灰の霧』による攻撃(灰の霧の『主な戦法』参照)

一般人『サラリーマン』
 『灰の霧』に取り憑かれている
 『灰の霧』によって身体能力もやや高められている
 能力はフラット
 鉄パイプを片手に持つ
主な戦法:
 『灰の霧』による攻撃(灰の霧の『主な戦法』参照)
 近接対象へ手にした鉄パイプを振り回す。ショックを伴う場合あり

一般人『警官』
 『灰の霧』に取り憑かれている
 『灰の霧』によって身体能力もやや高められている
 身体能力が他より高い
 拳銃と警棒で武装している
主な戦法:
 『灰の霧』による攻撃(灰の霧の『主な戦法』参照)
 近接対象を警棒で殴る
 遠距離対象を拳銃で撃つ

●場所
 郊外の外れの森にある小広い池。周りは木々に囲まれている。
 時間帯は夜。暗い。
 上記三名以外の一般人が来る事はない

●その他
 『灰の霧』の憑依が解けると一般人達は気を失う(憑依の間の記憶なし)
 『灰の霧』及び取り憑かれている一般人はリベリスタの気配を察知すると自ずとやって来る

●STより
 こんにちはガンマです
 文字通りイージーモードな依頼です。
 宜しく御願い致します。


参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
龍泉寺 式鬼(BNE001364)
覇界闘士
片倉 彩(BNE001528)
★MVP
ナイトクリーク
シルキィ・スチーマー(BNE001706)
ホーリーメイガス
アルティ・グラント(BNE002505)
ホーリーメイガス
澄芳 真理亜(BNE002863)
ホーリーメイガス
ガルフォード・ハウエル(BNE003065)
プロアデプト
志筑・沙耶(BNE003128)
インヤンマスター
マリス・S・キュアローブ(BNE003129)

●靄々行軍
 白でいて、黒。或いは蒼白いとも呼べようか。
 薄く棚引く靄を掻き分け、湿った草地を踏み締め、八つの影は目的地への距離をまた一歩と狭めていた。

「おのれ、不審な霧。罪も理想もない人々を操るとは正義の風上にも置けないのです!
 正義の風下において火をかける勢いで成敗するのです!」
 ランプの灯りに照らされて、少女の正義も燃え上がる。
 『Holy Order』アルティ・グラント(BNE002505)の真っ直ぐな紺眼に宿る意志に揺るぎはない。曰く、
「因果は巡り悪行は正義に淘汰されるのです! 例え人じゃなくても! 人じゃなくても!」
 との事。大事な事だから二回。
「本人の意思を無視してやりたい放題とは、不埒な霧ですね。
 噂に引き寄せられて生じたのか、はたまた別の要因が有るのか……」
 何にせよ、エリューション退治が自分達の役目である。囚われてる一般人達の体調も気懸かりなので早めに解決したいものだ。と、『わすれ路の鞘』志筑・沙耶(BNE003128)は周囲を警戒しながら思った。
 熱で、感情で。迅速に目標を発見すべく沙耶は意識を研ぎ澄ませる。
「相手は霧のエリューションですか。叩き甲斐のなさそうな相手ですね」
 懐中電灯の灯りで仄暗い周囲を照らし進む『白虎ガール』片倉 彩(BNE001528)が誰とはなしに言う。
 しかし白い獣人の金眼には油断の一欠も無かった。不意打ちされぬように、と意識を引き結ぶその心身はいつでも戦いに躍る事が出来る。
 あとは戦うだけ――ふむ、と『ダンディライオン』ガルフォード・ハウエル(BNE003065)は自らの雄偉でいて優美な金髭を一撫で、
「幸い難しい事を考えずに済むのだから、Eフォースの撃破の後は一般人を無事に助けだせるかに意識を集中させるだけだね」
 練習曲(エチュード)の名の通り、未だリベリスタとして経験の浅い自分の経験にさせて貰おうか。懐中電灯の光を頼り、仲間と共にまた一歩。
 正直、懐中電灯で大丈夫か不安だが――いずれどうにかしよう。自分には頼もしい仲間がいる。
 ガルフォードが見遣る先には『聖母の生まれ変わり?』澄芳 真理亜(BNE002863)が、照らされた辺りを見渡しながら密かに息を吐いていた。
「これで三度目、か……」
 何かしら縁のある機械予言師による練習曲。巡り合わせとは不思議なモノだ。
 ――いいぜ、こうなったらとことん付き合ってやるさ。
「一体残らず祓ってやるよ!」
 父にも母にも負けるものか。今に見ていろ、意気凛々と彼方を見据えて。
「闇の異形の次は霧の異形か。最近はこうした類の不定形な異形の退治が多いの」
 幻想纏いの鬼面が笑う艶黒の髪を靄に靡かせ、『鬼出電入の式神』龍泉寺 式鬼(BNE001364)は懐中電灯の光の先を静かに見据える。
 『闇に蠢くもの』――先日討伐したエリューションの、あの姿と呼べない姿が脳裏を過ぎる。
「生きとし生ける者は大抵が実体という形を伴っておる。その己が形こそ自我を形成する基本的な要素、知恵の高い生物ほど自己の存在感に依存する」
 英語で言うとあいでんててーじゃな、と舌っ足らず呟く。
(不定形で便利そうな身体の割に人の身を欲するあやつらも、それなりの自己存在を求めておる証左であろうか?)
 その疑問に答えてくれるモノはきっといないのだろう。何れにせよ異形は総じて滅ぼすのが彼女の、そして共に歩む者達の使命である。

 そろそろ目的地である池に辿り着く頃であろうか。

「…… !」
 沙耶の動きがハタと止まった。その直後には振り返り、『フロントオペレイター』マリス・S・キュアローブ(BNE003129)の橙眼へと視線を合わせる。己が脳内の映像を彼女の脳へ、マスターテレパス。
 辺りを彷徨う三つの熱源と、感情とは形容し難い無機質な思念。まだこちらには気付いていないらしい。
 受信した情報にオペレーターは静かに頷いた。
 瞳を閉じる。伝達する。沙耶が感じ取ったそれを、己が『声』に乗せて。

 『――敵影を確認。総員、戦闘準備開始』

●強襲!
 全方位レーダーみたいですよね。
 なんて、沙耶との連携について思いながら。
『守護結界を起動します』
 こちらに気付いていない敵影へ密やかに近付きながらマリスは結界を展開し、ESPによって万が一の不意打ちに備える。同時に式鬼、沙耶も己が強化術を発動していった。体内魔力を活性化させたアルティも結界によって不安要素の確立を零に近付ける。

 辿り着いたのはそれから幾秒の事か。
 木々の合間、灰の霧に包まれた三つの人影。

 そして――天を指差す正義の道理!

「不当に人を操る灰色の霧よ! 汝は許されざる、許されざるなんとかです!
 善には善酬い、悪には善裁く! アルティ・グラントが正義の鉄槌を下すです!」

 名乗りを上げるのは正義の礼儀。振り返る三人、光の無いその目に映ったのは――切り株に片足を乗せて決めているアルティと、その背後からバックライトの如く光を放つ『Steam dynamo Ⅸ』シルキィ・スチーマー(BNE001706)の姿。

「新兵揃いの部隊にだって、ちゃぁんと矜持はあるんだぜ?」

 マントを一気に脱ぎ捨てれば靄に靡く紅蓮の髪、豊満な肉体を包む勝負下着、排気管から勢い良く吹き上がる真っ白なスチーム。
 空圧式喇叭銃[TigerFang]と防御用工具[BullsEye]をその手に構え、辺りを目映く照らしながら蒸気式発電機の機械整備士は口角を持ち上げた。
 一般人達が操り人形の様な動きで身構えようと、――の、瞬間。
 厳然たる意志の聖光が戦場に満ちる。集中したアルティの神気閃光、身構える前だった故にそれは彼等を包む霧に強い衝撃を与えた。
 目標は灰の霧のみ。一般人は傷付けない。それが彼女の正義なのだ。
 意識を眩ませる正義の光に一般人達の足が揺らぐ。
 それらを鋭く見据え、式鬼は素早く印を切った。

「悪く思うでないぞ。」

 言葉の同時、警官を厳しく束縛したのは幾重にも広がる呪縛の術。
 その前に立ちはだかるのは鉄球を携えたガルフォード。

「可憐なレディ達よりも先ずは私の相手を願おうか……灰の霧の部分を狙えば良いのだったね」

 牙を剥く。獣人種のそれとはまた異なる鋭さを持った犬歯が覗く。
 ブリーフィングで聴いた通りに。紳士が喰らい付いたのは灰の霧。吸血――と呼ぶべき行為なのだろうか、食い千切った霧のエネルギーを身体に浸み渡らせながら思う。
 我ながらどうやって体力を回復しているのか不思議でならない、が……
「気にしてはいけないのだろうね」
 エネルギーをちゃんと頂けるのなら。呪縛を振り解いだ警官が振り下ろす警棒を鉄球で振り払い、間合いを開けて身構えた。
 回復は皆に任せよう、自分は攻撃に集中するのみ。
 それは彩にとっても同じ。彼女の正面には女子高生が、奇怪な動きで威嚇するように呻き声を上げていた。
 女子高生に取り憑く灰の霧が揺らめく。彩へ襲いかかる。咄嗟に横へ飛んで躱すも掠めた個所から痛みが脳へ伝った。顔を顰める。しかし踏み止まる、素早く間合いを詰める。
 その拳を彩るのは、鮮やかな、赤焔。

「ちょっと熱いですけど、少しだけ我慢してください!」

 相手は憑り憑かれているだけの女の子。出来るだけ傷が残らなくする為にも素早く解放してあげたい。
 狙い澄ませた火炎の一撃を、灰の霧に。
 その光景を脳内に受け取りながら真理亜が詠唱を始めた。木々の所為で視界に不便が出るが、沙耶の感知、それを受け取ったマリスのテレパシーによって解決されている。見えない仲間も全て回復する事が出来る。

「――さあ、今回も歌わせてもらうとするぜ。倒れるんじゃねえぞ、皆!」

 聴け、我が声を。
 聴け、我が祈りを。
 聴け、我が願いを。
 我が名の下に聖なる奇跡を。
 清らかにして厳粛なる福音を。

 鳴り響く歌。奏でられるアリア。
 仲間が攻撃に専念するのなら、火力に問題が無いのなら、自分は徹底的に援護するのみ。
 誰一人とて倒れさせない。
 その間にも前衛は徹底して灰の霧をブロックし、後衛陣は援護を行う。
 アルティはヒーラーに敵の攻撃が及ばぬよう態と目立つように仁王立ちで神気閃光を放ち、式鬼は呪印封縛で、沙耶は動けぬ霧をピンポイントで穿ち、彩とガルフォードも毒瘴気を喰らうもそれぞれ業炎撃を、吸血を放つ。その毒はマリアのブレイクフィアーが立ち所に癒し去る。
『ガルフォードさん彩さん、十時の方向から瘴気が来ます。警官の霧の分離を確認、一般人を安全な場所へ、沙耶さんへ灰の霧へのトラップネスト使用を要請します。それから――』 
 エネミースキャンは無いけれど。周囲にマギステラ・エメトを展開させ、マリスは仲間達に映像化した情報を送り続ける。その指には符術の鴉を留まらせて。
 灰の霧が分離し、頽れる警官はガルフォードが受け止めた。頭などを打っては大変だ、そのまま安全な場所へと運んで行く。霧は沙耶が気糸の罠で絡め取り動きを妨害する。

(皆、それぞれ、この戦いに意義を見てる)

 輝く退魔の光。燃え盛る炎の拳。縛り付ける呪印の鎖。
 シルキィの青い目には奮闘する仲間達が映る。
 式鬼やマリアの他は実戦経験の浅いメンバー。自分だって中堅とは未だ呼べないけれど。
 脳内に届く指揮の声。生命を啜る牙。正義の光。行く手を阻む糸の罠。
 シルキィの青い目には振り下ろされる鉄パイプが映る。

「なら、」

 緊張し過ぎも良くないしなー、なんて。
 先に倒れるなんてかっこわるいしなー、なんて。

「それを支えるのが――」

 鋭く、寸分違わず、一直線に投擲する。
 BullsEye――必中、印された雄々しき牛の瞳。
 軌道が逸れた凶器が彼女に届く事は無い。
 そして、振り上げられた破滅のオーラから灰の霧が逃れる事もまた、

「あたいの役目だ!!」

 ――無い。

 墜撃。強撃。鈍い衝撃、のたうつ様にサラリーマンの体から離れる灰の霧。
 それをすかさず狙うのは真理亜、既に詠唱は終え――展開される魔法陣。精密射撃は苦手だが、四の五を言っている暇は無い。

「これ以上は好きにさせねえよ!」

 放たれる魔矢。灰の霧を撃ち、貫き、滅ぼした。
「ナイスシュート、真理亜!」
「おぅ、……だから名前で呼ぶなって」
『かっこいいと思いますよ。かっこいいです』
「マリスもわざわざマスターテレパスで言うんじゃねーッ!」
 サラリーマンを安全な場所へ運びつつ真理亜が怒声を張り上げる。シルキィがカラカラと笑った。
「悪ィ悪ィ――お詫びにチャージしてやるよ。目一杯の気合いを込めてやるぜ!」
 スチームを吹きつつ整備士はインスタントチャージを。

「聖光を以って浄化せよ! 汝が生きる希望を放棄したまえ! 焼き尽くせ!」
 女子高生に憑いた霧もアルティが焼き剥がした。気を失った少女は彩が受け止める。
 引き剥がされた灰の霧はすかさず彩を狙ったが――その横から式鬼の式符・鴉が襲いかかる。怒りの毒、灰の霧が攻撃針路を式鬼へ向けた。
 放たれる毒霧。しかし護法式神「玄亀」の堅固な甲羅が術主の式鬼を護る。

「こう見えて式鬼はか弱い少女じゃからの。できれば痛い目には遭いたくないぞ?」

 細い指が印を切る。
 一方、もう一体の灰の霧は沙耶が気糸で絡め取っていた。シルキィのインスタントチャージのお陰で、沙耶をはじめ誰もが気兼ねなく思いっ切り技能を使う事が出来る。
「討伐の仕上げですね……」
 沙耶がガルフォードへ目配せした。頷く彼は既に、攻撃態勢。
「安心し給え、『食べ残し』たりしないさ」
 吸血鬼が牙を剥く。
 食い千切る。
 嚥下する。
 その言葉通りに。

『残り一体』
 マリスの声が響く。
 それはアルティの神気閃光に圧され、式鬼の呪縛にすっかり動きを封じられていた。
 視認しながらシルキィは彩と意識を同調させる。
「ブチかましてやんな、彩」
「任せて下さい!」
 インスタントチャージ、シルキィの心を受け取って。
 彩の拳に絶対零度が宿った。
 地を蹴る、間合いを零に。

「せいやー!」

 叩き付けた。凍り付かせた。魔氷の一撃。
 彩はそのまま敵が動けぬ間に間髪入れずバックステップで間合いを取り、軽やかに一回転――気合を乗せて鋭い蹴撃、放つ真空刃。全力の一撃。
 それは真っ直ぐ、真っ直ぐ、

「凍ったまま砕け散れです!」

 灰の霧を粉砕した。

●外へ
「鬱蒼とした森と池。山ではありませんが電波通じるでしょうか」
 救急車へ連絡を入れようとしていた面々へマリスが呼びかける。
「トラックあります。運びます運べます」
 振り返ったそこ、オペレーターの傍には幻視纏いより取り出された一台のトラックが。

 かくして、木々の合間を縫ってトラックが行く。何分足場が悪くってかなり揺れるのが難点だが。
 救出対象を無事取戻して帰りを待つ方の元にお返しするのが第一、そう考えていた沙耶は一先ず息を吐く。一般人達の体調が気掛かりだったが無事な様だ。
 介抱しねえとな、と真理亜は一般人達へ天使の歌を。念の為にブレイクフィアーのオマケ付き。

 程なく辿り着いたのは森の外――静まり返った夜の一時。
 一般人達を安全で見付かり易い場所に運び、ガルフォードはすぐに携帯電話を取り出した。人が三名倒れている、と連絡を付けるその傍らで式鬼が毛布を手に一般人へとしゃがみこんだ。
「こんな時期に野晒しでは風邪を引くじゃろう」
 一人一人、丁寧に毛布をかけていき。ついでに気付け用のお茶も傍に置いていく。
「……決して不味いわけではないぞ。苦い味はするがこれは気付け用故なのじゃ。うむ。」
 腕組をして、深く頷いて。
 その頭をわしわしっと豪快に撫でたのはシルキィの掌だった。
「よっす! お疲れさんっ」
 わっしわっし、傍にいた仲間達をとびきりスマイルと共に撫でまくり撫でまくりナデナデナデわしわしわしわし。
 しかし流石にガルフォードは撫でなかった。電話中だったし紳士だし!
「……? さて、撤退しようか」
 事情を知らない紳士は携帯電話を仕舞いながら仲間達へ――何故シルキィ君だけ髪がボサボサでないのか――提案する。このまま待ち続けるのもあまり都合が良くない。
「そうだな。……さ、あたいらは消えるか。夜の内にな」
 シルキィはニヤリ、と。
 同意の言葉、互いを労う言葉、踵を返すリベリスタ。
 しかし、最中に立ち止ったアルティが振り返る。静けさと平穏を取り戻した一帯を見渡して――彼女は言い放つのだ。

「これにて一件落着というやつですね。総じて不幸な出来事は正義によって蹴散らされる定めなのです!」

 言葉は夜空へ。
 そして静寂。あと数時間も経てば、眩い太陽が昇る事だろう――……



『了』

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
メルクリィ:
「お疲れ様です皆々様! ご無事で何よりですぞ。
 非戦技能の使い方、互いの連携が素晴らしかったですな! 今後にも期待ですぞっ。
 ではでは……ゆっくり休んで、体の疲れを取って下さいね。」

 だそうです。お疲れ様でした。
 如何だったでしょうか。

 MVPはシルキィさんへ。素晴らしい縁の下の力持ちでした!

 これからの依頼も頑張って下さいね。
 お疲れ様でした、ご参加ありがとうございました!