● 今日は雨。やっぱり晴れが良い。 雨が降るとさ、家でじーっとしていたいなーなんて思っちゃうよね。 まあ、私は雨が降ろうと、槍が降ろうとお仕事しなきゃいけないんだよ。 出勤出勤! 此処はド田舎の山の中だもん、早めに出勤しないと遅刻するんだよ。 とか考えていたら何かに背中を叩かれたような感覚がした。 いや、なんだろ……。 痛い。 え? 血? え? え? え? 腹部に風穴の空いた女性が地面に倒れる。 流れる血は雨と共に土の中へと染み込んでいった。 天から降ったものは、確かに水。 ただし、それは水の槍。 ● 「皆さん、こんにちは! 局地的豪雪の次は槍だそうです」 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は資料を配りながら話を始める。 最近は異常気象で嫌になります、とかそういう問題では無くエリューションの話。 今回もE・エレメントだが、その形状は雲であり、攻撃が槍だそうだ。 「ちょっと倒し方が特殊でして」 というのは訳がある。 「本体は上空の雲なのです。その雲が水の槍を生み出して、地上の人という人を襲う様なのです。その雲、槍を生めば生むほど小さくなっているのです」 つまり、攻撃をさせて、消滅させろという簡単なこと。 だが攻撃され、それを受けるだけのリベリスタでは無いだろう。その槍に対して対抗手段はあるはず。 「飛行があっても雲に攻撃は無駄の様です。物理的にも神秘的にも、まさに雲を掴むような話」 上手いこと言った、と拳を強く握った杏里。だがすぐに恥ずかしがり、照れ隠しに頭を掻く。 「場所なのですが、雨が降っている山の中なので足場に中止してくださいね。あと真っ暗ですので、明かりをお忘れなく」 エリューションが活発化するのは夜なので、仕方無いと言えば仕方無い。 「それでは、お気を付けて」 杏里は深々と頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月02日(水)22:49 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
■サポート参加者 2人■ | |||||
|
|
●天気予報は外れるときもある ――夜のうちは雨が降りますが、早朝には晴れるでしょう。 テレビではそんな事を言っていた。 けれども、この山ではそれ以外も降るらしい。 本日は槍、本日は槍。 フォーチュナはそんな事を言っていた。 傘は意味が無いけれど、リベリスタなら大丈夫でしょう。 早朝には晴れるでしょう。ただし地面には沢山の血が流れるでしょう。 『~でしょう』は、ひっくり返せば違うこともある。 ならば、その運命をねじ曲げるためにリベリスタは今日も…… 「雨が降ろうが槍が降ろうが、やり遂げて見せるぜ!」 槍だけにな! とつけ足し、愉快に高笑い。座布団あげましょう。 『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)はいつでも笑顔を忘れない。勿論、戦闘前のこの場でも。 愛しの葉巻が雨に湿って、使い物にならない。早くこんな依頼終わらせて一服しに行きたいものだ。 「良いぜェ、全力尽くして避け切ってやろうじゃねえか!」 雨の中だただた耐えるだけだなんて。 けれど早さを誇る『雷帝』アッシュ・ザ・ライトニング(BNE001789)は避けるというのも一つの課題。 雷帝たる者、雨には、雲には負けられない。 その横で『捻くれ巫女』土森 美峰(BNE002404)が考え事をしていた。 「私思うんだ……」 何か、考えついたらしい。 「雨が降ろうが槍が降ろうがとか言った奴は、本当に槍が降ったらどうなるか考えて無かっただろって。どう考えても槍降ったらやべえだろ、オイ」 確かにやばい。現実問題、今この目の前でそれが起ころうとしている。 危ない仕事だが、その仕事ができるのがリベリスタ。大丈夫、運命がついてる。 「全員立ったままで勝って見せようぜ?」 『仁狼』武蔵・吾郎(BNE002461)が美峰へそう言った。勿論意味は全員へと向けて。 『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイスは天井を見る。その顔は笑っているが、考えていることは笑えない。 何をしても攻撃を当てられない相手など、不愉快極まりない。だが頭上のアレは攻撃すればするほどリスクを負う。 どちらが先に倒れるか、勝負だ。 「何かもう、昔のゲームみたいよね。落ちてくる攻撃さえ避けてれば相手が死ぬ、って」 同じく『後衛支援型のお姉さん』天ヶ瀬 セリカ(BNE003108)も頭上を見上げていた。 確かにそんなゲームもある。だがゲームでは済まされないのが今回。 有限のリセットボタンはリベリスタは持っているが、一般人は持っていない。 『おじさま好きな少女』アリステア・ショーゼット(BNE000313)がその後ろで身を縮めていた。それは何かに怯えるような……。 彼女の脳裏には何かがよぎっていた。こんな暗く冷たい山の中、彼女の心に引っ掛る何かが。 同じ時、『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)も考え事をしていた。 雨は好きな方だ。雨が木ノ葉を叩く音は素晴らしい。けれど……槍は無い。 その時、ウェスティアの横を何かが勢いよく、風と共に通った。 ――ザクザクッ 雨によって湿った地面に、水の槍が2本刺さる。それを見て。 「うん、槍は無いと思うよ」 ウェスティアはこくこくと顔を上下に振りながら言った。 リベリスタがエリューション化した雲の下に来た時点で、雲の攻撃は始まっている。 ●天気予報で槍は無いよ 見た目は変わらぬ雨雲。 だが違うモノがあるとすれば、雲の下で小規模な魔方陣が幾度も展開されることだろう。 狙うは地上を這いずる人、ヒト、命。 それは勿論、リベリスタでさえ例外では無い。 ――まずは2本。 ふたつの槍が陣により形成され、地上へと猛スピード。 「かははっ! 遅ェ! 遅ェ! 遅ェ!!」 2本の槍はアッシュの頭上へと降り注ぐが、軽々にも、後方へバク転しながら2本の槍を避ける。 「ンな速度の鉄砲水で、この雷帝が止められるか――!!!」 最後のバク転も綺麗に着地したアッシュ。雷帝の名も、馬鹿にはできない巧さ。 1本たりともその身体に触れさせず、避けきった。 それを見たアリステアが思わず拍手をする。 そんな感じで、雨に紛れてどんどん降っていきます。上空の雲はまだまだ大きいのだ。 「ゲルトお兄ちゃん、宜しくお願いします!」 アリステアが『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)へ頭を下げた。 「お前は俺が守る。安心して回復に専念しろ」 その返答にアリステアはにっこりと笑う。 早速、槍をその身体に直撃してしまった吾郎へと天使の息を送った。 ゲルトは口にくわえた葉巻へ火を着けるが、やはり湿っていて点かない。諦めたかの様にライターを仕舞う。 「実に、俺向きの仕事だ」 ハイディフェンサーを発動させたその身体。守るために来たその身体。 天使の息を紡ぐ天使には、怪我をさせまい。 水の槍がアリステアへ降り注ぐ。思わず目を瞑ったアリステアだが、少しして目を開けた。 目を開けば大きな影が自らの盾となっている。 ゲルトの肩には槍が刺さっていたが、その槍もすぐに元の水へと戻っていった。 肩からの出血を眺めたゲルト。もう一度思った。 ――実に、俺向きの仕事だ、と。 続いて放たれた矢がウェスティアへと向かう。 動いたのは烏頭森だ。超直感で槍の位置を当てる。 そうなれば、槍を打ち落とそうと、頭に着けたスコープを目元へセット。更に、仕込み杖から銃口を晒した。 高速で飛んでくる槍へ―― 「ターゲットロック、ファイア!」 この攻撃、ここまで間で1秒と経たない。 放たれた弾丸がウェスティアの間近で水となって、はじけ飛んだ。 ウェスティアに当たったのは、少量の槍の一部だった水飛沫だけである。 もう一本、矢はある。美峰を的とし、そこへと落ちていく。 「うっわ!? こっちきた!?」 なるべく自分に槍が降ってこないようにと、お守りを持ってきた美峰だったが、折角の験担ぎも無念ながら、槍は容赦無く降り注ぐ。 その身に宿す守護結界さえ頼りだ。 「誰も、傷つけさせはしない……!」 『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)が美峰と槍の間へ走りながら介入する。 戦場ヶ原が戦太刀を抜き、幻影と共に槍を一閃。 その瞬間に水飛沫を身体に浴びたが、槍が仲間へ刺さるよりかはいくらかマシというものだ。 ●雲は未だ頭上を滑る それから何本の矢が降ったことか、雲は先程よりは小さくなっているのは目に見えて分かる。 だが、まだまだ雲は槍を降らし続ける。 回復も満遍なく行き渡っている。完全に回復していない者も中にはいるが、まだ頑張れそうだ。 次たる矢への警戒をしていたリベリスタ。 槍は360度から襲ってくる。もちろん、背後からも。 「ウェスティアさん、後ろ!!」 直感的に烏頭森が叫んだ。だが、それは遅い。 気づいた時には黒い翼の生える背中へ2本の槍が刺さった。 全く見当違いの場所から降ってきた槍へウェスティアは対処ができず、槍の攻撃をそのまま無抵抗に受ける。 槍の勢いで、前方へ転びそうになったウェスティアだが、宙に浮いているその翼と気合いで体勢を戻す。 刺さる槍こそ水となって土の中へと消えていったが、出血が激しい。 「武蔵、ちっとばかし、そっちは任せたぜ」 「変わるぜソウルゴッド! 任せろ」 吾郎と交代し、セリカの下を離れたソウル。 紡いだのはブレイクフィアー。出血を抑える手助けをした。 アリステアが天使の歌を奏で、仲間の傷を癒す。 美峰が守護結界を発動し、その被ダメージを和らげた。 むやみやたらと動くよりかは、動かずにいた方がメリットがあるだろうとその場で静止していたセリカ。 早く帰って冷えた身体をお風呂で温めたいと考えながらも、槍の攻撃を避け、守ってもらっていた。 ふと、気づいた様にライフルを構える。 「だから、早くこのお仕事終わらせないといけないわね!」 ライフルから放たれた光弾が槍に命中。その水飛沫だけその身体に受ける。 もう一方の槍を戦場ヶ原が斬り落とした時、美峰が頭上を見上げる。 「これは骨が折れるな……」 雲の大きさは……まだ消滅までは遠い。 「投射軌跡予測……シュート!」 烏頭森が再び光弾を放ち、槍を撃ち落としたが、もうひとつの槍がセリカの背後へと向かった。 「セリカさん! 後ろ!」 セリカの耳に烏頭森の言葉が響いた。 すぐに背後へ目をやれば槍が自分目掛けて飛んできている。 「雨が降っても槍が降っても、とは言うけど、雨の日はあんまりお仕事したくはないわね」 槍をひらりとかわし、地面へと吸い込まれていった。 「槍が降ってくるのがお仕事だから仕方ないけど」 頭上を見れば、まだ暗雲が続く。 ハイディフェンサーで強化された身体で槍を受けたソウル。 後ろでセリカが大丈夫かと声をかけた。 「なに、怪我をするのは俺のような男の役目だろうさ」 兵士はただの駒と思っているソウルだが、仲間は大切な護衛対象である。 仲間のためであるならば、その身体、いくら傷つけたって――。 2本目の矢が向かったのはソウル自身。 背中から貫通し、肉を抉って槍は地面へ染み込んでいった。 足が地面に崩れ倒れそうになったソウルだったが。 「槍のような雨だっつってもよ、それで俺が倒れたら、誰が汚れ役をやるってんだ」 血を流すのは少なくて良い。 気合いと執念で、激痛の走る背中さえ無視して、立ち上がった。 ●それはもう先よりも 雲は最初見た時より、かなり小さくなりつつある。 確かに終わりは近くなりつつあったが、リベリスタの疲労もだんだんと大きくなりつつあった。 追いつかない回復を埋めるようにウェスティアが天使の歌を奏でる。 が、その前に。 槍が美峰を襲う。 咄嗟に吾郎が美峰と槍の間に入って壁となった。 肩に刺さった槍に顔をしかめつつも、美峰の無事を確認。 ウェスティアはそれに応える様に天使の歌を発動させた。彼女は本来はマグメイガスだが、回復も担うことができる。 彼女の回復はホーリーメイガスにも負けず、劣らずの回復量であった。 だが――。 「ぁぐっ!?」 その小さな身体に槍が刺さった。途端にフェイトが消失した感覚がした。 再びウェスティアに槍が向かう。吾郎がもう一度飛び出して彼女を庇ったが、自らの体力も危険。 2本目の槍は吾郎へと向かう。 金色の髪を揺らした戦場ヶ原が抜刀と共に槍を切り落とした。 その後ろで美峰が動く。 始めより守護結界を展開させながら仲間を守ってきた美峰。 握りしめたお守りをは裏腹にも、槍は彼女を狙っていた。 「まだ、まだ倒れたりしたら駄目だかんな!!」 吾郎へと傷癒術を発動させ、その傷を癒していった。 雨は降り続けたが、顔面等が濡れるのも構ってはいられない。 アッシュと戦場ヶ原が背中を合わせて、槍の射撃に備えた。 速度が上回れば、槍の落下位置へ進み、迎撃し続けた二人。その口から吐く息が荒い。 再び一斉に逆方向へ走り出す。 槍が2本。それぞれがそれぞれの槍を切り落とした。 ●倒れずの執念 回復は尽きないが、追いついている訳でもなくなってきた。 ランダムに降ってくるものの、2本が同時に当たってしまうと回復も1回では追いつかない。 それでもまだ一人もリベリスタは倒れていない。 槍が降り注ぐ。 吾郎が美峰を護り、アリステアがその傷を癒していたが、その後ろでアリステアに降った槍をゲルトがその身で受けた。 振り向いたアリステアが傷ついたゲルトを見た。そして、つい耐えられたなくなって。 「全員けがなく帰ろうねっ!」 それは彼女の一番の意思と思い。どんな依頼でも、いつも優先事項はそれ。 どんなに傷ついても、どんなに血が流れても、アリステアを始めとした回復班が治すから――。 アリステアの2回目の回復は天使の歌。手を祈り手にして、癒やしの存在へと呼びかければ歌が降り注ぐ。 まだ、倒れる訳にはいかない。 地面の土は、リベリスタ達の血を絶えず吸い続けていた。 やっと雲は見えるか見えないかほど小さい。次できっと、最後。 速度の高いアッシュが槍へ立ち向かった。 頭上から降る槍を一番にその目で捕え、標的となった武蔵の前方へと恐るべき速さで移動。 その流れに乗って、己の武器を構えて槍とソニックエッジを放ったが――武器を持つ手が雨の水で滑る。 数センチの差で槍を止められず、その槍が自らの横腹に当たり、そのまま武蔵の近くまで吹っ飛んでいった。 これまでのダメージの蓄積から、フェイトが消費され光りに包まれたが、まだ彼は終わらない。 「痛――く、なんか、ねェ!」 出血もなんのその。立ち上がり、休む暇も無く武器を握り締めた。 「舐めんな」 2本目の矢は自分へと向かう。 今度こそと、ソニックエッジを発動。 けして止まらない、流れるような動きで向かってくる槍へと跳躍。 「俺様を誰だと、思ってやがる――!!」 そのまま空中で回転しながら、槍を刃で相殺し、槍だった水と共に地上へと着地する。 濡れた髪を片手で掻上げながら、もう一方の手を天へ。そして中指を立てる。 「温いぜ、次は雷も一緒に連れて来るんだな! 纏めて相手になってやらァ」 天空へと咆哮した雷帝。 槍が降る雲は完全に消滅している。 静かになった天空は、ひたすら夜明けを待つばかり。 雨は止み、槍も止んだ。もう少しすればきっと、朝日が虹を呼ぶだろう。 それまでアリステアが天使の歌を奏で続ける。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|