●まさかそんな、ねぇ? いつもの様に万華鏡の力を借りて夢を見てた。 今日も血塗な夢を見ると思ったら気が重い。 正直、フィクサードに拉致されるまでは普通の学生をやっていたので、血とか肉片とか吐きけがしてしまう。 それでも、やっぱりフォーチュナとしての仕事は果たしたい。 見た夢は――。 「……食べなきゃ」 うん、食べなきゃ。 ●というか、甘いの好きですか? 「皆さんこんにちは! あのですね、皆さんお腹減ってません? 減ってますよね?」 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)が今まで以上に笑顔で話しかける。 「今回の依頼……と言うよりは、お願いに近い感じなんですけども」 そう言いながら、資料を配り始めた。 目を通してみれば、巨大な……ハロウィンカボチャ? 「何処かの世界のD・ホールから落っこちてきた様なのです。そろそろハロウィンですね!」 そうです、ハロウィンが近いです。それはこっちに置いといて。 一般的なジャック・オ・ランタンに使われるハロウィンカボチャは食用では無いらしいが(食べれるところは調理次第で食べるとか)、今回の巨大なそれは食べれるらしい。 「つまり、それを食べちゃってください! あ、食べるところは中身だけで大丈夫ですよ! 食べて処分しないとそれがエリューション化するみたいなんで……」 お残しはいけません、という事だろう。 皆さんならできるだろうと、リベリスタ達にキラキラした目線を向ける杏里。 というか、依頼の目的は食べる事も大事だけれど、もうひとつ。 「最終的にはD・ホールを壊してください!」 そう、それも大事。 最後にもう一度。 「……お腹、減ってますよね?」 杏里の両手には、10人分のナイフとフォークセットが。 ごちそうさまの声、待ってます。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年10月26日(水)22:33 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●準備万端 三高平にある喫茶店陰ト陽の看板の前。 「カズトくんさすが男の子。頼りになるのです」 にっこり笑った『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)が『高校生イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)の背中の荷物を見つめながら言う。 これも必要、あれも必要と積み上げた荷物は明らかバックの規定量をオーバーしていたが、まあ収まった。 問題はそれをどう運ぶかだが、歴戦を積み重ねた夏栖斗なら大丈夫だろう。 足取り軽く、ステップを踏むように歩いて行くそあらの後ろで、荷物のせいで足取りの重い夏栖斗。更にその後ろで二人の背中をフライエンジェの少女が手を振って見送っていた。 しばらく歩いていれば、ふとそあらが何かに気づいた様に百貨店やスーパーの中へと入っていく。そして出てきた頃には戦利品をその手に抱えていた。 「え? マジでこんなにいるの?」 「いるのです。必要なものなのです」 そあらは荷物を夏栖斗の背中へと付け足していく。 夏栖斗の背中に更に負荷がかかったが、文句は言わずに再び歩き出す。 「うん。これくらいあれば十分だろう」 昭和の香りを感じさせるオート三輪の荷台に、調理関係の荷物をこれでもかと積んだ『テクノパティシエ』如月・達哉(BNE001662)。 丁度準備が終わった頃に、一人の少女が達哉の下へ来た。 「ああ、来れたのかい。良かった。それじゃあ行こうか」 それは、この依頼が安全かつ、無難であるからこそできたこと。 ●食べる準備をしましょう! 「いやぁー今回のバイトは大当りッス……うおお! でかっ!!?」 つい飛び上がってしまった。そんな『宿曜師』九曜 計都(BNE003026)の今月の食費は底が見えかけている。食べるだけの依頼ならばどんと来い! だったのだが、来てみれば予想以上のサイズのカボチャ。 「まあ、ただ飯より美味いものは無いさ」 『自称正義のホームレス』天ヶ淵 藤二郎(BNE002574)が計都の姿に苦笑しながら言う。 「いける、やれる、食える!!」 その横で、『13000GPの男(借金)』女木島 アキツヅ(BNE003054)の気合いは凄まじいものだった。 というのもお分かりの通り、借金返済のために日々を依頼に費やしている彼。今回の依頼もその礎にするために、アキツヅは食う。 そんなこんなをしている内に、そあらと夏栖斗が到着する。 「これは料理のしがいがあるのです!」 到着した途端にエプロンをその身体に装着したそあら。その瞬間、目覚める。 (はっ! これはきっと花嫁修行の一環に違いないのです。燃えてきたのです!) なかなかの家庭的そあらさんです。愛しき室長のために、依頼でさえ修行にしてしまうその心、素晴らしいです。 夏栖斗が荷物をおろし、何も背負っていないときの幸せを感じていた頃に、オート三輪が到着した。 そこから出てきたのは達哉は勿論だが、その手に引かれて『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)も一緒に出てきた。 驚きを隠せないリベリスタ達だったが、戦力がひとつ増えたと考えて欲しい。お土産まで考えてくれたその心は受け取りました。 「私にも、是非お手伝いをさせて下さい!」 普段の戦いには赴くことはできないが、食べるだけならば杏里にもできるだろう。 「そういう訳でD・ホールを真っ先に潰してくれ」 D・ホールから戦闘すべきモノでも出てきたらフォーチュナが危ない。 といっても此処には夏栖斗を始め、信頼のできる精鋭揃いだ。だからこそ、お忍びで杏里を連れ出すことができた。 D・ホールが壊れる、それまでの間は達哉がその背中で杏里を守る。 それでは、楽しいかぼちゃ三昧を始めよう! ●やるべきことはやっちゃいましょう! 調理その前に、終わらせてしまおう。 D・ホールはかぼちゃのすぐ真上にあったので、探す手間も無い。 「うっし、食前の運動といくか!」 「さっくり潰すッス!」 「忘れないように、いまのうちにってな」 「おじさんも少しでもお腹の隙間をあけたいね」 夏栖斗の回転蹴りが炸裂し、計都の弓矢が射抜く。アキツヅが軍配を舞わせ、そして最後に藤二郎がその指を鳴らせばあっという間にD・ホールは消滅する。 達哉の背中から覗いていた杏里が思わず拍手をした。 その楽しそうな姿を見た達哉は安心して調理場へと足を運んだ。 「大きなかぼちゃだね!」 『食堂の看板娘』衛守 凪沙(BNE001545)が自前の包丁をかぼちゃに突き刺せば簡単に刺さったが、その刃の大きさが足りない。 一旦包丁を抜き取り、丁寧に仕舞う。そして、その包丁の代わりを担うのは自らの、脚。 「切るのもひと苦労だよっ!」 繰り出したのは斬空脚。宙を舞った脚から飛び出した鎌鼬がかぼちゃの頭上を切り刻んだ。 ハッ! と気づき、リベリスタ達を見回した凪沙は一言。 「食べ物を蹴った訳じゃないからねっ!」 大丈夫、そのダイナミックな切り方はリベリスタらしくて良いと思います。 かぼちゃの頭上に空いた穴から今度は中身を掻き取る作業が始まる。 「めざせ! 世界一のジャック・ランタン!」 『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)が身軽に飛び、脚立の上にすとんと着地する。 AFから取り出したのは、未使用でかつ消毒済みの綺麗なスコップ。それをかぼちゃの果肉へと突き刺して、掘り出す掘り出す掘り出す掘り出す掘り出す。全てはジャック・ランタンのために、掻き取り掻き取り掻き取り掻き取り掻き取り掻き取り。 取り出した果肉は食べるだけ班が運ぶ。働かざるもの食うべからず、ですよ。勿論杏里も。 ●調理しちゃいましょう! コンロやその他もろもろ。調理で必要な物は達哉や計都が用意してくれていた。もちろん電源の元はオート三輪。便利です。 そあらは作るものリストとにらめっこしていた。 「南瓜ポタージュ、コロッケ、南瓜チップ、サラダ、ディップ……それと煮崩れなければ煮物も作りたいのです」 沢山つくるけれど、くり抜いてもらっている間にディップを作らなければ。ちゃんと時間配分を考えて効率よく行動するあたり、良いお嫁さんになる夢は本気の様だ。素晴らしい。 その横で凪沙がかぼちゃの部位ごとに味見をしていた。 「う~ん、皮の近くの甘さと真ん中の甘さはちょっと性格違うかも。あとはヘタのあたりも若干味が違うね。軟らかさはどうかな?」 こちらも素晴らしい。流石食堂の看板娘だ。 食材とは一期一会であるために、その一回でさえ無駄にしないよう食材を味を理解し、分析し、上手に引き出してあげる。 「じゃ、ひととおり煮てみよっか」 大鍋を用意し、楽しげに水を入れ始めた。 凪沙と一緒に味見していた達哉は、料理のレパートリーを頭の中で整理していた。 (うん、やはり糖度が高く、お菓子に向いている。洋菓子には紅茶、和菓子には抹茶を出して合わせよう) そう考えながら、メモ帳に書き込む筆が動く動く。 作るものは、南瓜のクリームパスタ、南瓜のスープ、南瓜シフォンケーキ、南瓜パウンドケーキ、南瓜レアチーズケーキ、プリン、饅頭、南瓜羊羹と和洋様々であった。 決まればすぐに行動へと移す。 それぞれが、それぞれの得意な分野で料理を行う。本日集まったリベリスタはとてもバランス良く、最適だったのかもしれない。 そんな中で凪沙が冒険をし始めた。 「ちょっと炙ってみようか」 ひとかけらのかぼちゃをコンロで炙ってみれば、シュボッと水分が飛び、黒こげになったかぼちゃ。とても食べるには勇気が必要そうだ。 「うん、炙るのはやめておこう」 失敗があってこそ、良いものができるのだろう。 その横でくり抜き終わったかぼちゃをジャック・ランタンにする作業が始まった。 「オレ、目のとこくり抜くー!」 「じゃあ俺は口やるね!」 終が器用に目を作り、『天翔る幼き蒼狼』宮藤・玲(BNE001008)が綺麗に口を作る。 ナイフでくり抜くも、皮は案外柔らかくて作業しやすく、数分と経たないうちに顔ができあがった。 そこから穴のあいた頭へ丁寧に蓋をして、蝋燭を中へといれてやれば完成! ジャック・ランタン! まだお昼なのが悔やまれるが、夜になって暗くなれば、辺を妖しく照らすランタンとなるはず。 それが終わると終と玲のお腹が鳴ってしまった。 「そあらちゃんと凪沙ちゃんの手料理、たっつんのスイーツまだー?」 ●食べちゃいましょう! ジャック・ランタンのすぐ目の前にシートを敷いて、その上に完成した料理を並べた。 色とりどり、選り取りみどりの料理を目の前に、肉体労働組みは歓喜する。 「煮物とてんぷらとコロッケとグラタンとスイーツが食べたいです!! ……てゆうかもう全部食べちゃう!もぐもぐする!!」 『中身はアレな』羽柴 壱也(BNE002639)が目を輝かせてはしゃいでいた。もうお腹の減り具合は最高潮。端から端まで片っ端から食べていきたい衝動だ。 紙皿に紙コップ。その中へ達哉が持ってきた飲み物をそれぞれが好きなものを選び注ぐ。 準備はできた。 だが、勝負はここからだ。というのも、その量は半端なく大量。 しかし、リベリスタのお腹もいい感じにすかしている。手に持ったフォークとナイフが獲物を探している。 用意はいいか? それでは…… 「――喰らうぞッ!!!!!」 アキツヅが咆哮し、宣言すれば、それがいただきますの合図。 「「「「「いっただっきまーす!!」」」」」 その声が辺り一面に響いた。 「うめええ!」 「それ、あたしが作った煮物なんです。あ、こちらも食べてみてください!」 夏栖斗が幸せそうに頬張った煮物。凪沙の作った、異界のかぼちゃと一緒に野菜や果物と煮込んで味の変化を楽しむ一品。 他にも多々あるが、かぼちゃゼリーを勧められて食べたらやっぱり美味しい。 「流石凪沙だな! これも美味しいよ!」 「そう言ってもらえて嬉しいです!」 女の子が作った料理だもの、そりゃ美味しいに決まっている。けれど食堂の看板娘である凪沙の手料理は2倍も3倍も美味しく感じた。 正直な感想を述べられ、凪沙が顔を赤くしながら照れていた。 夏栖斗の食べる勢いは変わらずに、一生懸命に目の前のかぼちゃを消費していった。残したら勿体無いし、美味しいしね! 凪沙も負けずに、自分以外が作った料理にも手を伸ばし、その味に感銘を受けていた。 「この、シフォンケーキ美味しいのです。達哉さん、是非レシピを教えて欲しいのです」 「ああ、勿論だよ。このコロッケも外はサクサク、中はホクホクで美味しいね」 そあらと達哉はお互いの料理を食べあっていた。やはり美味しい。それぞれが各々の分野で力を出し切っており、優劣無く褒めあっている。 「かぼちゃ! スイーツ!!」 プロの達哉のお菓子は、見た目から壱也の空腹を刺激していた。 見た目に負けず、味も一流そのもの。 「美味しい! これどうやって作るんだろう……」 玲がスイーツに舌鼓しながら達哉に聞いていた。帰ったら玲も大好きな人に作ってあげるといいよ。 色んな種類のスイーツを目の前に玲の目はキラキラ輝いていた。 「みんな、料理上手なんスね」 コンビニ生活は駄目ですよ計都さん。 計都が一定のペースを保ちながら食べていたが、やはりその量が凄い。食べながらも胃を動かし動かし、スペースをあけながら食べていく。まだいけそうです。 「いやぁー幸せだねぇ」 藤二郎が秋を感じながら、幸せも感じていた。 ホームレス生活も長いが、やはり人の手料理というものは良いものなんだなと実感させられる。 食べ続けるリベリスタの中でも一番気合いが入っているのは彼だった。 「喰って喰って喰らい尽くせ!」 アキツヅの手は早い。迷わず獲物を選択し、その口に運んでいく。 水はあんまり飲まずに、食べ続ける。彼曰くカボチャといったもっさり来るものは、唾液をいかに分泌できるかが勝敗の鍵を握るとか。 彼の胃は例えれば、ブラックホール。誰よりも、誰よりも食べ続ける。 今まさに暴食を絵に描けば、アキツヅの姿になるのではないだろうか。 食べて食べて食べて食べて、全ては借金のために!!! おかしい、年長者から駄目臭がすると思ったアキツヅだが気にしない。 そんな彼を見ていた杏里が唖然として、口がぽっかりあいていたけれど、すぐに可笑しくて笑ってみせた。 何分経ったか。何人かは戦闘不能に陥っていた。 「あたしはもういいですから、皆さん頑張ってください……」 ぱたり。 一番最初にそあらがその場に倒れ、ナイフとフォークが手から離れる。 「そ、そあらさーん!!?」 夏栖斗が叫んだが、そあらはもう動かない。一人、戦力を失ってしまった。恐るべきかぼちゃの威力。あ、フェイトは消費しませんので大丈夫です。 それから続々と苦しさを訴え出していた。 「がっでむ! カボチャ如きが、貧乏人の胃袋なめんなー!! ひゃっはー!!」 計都も苦しそうにしながらも、気合いを入れる。まだ、まだナイフとフォークは離さない。離したらきっと、二度と持てなくなる……!! 胃に負担をかけながらだが、着実にかぼちゃは無くなっていく。エリューション化するまで6日はあるが、美味しい料理は作ってからすぐ食べないといけませんね。 数十分、数時間経て聞こえた声は。 「ご 馳 走 様」 それは気合いと、少しばかりの執念の勝利。 ●帰りましょ! 大量にあったかぼちゃの料理達も、すでに無くなっていた。 それはとてもいいことなのだが、綺麗になったお皿の回りでリベリスタが倒れていた。 「も、もう入らないよぉっ」 計都が自身のお腹をさすりながら言った。もうしばらくはかぼちゃは見たくない気がする。 「いやぁ、美味しかった。また食べたいね」 藤二郎が重いお腹を抱えながらも、感謝の意を込めて皿を洗っていた。 それを後ろに藤二郎がジャック・ランタンを見ながらナイフとフォークを再びその手に装備した。 「え? だって勿体ないでしょ?」 まだ食べるのか! というツッコミは置いておいて、それまで食べるだなんてリベリスタ凄い。 「だ、だめー、それ俺が作ったからだめー!」 終と玲の共同作品。食べられては少し困ってしまう。 粘ったかいがあって、それは食べられずに済んだ。 「お土産持っていってあげようと思ってたけど、来られて良かったよ!」 「お土産は……その心だけ受け取っておきます!」 夏栖斗や壱也は杏里へお土産を考えていたが、本人が来てしまったのでその必要も無くなってしまった。 リベリスタと同じ体験ができて、杏里は大満足。リベリスタ達には感謝している。 片付けも終わり、それぞれが帰路へと着き始めた。 そんな中で、そあらが大事そうにかぼちゃ料理のレシピを見ていた。 それは、室長のため。渡すのは、手料理。その隠し味は、純粋なる愛。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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