●Aegis 日が昇る。 嗚呼、今日も日が昇る。 「SNの二人、CN、HNの二人、NN、DN、YN――……残るは私と、MNとPNですか」 黎明の光に白銀の鎧が煌めく。 冷たい風は凛と大楯と大槍を輝かせた。 「うむッ……宜しいッ! ならばこの騎士道に賭けてッ! 正々堂々ッ……! 私は誰からの挑戦も受けますともッ!! いざ、熱き戦いをッッ!!」 天に掲げるその刃に、迷いの曇りは一片も無い。 ●騎士道とは 「……クロスイージスは防御能力に優れ支援も得意とするバランスの良い戦士です。 味方をも護るその強固な防御能力を攻撃力に変換することで、敵の強化を破壊する能力も併せ持っています。 堅牢なる盾は簡単に破られる事はありません。クロスイージスは悪夢の要塞の如く敵の前に立ち塞がるのです」 書類に書かれた文字を口にして――『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)が事務椅子をくるんと回し、リベリスタ達へと向き直った。 「ハローですぞ皆々様、身長2mの名古屋・T・メルクリィです。いつもお疲れ様ですぞ。 サーテ、っと。そんなこんなで本題に入りますぞ。耳かっぽじってお聴き下さい」 言いながら彼がリベリスタ達に見せた書類には『ノーフェイス:クロスイージス』という文字とその画像、更にその説明が記載されていた。 「御覧の通り、クロスイージスに酷似した能力を持つノーフェイスが現れましたぞ。その名も『CN』……”ク”ロスイージスモドキ”ノ”ーフェイスの略ですな。」 資料を卓上に、機械の腕を伸ばしたメルクリィがモニターを慣れた手つきで操作する。映し出されたのは西洋甲冑を身に着けたケンタウロスの様な凛々しい騎士の異形――巨大な槍と楯を装備している。白銀に輝く堅牢なそれらが『CN』の武器なのだろう。馬に異形化した脚部には機動力も有りそうだ。 「皆々様の中にもクロスイージスの方がいらっしゃる筈ですから良く分かるかと思いますが、『CN』は防御値が高くとってもタフネスな、正に『要塞』ですぞ。 それに状態異常系無効というおっかない特徴も持っとります。……肉体のタガが外れているからこその離れ業ですな。 『CN』の攻撃方法はクロスイージスのそれとほぼ一緒です。そして前々回のナイトクリークモドキ同様、『CN』は独自技を持ちません。 ただし! その分『CN』の能力値は驚異的です。特に防御。生半可な攻撃じゃ『痛くも痒くも無い』が読んで字の如くですぞ! しかも機動力もあるんで、舐めてかかったら間違いなくドエライ目に遭うでしょうな」 言い終わると、一応渡しておきますぞと新たな書類を卓上に置いた。クロスイージスのスキル説明が記載されている――後でしっかり読むとしよう、必要があれば仲間のクロスイージスに色々訊いてみるのも良いかもしれない。リベリスタ達は顔をあげてフォーチュナへ意識を向けた。 「次に場所についての説明です、しっかり聴いて下さいね」 リベリスタ達の顔が自分の方を向いた所で、メルクリィが説明を再開した。モニターには短い草が一面に生えた広い広い草原――周囲に山を一望する事が出来る。高原だろうか、ゴツゴツした岩も疎らに存在している。 「今回の戦場となる場所はこの広~い高原ですぞ。台地なんで斜面は無いです。 標高が高くって酸素がちょっと薄めですが、リベリスタ皆々様の身体能力なら全くの無問題です。ご安心を。ただちょっとばかし寒いかも。風邪引かないで下さいね。 時間帯は日の出前後。薄明るいしどんどん明るくなります。懐中電灯とか暗視は要らないでしょーな。それと、多分誰もやって来ないと思いますぞ。 ――説明は以上です。それでは皆々様」 メルクリィのクマが酷い機械眼球がリベリスタ達に向けられる。そして一間の後に、ニコヤカな声がブリーフィングルームに響いた。 「頑張って下さいね。くれぐれもお気を付けて! 私はいつも皆々様を応援しとりますぞ。」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月26日(土)23:26 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●黎明と共に 雲があんなにも近い。 澄み切り琴線の如く張り詰めた空気に漂う薄雲は、黎明の彩光に複雑な色合いを見せつつ静かに漂っていた。 「CN、クロスイージス、ねぇ……」 日の出間近の薄光に黒鉄色のアーバレストを鈍く輝かせ、『後衛支援型のお姉さん』天ヶ瀬 セリカ(BNE003108)は愛銃と同じ色をした黒髪を冷たい高原の風に靡かせる。 「相手の手の内が見えてるのはありがたいけど、バカみたいに頑丈で機動性も及第点、戦い方も正攻法、って逆に面倒よねぇ、隙が無くて」 片時も気が抜けない。油断は許されない。深呼吸を一つ、冷えた空気を灰に満たす。 そんな澄み渡る空気をヒュンと切り裂いたのは銀の刃、『酔いどれ獣戦車』ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)はNagleringを手に馴染ませるが如く軽く振るう。 「今回のモドキは鉄壁の守りを誇るクロスイージスモドキか。俺の剣が勝つか奴さんの堅さが上か、楽しみな対決だぜ」 正に矛と楯、攻めと守り。デュランダルとは対極の存在。 尚更負けられない。ゾクゾクと背骨を這い上がる血戦の予感に嫌でも口角が持ち上がる。 しかし、と思うのだ。 「伝え聞く限り、デュランダルモドキも正々堂々たる戦いをしていたそうだから、ノーフェイスになる前の性格をそのまま受け継いでいるんだろうな。 奴さん自身も超熱血の馬鹿正直、俺も似たようなもんだが、そういうのは嫌いじゃないぜ」 出会いさえ違えば。彼がフェイトを得ていたら。僅かな運命の歪さえ無ければ。 友人として酒を酌み交わしながら戦いに関しての談義を出来ていたのかもしれない。 カツ、Nagleringを高山植物の茂る地に突き彼方を見据える。 分かる。 近い。 「崩界の要因と成り得るノーフェイスは討たねばなりませんが……」 源 カイ(BNE000446)は顔を俯け眼鏡を静かに押し上げる。 足元に広がる緑。浮世と切り離された静寂の世界。 「騎士道精神を尊ぶ高潔さ、そんな方が運命に愛されず僕らと相対さなければならないなんて……とても残念で、悲しい事です」 閉じた目を、開ける。現実はいつだって残酷で、気紛れで、現実的だ。 顔を上げる。下ろしたその手にはスローイングダガーを。 「敵は強敵だ。だが私達ならば倒せない相手ではないだろう」 一陣の風に黄金の髪を揺らす『鋼鉄の信念』シャルローネ・アクリアノーツ・メイフィールド(BNE002710)の鋭い碧眼が徐々に近づいてくる蹄の音を見澄ました。 「攻めは任せることになる。分厚い守りをブチ破ってこい。 守りは任せろ。何があろうとも陣形を維持してみせる」 その瞳に揺るぎは無い。偽りは無い。恐れは無い。己が鍛え抜かれた肉体と仲間を信じるのみ。 ヘビーレガースに彩られた強く美しい脚で重く地面を踏み締め、聳え立つ城塞を思わせる威風を放ちシャルローネは深く身構える。 かくして騎士は遣って来た。軽々と岩を飛び越え、白銀の武具を輝かせ、蹄を鳴らして、隠れる事もせず真っ正面から堂々と。 「うむッ……リベリスタ諸君ッ! 良く来たねッ、我が名はクロスイージスモドキノーフェイス――CNであるッッ!! 諸君達と相見えた事をッ私は誇りに思うッ!!」 基本声量がバカでかい。銀の槍を天に高く掲げて、CNは兜の奥からリベリスタ達を見渡した。 (何かの意志が働いているのか、それとも別な意図があるのか……) まだ解らないが全力で倒すまで。両手に盾を、『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)は光のオーラでその身に守護の加護を纏う。一歩出つつ名乗りを上げる。 「尋常なる勝負などは無縁だ。 だが、名乗っておこう。――自分は、ウラジミール・ヴォロシロフだ」 ホホゥ、CNが興味を示す。同じクロスイージス、対峙する二つの要塞。 そんなCNに声をかけたのはデュランダルであった。 「俺はディートリッヒ・ファーレンハイトっつぅんだが、CNの旦那よう。 アンタ、DN……デュランダルモドキと勝負した事あるのかい?」 「ウムッ! 勿論だともッ! 彼とは良いライバルであった、だが、諸君達に討ち取られたと聞く!! ――嗚呼、君を見ていると彼を思い出すよディートリッヒ君ッ! 彼はライバルであり無二の友人であったッ……! ならば私は戦おうッ、仇を取ろうッ! 彼の仇をッッ!」 「そうかい、なら……全力で頼むぜ?」 「望む所ッ」 CNの体が輝く。その輝きはオーラとなり、オーラは三枚の楯となり騎士の周囲に布陣した。 その様子を静かに見据え、超集中状態に達した脳とニューロンを頭蓋に『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)は思い返す。 それは先日の事。研究班に尋ねた質問。 モドキ達の遺体から通信機器のようなものがなかったか。 彼等はいつも逃げようともしない。頭数も揃っているのに組んで行動する事もない。 何かデータでも集めているのだろうか、と。 しかし研究班から帰って来た言葉はNOだった。過去の報告書にも期待した様な情報は無かった。 「質問。」 手を挙げ、呼びかける。「言い給えッ!」相変わらずのデカイ声でCNが頷いたのでキリエは警戒を解く事無く口を開く。 「貴方達はどこから来て、なぜ私達と戦う……?」 「何処から? 諸君達と同じさッ、母親の胎内からだッ! 何故? 目の前に強者が居る。戦いにそれ以上の理由が必要かッ!?」 「……そう。じゃあ次、いいかな?」 「一向に構わんッ」 「紳士的だね、嫌いじゃないよ。さて……私が察するに、君達はリベリスタに対して敵意を持っている存在に身体と思考を改竄されているのではないかという気がするけれど」 「ハッキリ言おう、『NO』だッ! 我々は我々以外の何かと関わった事など一度も無いッ! そして我々は誰かの手によってノーフェイスとなったのではないッ! そして私は嘘を吐かんッッ!!」 「成程、嘘が無いのはありがたいね。それともう一つ。 ノーフェイスである貴方にこれを言うのは酷だが、未来に同じような犠牲者を出さないためにも、この戦いを降りてくれないだろうか」 話がしたい、とキリエは思っていた。 だが、それは無理なのだろうとハッキリ気付いていた。 この質問の答えも、きっと。 「断る。」 反論の余地も与えない様な、断言。 予想はしていた。先程から一向に収まる気配の無い――寧ろ膨れ上がり続けているCNの殺気。 戦いは不可避、か。手に刃を構えた。 「貴方が騎士である事には疑う余地はありません。 ですが、クロスイージスに列なる者であるとは認めません」 黒いコートを翻し『不屈』神谷 要(BNE002861)は剣と楯を構えた。 「イージスは護る為の力を振るう者であり、貴方のソレは破壊する為の力でしかありません。 その様なモノに私の盾を貫かせはしない……!」 喪失を経験した者は強い。その喪失の証たる機械の右目で凛と見据えた。 「ごきげんよう気高き騎士さん……ふふ、無駄な言葉はいりませんかね。一つ、死合といきましょう」 正々堂々、お互いどちらかが燃え尽きるまで。一礼の後、『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105) は妖艶な笑みと共にナイフを構えた。 「宜しい……宜しいッ! ならば戦おうッ! 命をかけて戦おうではないか諸君ッ!!」 槍を構える。 猛撃、突撃、ならば迎え撃つのみ。 ウラジミールは堅く楯を構えた。 「任務を開始する。」 ●我が騎士道 槍と盾が激しくぶつかる。黎明に響く玲瓏な音、閃光の様に火花が散る。 「――ッ……!!」 隕石の様な重い重い一撃。だが、重心を低く構えた軍人は耐える。踏み止まる。ミシリ、ギシリ、体中の骨が筋肉が細胞が軋む。踏ん張る脚が徐々に下がる。構えた楯が徐々に下がる。 圧し、遣られる……! 「く、」 咄嗟に身を捻り白銀の刃を受け流した。ならばと勢いの止まらぬCNの切っ先、そこには空の翼を広げた亘の姿が。 「さぁ、始めましょう――!」 ハイスピード。高められる身体のギア。電気信号。反応速度。 遅くなる世界。 刹那すら自分には悠久の時間。 自分は脆い。膂力も無い。 猛然と襲い掛かるその刃は、驚異そのもの。 しかし引かない――自分には速さがある。 防御用マントを翻して華麗に刺突を躱すや、澱みなき超速連撃を。 (堅い……!) 「それで攻撃したつもりかねッ!?」 亘の視界に映る、大上段の構え。マズイ、飛び下がった瞬間に彼が居た場所にあった石が砂像の如く砕け散った。 槍を構え直すCN、それを追い越し三枚の楯がリベリスタ達に襲い掛かる。 「正々堂々と振舞えるか分かりませんが、お互い覚悟を決めて挑むとしましょう」 カイの足元から伸び上がる影の従者。それは主人を押し潰そうとした楯に絡み、同時にカイは両手にダガーを構えるやハイディフェンサー達を流麗な舞踏と共に切り刻む。 戦気を全身に漲らせたディートリッヒもNagleringを構えて吶喊した。 死力を尽くして戦う以上、無駄なことは出来ない。 一挙手一投足、刹那の行動すら気が抜けない。 さあ、熱い戦いの始まりだ。 打ち鳴らすのはゴングの代わりに――自分達の武器と武器が奏でる戦場音楽! 「うらァアアア!!」 雄叫びと共に楯との間合いを零に、気合いと共に強烈な打ち込みで楯を砕いた。 だがその横から飛んで来た楯がディートリッヒを撥ね飛ばす。上等だ、かかって来い。 「確実に削って行くわよ……と言いたいところだけど、効果があるのかイマイチ判りにくい相手って嫌な感じよね……」 後衛位置にてセリカはアーバレストを構える。驚異的な射手としての集中――スコープを覗き込めばハイディフェンサー達と奮闘するディートリッヒとシャルローネが、ローテーションでCNに挑むウラジミール、亘、カイの姿が、彼らを包むキリエの天使の息が、要のブレイクフィアーが。 自分の呼吸と心音がヤケに聴こえる。 手に沈むアーバレストの重量感は安心と冷静を与えてくれる。 スコープ越しの世界はどこか別世界の様な。 狙うはCN。狙う。引き金に指を、力を込め、撃った。 「!」 貫通力のある魔弾はCNに直撃する。しかし大したダメージになっていない。堅い。だが射手は再度照準を合わせる。 「塵も積もれば何とやら、って」 直後にシャルローネの斬風脚が残り一枚となっていたハイディフェンサーを切り裂き――刹那に煌めいた激しい閃光、CNのブレイクフィアーがリベリスタ達を焼き払った。 「ッ……!」 亘が、中衛位地にてキリエを庇ったカイが力尽きてしまう。ならば今こそ好機と槍を構えるCN、要に庇われ無事だったセリカは素早く射撃で牽制するも、騎士が構えた分厚い楯の所為で弾丸が届かない。 「この程度の光で驚いている場合でないぞ!」 ショックによろめく仲間達にウラジミールは声を張って鼓舞し、破魔の光で仲間を癒した、が。 そのモーションの一瞬、ほんの僅かな隙、自らを覆う影に気付くのがコンマの時間で、遅れる。 「 !」 大上段に構えられた槍に、目の前の騎士に軍人は目を見開く。 両手の楯を、咄嗟に、間に合うか、間に合え、落ちてくる、魔を落とす一撃が、目の 前―― グシリと嫌な音が鼓膜の裏で響いた。 「チッ……」 一気に攻め落とされた前衛陣。ディートリッヒが、シャルローネが、要が立ちはだかる。キリエのインスタントチャージが精神力を供給する。セリカもアーバレストを構える。 ウラジミールの血肉臓で染まった槍を構える騎士。だが彼とて無傷ではない――あと僅かか。 放たれた十字の光にも怒涛の突進にも中衛陣は倒れない。フェイトを燃やして立ち上がる。 「お前さんに騎士の誇りがあるように、俺とて戦士としての意地があるもんでな」 血を拭って剣を構え、獣戦車は笑う。 「最後まで地面に膝を付ける気は無い。 私が攻撃を受け止める。そうすれば攻撃を受ける味方が一人減る。そうだろう?」 地に付けた脚に力を込め、鋼鉄の信念は揺るがない。 「宜しい。ならば崩してみせよう、その遺志をッ!!」 CNが大上段に槍を構え、落とした。魔落の鉄槌。 それは割って入った要の楯に真正面からぶつかった。 「うッ……」 楯から伝わる凄まじい衝撃に一瞬意識が霞んだ。骨が砕け臓物が破れる音が聞こえた。が、 「ぅ…… ぅう、ああああああああああ!!」 不屈。負けない。フェイトで無理矢理体を治し、全力で槍を撥ね退ける。圧す。CNのバランスが崩れたそこへ、ディートリッヒの渾身のメガクラッシュが更に騎士を圧し遣った。 「ぐぬッ……!」 鎧の隙間から、血。素早く立ち上がるCNの背後には――運命を消費し立ち上がった亘の姿が。 「貴方が自身の力と想いを貫くように、自分も己の全てを、誇りを賭けて……いきます!」 どんな強固な要塞でもどこかに穴はあるはず。自分の今ある力の全てで。 ソニックエッジ。スレイプニル・エンジンを吹かせ、音速を超える猛攻撃。 「想定はしていましたけど、やはり防御が厚いようですね……」 ならそれを超える攻撃をすれば良い。亘が飛び下がったのと同時、復活したカイが破滅のオーラを纏い跳躍した。 「……まだ、倒れる訳にはいかない!」 叩き付けるブラックジャック。CNの鎧の破片が飛び散り、黎明の光にキラキラと反射した――それを劈き、セリカの魔弾とシャルローネの真空刃が騎士を牽制する。 「効いてるわよ!」 「あと少しだ!」 よろめく騎士。倒れない騎士。 「……かかってこい」 血を全身から滴らせ。 「かかって来い、かかって来るが良いッ! 砕いてみせよ、我が楯をッ! 止めてみせよ、我が刃をッ! 倒してみせよ、この私をッ!!」 最後の力を込めて、槍を高く、高く。 騎士が飛び出した。 要が立ちはだかる。そこへ運命を消費し立ち上がったウラジミールが並ぶ。 盾を構える。不落の城塞が如く。 落ちる。 受け止める。 火花。 拮抗する。 ビシリ。罅。 砕け散った。 それは騎士の槍。破片が輝く。 ウラジミールが楯を振り上げる。 それは黎明の光を受け止め、灰に、銀に、白に輝く。 「――モドキに負ける訳にはいかんのだよ。」 叩き、 潰す。 ●とある終わりと一日の始まり 遂にCNが――倒れた。 それに一歩、カイは歩み寄り声をかける。 「そういえば、正式な決闘では互いに名乗るのが礼儀でしたね……名を伺って宜しいでしょうか?」 「それは、『CN』ではない名前を名乗れ、という事……かね?」 頷くカイに、騎士はフッと笑う。 「すまんが忘れたよ。思い出せなくなって何年経っただろうか……。君の名は?」 「僕の名は……源 カイ。貴方の事は忘れません」 その横に亘も並び、敬意を示してCNに一礼を。戦えた事に感謝を。 「どこまでも美しいその生き様を自分は絶対に忘れません」 「ふ、ふ。忘れてくれても構わんよ。……こちらこそ熱い戦いを感謝する」 それから、と付け加える。 「先程『NO』と言ったが、その『NO』が偽りの無いモノとは……言いきれない、かもしれない。 ……自分がどこかで、自分のどこかが、嘘なんじゃないか。作られたモノではないか。 己を信じ切る事が出来なかった私が負けたのは――必然だろう」 騎士は長い溜息を吐いた。 「そして、私を蝕む不安ともこれでお別れだ。これで終わり……あぁ、終わった……。」 感謝する。 そう言い遺し、騎士は永久の眠りに着いた。 一部始終を見守っていたキリエは静かに辺りを見渡す。戦闘の時から感情探査でこちらを探っている者がないか注意していたが――何もなかった。 ファミリアーなどを使って、見ている可能性もあるかも?そうも思った。 裏で手を引く存在があるか、ないか。それだけでもわかって次に繋げられたら良かったのだが……結局は。 (分からず仕舞い……か) 息を吐き、踵を返す。 「熱い人は嫌いじゃないけど……流石にノーフェイスはちょっと、ね」 セリカも歩きながら呟く。眩い朝日に目を細める。 「それに、ま、卑怯でも生き残ってくれる人のほうが安心だし……って、こんな所で好み語ってどうするのよ私」 冷えた風は光源の草花を揺らす。 日は今もなお高く高く昇り続け、やがて空の天辺に、そして西の彼方へ落ちてゆき――また一日が巡るのであろう。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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