●DARUMA3 立ちはだかる。三つ。 一つは真っ赤に滴り、 一つは激しく燃え盛り、 一つは冷たく凍り付く。 遥かな街明かりを眼下に。 ●転んだ? 「サーーテ。ボンジョルノですぞ皆々様、毎度お馴染みメカっこフォーチュナのメルクリィです」 そう言って事務椅子をくるんと回し振り返ったのは『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)。手にした資料を卓上に置きつつ徐に話を始める。 「ダルマ……と聞けば、都市伝説の類を思い浮かべる方も少なくは無いかと思いますが」 ニヤリと笑ってリベリスタを見渡す。相変わらずの非戦闘員とは思えない凶悪な顔面だ。 「今回は三体のダルマさんをやっつけて頂きます。 勿論エリューションですぞ? 都市伝説の方を期待してらっしゃった方にはゴメンナサイですけど」 そう言うメルクリィが慣れた手付きでモニターを操作すると、三体のエリューションが映し出された――血だらけで真っ赤なゾンビに、燃え盛る人型異形に、ムキムキ手足の雪だるま。 血だるま 火だるま 雪だるま 「え? 『そっちのダルマかよ!』ですって? Ja.イエス。Si.そのとーり。 E・アンデッド『チダルマン』、ノーフェイス『ヒダルマン』、E・エレメント『ユキダルマン』。いずれもフェーズは2です。 詳しい事はさっき置いた資料にモッサリ纏めましたが、一応私の口からもザクッと説明しときますね。耳かっぽじってお聴き下さい」 先ずはコイツ。メルクリィが資料上の『チダルマン』という文字を指差した。 「E・アンデッドフェーズ2『チダルマン』。御覧の通り全身血だらけの血だるまです。 コイツの武器はその長く鋭い爪。攻撃は近距離系のみですがどの攻撃にも流血が伴いますぞ。それにちょっと素早めで身体能力も高めです。 ナメてかかると皆々様が血だるまにされちゃいますぞ!お気を付け下さいね」 次。指差したのは『ヒダルマン』。 「ノーフェイスフェーズ2『ヒダルマン』。燃えてますな。全身ファイアーですな。 コイツは火炎及び業火の状態異常になりませんぞ。しかもフレアバーストや業炎撃と言った炎系攻撃もあんまり効かないというメンドクサイ特性を持っとります。 更に触るだけで炎ダメージ! 火炎の状態異常になっちゃう場合がありますぞ。それにどの攻撃にも業火が伴います。お気を付け下さい。 しかし! コイツは水とか消火剤とか、炎が弱いモノに超弱いのです。何かしら対策を考えておくと戦いがグッと楽になるでしょーな」 ラストですぞ。そう言って示された文字は『ユキダルマン』。 「E・エレメントフェーズ2『ユキダルマン』。うーん、可愛い雪だるまなのに手足が厳ついですなー。なんとアンバランス……千堂様が発狂しそうですな。 冗談はさておき、コイツはヒダルマンと似た感じで凍結と氷結の状態異常になりませんぞ。魔氷拳や陰陽・氷雨といったチベタイ攻撃もあんまり効かないです。 そして触るだけで氷ダメージ! 凍結しちゃう場合がありますぞ。それにどの攻撃にも凍結乃至氷結が伴います。油断大敵! ですぞ。 ハイっ、ですがイイトコばっかじゃあないですコイツも! 氷が弱いモノと言えば――炎! アッツイ攻撃で攻めると吉かと」 説明の一区切りにメルクリィは組んだ足の上に機械の掌を重ねた。その間にいつの間にかモニターには廃ビルが映し出されており、リベリスタと目が合ったフォーチュナはニヤッと口角を持ち上げた。 「今回の戦場となる場所はこの廃ビルの屋上ですぞ。結構広いんで戦闘にゃ問題ないでしょーな。 ですが所々足場が脆い所がありますぞ。縁を取り囲む柵もこれでもかと錆び付いとります。落っこちないで下さいね? 落っこちたらかな~り痛いですぞー。 時間帯は深夜ですが、月とか遠くの街明かりで戦闘には問題無いぐらいに明るいです。一般人が来る事も多分ないです。その辺はご安心を。 ――サーテ! 以上で説明はお終いです。宜しいですか?」 それでは皆々様。無駄に事務椅子を一回転させて、機械仕掛けのフォーチュナは相変わらずの調子で言い放つ。 「くれぐれもお気を付けていってらっしゃいませ。 私はリベリスタの皆々様をいつも応援しとりますぞ!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月25日(金)23:23 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●だるまさんが…… 何処か別世界の様。遠くの街明かりは橙色。冷える夜風に何処かセンチメンタルな気持ちにならない事も無い。 廃墟となったコンクリートの天辺――そこへ辿り着けるのだろう錆びたドアの前。 「ダルマ……」 凹んだバケツ、たっぷりの水、その暗い水面に映る己の暗い顔を見詰め、考え中だった『不幸自慢』オリガ・エレギン(BNE002764)はふと呟いた。呟いてからハッとした。 「あ、すいません別のもの想像してました神よお許しください」 言いながら、自らを罰するが如くバケツの水を頭から。ばしゃぁー。時期が時期、冷たい水は優しさの欠片のクソも無い。寒い冷たいもう泣きたい。 「ささささむ、冷たっ、うう……かか風邪ひいてしししまいますす……ふふ不幸だ……」 身を刺す様な冷たさに震える体の所為で言葉まで震えている。白い肌は最早蒼い。くしゃみまで出た。しかし戦闘を優位に進める為だ、致し方ない。 彼の視線の先では『仁狼』武蔵・吾郎(BNE002461)が、同じく水を被ってしっとりしているというのに(その上、上半身裸なのに)元気そうにしっとり尻尾を揺らしていた。 なんて言うか、フルモッフアニマルが水に濡れたらその、なんかアレだ。凄いスマートというか。 「毛皮部分がチリチリになったら泣けるしな!」 しっとりわんわん。バスタードソードもボトボトに、戦闘準備は万全である。水も滴る良いわんわん。 「だるまさんってかわいいですよね。丸っこくて、いかつい面持で、ころころで……」 打ち捨てられていた消火器をウンセウンセと引っ張り出してきた風見 七花(BNE003013)はニコニコ笑うも、表情がどこか……修羅だ。 「ですが。このだるま三兄弟は許されざる存在です。早急に仕留めます。特にユキダルマン……!」 まだ使えるだろう消火器をAFに――七花さん、メカ右手に力が籠りすぎです。握ってるAFが割れますよ。 「名前と違って可愛らしさの欠片もない相手のようですね。神秘世界の住人同士、存分に勝負といきましょう」 ガントレットで武装した拳同士をガツンと打ち鳴らし、『白虎ガール』片倉 彩(BNE001528)は闘志凛々である。今回は人目を気にする心配も無い、宣言通りに思う存分暴れてやるだけだ。軽いウォーミングアップ運動を行いつつ仲間の準備が整うのを今か今かとソワソワしている。時折錆びた扉へ目を遣りながら。 対象的に尊大とも言える程に落ち着き払った態度で煙管を吹かしているのは『紫煙白影』四辻 迷子(BNE003063)。ふっくらとした薄櫻の唇から紫煙を吐きつつ、徐に一言。 「別の物のエリューションが集まって行動とは地味に珍しいのう。お互いしんぱしーとかいうあれを感じたのじゃろうか」 それにしても『火だるま』『血だるま』と呼びはするものの達磨には似ても似つかないのは何故だろうか。雪だるまは確かに達磨の形をしているけれど。 ……まぁいっか。煙を咽の奥へ吸い込む。 「やっぱさ、アレコレ考えるよりもこう言う殴って殴られての方が楽で良いよねえ。 まー、楽な相手では無いだろうけどねー」 だから楽しいんだよね!『кулак』仁義・宵子(BNE003094)は拳を傷めない為だけの自作プロテクターкулакを己が豪拳に装着し、手を開閉して馴染ませる。 それから赤髪を靡かせ振り返ったのはオリガと吾郎の方向、ズイッと砂入りゴミ袋を差し出して。 「焼け石に水ならぬ砂かもしれないけど、ちょっとは効くかも?」 「おぅ! ありがてぇな、そんじゃ遠慮なく使わせて貰うとするぜ」 「なんとお優しい……! よ、宵子さんにも神のご加護が在らん事を……」 「いーっていーって! 頑張ろうねえ」 二人は砂袋を感謝と共に受け取り、AFの中へ。きっと有効に使えるだろう。 さて準備も整った頃か。 「人に危害を与えたのかまだ未遂なのかはわからないけど、エリューションなら倒さないと駄目だもんね」 闇夜よりも黒い翼を広げ、『ヴァルプルギスの魔女』桐生 千歳(BNE000090)は錆びて傾いたドアノブに手を掛ける。 んふっ。口元に笑みを、唇に呪文を、体内魔力の強力活性。 刹那にドアを撥ね開けた。 「――ごめんなさい死になさいな!!」 燃やすよ!笑顔の死刑宣言と共に。 ●だるまさんが! リベリスタ達を出迎えたのは三体のエリューション――血だるま、火だるま、雪だるまであった。 「な、なんなの? このE・エレメント……」 事前に映像で見たけれど、なんて言うか……『現役受験生』幸村・真歩路(BNE002821)はフィンガーバレットで固めた拳を構えながら目を点にした。 その視線の先には、ムキムキっと。ユキダルマンの屈強な手足が。 「……。」 真歩路の肩が戦慄く。怒りによって拳が震える。 「雪だるまとお友達になりたいなぁ、なんて幼気な子供の願いが叶った結果みたいなそんなでも悪意しか感じない!!! あんなの千堂って人じゃなくても発狂するわよ!」 バランス。それは愛の魔法――バランス男の合言葉が皆の頭にリフレイン。 バランスって大事だよね。そして、悪夢は瞬殺されるべきよね。 上等、上等、仁義上等。誇りを胸に見得を切り、運命をその身に引き寄せて。 ビッシと揺るぎ無く突き付けるは人差し指。ユキダルマン。 「子供の夢を踏み躙る悪のユキダルマン! 本当はその手足もいであげたかったけど、それは皆に任せたわっ」 言葉と共に地を蹴った。 戦闘開始である。 泣く泣くチダルマンへ向かった真歩路の代わり、ユキダルマンの前に立ちはだかったのは烈火の乙女達であった。 拳に炎を、呪文に炎を、闘志に炎を。 赤く赤く――火の様な髪を靡かせて、紅蓮の屠殺者は吶喊する。 「ワクワクするね――ユキダルマン、お前は、私が、殴るッ!」 そんな彼女と並走するのは彩、同じく真っ赤な炎を拳に纏い、白い髪を靡かせて。 「せっかく可愛いのにムキムキ手足のせいで何もかも台無しです。速やかに焼却します!」 白と赤。赤と白。炎と炎。 ユキダルマンが吐いた冷気にも怖気ず、怯まず、前へ、前へ、前へ前へ前へ前へ前へ! 「彩ちゃんいっくぜー!」 「はい、宵子さんっ!」 「熔けきるほどヒート! 燃えたぎるほどファイトォ!」 「業炎爆砕ッ!」 前へ。吹雪を突っ切り、躍り掛かる。飛び掛かる。 双焔。豪拳。必殺拳。 白の猛虎。赤の屠殺者。 「燃えて灰になれです!!」「GO! 炎撃!!」 摂氏無限度。重い手応え、ジュワァアアアと雪が蒸気に昇華する音とユキダルマンの「ぬぅううううん」という雄々しい悲鳴、その冷気は二人の拳を傷付けたがそれ以上のダメージを与える事に成功したようだ。 氷の腕で殴り付け間合いを取る。そんなユキダルマンを――吾郎はガン見していた。 「ユキダルマン欲しいなあ! 欲しい! 可愛い雪だるまにムキムキの手足とか可愛くておかしくて面白くて楽しくてしょうがないだろう! モフモフしたい! モフモフしたいぜ! そんでもって部屋に置きたい! 布団の横に置いて寝るときに抱いて寝たい! モフモフしたい! モフモフしたいぜ! 出来ればこのダルマシリーズ、マスコットにしたいよなあ! モフモフしたい! モフモフしたいぜ! でもエリューションだからな! 悔しいけどッ……涙を拭いて倒さねぇと! あーでもモフモフしたい、ほんとモフモフしたい! モフモフしたい! モフモフしたいぜ! 超寒そうだけどやっぱりモフモフしたい! モフモフしたい! モフモフしたいぜ! モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ」 な ん と い う こ と で し ょ う ! 「……吾郎さん……?」 ヒダルマンの前、寒さで震える指で痛悔機密の為の通過儀礼を構えながらオリガが心配そうに呼びかける。 「あ、ちゃんとやるから心配するな」 「は……はい」 寒さとか色々で蒼白い顔のオリガを余所に、身体能力のギアを上げた仁狼は巨躯に見合わぬスピードでヒダルマンに躍り掛かって行く。不幸神父も意識を研ぎ澄ませた。視線の先にはヒダルマンと、それを超速連撃で圧倒する吾郎。 「ええとダルマの由来自体は禅の開祖とかそういう方だったような気がします。アジアの宗教よくわかりませんけど。 ……いずれにせよ、親しまれるべきものの名を持つエリューションが害為すなら、それを倒すのはリベリスタの役目ですね」 罪を許す為の弓を番える。 「うおお毛皮! 毛皮が焼ける!」 自慢の毛皮は死守、と吾郎は火炎放射をバク転で回避する。が、それはオリガを飲み込んだ。激しい炎が彼を焼く、顔を顰める。 「こ、今度はあつっ、焼ける、やけどしちゃう」 涙目になりながらも発射。その弓はヒダルマンへ――ではなく、その傍の貯水タンクへ。 ビシリ。 罅。 割れる。 さながら洪水。大量の水がぶちまけられた 「……!!」 ジュワァア、マトモに浴びた水にヒダルマンがのた打ち回る。かなり効いたらしい。 「そんなに燃えてて夏場大変じゃないですか?」 「そろそろ寒いから温かいのは歓迎だが」 オリガは詠唱を、吾郎は幻惑の武技を。 「ご自慢の爪も、ぶーらぶーらしちゃえば十全に扱えないでしょ?」 少し離れた位置にてチダルマンと一対一、全身から血を流しながらも真歩路は硝煙の立ち上る指先をフッと吹いた。 他と共闘されると厄介、ゾンビにどれだけ理性残ってるかは分からないが――ハイテレパスで意図を直接送り込む。そのお陰かチダルマンは彼女を最優先に狙っていた。歯を剥いている。その腕は片方しかなかった。 さぁ、もう片方も貰おうか。再び照準を構える。 水浸し戦場。 ヒダルマンをかなり追いつめた、が――瀕死のユキダルマンにとっては寧ろ好機だったようだ。 水浸し足場へ冷気を。ユキダルマン周囲の足場が凍り付く。 「!!」 氷に脚を挟まれ動けぬ宵子と彩。それを殴り付けようとしたユキダルマン、であったが迷子が背後から業炎撃で殴り付けた事で失敗する。 「やられる前にやれと言うことじゃな。大人しく雪解け水マンに変わるが良い」 怯んだ隙に足場の氷を踏み割り、宵子達を解き放つ。 その三人へ、魔法陣を展開させた千歳がニッコリ呼びかけた。 「燃やすから逃げて下さいねー?」 その傍らにはブレイクフィアーで仲間達を癒し終えた七花が詠唱をしている。直後に魔法陣、火炎の魔法。 刹那。 轟。凄まじい二つの火柱がユキダルマンを飲み込んだ! 「だるまは消毒ー!! 燃やすよー! 燃えろ! 燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ! 燃えて燃やし尽くして燃え尽きろ! あーはっはっはっはっはっはっはっは!!!」 業火の灯りに赤々と照らされ、魔女はハイテンションな高笑いを。 そして焔が収まったそこにユキダルマンの姿は――一滴も残っておらず。 一方のヒダルマン。水に濡れて戦いに臨んだのも宵子の砂袋作戦も有効に作用し、優位に戦いを進めている。 最中、ユキダルマンを焼き尽くした激しい業火に一瞬ヒダルマンが目を奪われた……その目の前、ぽーんと放り投げられるのは水入りペットボトル、更にその向こうには鋭い蹴りを放った迷子の姿が。 鋭い脚撃による真空刃はペットボトルを切り裂き水をぶちまけさせ、その水と共にヒダルマンを切り裂いた。 「!」 水!迷子の思惑通りヒダルマンの動きが露骨に止まった。そこへ七花がチェインライトニングで全体攻撃を行い、吾郎が一気に間合いを詰める。 「悪いが早い所消えて貰うぜ?」 揺らめく残像、虚像、幻影。 高速の斬撃は返り血すら許さず。 瀕死状態のオリガも火傷を負った唇で詠唱を。魔法陣を構築する。 「運命の加護を受けた者の務めとして、貴方を倒します。 ――せめて次に生まれる時は、僕の神の加護が、貴方にもありますように」 Amen。 主はお許し下さるでしょう。 激しい四つの光は、エリューションの永遠の眠りを齎した。 残りはチダルマン、孤軍奮闘の代償に血だらけになってしまった真歩路は飛び下がる――彩と交代のハイタッチをしながら。 「文字通り血の気も凍る一撃をお見舞いしてあげましょう」 流血勝負にだって負けない。拳に纏う絶対零度。 宵子も加勢に向かおうとするが――ボコン。ボコン?崩れた姿勢に、重力の感覚…… 「あぶなーい! 落ちてるううう!」 翼を広げて飛んでくる千歳の声で理解した。脆い足場を踏み抜いて落下中である事に。 「今行くよー!」 地面、重力、逆様、翼、伸ばす手、――救出成功! 「悪いねえー」 「間に合って良かったぁ~……」 飛び上がりつつ千歳は溜息を。その視界に映ったのは、攻撃を躱して仲間へ襲いかからんとしていたチダルマンで。 咄嗟に、叫ぶ。 「だるまさんが転んだ!!!」 言ってみたかった。やってみたかった。あっそびっましょっ! 「!?」 チダルマンの動きが一瞬止まった。その隙に迷子が斬風脚を叩き込み、地に降り立った宵子がチダルマンを引っ掴んで拘束した。 攻撃は当ててナンボ。当たり難いなら当たるようにすれば良い。 「と言うわけだからさ、私ごとでも良いから宜しくねん?」 「却下よ」 即答、真歩路のフィンガーバレットが真っ直ぐ狙う。 彼女『ごと』?ナメてもらっちゃ困る。 「血塗れのまま放っといたらお肌カサカサになるのよ!」 銃声。凄まじい早撃ち。 眉間に穴。そこから硝煙。チダルマンが頽れる。 「それはダメ絶対!」 腰に片手を、少女は得意気にブイサイン。 ●転んだ(過去形) 静寂を取り戻した後の一時。 「お疲れ様です。よかったらこれ……使って下さい、寒いのに濡れたままだと風邪をひいてしまいますから」 七花は皆にバスタオルを配り、自分も濡れた髪を拭いてゆく。オリガはガチガチ震えながらバスタオルにくるまった。多分、明日は寝込みそうな気がする。 「言っちゃ悪いけど、予知したのちびっこじゃなくてよかったわ……」 タオルを肩に真歩路は遠い目で黄昏た。あの機械男には悪いが、ヤレヤレだ。 「いやあ、スッキリした! あとはかえってシャワー浴びれば完璧ね」 咥え煙草の宵子はグッと伸びを、迷子も早速煙管で一服している。 「さーて、俺らの中に血だるまと火だるまと雪だるまが出るかと思ったが大丈夫そうだな」 さっさと変えるか。頭をわしわし拭きつつ吾郎が言う。そんな彼を呼び止めたのは煙草の火を指で揉み消している宵子であった。 「折角だし皆で銭湯いかない? 汗だるまんになりにさ~ぁ?」 いいですねぇ、千歳と彩は賛成を。真歩路も頷き、迷子も紫煙を吐きながらよっこらせっと腰を上げる。 「俺達は男湯だけどな」 「ふぁい……」 オリガは既に鼻声状態。 そうと決まれば歩き出すリベリスタ達。 最中、七花は振り返って呟いた。屋上、直に処理班が処理するだろうダルマ達へ。 「だるまさんはころんだままですね」 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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