● 「恐ろしいフィクサードが現れた」 そう告げる『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の声は、普段よりはるかに険しい。 思わずゴクリと唾を飲み込むリベリスタたちに向けて、イヴは言葉を続ける。 「このフィクサードたちを見過ごす訳にはいかない。 世界の平和のために、みんなの力が必要なの。ただ、彼らは末端であることも事実。 どうか、逃さないで。そして、殺さないで。捕まえてきて。 アジトを吐かせて追い詰める必要がある」 すわ大事件か、と色めき立つリベリスタたちの前に配られた書類。 『○×△小学校 運動会』 何人かのリベリスタが、席を立った。 「運動会の観客動員のためにそんなジョークを言ったりしないよ。 そもそもそんな理由もないし。フィクサードが複数現れるのは、事実。 最悪の事態を想定したら、拉致事件にまで発展することが判ってる」 何その凶悪事件。 それを先に言ってよと言いたげに、席を立ったリベリスタが着席する。 「で、そいつらの目的は?」 名門の小学校とかなら、金銭や政治的目的などもありうるだろう。 組織的な運用をされているフィクサードが狙うのであれば、余程の理由に違いない。 真剣な顔のリベリスタに、やはり真剣な顔のイヴが頷き返す。 「ブルマを履かせること」 リベリスタたちが一斉に――ある者は呆れ、ある者は興奮で――席から立ち上がった。 「聞いて。 この学校では、上は体操服だけど、下はハーフパンツを運動着に採用している。 それを、女の子を狙って、ブルマを履かせようとしてくる。 ――この意味がわかる? フィクサードたちは、女の子の服を脱がせようとするの。 それがトラウマになっちゃう子もいるかもしれない。 最悪の事態の場合、あまりに嫌がって泣き出した子を抱えてアジトに連れ帰る。 ――もしかしたら、既に彼らの毒牙にかかっている人もいるかも知れない」 急くように言葉を続け、涙ぐむイヴ。 いや、ブルマ穿かされるだけですからね、一応。 BNEは全年齢です! 「おねがい。 彼女たちの未来は、あなた達の手にかかっているわ」 そしてイヴは、うさぎを強く抱きしめてリベリスタたちに懇願した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ももんが | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月02日(水)22:46 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 空は快晴。 秋晴れというのはまさにこう、とか言いたくなるような真っ青な空。 はてさて運動会の日というのは妙にテンションの上がるものでもありまして。 子供たちがわぁわぁと歓声をあげているのが、街中ひょっとしたらどこからでも聞こえるのではないかとさえも思えるような通り方でよくよく聞こえてくるのであります。 もっともそれを近所迷惑だと言い出す無粋な人もいたりはするのでありますが。 何この謎のモノローグ。 まあ、何はともあれ運動会なのである。 小学校の運動会とは、まったく親の見栄の張りあいの側面がある。 ほらほらそこのお母さん、トラックに入っちゃダメですよ。我が子が映らないから行かせろじゃなくて、そこを走る障害物競走のじゃまになるでしょ。そんな事言ってる間にそっちのお父さんがさっきお母さんの板トラックに陣取る。時々うっかり「イエス・アリス、ノー・ロリータ!」とか聞こえたりする。ああ、もう、衝撃的エゴとエゴのぶつかり合い。 はてさてそんな運動場から離れた校舎の裏側、運動場が見えないがゆえに人気が少ない一角。 ――そこでもエゴまみれの主張がぶちまけられてたりするわけだ。 「彼らが憤るのも分からないでもない。 だが! 小学校1年生の女子を狙ってブルマるとかはありえん! 幼き少女にトラウマを与えるわけにはいかない! なぜならば、俺はロリコン紳士だから!」 ブルマる。 ブルマらない・ブルマります・ブルマる・ブルマる時・ブルマれば・ブルマれ・ブルマった。 この世に新たなるラ行五段活用動詞を生み出しながら『カボパン王子』結城 竜一(BNE000210)が叫ぶ。 「嗜好はともかく、子供達に手ぇ出そうっつーのは許せねぇな。 そのふざけた企み、必ずぶっ潰す」 髪を茶色に染めた『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)がうんうんとうなずいてみせる。 「かかか勝手に人前で脱がせたり履かせたりなんて、許せないーっ! 女の子のハートをっ、何だと思ってるのっ! わたしが天誅を下してやるーーっ!!」 どーん。 『臆病ワンコ』金原・文(BNE000833)も、今日ばっかりは怒れるワンコ。 「どういう思考をしてブルマを復権させるなんて考えたんだろう? あんなの寒いし……短パンのほうが普通にいいと思うんだけど。 ルメの頃には既に全滅してたから穿いたことないけど」 「変なフィクサードをやっつけちゃうよ~ それにしてもブルマが好きみたいだけど、男の子がはくものじゃないのに変だよね? 逆にははけないからあこがれちゃうのかな? よくわかんないやー」 男女ともにハーフパンツの恩恵を受けてきた『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)は心のそこから不思議そうな表情。それに関して明るく同意したのは『ものまね大好きっ娘』ティオ・ココナ(BNE002829)。 「ブルマを履かせる為に女の子の服を脱がす? 泣き出したらアジトに連れ帰って毒牙に掛ける? ――始末してはダメなのね? そう、分かったわ。それじゃあ生け捕りにしましょう」 件のフィクサードを人類の底辺とみなした『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)にとって、いつもどおりの服装、それすなわちゴスロリ。運動会における普通の服とは言いがたく、結構目立つ。 「……? やけに視線が集まるわね」 そりゃあそうでしょう。 氷璃さんってばついでに、あちらで騒ぐ男性二人も味方と呼ぶには怪しいと判断までしている。 なんせまあ、アーク公認リア(※不具合)こと竜一に、異性でさえあれば他を問わない魅了の異能を持つエルヴィンの二人である。……いや、そう書くとなんだか特に問題ないような気がするんですけど。 「竜一、デジカメとビデオカメラは没収させて貰うわ」 「残念だったな、リア(※不具合)なオレはデジカメなんて、あ……やめて! それ以上いけない」 壊されかけた所で没収。竜一の録画機能付きサングラスは氷璃のドヤ顔にゃんこにかけられた。 でもまだ指輪型のも持ってるんだこのリア(※不具合)。 (趣味と実益を両立させる俺、まじ頭脳派。その為の装備もバッチリ) 多分今これ、計算どおりってな顔してるんじゃないかな。 「変態とはいえ、敵は凶悪なフィクサード。 甘く見て任務を失敗する事の無い様、確実に始末するわよ」 任務達成最優先。『ネメシスの熾火』高原 恵梨香(BNE000234)はランニングドレスにハーフ丈スパッツ。髪はポニーテールにまとめ、冷静かつ淡々と、でもその手に持っているのはとってもおいしい栗(元エリューション)。もしかしてそれはお弁当ですか。 ● 「ぬぬぬ脱がされたり履かされたりなんてっわたし絶対耐えられないからっ、最初からブルマ履いてるーっ」 ブルマを穿いて囮になる作戦で涙目の文ちゃん。それでも穿くんですね。 難しい顔で唸るのは、『メイドインタラヲうぃずふぐ田』磯野 双龍(BNE003033)。 「個人的にはブルマ好きなんでやすがねぇ……ただそれを押し付けちゃぁいけねぇ」 そう言って難しい顔をしてみせるのは、 かなり高い身長に、ほっそりした傷だらけの痩身。メイド服。 「え……これ? 穿くんでやすか? はぁ、囮? いやまぁメイド服着てやすけどね。 ぶ、ブルマはちょっと……え? 子供たちの未来の為? わ、わかりやした穿きやす……よ!」 勇気ある16歳男の娘に拍手。……え、男? 「囮らしく目立つように赤色がいいかな?」 ティオは赤のブルマの上から短めの丈の吊りスカート。 「チラチラ見えるぐらいが丁度いいみたいだよ、不思議だね」 それなんてseaweedちゃんですか。 「囮役の予備のハーフパンツは大量に用意しておくから。 ハーフパンツを脱がされてブルマを履かされても、ブルマを脱がしてハーフパンツを履かせれば元通りだわ」 それ元通りじゃないよね。それ絶対元通りじゃないよね。 「幼気な子供達と、主に私の為に犠牲になって頂戴」 氷の女王サマここに爆誕。 ● 「アタシに勝てたらブルマでも何でも好きな恰好をしてあげるわよ」 恵梨香の挑発に、しかしカキザキはチラリと目を向けただけだった。 千里眼を駆使して校内を策敵した結果、フィクサードたちはすぐに見つかった。 大柄な、幻視の後ろでは上半身がほとんどまさに熊と呼びたくなる姿のサングラスの男、クマノ。 決して小柄ではないが中肉中世、男臭い風貌のカキザキには、外観に常人との変化はない。 だが、せっかくブルマを穿いた囮たちにも目もくれず、彼らは体育館裏へと一心不乱に歩みを進める。 リベリスタたちに緊張が走る。 彼らの目的は、ブルマではなかったのか? 双龍が、手にした『そーりゅーです^^ブルマってロマンですよねぇ♪』と書いたホワイトボードを男たちの視界に横切らせる。しなを作ってみたり、恥じらってみたりと可愛らしい仕草だが――男たちは、その文字に深く満足気に頷いてみせただけだ。 予想外の事態に、リベリスタたちの間に緊張が走る。 少しづつ近づいてくる男たちを囮達が囲んでいることに気が付き、エルヴィンは目を細めた。 ――囮が上手く機能していないことは、簡単に見て取れる。 「えるびん、どうしたの?」 近くをまとわりついていた少女――引率の教師は若い女性だったため、エルヴィンへの警戒心などとっくに、ほとんどない――の頭を撫でて、気さくで優しいお兄さん的な笑顔を浮かべ直す。 ――その時だった。 ある言葉が、彼の頭上にあるスピーカーから降ってきたのは。 『次の綱引きに出る6年生は、体育館裏に集合して下さい』 遠くからぞろぞろとやってくる、教師に引率される生徒たちを見て、エルヴィンは理解した。 出番を待つ子供たちが待機してるということは、その場所は言ってしまえば『楽屋・控え室』。 表舞台たる運動場ではこどもたちが入れ替わり立ち代り、競技や演技を行うわけで。 つまり、楽屋から人がはけることなどないのである。 退路を遮断し、囮を準備し――しかし、6年生ともなればある程度落ち着きを持っている。 強結界を張っても、騒がしい1年生たちに気付かれないように戦うのとは意味が違う。 3分以上引き離してからこの場所に戻るのは――いっそ逆効果になりそうだった。 「もうすぐ出番だぜ、皆怪我しないよう頑張ってこいよ!」 悠々と、決して焦る本心を見せないようにその場を離れ、近くに待機していた氷璃に連絡を入れる。 少しでも早く、合流する必要がありそうだった。 ● リベリスタたちは誤解をしていた。 変態たちにもまた、美学があったのだ。 ――彼らにとって大切なのは、ブルマを穿いている数名の姿を見ることではない。 ズラリと並ぶ、紺色のブルマからスラリと伸びた、成長途上の肉の細い脚。 背の順、という暴力的なまでの基準によって揃わされた腰、それを優しく包む一枚の布。 彼らが求めるのは、圧倒的なまでの数の暴力という覇権。 そのために――今この時、少人数が穿くことに、彼らの求める復権はないのだ。 その状況を動かしたのは、ルーメリアの言葉だった。 「ブルマなんか撲滅してやるの、短パンばんざぁーい!」 「「なんだと!?」」 今まで仕事に勤しむ男の顔で、ただの一言も口を聞かなかったカキザキとクマノが、初めて足をとめ、声を上げた。 「うわ、何この人達、目が怖い!」 「ぶ、ブルマだって、いいと思うよ……?」 怯えるルーメリアの横で、文がおろおろしている。 だが、クマノが今にも飛びかかりそうな一方で、カキザキはまだ冷静だった。 「……行くぞ、クマノ!」 リベリスタたちがこの場で争いを起こそうとしているわけではないと見て取り、強行に突破するつもりのようだった。 ティオがさっと周囲を見回せば、エルヴィンが近寄ってくるのも見える。 ――つまり、まだ子供たちが巻き込まれる可能性もある距離。 もう一押しが必要か。 そう思われた時、退路を断つために後方にいた竜一が、気配遮断をやめて声を上げた。 「ブルマとは何であるのか。 ブルマリスタである、君ら両名であるならばお分かりだろう。 そう! ブルマとは女性解放運動の一環として考案されたというのが通説だ。 ブルマを履ける世の中というのは、女性が解放されたという証左。 時代が進むにつれて、世間はよってたかって、ブルマを悪とした。 だが、問題なのは、非紳士的なブルマリスタたちの行いである! 数多くの愚者たちが、非紳士的な行動を取ったが為に、ブルマが悪だとされたのだ! そして、今まさに! 君らは、その道を歩もうとしている! 自らの姿を顧みよ! 今の諸君の姿は、紳士と呼べるのであろか!」 非・紳士。 その言葉は、おそらく他のリベリスタたちの思う以上に、フィクサードたちを傷つけた。 「な、何を……貴様ッ!!」 「リベリスタごときに……!」 湧き上がる、明確な怒りの感情。 ようやく罠にかかったフィクサードたちに、リベリスタは頷き合うと一斉に走りだした。 そこにようやくエルヴィンが合流し、強結界を発動する。 「待たせたっ!」 戦場の誘導には失敗したが、子供たちに気付かれない間に戦いを始めることはできたのだった。 ● 「この屈辱てめぇらにわかるかこの野郎!!! ブルマが好きなら自分たちで穿いて見やがれぇ」 とりあえずキレてみた双龍の、主張と共にバールのようなものが叩きつけられる。 「もう思いっきりいくよーっ!」 文が己を補佐する影を呼び出して構える。 そんなにブルマ穿いてたのが恥ずかしかったのか、気合十分。 「えぇい、早くブルマ派を撲滅するの!」 とか言ってみてるルーメリアは、短パンを脱がされたくないために後方で戦闘の指揮を取り始めた。 「跡形も残さず焼き尽くすのだ~」 ティオは魔炎を召喚し、フィクサードの用意してきた穿かせるためのブルマごと燃やしてみせる心算。スカートは邪魔だということで脱いでしまっていた。 「さぁ、お仕置きの時間よ。覚悟は出来ているかしら?」 いくつものの魔方陣を日傘の周囲に展開させ、魔力を増大させる氷璃。追い込む予定だった場所で待機していた彼女も、戦闘には間に合った。 恵梨香は魔力の活性化をしつつ、ふと周囲に視線を走らせる。 (まさか味方に彼らの思想に同調する者なんていないわよね?) 雷切(偽)とブロードソードの二刀を構えた竜一を見て、それからエルヴィンを見た。 彼女の警戒を知ってか知らずか。 エルヴィンは武器を構えておらず――さらには、静かに語りかけ始めた。 「笑わせんな、俺に言わせりゃテメェらは思考停止してるだけだ。 ブルマしか知らない、だからソレしか見えてない」 何を言い出すのか、と。 敵味方問わず、全員の視線が彼へと向かう。 にやりと不敵に笑ってみせる、エルヴィン。 「……想像してみろ。 ショートパンツが魅せる、見えそうで見えないギリギリの隙間。 スパッツが彩る、しなやかで流れるような黒のライン。 ハーフパンツが描く、日焼けによる白と褐色の境界線」 その言葉は、一部のリベリスタに戦慄を与え、フィクサードを感心させる。 「な、なにを言い出すの!?」 「貴様……ただのリベリスタかと思っていたが」 「目を閉じろ、そしてもっと強く想像してみろ! 判るか、自分が目を逸らしてきたものの素晴らしさが! 感じるか、自分の前に広がる無限の可能性を! そして思い出せ……」 力強く語るその言葉にカキザキが、クマノが、目を閉じ憧憬を、己の遥か遠い理想郷を思い浮かべ。 「…………俺達は敵だって事をな?」 素直に目を閉じたフィクサードたちに、リベリスタたちが一斉に飛び掛かる。 ふるぼっこ入りましたー。 「カキザキィーーーーーー!」 なぜ叫ぶ、竜一。 ● 確保したフィクサードたちを前に、双龍が途方に暮れる。 「とりあえず子供たちは守れやしたが、このブルマどうしやしょう……やっぱりお持ち帰りでやすか?」 カキザキの持っていた鞄には、紺色ブルマがサイズもよりどりみどりにぎっしりと詰め込まれていた。 それを見た文が、居心地悪そうにもじもじし始める。 「ブルマ履いてるの、嫌になってきた……。着替えてくるーっ!」 見送ったリベリスタたちも、引き止めることはしない。うん、気持ちはわかる。 「資料にあったけど、クマノさん、なんでゴッドタンなんか持ってるんだろう。 ブルマ食べるの? ……いや、まさか……さすがにそこまでド変態じゃないよね」 酷い目にあったら泣くかも知れなかったルーメリアが、考えこんいる。 うん、その、なんだろう。アーク倫より怖い何かに引っかかる可能性はさすがに回避したかった。 「後は本部でアジトや仲間について尋問ですね。 ブルマを穿いてあげると言えばすぐに喋ってくれるかしら?」 恵梨香さん、すごく冷静。 どんなものでも取引に使えるものは使おうというその姿勢、まさに仕事人。 「そんな簡単に吐くと思っているのか?」 カキザキがそう吐き捨てるのに対し、彼女はそのままの表情で言葉を続ける。 「喋らないならあなたたちの大事なコレクションを目の前で燃やすまでよ」 割りとスムーズに尋問できたらしい、とだけ、追記しておく。 <了> |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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