●うさうさうさ もふもふ。 ごろごろ。 もふーん。 でっけえ白い塊が公園に鎮座していたのは、昼過ぎの事だった。 「あ、うさぎだ!」 「うさぎさんだー!」 目敏く気付いた子供達が、我先にと駆け出していく。 真っ白なぼでぃ。 滑らかな毛並み。 ひくひく動かす鼻は綺麗なピンク。 その通り、大人の背丈よりも遥かに大きい事以外は実にふかふかなうさぎだった。 「あら、何かしら」 「ぬいぐるみ? にしては動いてるわねえ……何かのイベント?」 しかし、その巨大なサイズこそ、『異常』に気付くのを遅らせる事になる。 普通ならそんなサイズのうさぎは存在しない。 おまけに右前脚にぐー握りで箸を持ち、左前脚にデカい茶碗を持っている二足歩行のうさぎとなれば尚更だ。 余りにも現実離れしている為に、ここが公園であった為に、対象がふかふかのうさぎだった為に、幾つかの要因は重なり合い、危険のシグナルを抑制した。 駆け寄っていく数人の子供達を、母親がにこにこと見守っている。 中に人か何かがいるのだろう。 もしかしたら良く出来たロボットか何かだろうか。 そんな考え。 だから。 「うさぎさん、何でおはしもってるのー?」 「ああ、これか、これはねうさー」 「え」 巨大な箸――いや、先が鋭く尖った巨大な棒、と言い換えてもいいだろう。 それが、一人の子供の腹を貫いた時に、誰もが一瞬状況を理解できなかった。 バタバタと血が落ちる音に、当の子供は呆気に取られた顔をしたままだ。 ぐぢゃっ。 もう一人。 団子に串を通すように、子供の体が重なった。 甲高い悲鳴は子供と母親、どちらが上げたのが早かっただろう。 串刺しにされた子供も必死でもがくのだが、体の中心を貫かれ持ち上げられては逃げる事など適わない。 いだいいだいいだいいだい。 泣き叫ぶ声にも耳を少し動かしただけで、うさぎは動じない。 「お前達を食べるためうさー」 童話の狼のような台詞を呟いて、うさぎは笑う。いや、うさぎは笑わない。でも笑った。 顎が開く。大きな顎が開く。 ごぢゅ。 鋭い前歯が、首の骨を噛み砕く音がした。 今度の絶叫は母のもの。 頭を失った子は、叫べない。 ぐったりと力を失った体の上から吹き出す血が、白い毛並みを赤く染めた。 一斉に子の元へ向かおうとする母。 だが、それもうさぎが箸で茶碗を叩けば、頭を抱えて屈み込む。 ごりゅごりゅと、骨が砕かれる音と柔らかいものを噛む音が響いていく。 十分もすれば、公園には誰もいなくなった。 真っ赤に染まった鼻先をぴすぴす鳴らしながら、巨大なうさぎは吼えた。 「同胞の屈辱を晴らすのが、うさきんぐたる我の務めうさー!」 ●うさー 「…………」 ブリーフィングルームにて、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は無言だった。 光景が凄惨だという以前に、呆れにも似た疲労が溜まっている様な、そんな雰囲気。 「……今回の敵はアザーバイド。自称『うさきんぐ』だから便宜上それで呼ぶ。倒すか、ゲートに押し込むかして帰して」 深い溜息。 「このうさきんぐは、以前同じチャンネルから出て来た別のアザーバイドの雪辱に来たみたい。……そっちの資料に関しては必要なら見て。能力が一緒という訳でもないから、無理に見る必要はないけど」 どこか投げやりなのは気のせいだろうか。 「能力はさっき見た通り。箸で刺してきたり、茶碗を叩いて麻痺効果のある音波、というか微弱な振動を発したりする。箸で刺されてもあなた達ならば串刺しにされる事はないだろうけど、威力は強いから、注意」 再び、無言。 「……外見と間抜けな言葉に惑わされないで。王を名乗るだけあって能力は高いし、話は通じるようで通じない」 公園までの地図と、簡単に能力を書き記した紙をリベリスタに渡し、イヴはモニターを振り返った。 「うさきんぐの開けたリンク・チャンネルはすぐ近くにある。もし帰還させるならば、押し込んだ後に穴を壊して置くのを忘れないでね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:黒歌鳥 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年10月29日(土)22:35 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●うさ のどかな公園。 気温は低いものの、日差しは穏やかだ。 だが、穏やかではないもふもふがもう暫しすれば現れる。 「前のアザーバイドの『お礼』らしいけど、迷惑しちゃうわ」 「本当だよね、しかも公園とか貴重な遊び場でそんな事するなんて!」 小さな嘆息と共にもれ出た『告死の蝶』斬風 糾華(BNE000390)の言葉に、『ビタースイート ビースト』五十嵐 真独楽(BNE000967)がちょっとずれた、しかし真っ直ぐな憤りを向けてぐぐっと拳を握る。 なるほど確かに、同じ年頃とは言え糾華の方はあまり公園を駆け回るタイプには見えないが、真独楽は格好からして活発派である。山間部ならばともかく、街中で遊びまわれる場所は希少で貴重。ならば侵されてなるものか。 公園内に人影がないか探して歩く二人から少し離れ、入り口では別の仲間が一般人の侵入を防ぐべく工事用のコーンを設置していた。 「えーっ、今日は遊べねぇのー」 「悪いなあ、工事なんだよ。危ないから別のところで遊んでくれ、な?」 「ちぇー」 近付いてきた親子連れを前に、『鉄腕ガキ大将』鯨塚 モヨタ(BNE000872)と『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)が咄嗟に演技。 高校生らしからぬ落ち着きをみせるフツの声に不自然な所はなく、応えるモヨタは身も心も間違いなく外見通りの年齢を重ねた自然体。 となればよっぽど疑り深い人間でもなければ、疑うはずもない。 顔を見合わせてその場から去る親子を見て頷きあう二人に、人の出入りを防ぐべく結界を張っていた『ディレイポイズン』倶利伽羅 おろち(BNE000382)が手を振って見せる。 「うふふ、ばっちりよん」 公園のほぼ全体を覆った結界。 特にイベントがある訳でもなし、まず間違いなく一般人の侵入は防げるであろう。 頑張りましょうねん、と二つに別れた舌先が唇を舐めた。 「しかし、相変わらず愛らしい外見とは似合わず凶悪な奴じゃわい……」 聞いた光景的にこの辺りだろう、と踏んだ場所の近くに潜み、『エア肉食系』レイライン・エレアニック(BNE002137)が眉を寄せる。前回のうさぎが食するのは女性の胸だったが、今度はそんな選り好みさえない。頭からバリバリと食べるという。 責任の一端は逃亡を許した自分達のせいであると思う彼女にとって、そんなうさきんぐの『食事』を許す訳にはいかないのだ。 「でも、カイゼルの次はきんぐって。……次はナイト辺りにでもなっているのか」 ふと思い浮かんでしまった『酔いどれ獣戦車』ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)の疑問。 大丈夫、カイゼルは一般人が付けた名前だからきっと本名は別。だから多分きんぐがトップ。もしかしたら『うさーどりっひ十三世』とか『うさだいまおう』とか『うさごっど』とかいるかもしれないけど。うん。 「というかほんとに言い付けた上、律儀に来ちゃったんだ……」 仲間思いなのは萌え要素だけどね、と『現役受験生』幸村・真歩路(BNE002821) が首を振った。 先日お互いの心に何かを刻みあった、強敵と書いてともと読む感じのうさぎを思い出す。 彼らとうさきんぐの様な仲間ではなくていいから、せめて『食べ物』ではなく、一つの意思を持った存在として映して貰えれば良い。 そう決心した真歩路は、何かを誓うようにうさみみを装備した。何でこんなん売ってんの購買。 ●うさうさ 空間が歪む。 何もない筈の地面が、水面の波紋を描き出す。 開かれた上位世界。こじ開けられた虫食い穴はリンク・チャンネルとなり、異分子を招き入れる。 具体的にはでっけえ毛玉を。 鼻先だけを最初に出して、ぴすぴす震わせてからもふりもふりと這い出てくる白い塊。 油断していたらうっかり和んでいたかも知れない。 凶悪な事を知っているリベリスタは誰も和まないが。 くるりと周囲を見回したうさきんぐは、すぐにリベリスタを補足する。 「むっ……。お前らだな、我が同胞を傷つけたのはうさー!」 びっ、と箸でディートリッヒ、レイライン、おろちを指すうさきんぐ。どうやら外見は何となく聞いていたらしい。 指し箸は嫌い箸の一種で行儀が悪いので良い子は真似をしないで下さい。そもそも茶碗片手に受け箸状態だけどなうさきんぐ。 「仲間を傷つけるのはうさきんぐとして許さないうさー! みんな食ってやるうさー!」 がちんがちんと箸が鳴る。これも行儀が悪いので以下略。 「もふうさちゃんでも、そんなことするコはかわいくないんだぞ!」 「ぐふはっ!?」 視線が三人に向いている隙に、飛び出した真独楽の一撃ががっつりうさきんぐを捉えた。身軽な彼、もとい彼女……真独楽の速度を生かした爪に引っ掛かれ、うさきんぐが無闇に大きなリアクションを取る。 「はん、そんな箸なんかで食べられてたまるものか!」 レイラインは身体能力を飛躍させる。速度を更なる高みに、一陣の風となるべく押し上げる。 金色の髪が舞い上がった。 「う……うさー、ちょっと油断しただけうさー! ちみっちゃいお前らなんかに負けないうさー!」 「子供と思って甘く見られたら困るわね」 ぶんぶんと箸を振り回すうさきんぐに、冷静な糾華の声一つ。 彼女の傍には忠実な影が寄り添い、主の動きをサポートすべく構えを取る。 「その通り。徹底的に殴り倒してやろうぜ」 回復手であるフツを除けば、後は全員殴り仕様。 倒れる前に殴って倒せ。大いに結構。 戦の空気にディートリッヒの体内の闘気が迸る。 「何を言ううさー、我に敵うはずなど」 「初めましてうさきんぐ! 仲間の仕返し御苦労さま、返り討ちにするわ!」 「へふうさー!?」 まだ何か言いたがってるうさきんぐ相手に、潜んでいた真歩路がバックスタブ。 通常ならば背後から首を狙うのだが、何しろうさきんぐはでかい。 なので少女がでかいうさぎの背中にもっふり乗った図に見える。ほのぼのだ。 少女なんか金属製の怖い武器つけてたけど。抱き締めたっぽい感じになった所からうさぎの血出たけど。光景としてはほのぼのと平和だったと思う。真歩路の台詞も差っぴけば。多分。 「んふふ、オドりましょ?」 そんなのはさておき、おろちが微笑む。 豊満な体も今回は引き寄せる術とはなりえない。だとしても困るものか。 底の見えない深緑の湖面が、未知の存在を解析すべく妖しい煌きを帯びた。 効率的な一撃を繰り出す為に。 指先が、次のチャンスに糸を放つべく蜘蛛のように滑らかに動いた。 が、当然うさきんぐも大人しくしてはいない。 「我はうさきんぐうさー! 舐めるなうさー! まずはおまえだうさー!」 「……っ!?」 箸がうさきんぐの手元で回った気がした。 次の瞬間、糾華の腹部に凄まじい衝撃が襲い来る。 骨に内臓に響く、重い一撃。スピードと力の乗ったそれは、先を尖らせた丸太で突かれた様な激しい痛みを齎した。 逆流する胃液、止まる呼吸。 リベリスタとして決してか弱い訳ではない彼女でさえ、相当に『削られた』と分かる一撃。 ふざけた言動をしてはいても、能力は高い。イヴの言葉が思い出される。 だが、驚愕したのはうさきんぐの方。 「な……我の箸で貫けないうさー!?」 そうだろう。一般人ならば容易く二、三人を纏めて貫ける一撃を耐え切った。 胃液で喉が荒れる感覚を味わいながら、糾華は努めて冷静に告げる。 「ほら、ね。……手を出すと大やけどでは済まないわよ?」 彼女の手の内では、銀色の刃が威嚇する様に光を反射した。 糾華を見詰め瞠目した赤い瞳が、うさぎにあるまじき鋭さを帯びていく。 「ああ、オイラたちだってそうそう食われてたまるかってんだ!」 己の力を高めながら威勢よく言い放ったモヨタの手には、身の丈ほどもある剣が握られている。 あれを振り回し操るのに、どれだけの力が必要か。 悟り、うさきんぐが少々構えを変えた。少し伸びをするような二足歩行状態から、若干猫背――うさぎだけど猫背――に似た、いつでも飛び掛かれる姿勢に。 「ガンガン押してこうぜ!」 待ち構えていたフツが投げた符が、糾華のダメージを癒していく。 地面に波紋が見えた時点で施した彼の守護があったのも、多少の軽減にはなっていたであろう。 だが、正念場はまだまだ先だ。 構えを変えたうさきんぐを前に、フツは癒しが途切れる事のないように両手の指に符を広げた。 ●うさうさうさ 白い毛玉と、子供達の間で箸が踊る。 大雑把に見え、機械仕掛けの罠のように正確に狙い済まされた一撃に腹を肩を足を穿たれ、小さな体が痛みに身を折る。内臓が破壊されるような痛み、骨が微細に砕かれるような痛み。 フツの回復は決して質の悪いものではなかったが、一撃が大きく蓄積されれば補いきれない部分も出る。 ましてや対象が複数に増えれば、追いつかない事もある。 だが止まらない。 子供であろうが彼らはリベリスタ、この凶悪なうさぎを止めるべくこの場に集った一人。 一度地面に倒れたはずの子供が起き上がる様は、うさきんぐの心に焦りを感じさせるには十分だった。 先程、箸の先端に突かれた肩が痛む。骨にヒビが入っているかもしれない。だがまだ大丈夫。足は動く、腕も動く、なら大丈夫。 糾華の手が白い毛皮を撫でた。指先から体温と鼓動が微かに伝わり、次の瞬間は破裂した爆弾の熱に焦がされる。 「世界には『たべちゃだめ』なものもあるんだぜ!」 モヨタの剣に宿った光。エネルギーの凝縮体であるそれがうさきんぐを強かに打つ。 彼の機械化した部分でさえ、箸で突かれれば軋みを上げた。 木製に見えるが、別のものなのか、それともうさきんぐ自身の力で強化されているのかまでは分からないが、脅威には違いない。 それでも少年は怯まず刃を振るい続ける。 「そんな事は知ってるうさー! 我々は仲間は食べないうさー!」 叫ぶうさきんぐの腕が残像となる。 目が合った事でその先が自身と悟った真独楽は、ふらつく足で耐えられる事を祈りながらぎゅっと唇を噛んだ。 が、衝撃はやって来ない。 かふ、と漏れる吐息さえ艶かしく、前に立ったおろちが薄く微笑んだ。 「はい、下がって回復して貰ってねん」 「回復の間は俺が埋めとくぜ」 笑って剣を構えたディートリッヒが横に並ぶ。大人として男として、張りたい意地は何処にだって。 おろちが次の一撃を受けるようなら、自身が身代わりになるのも厭わない。 うさきんぐが仲間の敵討ちに来るのなら、こちらにだって仲間がいるのだ。 「――ありがと!」 元気よく答えた真独楽に、フツの手から符が放たれた。 そんな中、真歩路は異文化交流宜しく浮かんだ疑問を問いかける。 「そのステキな王冠って最初からあったの?」 「ふ、これはきんぐの印うさー。きんぐたる資質を備えたものに顕現する証うさー!」 「ミミーの目指すお姫様……えーと、かぐやだっけ。それってそういうのが生えるって事?」 「ぷりんせす☆かぐやは果たしたものがいない伝説なのでどうなるかは不明うさー。この伝説は遡って時は遥か我らのご先祖うさがげふうっさー!?」 すげえ要らん上に長くなりそうな話ごと、モヨタとディートリッヒの剣がうさきんぐの横っ面を張り飛ばした。いや、なんか隙あったから。 レイラインも負けてはいない。 箸になんぞ負けるかと己の刃を振りかざし、素早い動きで惑わしながら身を刻む。 よろりと、うさきんぐがよろめいた。 「残念ながら、貴様の食事はここまでじゃ!」 「――そんな事はないうさー!」 剣先を向け告げるレイラインに、うさきんぐが吼えた。 さっと取り出された茶碗に、箸が叩きつけられる。 ぢりん。ぢりん。 不協和音のように違和感を抱かせる音。 いまこそこの試みを、とばかりに手持ちのどら焼きを投げる真歩路だが、うまく口でキャッチされて食べられた上に箸は止まってくれなかった。無常。食うだけか。 耳から染み込み脳を揺さぶるそれは、神経を麻痺させ行動を阻害する。 数人が足を止め、苦悶の表情を浮かべるが、それも長くは続かない。 「おっと、心配すんなって!」 フツの声と共に、視界を一瞬埋める光。 眩くも決して目を焼かないその光が染み渡り、不協和音に冒された体を解きほぐす。 「終わらせてやるぜ!」 ディートリッヒの刃が空に軌跡を描き――赤を撒き散らし、うさきんぐは仰向けに倒れた。 ぴすぴす、と鼻先が動いている所から見ると息はある。 それどころか、よろよろと身を起こすだけの体力もあるようだ。 飛び掛ってくる危険性を考え、距離は取りながら糾華が指先で己の髪を巻く。 「どう? この世界の子供はおっそろしいんだから」 「大人しく帰らないと、こんなんじゃ済まないかもな!」 「そ……そんな訳ないうさー! 今まではそんな事なかったうさー!」 爪の先を向けてうんうんと真独楽が頷くが、うさきんぐは箸で地面をばんばん叩いて譲らない。 「ふふ、じゃあ運が良かったのねん。このチャンネルにはワタシ達よりコワいのたくさんよん」 「そうそう、オイラより強いリベリスタだってたくさんいるんだ、また来たら瞬殺されっぞ」 意味ありげな流し目を送るおろちに頷くモヨタ。なんか憧れのヒーロー像から若干遠のいたような錯覚を覚えてしまったけど気のせいだ。一般市民を守るために必要なんだ。 「ま、来たらまた俺達がボコボコにしてやるけどな!」 「そうじゃ、何度来たとしてもな! 早くお主を待つ者達の所へ帰るがよい!」 肩に剣を掛けて叩くディートリッヒが獰猛に笑えば、レイラインが腕を組んで言い放った。 ぎりぎりと前歯で地面を引っかいていたうさきんぐは、自身が開けたリンク・チャンネルへとゆっくり後退して行く。 「オレ達はお前達より強いから、これ以上来ても返り討ちになるだけだぜ?」 「く……確かにうさきんぐたる我が敗れた以上、ムーンラビットに勝ち目は薄い……ここは退いてやるうさー!」 言い含めるようにフツが繋げれば、あくまでも尊大にうさきんぐは言い放った。 ずぶずぶと、リベリスタの視線の中で地面に沈んでいくうさきんぐの鼻先に投げられたもの一つ。 「うさ?」 「ミミーに。これであなたもプリンセス! ってね!」 きらきら光るティアラを鼻先に乗せ、きょとんとした顔のまま沈んだうさきんぐに真歩路は笑う。 届くかは分からないが、何かを分かり合えた気がする相手に。 「……全く、好き嫌いがないからエライとか凄いとか、そういうもんじゃ全然ないわよね」 糾華が溜息。 ――つまりピーマンが食べられなくても問題ない。そう思わない? 子供らしからぬ憂いを含んだ溜息の後、真面目な顔で言い放たれたそれに頷いた子供は果たして何人いた事か。 うさきんぐが消えた後も波打つような状態になっている地面。 リベリスタは頷き、声を合わせて武器の先で地を叩き、うさぎの穴を閉じ込めた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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