●フィクサード 「食料チェック。車チェック。あと破界器チェック」 「急げよ。一秒遅れるたびにシンヤさんかジャックのナイフで切り刻まれると思え」 「うへぇ。ぞっとしねぇ」 船の中、あわただしく動くフィクサードたち。 船に積まれているのは、神秘世界で戦闘を行う為の装備品。後宮シンヤに命じられたフィクサードが、その能力を駆使して集めた品物だ。 「伝説を築く為とはいえ、大量の物資だよなぁ」 「仕方ない。シンヤさんの元にはこれからどんどん兵隊が集まるからな。モノはいくらあっても足りないぐらいだ」 「まぁ俺たちは、そのおこぼれに預かれればいいや、ってことで」 「さて、チェックは終了だ。あとは出港まで誰もこの船に近づけるんじゃねえぞ」 「「「うっす!」」」 ●リベリスタ 「ナポレオンがロシアとの戦争に負けた原因を知っているか?」 「いきなりなんだ?」 「ロジスティック。物資や医療具などを届けたり、戦場までの道を確保したりすることだが、それが満足にできなかったからだ」 「……で?」 集まったリベリスタは『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)の言葉の先を促した。意味のないことを言っているように思わせておいて、実は関係があることを言っている。長い付き合いだ。それぐらいはわかる。 「後宮シンヤはこれからもジャックと共に戦いを続けるだろう。このまま黙って消え去る、なんてことは考えられない。 そうなるとそれなりの物資が必要になる。そこを抑えることができれば大打撃になるはずだ」 「それはそうだが、肝心のシンヤのアジトがどこかを――」 「先日恐山会から情報提供を受け、それを元にカレイド・システムをフル稼働した結果、シンヤのアジトの一つを発見した」 ブリーフィングルームの空気の質が変わる。 「海沿いの倉庫。フィクサードたちはそこから船に物資を運んでいる。そこから別のアジトに物資を運ぶつもりだ」 「なるほど。その船を襲撃するわけだ」 「YES。出港されれば追う事は難しくなる。そうなる前に船ごと物資を押さえること。スピーディ、且つエレガントに」 モニターに映し出される船と、赤い光点。赤い光点はフィクサードを表しているのだろう。甲板に五つ。船内に六つ。 「……数が多いな」 「しかも真正面から攻めれば確実に気付かれる。俺たちの戦力に怯えて船の出港を早められたら元も子もない」 「それも問題ない。陽動作戦をとる。 『危機感をあおらない程度の人数』で真正面から攻めて甲板のフィクサードを集める。二、三人程度の襲撃で怯えるほど、彼らの肝も小さくはないはずだ その隙に海側からボートを使って船に接近。飛行して船内に潜入して操舵室を抑える。そのためのスタッフは準備済みだ」 扉を開けて入ってきたのはアークの職員と、作務衣を着た一人の男。 「よぅ。喧嘩らしいな。混ぜてもらうぜ」 『菊に杯』九条・徹(nBNE000200)は黒い金属の棒で自分の肩を叩きながら、笑顔を浮かべた。 「ミスタ九条は囮に回ってもらう。フィクサードに対する知名度も含め、囮にはうってつけだ」 「ひでぇ話だ。了解した」 伸暁の言葉に徹が笑って答える。囮にされてむしろ嬉々としている節さえ見られた。 「操舵室にいるフィクサードを全滅させれば、船の出港は止められる。戦意を失ったフィクサードを追う必要はないが、余裕があるならお願いしようかな」 「気楽に言ってくれるな」 だが、気分が楽になったことには違いない。シンヤ達に対する反撃のチャンスが回ってきたのだ。 リベリスタたちは目を合わせ、ブリーフィングルームを後にした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年10月28日(金)00:09 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「シンヤへのお礼参りがてら――カチコミなのじゃ!」 シンヤに捕われていた同胞の無事も確認し、『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)は腕を振り上げる。見上げるは大型タンカー。アークの職員に『翼の加護』を付与してもらいながら、囮となるリベリスタを見る。 今回の作戦は陽動作戦である。囮となるべき存在が敵をひきつけ、その隙に船のコントロールを奪う。瑠琵はその囮役に立候補したのだ。相手をひきつけるため多数を相手することになる役割ではあるが、 「裏方だけどアタシはこういうの結構好きだ」 『がさつな復讐者』早瀬 莉那(BNE000598)は潮風に制服をなびかせながら笑みを浮かべる。少数で多数を相手するのは心躍るし、フィクサードを許す気はない。が、莉那が囮に立候補した最大の理由は元々一人で囮をするつもりだった『菊に杯』九条・徹(nBNE000200)がいたからだ。 かつては拳を交わしたものとして、色々思うところがあるのだろう。皮肉を込めて莉那が言葉を交わす。 「九条……まだ生きてたんだな。音沙汰なかったから破門されてどっかで野垂れ死んでるんじゃないかと思ってたぜ」 「どうも死神にも嫌われたらしくてな。もう少しこっちで苦しんどけ、って言われたぜ」 「そりゃ残念。でも死神の気持ちもわかるぜ」 別段二人とも仲が悪いわけではない。言葉は荒いが、戦闘前の緊張をほぐす軽口のたたきあいである。 「3対5で負ける気は毛頭無い。そうじゃろう? 九条よ」 「相変わらず強気な嬢ちゃんだな。おおっと、年齢はオレより上だったか。 ま、頼りにしてるぜ」 ほんっと見た目ってあてにならねぇよなぁ。苦笑交じりに徹は思い、デジャヴを感じた。あれ、前もどこかでこんなこと思わなかったっけか? そんな疑問は作戦開始時刻を告げるアラームで心の中から消え去る。三人のリベリスタは地面を蹴って重力の枷から解き放たれる。甲板に降り立ち、声高々に叫んだ。 「この船は貰い受ける! 臆さぬならば掛かって来い!」 瑠琵の宣戦布告に甲板に集まるフィクサード。それぞれの武器を構え、敵意をむき出しにしている。 「少数で多数相手にする喧嘩ってやっぱ燃える!」 「違いねぇ。楽しませてもらおうか」 莉那が武器をダウンロードして前に出る。遅れて徹も金属の棒を構える。 「あいつ等……アークのリベリスタか?」 「たった三人で攻めて来ただと? ……『万華鏡』が俺たちを捕らえたか?」 「まさか。いくら『万華鏡』でも情報なしでここを捕捉できるはずがない」 「……なら、偶然か?」 フィクサード達の疑念は残るものの、目の前の三人を無視できないのも事実。 「九条。お前の知名度が高いのはいいんだが、すげぇ警戒されそうな予感がするんだけど……」 「その辺をうまくやるのが陽動の腕の見せ所だろうが。折角こっち来たんだから、なんかそういうのはねぇのか?」 莉那の質問に徹が答える。しばし黙考した後、莉那は武器を相手に突きつけた。 「派手に暴れる」 正解だ、と徹も前に出る。 3対5の戦いが、甲板の上で繰り広げられる。 ● 「先生おねげぇしやす!」 甲板での戦闘音を聞きつけ、『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)はアークの職員に翼の加護を求める。 「鉄の身体に続き遂飛行機能まで得る日が来るとは。次は目から怪光線か胸から熱線だな」 腕がロケットになって飛ぶかもしれないですよ。そんなことを思いながら、喜平の頭の中は作戦実行の為に働いている。如何に相手がジャックやシンヤに比べて劣る相手とはいえ、彼らもフィクサード。調子に乗りすぎた悪党連中に同情はいらない。 「囮も面白そうだよね」 宙に浮き、囮チームが戦っている戦闘音を聞きながら『ガンスリンガー』望月 嵐子(BNE002377)は胸を躍らせる。アークのリベリスタとして嵐子の知名度も戦闘力も高いほうだ。囮に立候補しても充分やっていけただろう。 「ま、突入作戦もカッコイイからいっか」 「陽動なんていうめんどくさそうなことは他の人に任せるよ」 『偽りの天使』兎登 都斗(BNE001673)は船の上に降り立ち、気配を絶って周囲の音を聞き分ける。戦闘音は遠く、しかしはっきりと聞こえてきた。少なくとも近くに人は……いない。手招きしてリベリスタたちを誘導する。 「突入タイミングを合わせるわ」 薄い青色を混じらせた片手剣を手に『硝子色の幻想』アイリ・クレンス(BNE003000)は操舵室前の扉で構える。全員が頷くのを確認した後、三本指を立てる。ゆっくりと折れていく指。スキルの付与を行いながら、時を待つ。最後の一本が降りたとき、 「みんな準備はいいかいぃ? そんじゃぁお仕事と行きますかぁ。派手に行くぜぇぃ!」 『外道龍』遠野 御龍(BNE000865)が斬馬刀を振りぬき、ドアを破壊する。衝撃と共に操舵室の中にリベリスタがなだれ込む。 「アークに喧嘩売ったことを後悔させてやんよぉ」 御龍は笑みを浮かべながら周りを見回す。操舵室に集まっていたフィクサードの数は六人。囮チームを覗けば、こちらの数も六。人数の上では同じだ。ならば後は戦略で打ち勝つのみ。 「リベリスタ!? こっちもか!」 「じゃあ、甲板の奴等は陽動……!」 「その通り、この船のコントロールいただくぜ!」 させるかよ、とフィクサードが叫ぶ。 「きゃう……。怖い、けどがんばる」 大声を上げるフィクサードに怯え、操舵室の入り口で縮こまる依子・アルジフ・ルッチェラント(BNE000816)。自分を救ってくれた魔道書を抱きしめながら、戦う勇気を生み出そうとする。大丈夫、皆と一緒なら……。おずおずと戦場に目を向けた。 6対6の戦いが、操舵室で繰り広げられる。 ● 「いくぜ!」 莉那は身体のギアをあげ、ジーニアスのほうに突撃する。緩急つけた動きで相手を翻弄し、持っていたナイフで相手を切りつける。その姿、まさに獣の如く。しなやかに動き、獰猛に傷つける。 「回復は傷癒術のみじゃから余り離れんようにのぅ?」 莉那の少し後ろに位置するように移動し、瑠琵は符術を展開する。不可視の壁がリベリスタの前に展開され、神秘的に物理的に守っていく。回復と防御。瑠琵の役割は戦場のコントロール。直接フィクサードを傷つけるわけではないが、重要なポジションだ。 徹は莉那と瑠琵の死角を守るように移動し、棍を振るう。 数に勝るフィクサードは莉那と徹をブロックし、後衛の瑠琵に残りが迫る。防御力に勝るクロスイージスが前衛の押さえに入り、デュランダルとソードミラージュで一気に後衛を潰そうと。 「ふん。予想通りじゃな。我が妙技、篤と見るが良い!」 瑠琵はフィクサードの布陣を見て子鬼を召還して防御に専念する。不可視の壁と子鬼の加護。元々防御に秀でた瑠琵は、並大抵の攻撃なら受けきる自身があった。 「アタシの動きについてこれるか?」 莉那はステップを踏みながら集中し、フィクサードを翻弄するように動く。その間もフィクサードの一撃が莉那を傷つけるが、その動きは止まらない。真正面にいると思えば横に。横にいると思えば足元に。相手の裏をかくように動き、混乱させていく。 「そこか!」 「うわっ。落ち着け、オレだ!」 翻弄されたフィクサードの武器は時折同士討ちを生む。そして莉那の幻を生む武技がその隙を付き、追い詰めていく。 しかし多勢に無勢は否めない。 瑠琵が防御に徹したこともあり、リベリスタ側の手数は減る。勝負はいつしか長期戦の流れになってくる。 (さすがに全員倒すのは厳しいかのぅ。囮の役割は果たしておるようじゃが) 戦場を見て冷静に判断する瑠琵。莉那や徹も奮戦しているが、火力充分とはいい難い。 じわりじわりと、傷が蓄積していく。 ● 「謝るなら今の内だよ?」 操舵室の戦いで口火を切ったのは喜平。壁を、天井を、機材を蹴ってメタルフレームのフィクサードを翻弄しながら、あらかじめ起動していた影の従者と共に傷つけていく。彼の得物は打撃にも使えるショットガン。その重量が速度と加味されて、フィクサードを殴打する。 今回の相手はジャックやシンヤのパシリ。野望もなく、自力で有名になる気もない小物。悪党にしても寄る辺を間違えた輩。それでも手は抜かない。なぜなら富永喜平は正義の味方だから! 「まぁ応じないんですけど」 「全部纏めて蜂の巣だよ!」 嵐子は愛銃『Tempest』を構え、射線を確保しながら連射する。叩き付けられる銃弾はまさに嵐の如く激しい。できれば生け捕りたいが、死んだら死んだときまで。手加減をするつもりはない。まずは勝つこと。 戦場の空気が肌を刺す。心地よい刺激。なれた刺激。常に戦場に身を置く嵐子にとって、この空気こそが日常。不測の事態を笑顔で受け流し、邪魔するものは銃で蹴散らす。我を通し、笑顔で彼女は進んでいく。 「ざーんねん。出航は取り止めだよ」 都斗は大鎌を振り上げ、ジーニアスに向かって強く踏み込む。相手を圧倒するような一撃。それが防御の為にオーラを溜め込んでいたフィクサードの虚を付き、オーラを霧散させた。舌打ちするフィクサードに、眠そうな瞳を向ける都斗。 ぼうとしているように見えて、相手の出鼻を挫く。驚くフィクサードの顔を見て、してやったりと心で微笑む都斗。とりあえず一人は生かしておかないといけないな、とドライに考える。 「存分に舞うとしよう」 銀の刃を持つ片手剣『カラドボルグ・レプリカ』を携え、アイリは操舵室の床を蹴る。後衛を守りながらのヒットアンドアウェイ。青いドレスと銀の刃が戦場に舞う。まるで演劇のワンジーン。されどその刃は現実。同じ機械の肉体を持つフィクサードを切り刻んでいく。 銀の刃が速度に任せて振るわれる。二度、三度、四度。どのように刃を振るうかという想像力。それを現実にする期用度。幾度となく刃を振るっても崩れない美しい姿勢。そしてそれを可能とする努力。それら全てが美しい舞を生み出していく。 「……てめぇ!」 フィクサードも負けてはいない。メタルフレームが体内の気を爆発させている間に、ビーストハーフが突っ込んでくる。その速度でアイリを傷つけ、ジーニアスが力任せに喜平と御龍を殴りつける。 「戦いとはこうでなくてはな。くっくっく……」 傷つけられ、血が流れるのをかんじながら御龍は微笑む。ズキズキと痛む部分が戦闘中であることを自覚させる。興奮が止まらない。心臓が早鐘のようになり、熱い血液が体内を駆け巡る。 「我と遊ぼうではないか、存分にな!」 楽しい愉しい。戦闘が愉しい! 戦闘狂のスイッチが入り、斬馬刀を振り上げる。体内を駆け巡る鬼神の如きエネルギーを武器に集中させる。大声を上げて武器を振り上げ、思いっきり振り下ろした。勢いに負けて、吹き飛ぶメタルフレーム。高笑いする御龍。 「あぅあぅ……。あの、大丈夫……ですか?」 笑う御龍を心配しながら依子は操舵室の入り口で魔道書を抱いていた。部屋の中の乱戦をおどおどと見ながら、部屋の外にも視線を向ける。今ここで背後から襲われたら。そう思うと怖くて仕方ない。 操舵室の乱戦に入る勇気はない。できるなら今すぐここから逃げ出したい。むしろ今この瞬間ならそれはできるのではないだろうか? 人の来る気配のない廊下を見ながら、依子は思う。戦闘音が心を苛み、破壊音がその足を竦ませる。物言わぬ魔道書を大事に抱え、息を吸って吐き出す。 依子はゆっくりと呪文を唱え、優しい歌を奏でる。それがリベリスタの傷を癒していく。怖い。逃げたい。その気持ちは否定はできない。だけど――ここにいてみんなの傷を癒したい。その気持ちも否定できなかった。 傷を癒されたリベリスタの笑顔。依子の背中を押す無形の気持ち。それを受けて、恐れの震えが少しだけ収まった。 「舐めるなぁ!」 もちろんフィクサードも簡単に倒れない。シンヤやその幹部に劣るとはいえ、彼らも覚醒者。回復のない前倒しの構成だが、その分火力は高い。 「くっくっく……! その気迫だ。これこそ戦闘。命を懸けてかかってこい!」 御龍が興奮した瞳をフィクサードに向けた。互いに引く気配はない。 戦場は、加速していく。 ● 「負けるかよっ!」 フィクサードの斧が莉那に振り下ろされ、膝を折る。しかし彼女はまだ負けないと運命を燃やして立ち上がった。 ぎりぎりに追い込まれた状態だが、むしろその方が魂が燃える。肉体が熱く滾り、精神が鋭く尖っていく。ただ戦うために莉那は燃え上がる。 「まだやれるか?」 「当たり前だ」 徹がその背中を守る位置にたち、背中合わせに無事を確認する。唇の血を拭い、莉那は武器を構えなおす。 五人いたフィクサードのうち二人は地面に横たわっていた。残りは三人。こちらと同数だが、フィクサードの三人はほぼ無傷。こちらはかなり疲弊していた。 「ふん、この程度でくたばりはせぬわ」 瑠琵も疲労は激しい。回復を行なう彼女は集中的に狙われることになった。防御に秀でる彼女ではあるが、元々の体力は高くない。少しずつ積み重なったダメージが蓄積し、瑠琵も運命を削って戦場に残る。 「まだやる気だぜ、こいつ等」 敵の戦意は高い。デュランダルの三人がそれぞれの武器を構えて突撃してくる。 莉那、瑠琵、徹は互いの死角を補いながら応戦する。 運命の加護はもはやない。だが、彼らは諦めずに刃を振るう。 ● 「あ……」 操舵室での戦いで真っ先に倒れたのは依子だった。 フィクサード側は六人全て前衛タイプ。リベリスタは四人が前にたつが、二人は止まらない。回復役である依子をフィクサード二人が集中的に責める。都斗が回復を行なうが、それを上回る暴力が依子の意識を失わせる。倒れてもなお、魔道書だけは離さすに。 依子を倒したフィクサードはそのまま銃弾の暴風を生み出す嵐子にその刃を向ける。ガンマンの距離ではない。それを理解しながら嵐子はニヤリ、と微笑んだ。状況をひっくり返す策があるわけではない。むしろ危ないとさえ思っている。なのに彼女はこういった。 「上等。来るならきな」 何が起きても受け流し、銃を撃って解決する。前のめりに銃を撃ち、こちらが力尽きる前に相手を撃ち殺す。そんな気概でショットガンを構えた。 「くくく。運が悪かったな。皆殺しだ!」 御龍が殺気立った瞳でフィクサードを睨み、武器を振り下ろす。確かな手ごたえと共に血飛沫が舞い、フィクサードが倒れる。伏した男を見下ろし、そして次の獲物を探す。 「くっ……!」 アイリの胸にデュランダルの槌が命中し、視界が真っ白になる。薄れ行く意識。このまま倒れるという運命を、自らの意思で燃やして立ち留まる。驚くフィクサードに迫る剣戟。それが逆転劇を生んだ。胸をXに斬られ、倒れるフィクサード。 「投降してはどうだ。死ぬまで戦い続ける気でもあるまい」 アイリの剣がフィクサードに膝をつかせる。切っ先を向けたまま、降伏を促した。 「ふざけ――」 決裂の意を示そうと思ったフィクサードの耳に、仲間が倒れる音が聞こえる。 「投降してもらいたい。こちらも無闇に命を奪う気はない」 アイリの再度の投降要請に、今度こそフィクサードたちは武器を捨てた。このまま戦っても一人ぐらいは倒せるだろう。だが、勝利の目はない。それを悟ったのだ。 「ヒャッハー! フネハイタダイタァ……あ、違った」 喜平が幻想纏いを通じて甲板組に連絡をする。どどこか悪人めいているのだが、意図は伝わるだろう。 ● 「どうやら、そっちの詰みのようだぜ」 傷だらけの体で徹が幻想纏いから聞こえてきた仲間の声を聞かせる。甲板で戦っていたフィクサードは操舵室が占拠されたことをここで悟り、逃亡を図る。 「逃げたきゃ逃げろ……けど、オマエ等を待ってるのはジャックのナイフの錆になる運命くらいだろうな」 フィクサードは許さない。本当は死ぬまで戦って一人でも多く殺してやりたい衝動に駆られながら、莉那はフィクサードを逃がすことにした。 瑠琵は逃げるフィクサードの背中に『天元・七星公主』の銃口を向け、逃亡させないよう敵意をこちらに向ける符術の弾丸を放つが、それが効果を表すことはなかった。命中はしたが、術のかかりが浅かったようだ。 「ふん、まあよいわ」 夜の闇にフィクサードが消える。傷だらけのリベリスタたちは、脱力したように背中合わせに座り込んだ。 ● フィクサードを捕らえ、尋問を行なう。彼らは輸送先のアジト以上の情報は得ることはできず、荷物もそこで別のチームに引き渡してそこから先何処に行くかは知らなかった。 御龍が慣れた手つきで船を動かし、三高平港に向けて船を動かす。その間にリベリスタたちは破界器を物色していた。いいものがあれば掠め取ろうとする輩もいたが、 「盗品に手をつけてはいけない。盗られた人や組織に返すべきだ」 というアイリの一言でリベリスタたちは我に帰る。質より量で集められた物なので、いい物品はなかったから、というのもあるが。 喜平と都斗は船の中のものから相手の動向を探ろうとする。大量の兵隊を集めての大きな動きがある……以上のことは残念だがわからなかった。 朝日が昇る。その光に照らされて見えるのは三高平港。我等が方舟ももうすぐだ。 リベリスタたちはその光景を見ながら、勝利を再度噛み締めた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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