● 黒髪黒目で中肉中背の一般的な日本人の男性、佐藤圭一(28)は、今目の前の2人の女子高生を眺めていた。 茶髪に少し派手なメイクを施したイマドキの女子高校生たちは今から遊びに行くのだろう、学校帰りの恰好のまま、街へと繰り出そうとしていた。 「ねぇねぇ、昨日のテレビみたー?」 「見た見た! やっぱりアキくん超カッコイイよー!」 「だよねぇ! ハーフだからかなぁ、茶色の瞳がいいよねー!」 そう語る彼女たちの中の話題の人物は、最近人気が出てきた若いアーティストのことだろう。 だが彼にとってそんなことはどうでもよかった。 そっと彼女たちの後ろをつけ、そして人気がない道へと入った瞬間、彼女たちに声をかけた。 「あの」 「ぇ……?」 「何、この人、知り合い?」 「知らない……。 あの、何か用ですか?」 不安げに聞く彼女たちの表情を見て、圭一の顔は曇る。 こんな顔をさせたかったわけではないのだ。 急に声をかけたことと驚かせてしまったことを詫び、圭一は本題を切り出した。 「俺を、思いきり罵倒してくれないか」 「「……は?」」 「もう一度だけ言う。 俺を思いきり、罵倒してくれないか」 大事なことなので二回いいました。 そして2回目を聞いた女子高生たちは手と手を取り合い後ずさる。 危ない人だと判断されたのだろう。 怯えた様子で今にも逃げ出してしまいそうだ。 勇気を出して言ったのに。 ただ罵倒してほしいだけなのに。 「何で言うこと聞いてくれないんだよ!!」 次の瞬間、振り上げた圭一の手が、女子高生たちの頭を潰された豆腐のようにぐちゃぐちゃにしていた。 ● 集まったリベリスタたちを一瞥し、オッドアイの少女が口を開いた。 「この事件が起こる場所は、この女子高の近く。 佐藤圭一という男が、このあたりで待ち伏せをしているの」 オッドアイの少女、真白イヴ(nBNE000001)が用意した地図は、とある女子高周辺の地図。 「毎日16時ごろにこのあたりに出没しているから、行けばすぐわかると思う」 イヴが指さしたのは、通学路近くの横道。 通る人が少なさそうなこの横道で、毎日女子高生を眺めているらしい。 ただの変態じゃねぇか、とは誰の心の声か。 「でも、それだけじゃなくて、佐藤圭一は罵倒されることに幸せを感じる、ドが付くほどのMだよ」 さらに上を行く人のようでした。 「罵倒されるのが好きなだけなら問題はないんだけど」 いえ、その時点で問題ありまくりです。 「フィクサードなの。 倒して来て」 それは倒さざるを得ない。 なんというか、日本の未来のためにも。 「武器は特に持っていないみたい。 殴るとか蹴るとか叩くとか……一般的な攻撃方法ね」 威力はそこそこ強めなようなので、気を付けてほしいと彼女は言う。 「撃破場所なんだけど、このあたりがいいんじゃないかなと思って」 そう言って指さすのは女子高からほど近い林道。 人通りが少なく、街からも離れているので一般人が巻き込まれる可能性は低いだろう。 「罵倒してやると言って呼び出すか、囮を立てて後をつけさせるのかは任せるけど……可愛い女の子が罵倒してやるって言えば少なくともホイホイついて来るから」 こんな変態はしっかりと粛清させてやって。 そう言って、彼女はリベリスタたちを送り出したのであった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:りん | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年10月26日(水)22:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●昼と夕方の間。 街外れの空き地。 いつもは人気のないそこに、5人の女性が立っていた。 「待ってる間は暇よね」 ぐーっと伸びをし、『自称:アイドル教師』ソラ・ヴァイスハイトは空き地を囲んでいる木の一本に背を預ける。 空いている時間に空き地の広さを確認しようと、『A-coupler』讀鳴・凛麗は視線を巡らせる。 空き地は広苦も無く、狭くもなく。 10人以上の戦闘には向いていないだろうが、それ以下の人数であれば動きにくいということはないだろう。 今回は1人の変態が相手。 誘き出すのに8人でぞろぞろと行く必要はないということで、彼女たちは空き地で待機しているのだ。 今頃、囮の3人はターゲットに接触したところだろうか。 その光景を想像し、『さすらいの猫憑き旅人』桜 望はぐるぐると首を回す。 準備運動、という意味もあるのだろうが、その行為はどちらかと言うと思考を巡らせている割合の方が大きいだろう。 「しっかし難儀な敵さんもいたもんやなぁ……。 ちょうど今回もメンバーはみんなかわいい子ばっかりやし 本望かもしれへんけど……」 その言葉尻に吐き出された溜息は、色々な意味を含んでいるが、彼女はぱっと思考を切り替え、ぐっと背伸びを一つ。 (せやっ、こういうタイプには押して引いてさらに押す作戦もええかもしれへんなぁ……) ふと浮かんだ考えに、望はにやりとほくそ笑んだ。 その隣では『蜥蜴の嫁』アナスタシア・カシミィルもまた思考を巡らせていた。 (フィクサードにはドSなヒトが多いケド、やっぱりドMなヒトも多いんだねぃ) 誰か知り合いにそんな人が居るのだろうか、彼女はしみじみと頷き、ふとあることに気がついた。 (き、切っても切れぬ縁ってこういうことを言うのかな……) リベリスタ(ドS)とフィクサード(ドM)の……その考えを振り払うようにぷるぷると首を振ると、胸に手を当て深呼吸。 彼女たちのそんな行動を余所に、『剣華人形』リンシード・フラックスは読んでいる本のページをぱらりとめくった。 「やだー、それホントー?」 「ホントだよぉ~」 「ねぇ、今日寄り道しない?」 「いいよー、どこ行く?」 放課後。 そこかしこで女子高生たちの声が聞こえる。 年頃の女の子が集まる姿は華やかだ。 ターゲットが現れるという、女子高の下校時間。 それに紛れるように囮役の3人は動いていた。 学校からほど近い場所に居るという圭一は、すぐに発見することができた。 見た目だけなら普通、といって差し支えない。 中肉中背の一般男性だ。 だが彼のやっていることを見ると、一般的とは言い難い。 横道からじっと女子高生を眺めるという行為。 今まで職務質問などをされなかったのかが気になるところではあるがそれはともかく。 『ラブ ウォリアー』一堂 愛華は意を決し、そっと彼へと近づくと言葉を発する。 「そこのぉあほ面さげたぁお兄さん。 あっちの空き地でかわいぃ女の子たちがあんたみたいなくずを罵倒するためにぃ待ってくれてるんだよぉ。 とっとと行きなよ、くそやろう」 愛華の声掛けに、圭一はびくりと肩を震わせ3人を振り向いた。 「うお……!?」 そこに居たのは3人の少女たち。 声をかけてきたのは赤い瞳の金髪の少女。 華やかな雰囲気や口調などがイマドキの高校生であることを物語っている。 顔をしかめられて罵られたい。 「……何、この気持ち悪い人。 知り合い?」 愛華にそう声をかけたのは水色の瞳が印象的な少女……『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺。 ちょっとした所作から上品さが醸し出されており、圭一はごくりと唾を飲む。 ヤンデレな感じでお願いしたい。 「私達、友人と待ち合わせているの。 お望みなら尻尾振って付いてきなさい」 そう言ってさっと踵を返す。 未だについていくか悩んでいる圭一にボーイッシュな黒髪の少女……『ダークマター』星雲 亜鈴が一言。 「貴様程度のクズに話しかけてやってるんだ、黙ってついてこい豚が」 「はい! 喜んでいかせていただきます!!」 こうして無事に囮作戦は成功したのだった。 ●我々の業界では。 「さぁ、愚かな豚狩りといきましょう。 いい声で鳴いてみせなさい」 空き地に辿りついた圭一を待ち受けていたのは、5人の女性と、そして罵りの言葉。 ミュゼーヌのリボルバーマスケットから放たれた弾丸が彼の腹部を打ち抜いたのを皮切りに各々が圭一を罵りながら攻撃を加えていく。 「何を言われてココに来たのか分からいけど、自分から倒されに来るなんてとんだ変態ね? 馬鹿なの?」 ソラが放った一条の雷が圭一の体を焼いていく。 だが。 「あぁぁあ、痺れるぅぅうぅ……」 至極幸せそうです。 「女王様と呼べ、この駄犬が」 亜鈴は気糸を操りながら圭一を罵る。 その顔には何の感情も浮かんではいない。 「じょ、じょうおう、さま……!」 「ふん、恥ずかしいザマだな」 「罵られて喜ぶとかマジできもいんだけどぉ!」 愛華のクローで全身を切り裂かれながらも彼の顔からは笑みが消えない。 おそらく彼の場合は、クローで全身を愛撫された、という感覚なのだろう。 そんな様子の彼にアナスタシアは半ば本気で怯えていた。 「ち、近づくなぁ!」 黒いピンヒールが圭一の鳩尾に直撃し、彼を吹き飛ばす。 「はふ、気色悪い……近距離で攻撃する気にもなれないねぃ……。 このド変態!」 「はい、変態です! どうか、どうか、この変態めをもっと踏みつけてください!」 腹部を押さえながら、言う圭一に望みの気糸が絡みついた。 気糸はキリキリと圭一を締め付けていく。 「たぶん……好きなんやろ? こういうのも」 「うぁ……あぁあ……」 望の言葉に圭一はこくこくと頷く。 「見た目はまだふつーやのになぁ?」 まじまじと圭一の顔をみつめ望はそう呟いた。 読んでいた『上手い罵り方の本』をぱたんと閉じ、リンシードも攻撃へと加わっていく。 「ひざまづきなさい……愚民が……」 その本で何を学んだかはわからないが、一応、間違ってはいないだろう。 リンシードが振り下ろした剣は圭一の左肩に食い込む。 だりだりと血を流しながら圭一はにっこりと微笑み、リンシードへと語りかけた。 「お嬢ちゃん可愛いね、何歳?」 「ひっ……なんで、この人、斬られながら、笑ってるんですか……」 思わず後ずさったリンシードを追いかけるように動く。 その体にはまだリンシードの剣が刺さったままだ。 「気持ち悪い……こっち、来ないでください……」 「どうしたの? 君みたいな小さい子がこんな剣を振り回しちゃ危ないよ? ……それに、もっと罵ってくれないと!!」 言葉と共に圭一の右腕がリンシードへと振るわれた。 腹部に衝撃を受け、リンシードの軽い体が宙へと浮かぶ。 地面へと落ちる前に凛麗が受け止め、叩きつけられることだけは免れたものの、一気に体力を削られリンシードはごほごほと咳き込む。 一撃で倒れることはなかったが、二撃目が来ると耐えられるかどうか……。 変態と言えど侮ることはできないのだ。 ●ご褒美です! 「罵ってくれるって言ってたよね? さぁ、早く!」 罵りの声が止むと同時に圭一の腕が振り回される。 至近距離に居たアナスタシアはその攻撃を避けられずまともに食らい片膝をつく。 「あぁ、怪我しちゃったんだね、僕の血なんて、どう?」 くい、と襟元を下げる圭一をぎっと睨み付けると、アナスタシアは罵りを再開する。 「吸血? あんたなんかにしてやるモンか、汚らしい血は豚だけで十分だよぅ!」 「もう、照れちゃって……」 アナスタシアの蹴りをまともに受ける圭一の体に再びソラの雷が走る。 「はいはい、その口を閉じなさい。 貴方と同じ空気を吸ってると思うと気持ち悪くなってくるわ」 心底嫌そうに顔を歪めるソラに圭一は照れ臭そうに微笑む。 「私だって暇じゃないのよ? 人に物を頼むのならそれ相応の態度ってものがあるでしょ? 地面に手をつき、頭を地面に擦りつけて懇願してみなさい」 「ああぁぁあ、お姉さま! もっと汚い言葉で罵ってください!」 即座に見事な土下座をしてソラにお願いをする圭一を亜鈴は持参したビデオカメラで撮影していく。 もちろん彼への攻撃も忘れない。 土下座のままの彼を締め上げ、それをじっくりと撮影していく。 「貴様の無様な姿を撮ってやろう、親が見たら泣くだろうな」 「あぁ、それだけは……!」 そう言いつつも彼の表情は嫌がるという表情ではない。 ものすごい光景に顔をしかめつつ、ミュゼーヌは圭一へと問う。 「ねぇ、お兄さん。 年下の女の子達にこんな風に言われて嬉しいの? 恥ずかしくないの?」 「もちろん嬉しいよ! なんたって、我々の業界ではご褒美だからね!」 パンッ! その答えを聞いたミュゼーヌは遠慮なくマスケットの引き金を引いたのだった。 弾は圭一の体を貫通するが、まだ彼は倒れない。 見た目だけなら満身創痍なのだが、精神のなせる技だろうか? 「しかし、なかなかタフですね……そろそろ死んでください、ゴミ虫が……。 あぁ、ゴミと蟲に失礼ですね……どうでもいいんで消えてください……」 怪我を負ったが、まだ戦えると判断したリンシードは再び圭一へとバスタードソードを振るう。 袈裟がけに斬られた圭一の体は血に染まり、ようやく片膝をつく。 「そろそろ終わりにしよか?」 にっと微笑み、望が彼の体を縛っていく。 「や……もっと、罵って……!」 涙を浮かべて懇願する圭一に、愛華の爪と言葉が炸裂した。 「力があっても変態にしか使えないとか……この役立たずがぁ!」 無数の切り傷に恍惚の表情を浮かべながら彼はゆっくりと地面へと倒れたのであった。 ●安全確認。 「……何かこう、S心というのに目覚めそうだな」 縄でぐるぐると縛られた圭一を眺め、亜鈴はぽそりと呟く。 今度主に対してやってみるか、という言葉は聞いてよかったのかよくなかったのか。 多少の怪我はあるものの、無事に拘束ができたことに安堵しつつ望は周りを眺める。 (みんな……かわいい顔してすごい事言っとったなぁ……) 「今日のフィクサードの退治方法はアークのみんなには内緒やなぁ♪」 怪我をしたうちの一人、リンシードは直接触るのが嫌なのだろう、バスターソードで圭一をつんつんとつつく。 「正直、ここで斬って捨てたいんですけど……」 あれだけの攻撃をされ、さらには色々と気持ち悪い面を見たリンシードの気持ちはわからなくもない。 だが、メンバーの意見としては連れて帰って更生させる、という意見が多いのだ。 あれだけの攻撃を受け、罵られて、今は縄で縛られている圭一は、とても満足げな顔のまま気絶している。 「ま、世の中の女子高生を助けるためだと思って……ひと肌脱ぎましょ」 そう言ってアナスタシアは圭一を縛っている縄の端を掴んだ。 空が茜色に染まる。 この街で女子高生の悲鳴が響くことはないだろう。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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