●疾走するトレーラー 片側1車線の道路を、巨大なトレーラーが走っていた。 アメリカの広い道路を駆け抜けるのが似合っていそうな大きさだ。 ただ、日本の狭い道路を走るのには、少々巨大すぎる。 高速で走る車体はカーブのたびに中央線をはみ出す。いや、直線でさえ、少しぶれるだけではみ出してしまうだろう。 トレーラー内には高さ2mほどの4体の鋼の人形と、蟹の甲羅のような形をした謎の塊がある。 巨体を引っ張るトレーラーヘッドには、誰も乗っていなかった。 トレーラーヘッドの前方に渋滞の車群が見えてくる。都市と都市の境目付近にあるためか、このあたりでは夕方ごろになるとちょくちょく渋滞が発生するのだ。 「――蹂躙せよ」 誰もいない運転席で機械音が流れる。 地面に黒いラインを引いて、トレーラーが急停止。 トレーラーの側面が跳ね上がったかと思うと、4体の機械人形が飛び出す。 2体はチェーンソーを起動させ、もう2体は銃口を覗かす十指を構える。 謎の塊からは脚が生えた。4対の脚が、両側に伸びて地面を穿つ。片側の脚を引き抜いて外に出る様は、映画館のスクリーンかなにかで見ればコミカルに見えたことだろう。 銃声と破砕音が響く。 蟹のような形の大型機械はハサミのついた前脚を打ち鳴らしながら、胴体の側面に並んだ無数の赤い円から漆黒の光を放っている。 ただ、謎の機械群にいきなり襲われた運転手たちは、なすすべもなく逃げ惑うばかりだった。 慌てて車を加速させ、前にいる車に追突してしまう者も少なくない。 軽い爆発音と共に、トレーラーヘッドだけが走り出す。 「これは前哨戦だ……派手な狼煙を上げろ!」 トレーラーヘッドは見る間に姿を変え始めた。 車体が3つに分離する。 まず上下に割れ、そのうち上側が左右に割れた。 下部のパーツからは2本の円柱が突き出す。縦にすればまるで脚のように見えただろう。 ……いや、それは実際、脚なのだ。 最初に割れた3つのパーツは胴体と両肩。一挙動で立ち上がると同時に、肩パーツから腕らしきものが飛び出す。 胴体からは鋼の人形と同じデザインの頭部が姿を現した。 両肩からミサイルが放たれる。道路の混乱が、さらにいっそう激しさを増した。 ●ブリーフィング 「これが、今回現れたエリューション・ゴーレムです」 画面に映った鋼の人形を指して、『運命オペレーター』天原和泉は言った。 「以前にも同じようなタイプの敵が現れたことがありますが、外見上ロボットのように見えても単なるゴーレムです」 少なくとも、工学的には明らかに動くはずのない代物なのだと和泉は説明する。 「彼らは渋滞の道路の後方から現れて襲撃してきます。皆さんは渋滞の車に追いつく前に、ゴーレムたちへ攻撃をしかけていただきます」 渋滞に追いつく前に割り込むためのルートは、アークのほうで計算ずみらしい。 「敵は6体が登場します。蟹とトレーラーヘッドが変形した2体が特に強力な敵と考えられます」 トレーラーヘッドが変形した敵は両肩からミサイルを放って全体に攻撃してくるほか、胸部から麻痺効果のある衝撃波を放って単体攻撃を行うことができる。 「それから、敵はトレーラーと合体して自身を強化することもできると予測します」 合体中は能力が大きく上昇するだろう。また、トレーラーの画像を解析したところ、放電によりショック効果のある強力な単体攻撃を行うようになると考えられている。 ただ、合体することでダメージを修復するため、ある程度傷つくまでは使わないだろう。 事前にトレーラーを破壊したり合体部分を狙うことで強化を無効にすることも可能だ。 「蟹は黒い光線を放って複数に攻撃してきます。ハサミを振り回して範囲攻撃も行うようです」 また、8本の脚を器用に使って、動きを縛るような効果を無効にしてくると思われる。 ザコの4体のうち、2体はチェーンソー、2体は指先の銃による攻撃を行ってくる。 チェーンソーによる攻撃で出血すればだんだん体力を削られることになるだろう。また、動力部……らしきものを過剰に稼動させて命中と攻撃力を強化してくる。 指先から放たれる銃は高い連射能力を持つ。また、近づけば零距離で強力な射撃を叩き込まれる可能性がある。 「敵の目的は不明です。誰がなんのために作ったのかも現時点では予測できていません。ただ、放っておくわけにはいかないことだけは間違いありません」 襲撃まで余裕があるわけではない。すぐに準備に入って欲しいと、和泉は告げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:青葉桂都 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年10月27日(木)23:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●鋼鉄部隊の疾走 道路上にリベリスタたちは立ち入り禁止を示すための赤いコーンを並べていた。 「正式名称はパイロンらしいですよ。どうでもいいですね」 無表情に告げたのは、一見すると幼く見える女性。『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)は、小学生にも見える小柄な身体をエプロンドレスに包んでいる。 「封鎖はこれでよしと。良識的なドライバーが多いことを願うか」 パイロンの間には、黄色と黒の2色に塗り分けられたトラロープがはられていた。 物憂げな視線を『#21:The World』八雲蒼夜(BNE002384)が道路の先へと向ける。 「一般人はほぼ確実に良識的なドライバーになるはずさ。結界の効果でね」 四条・理央(BNE000319)が展開した強結界があれば、用のない人間はこのあたりに近づかなくなる。封鎖されているのを見れば、たいていは素直に従うことだろう。 「然し前にも出たって事は、なんか理由があるのか……?」 狼面のビーストハーフ、『仁狼』武蔵・吾郎(BNE002461)が首をひねる。 「ん……わかんない」 以前に出現した際の作戦に参加していた金髪のメイドが呟くような言葉を発する。 エリス・トワイニング(BNE002382)もまた、モニカ同様小学生ほどに見える外見をしていた。 「ま、ガキっぽいのが後ろにひかえてそうではあるな。であれば、何かしら自己顕示する物がどこかにあるような気がするのだが……」 廬原碧衣(BNE002820)は敵が来るはずの方向に目を向けて、意識を集中していた。 地を揺らす音が聞こえてくる。 狭い道路に入りきらないほどの巨大トレーラーが、近づいてきているのだ。 「敵が来たよー」 『黄道大火の幼き伴星』小崎・岬(BNE002119)はアクセス・ファンタズムから邪悪な外見をした黒いハルバードを取り出した。 彼女にいたっては、見た目だけでなく実年齢も幼い。 しかし、モニカの腕に装着された大御堂重工兵器開発のミサイルランチャーや、岬が振りかざす炎のように刃を揺らめかせたハルバードは、実力者であることを雄弁に語っていた。 ガードレールに寄りかかって眠っていた来栖奏音(BNE002598)が身を起こし、目をこする。 銀色のチェーンがついた宝石のような輝きを放つアクセス・ファンタズムから小アルカナ56枚と大アルカナ22枚が彼女の手の中に現れた。 リベリスタたち全員が、それぞれの武器を装備する。 「来ているぞ! 総員突撃せよ!」 封鎖する者たちの姿に気づいたか、トレーラーから素早く鋼鉄の人形たちが飛び出した。 蟹型ロボットの巨体が器用にもスムーズに身体を引き抜いたかと思うと、トレーラーヘッドが移動しながら変形する。 「まるで何処かの特撮のようなゴーレムだな」 冷静に蒼夜が呟く。 「変形合体に蟹かー、見事に浪漫の塊だねー。人型ロボってだけですでに浪漫度マシマシなのにねー」 「浪漫? 違うな」 岬の言葉を、爆発的な気をまとった『半人前』飛鳥零児(BNE003014)が否定した。 「単なる殺戮マシーンじゃ、夢も浪漫もないってもんだ」 チェーンソーの刃を回転させて突撃してくる敵へ向かって、彼はバスタードソードを構える。 「上手く行ったら儲けものってなぁ!」 ビーストハーフの速度でもって、吾郎が真っ先に敵影へと突っ込む。狼面の男は、チェーンソーを持った敵の1体に連撃を叩き込んだ。 その頃、トレーラーたちが通り過ぎた後の道路では、1人の青年が作業をしていた。 「合体出来る様になったのはスゲー進歩だけど……相変わらず造形はセンスないなぁ」 交差点の近くでパイロンを並べる『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)もまた、以前ロボットエリューションを討伐したメンバーの1人だ。 コーンバーを載せて、『緊急工事中』の看板を立てる。急ごしらえだが結界の効果と合わされば一般人の侵入を防ぐには事足りる。 「さて、敵の間をすり抜けなきゃいけないんだよな。ま……うまくやるとするか」 すでに戦いが始まっている方向へ向けて駆け出すと、紫の長髪が風になびく。 アクセサリを多数身につけ、見るからに派手なアウラールの姿。しかし、夕方になって長く長く伸びている建物の影に入るたび、目立つその姿は一瞬にして黒に溶け込んでいる。 ●路上の戦い アスファルトを4対の脚で穿ち、蟹型ゴーレムが目から無数の光線を放つ。 1本1本が別の目標を狙っていた。 エリスは自分に向かって飛んできた光線をかわしそこねた。もっとも、彼女の神秘による攻撃に対する防御力は高く、致命的な威力ではない。 「どこかの……SFX映画?」 青い瞳で暴れまわる人形たちを見つめる。 戦場からは離れ気味の位置に立っていたが、前衛の遠距離攻撃さえ届かないほど離れてしまえば、自分の援護も前衛に届かなくなる。 「さあ、共に舞おうか……DanseMacabre……」 反撃とばかりに蒼夜が指先からばら撒いたのは、蒼い光を帯びた銃弾だ。影のある青年の唇から漏れたのは、フランス語で死の舞踏を意味する言葉。 前衛の零児は、激しく回転するチェーンソーと切り結んでいる。ただ、次いで放たれた岬の斬撃はうなりを上げて空を切った。 ただ、動いているチェーンソーは1体だけだ。もう1体は吾郎の連撃で動きがとれずにいた。 エリスは周囲にある魔的な物体から魔力を集める。 トレーラーヘッドが変形したロボットの両肩が開いた。 ミサイルが雨のように降り注ぎ、仲間たちが爆発に巻き込まれていく。爆風がエリスの逆立った一筋の髪を揺らした。 碧衣の気糸や奏音の魔光が、ミサイルの雨の中から動きを止めていない敵へと飛ぶ。モニカの腕についた火器が火を吹いて、敵の装甲を削っていく。 「合体機構が表に出ていれば狙いたいところでしたが、見た目ではわかりませんね。仕方ありません。なんとかの一つ覚えといきましょう」 エリスの直観でも合体機構は発見できない。結局のところエリューションだ。物理法則を無視した合体をするとしても不思議ではない。 理央の守護結界が仲間たちを包み込む。 激しい攻撃が、敵と味方の間を交錯していた。ミサイルや光線が皆を傷つける。 「とりあえず……治す、ね」 天使ラジエルの書を開いてエリスが呪を唱えると、福音が響いた。 仲間たちの傷がふさがっていく。 アウラールは影に潜み、射撃しているロボットたちの間をすりぬける。 蟹がハサミを振り上げて、後衛へ向かって近づこうとしているところだった。 「……これはまた、カタそーな蟹だ……」 声を聞きつけたか、横一線に並んだ目がアウラールを一瞥する。気味の悪い造形だ。 「本気でこれで世界征服企んでるのか? もっとまじめに……いや、やらなくていいけど」 言いかけた言葉を振り払い、青年の手にしたライフルから十字の光が走る。 後衛へ向けられようとしていたハサミが、アウラールに向けて振り上げられた。 薙ぎ払われた一撃は戦闘服の上から強い衝撃を与えてくる。しかし、それは高い体力と防御力を誇るアウラールにとっては恐ろしいものではない。 「いつか製作者に会ったら、たっぷりお灸を据えてやらなきゃな」 他の者が蟹の攻撃を受けにくい位置取りを考える。 集中攻撃をかけている1体はだいぶ傷ついていたが、反撃は侮れない。吾郎の初撃で動きを封じられていた敵も動き出していた。 碧衣は気糸を戦場に張り巡らせていく。敵の手数を減らすのが、彼女の役目だった。 蒼夜をかばう理央にトレーラーヘッドから衝撃波が飛ぶ。 フィンガーバレットの攻撃も彼女へ集中した。 エリスが癒しの風を吹かせて回復するが、全快とはいかない。もっとも女性ながら高い防御力と体力を誇る理央には十分な援護だ。 「理央とアウラールが無事な間は抑えきれるだろうが……過信するわけにはいかないな」 気糸の罠が吾郎と戦う敵を捕らえる。さらに手数を減らすべく、次の気糸の罠をはりはじめた。 蒼夜は両手につけた銃器で敵を狙っている。 敵の隙間から、残されているトレーラーを視界に納めるように動く。 理央は守護結界を一度はり直したときを除いて、主に彼をかばってくれていた。こまめに位置を変える蒼夜を追ってきてくれている。 「……女にかばわれながら戦う、か」 「おや、気になるのかい?」 「いいや。必要なら君を盾にしてでも生き残るさ」 蒼く光る銃弾を放つ。 集中攻撃を受けて傷ついていた敵が、まず爆発した。 零児と岬が、もう1体のチェーンソーを装備した敵へと向かう。吾郎が的確に弱点を突いて削っていた敵だ。 雷気をまとったバスタードソードを零児が激しく振り下ろす。そして、全身のエネルギーを込めた岬のハルバードが、敵を両断した。 「ノンフィクションの特撮もののようだな……あまり派手にしたくないんだが」 2体の爆発をながめて、蒼夜は呟く。だが、無理な相談であることは彼にもわかっていた。 奏音はチェーンソーのロボットが倒れたのを見て、蟹へと目標を変える。 ハサミによる攻撃を、アウラールは着実に受け止めていた。 麻痺の効かない敵に放つのは魔法の矢だ。大小のアルカナより放つ矢が蟹の巨体を打つ。 そこに、トレーラーヘッドが衝撃波を放ってきた。奏音の身体が動かなくなる。 「任せろよ!」 アウラールが光を放つと、衝撃で動かなくなっていた少女の身体が自由を取り戻した。 蟹へとリベリスタたちの攻撃が集中する。 モニカや蒼夜の銃弾が降り注いで、吾郎の刃が弱点をつく。岬と零児が強力な攻撃で一気に装甲を削り取った。 エリスが一瞬だけ前に出て魔法の矢を撃つ。 「それじゃ、奏音も頑張るのですよ」 魔法の矢を重ねると、貫かれた蟹が煙を吐いて動きを止めた。 ●鋼鉄部隊、合体不能 敵の前衛を撃破したリベリスタたちは、モニカの放つミサイルの中、後衛へ距離をつめていく。 岬は自分の体よりも大きいほどのハルバードを構えなおす。大火の名を持つ斧槍の瞳がエリューションたちを見すえているようだった。 「まだまだ速くするぜ!」 吾郎の動きが加速する。 「そこをどいてもらう!」 零児の攻撃がトレーラーヘッドを押しのけると、隙間から蒼夜の光弾がトレーラーに刺さる。 フィンガーバレットのゴーレムが移動しようとしたところで、碧衣の罠がそれを止めた。 走り出すと、黒いリボンでまとめた岬のツインテールが揺れる。 「合体は見てみたかったけど殴られるのはやだよねー」 蒼夜やモニカ、アウラールの射撃によって、傷ついていたトレーラーに駆け上った。 黒刃を振り下ろす。 外れることも少なくない岬の攻撃だが、トレーラーは回避できない。 重量級の得物は車体を2つに割れて、残骸は左右に吹き飛んでいった。 「分かっていて合体などさせません。特撮でやったら絶対干されますが」 後方ではモニカが淡々と呟いていた。 「貴様ら、なぜ……! いや、そんなことよりよくもやってくれたな!」 トレーラーヘッドが変じたボスの両肩が開いて、ミサイルの弾頭があらわになる。 「変形の上に合体までするロボ型ゴーレム。男の子だったら憧れちゃってそうだね」 理央は降り注ぐミサイルから蒼夜をかばった。2人分の衝撃を古びた盾で受け流す。 リベリスタになってから愛用してきた盾だ。今まで手入れを欠かしたことはない。見た目は古いものだが、ミサイルの衝撃を大きく減じてくれている。 4つの魔光を奏音が放った。気糸の罠に捕らわれたのとは別の1体だ。 取り巻きである2体がまとめて動けなくなったところで、理央は一歩前に出る。 「さて、ボクは残念ながら男の子じゃないんだ。活劇よりも守りを優先させてもらうよ」 変形ゴーレムの周囲に幾重にも呪印が展開する。 残る3体の敵すべてが動きを止めた隙に、リベリスタたちは一斉に攻撃をしかける。 あまり使う機会のないジャベリンを、理央も振りかぶった。 モニカは動きの止まった敵に容赦なく銃弾を打ち込む。 さすがはボスと言うべきか、トレーラーヘッドが動けなかったのはわずかな時間だった。呪印を破ってミサイルの雨をリベリスタたちに降り注がせてきている。 しかし、残り2体は動きが止まったまま。 状況によって自在な分離・合体・変形が行えるマシンは机上の空論では理想的にも見える。だが、それを現実の存在にすると歪にしかならない。 平時は大御堂重工三高平支部に勤めるモニカは、ロボットもどきを冷静に評していた。 無限機関を持つメタルフレームとはいえ、消耗の大きな全体攻撃を連発していたモニカもそろそろエネルギー切れが近くなっていた。 ただし、リベリスタたちの中には補給能力を持つ者もいる。 碧衣が意識を同調させてくるのを、モニカは受け入れた。神秘の力が、彼女からモニカへと流れ込んでくる。 「これくらいで足りるか?」 「ええ。感謝します」 腕に装備したATGMエクスカリバーが、神秘の力により再装填される。大御堂重工兵器開発室の試作兵器である4連ミサイルランチャーがロックした敵へと弾頭を撃ち出した。 「合体ロボの浪漫は私にも分かりますが、浪漫だけじゃこの世界生き残れませんよ」 爆風の中でフィンガーバレットの1体が爆発する。 もう1体も、魔光に動きを封じられたまま、アウラールのライフルが程なく爆散させていた。 最後の敵をリベリスタたちが囲んだ。 零児は全身の力を込めて残った敵にバスタードソードを叩き込む。 雷気を纏わせた一撃は強力だが、反動で自身も傷ついてしまう。濫用するには体力が心もとなくなってきていた。 「く……せめて1人でも道連れにしてやるぞ!」 反動で傷ついているのを見越したか、ただの偶然か。 接近した零児の眼前で敵の胸部が振動した。 真正面から直撃した衝撃波が青年を吹き飛ばす。 倒れかけた零児は、バスタードソードを地に突き立てて自らの身体を支えた。 「相討ちなら……放電対決といきたかったがな」 目の前の敵はかつて憧れた合体ロボットとは違う。悪あがきの台詞がそれを如実に語っていた。 岬が真正面から斬りかかる。 アウラールが傷ついた零児をかばった。 奏音が鳴らす福音や理央の貼り付けてくれた符が衝撃で傷ついた身体を癒してくれる。 モニカのミサイルが撃ちぬいた敵に向けて、再び零児は武器を構えなおした。 吾郎の黒い毛並みは赤く染まっている。いくらかの血と、そして夕闇の空の色。 高速で移動する彼も攻撃を完全に回避するとはいかなかったが、回復してくれる仲間のおかげで傷はほとんど残っていなかった。 身長2mを超す彼は仲間たちの中で一番の巨漢だが、動きも一番早い。 「被害を出すわけにゃいかねえし、きっちり退治させてもらうぜ!」 あふれる獣性より繰り出される攻撃は敵を幻惑し、脆い部分を確実に叩き切った。 勢いもそのままに駆け抜けた吾郎は、急停止して無理やり身体を反転させる。それは、巨体を制御できるだけの筋肉のたまものというべきか。 たった今刃を打ち込んだ場所を、さらに切りつけて引き裂く。 半ばから千切れた格好になったゴーレムの目から、光が消えていた。 ●撤収 「エリューションじゃなければな。ロマンあったんだが」 動かなくなった敵を吾郎は見下ろした。 鋼のゴーレムたちを撃破したリベリスタたちは、封鎖に使った品を回収していく。 それと平行して、何人かが敵の残骸を調査し始めた。 「いざ事が済んでみると、奴らの目的が何だったのか気になってしまうな」 「ああ。時間が許す限りは調べていくか」 蒼夜の言葉に零児がうなづく。 「……ナンバープレートはさすがにないか」 アウラールは両断されたトレーラーに近づいていった。プレートがないことを確認した後は、大きなタイヤを観察する。 溝に土などが詰まっていれば、それを調査することでどこから来たかわかるかもしれない。 もっとも、この場ですぐに調査結果が出るようなものでもない。あったとしても、アークに持ち帰って調べてもらう必要があるだろう。 「部品とか持って帰っちゃ拙いかなー? きっと浪漫だけはあるよー」 子供っぽく残骸を見つめる岬に、真面目な表情で碧衣が応じる。 「問題ないだろう。むしろ、調査するなら持って帰るべきだろうな」 トレーラーヘッドの部品を調べていた碧衣は、気になる部品があることに気づく。 通信装置らしきもの……どこかに戦闘の記録を送っていたのだろうか。 あるかと考えていた、マークのようなものは見つかることはなかったが……。 公道で長時間の調査はできないため、気になった部品を回収した後、残骸をまとめてリベリスタたちは撤収する。 「さらば鋼の魂。俺はまだ死ねん」 日はすでに没し、月が昇りはじめている。 渋滞の時間が過ぎていた。スムーズに流れ始めた道路を、彼らは後にした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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