●絶望の淵で、人は神秘に酔う 年老いた老人が一人、今まさに首を吊ろうと台座の上に立った。 天井から垂れる輪っかを首に通し、台座を蹴れば、上手く首の骨が外れるか、窒息するかですぐ逝ける。 なにも感じなくなれば、苦しみから逃れられるはず。 そうなったのも、全てこの世界が悪いのだ。そう老人は思った。 妻には先だたれ、息子や娘もいない。お金もすでに底をついた。 死ぬしかない、死ぬしかない。 だが、絶望の底に落ちた老人は悪魔の声を聞く。 ――なんだ、死ぬのか? なら、死ぬ前に世界に復讐しない? 男の声だった。 渡されたのは一つの赤い箱。それは堕神の箱だとか説明を聞いたがあんまり覚えていない。 ただ、中には凶暴な猫がいるらしい。 それは一緒に渡された鍵さえ持っていれば、裏切らず、忠実に主の言葉を聞くらしい。 ――ならば、猫よ。腹が減った。叶えて見せてくれ。 猫が箱から出て、駆けていく。 しばらく時間が経って、猫は隣人の死体を持ってきた。 その隣人の懐から財布をくわえ、老人に渡し、再び箱へと消えた。 老人は歓喜した。大きな力を手に入れたと。 その力を与えた男を見開いた目で見た。顔はフードでよく見えないが、二十代前後の男だろう。 男は笑い、ただひとつ、その箱をあげる代わりに条件がある、と言った。 なんでもいい、なんでもやるからと老人はせがんだ。 片頬だけ吊り上げて笑った男は、こう言ったのだ。 ――世界を壊すのを阻止する偽善者。リベリスタを、殺せ。 ただ、それだけを条件とした。 最初はなんのことか老人にはわからなかったが、男の口から世界が語られた。 世界の裏とはなんとも甘美なる世界だろうか。 どうして今まで気付かなかったのだろうか。 嗚呼、この絶望の淵にいる人間とその世界に足を踏み込みたい。 そして、この不公平な世界を終わらせよう。 涎が垂れ、世界の裏に酔う男の姿は滑稽だったが男は目もくれず、その場から消える。 あとはこの老人が勝手にやっていくだろう。 与えたパンドラの箱は、既に開いている。 ● 女性が一人、気が付けば知らないところに居た。 暗く、冷たく、そしてなにより腐臭だろうか、臭い。 手足は拘束されていて身動きも取れない。 辺りを観察してみれば、何が入っているか分からない黒いゴミ袋が散乱している。 こうなったのは数時間前の出来事。 「な、なにするんですか! やめてください!!」 突然女性は男達に囲まれて拘束され、車に乗せられた。 一般的に、誘拐ってやつだろう。 まさか自分にそんなことが起きるだなんて、思ってもみなかった。 だが女性は冷静だった。 リベリスタだったのだ。 拘束をとかれ、チャンスさえあればすぐに逃げ出せるかもしれない。 そんな希望がまだあった。 だがそんな希望も見事に蹂躙される。 箱があった。 何か入っている、箱。 蓋が開いていて、中を覗けば――猫? 黒猫の大きな瞳が女性を捕えた、つかの間。 身動きのできない女性に飛びかかり――ガリッ、ガリッ、ゴキッ。 「さて、お集まりの皆さん。今日も一人の異端者が天に召される!」 つい最近まで絶望の淵にいた年老いた男が両手を広げて、目の前の数十人の人々に呼びかけた。 その姿は真柄、教主。 その瞬間、ォオオオオオ! と歓喜の叫びが辺を包む。 人々と言っても様々で、学生姿や主婦。サラリーマンやら清掃員まで。 ありとあらゆる人が集まっていた。 「この世界に終わりをもたらすために、リベリスタを狩ろうではないか!」 それを統べる年老いた男性は一層声を張り上げた。 ――ああ、あの日力と知識を与えてくださったフィクサード様よ! 貴方様のために!! そう、全てはこの世界を壊すため。 バロックナイトを夢見て、現実に絶望した一般人の最後の落ち場。 騒ぐその隣の部屋。 引きちぎられた女性の首が、箱の中へと消えていった。 ● ブリーフィングルーム内はとても静かだった。 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)が重い口を開く。 「えと……リベリスタを討伐する一般人が持つ、アーティファクトを壊して欲しくて」 リベリスタ狩り。文字通りのその行為だ。 一般人がその行為をするなんて考えられないが、現実に起きている。 「裏でフィクサードが手を引いているようなのですが、そのフィクサードが特定できていないので、今はこのアーティファクトの破壊だけを考えてください」 そのアーティファクトは箱と鍵でセットのアーティファクトだ。 箱の中にはE・ビーストの猫がいて、鍵の所有者の言うことを聞くらしい。 力無き者が、リベリスタを狩れるのはそういうことだ。 問題はその箱の場所への行き方。 「ちょっと、危険な方法なんですけど、個人的にはオススメしたくないけど、これしか思い浮かばなくて」 その方法とは、誰か一人が囮となり、一般人団体に捕まえられるというものであって。 囮に発信機を着け、それを追い、団体のアジトを潰すというものだった。要は団体とアーティファクトを潰せればいいのだ。 「リベリスタを殺すこと、つまり儀式は、捕えたリベリスタが来て、団体の全員が集まったら行われる様です」 つまり、団員全員が居る場を確保しなければいけないということ。できる限り団体のメンバーは捕まえて拘束したい所だった。 「団体名は『ノースキル』。表向きはカルト団体です」 裏向きは、そういうこと。 「普通の一般人なので、リベリスタが本気で攻撃したら普通にのびたり、気絶するかと。最悪死んでしまうので、手加減は忘れないでください」 だが忘れてはいけないのは一般人だけではないということ。 「E・ビーストですが、それにリベリスタを殺させているようです。それを一番に討伐してください。一般人は気絶させといてくれれば、アークがなんとかします」 そのE・ビーストがとても厄介らしい。 モニターでも見たとおり猫なのだが、素早く力が強い。 「まずは女性が誘拐された場所へ行ってください。そこで誰か一人が女性の代わりに誘拐されてください。他の方はアークの車でその誘拐されたリベリスタの発信機を追います」 そして最後に。 「お気を付けて」 杏里は深々とおじぎをし、発信機を囮の人へ渡した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年10月19日(水)22:47 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●今日も一人、救われる さあ、今日も一人、善人という名の悪人を天へ送ろう。 いつかこの世界が終焉を迎える、そのために。 一人、一人、じっくりゆっくり。 流された血の分だけ、月が赤く染まるだろう。 全てを絶望色に変えて、侵食し、汚染し、崩壊へと。 人気も無ければ人目も無い。 そんな場所で柊 美嘉が、買い物を終えて丸々太った袋を両手にぶら下げて歩いていた。 急がば回れという言葉もあるが、時間も時間で帰り道をショートカット。それが痛手となってしまったのは不運だったというか。 ふと、誰かとぶつかってしまい、持っていた袋の一方を盛大にぶちまけてしまった。 「あ、ごめんなさい……」 条件反射に謝った美嘉。相手もそれに反応して謝り返した。 「いえ、こちらこそ……すいません」 転がる野菜や果物。それをぶつかった相手は丁寧に拾い上げてくれた。 顔をあげて見れば綺麗な金髪と眼帯が目に入る。 「あら、貴女。確かアークの……」 ――戦姫さん? にっこり笑った『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)に美嘉は一礼をして、その場を去っていった。 美嘉の後ろ姿に手を振って、無事の帰宅を送った舞姫。 身代わりとなった舞姫に、黒塗りのワゴン車が来るのは数秒と経たないうちの話。 ●死ぬ気に本気 「うきゅ!」 「しっ、見つかってしまうでござる」 舞姫を追って来てみれば、着いたのは古い廃屋であった。 ついつい言葉を発してしまった『やせいばくはつ?』ウェヌスタ・ティグリス・マグヌス(BNE000358)に『ニューエイジニンジャ』黒部 幸成(BNE002032)が静止を告げた。 大人しくなったウェヌスタの手を引いて、幸成は救出班へと向かう。 各々が持ち場について、好機まで待機。 その間にも『女子大生』レナーテ・イーゲル・廻間(BNE001523)はその目で廃屋の中を視続けた。 待ち続けて、集まったのは13人。それが突入の合図となる。 「揃ったみたいよ。それじゃ、やりすぎないようにね」 自身のAFに一言発し、目の前の壁に武器を向ける。 脆い廃屋の壁は簡単に音をたてて壊れた。人が一人入れる程度の穴だが、それでも十分。 奥にはきっと、彼女が待っているはず。 円陣状に並ぶ13人。 生贄の命が燃え尽きて、今まさにその仕事を果たすだろう。 統帥たる年老いた男が両手を広げて宣言しようとしたその時、正面の扉が蹴り破られ、4人のリベリスタが介入する。 「よう、小悪党共。さんざん好き勝手やってくれているようだな。俺は主人公リベリスタの神守零六だ」 それまで幻視をしており、一般的な人の姿から元の姿へと変わった『人間魚雷』神守 零六(BNE002500)は、人差し指をノースキルに向けて言う。 「動かないで下さい。できれば無傷で捕らえたいので」 『Star Raven』ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)は師匠から受け渡りしAngel Bulletをノースキルへ向ける。 無傷で、というヴィンセントの言葉を聞いた零六が少し不満そうな顔をしたが、相手が一般人であるなら仕方がない、それに従う。 ヴィンセントがその翼を広げて、天井近くまで飛び立ち、零六がノースキルの元へ走り出す。 その後ろで『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)が統帥であろう人物に目星を付けていた。 ブリーフィングルームで見た映像から照らし合わせても、やはり一番歳の老いた彼が統帥であるだろう。 『momo』源兵島・もも(BNE003042)が暗視ゴーグルを装着し、空いているもう一方の手でAFからスタンガンを取り出した。 「な、何故この場所がバレた!?」 「うわぁ!? 飛んだぞ!!?」 「お、おい、リベリスタだ、武器、なんでもいい!! 武器になるもの!!」 「箱は!? 猫は使えないの!?」 リベリスタを目の前にしてうろたえるノースキルだったが、手際よく包丁やらバットやらをその手に握った。 目は完全に血走り、理性なんてそこには無い。 兎に角、殺さなければ。その意思だけが彼等に武器を持たせた。 死ぬ気になれば人は思わぬ力を発揮すると聞くが、今がその最中だろう。 ノースキルの攻撃はリベリスタ達にはさほどダメージも無いが、驚くべきはそのしつこいまでの執着だろうか。 世界に絶望し、世界を終わらすために殺す。その意気は凄さを超えて異常だ。 暗闇に紛れて歩を進めたももが、一般人の攻撃を綺麗にかわして、その背後に移動。 「ちょっとビリっときますよ!」 後ろ首にスタンガンを当てる。 ぎゃっ! と一言吐いて力無く倒れたノースキルに目もくれず、再び暗闇の一部となり、次の獲物を狙う。 学生服の少年が鉈を持ち、リベリスタに切り掛ろうと機会を見ていた。 その鉈へ烏頭森がバウンティショットを放った。弾は鉈へと直撃し、少年の手から弾かれて、回転しながら宙を舞い、ぶつかった壁に刃がめり込む。 それを見た少年が顔を真っ青にして烏頭森を見て、それに対して烏頭森はにっこり笑ってみせた。 その笑顔は純なるものだったが、少年には畏怖の念を感じたか、力なくその場に尻餅を着いた。 「くそっ! もう戦姫の処刑はもういい! 猫をこっちに!」 ノースキルの一人が統帥に向けて叫んでいた。その声を聞いて苦虫を噛んだような顔をしたのは零六だ。 「主人公である俺より、他の奴を有名扱いしやがって……!!」 手の中のスタンガンを握り締め、歯を強く噛み締めた。 「二度と俺を忘れられねぇように、その身に刻み込んでやるよ、主人公の力って奴をなァ!!」 力の限り咆哮し、ノースキルの一人へスタンガンを当てる。そして振り返り、もう一人のノースキルにもスタンガンを当てた。 零六は二人のノースキルの意識を撃墜する。 残ったノースキル達がももを囲み、一斉に攻撃を仕掛けようとした。 包丁や鉄パイプがももを襲おうとするが、ヴィンセントが動く。 「あなた達、正気ですか。寄ってたかって」 それまで飛行してた彼だが、高度を下げてノースキルを挑発した。 「我等は異端を取り除く偉大な組織だ。お前達とは違う!」 暗い中、振り回したパイプは見当違いの場所で空振りするだけで、回避するのは容易だ。 ヴィンセントは1$シュートを放ち、その光弾が鉄パイプを弾いた。 制圧するのも、時間の問題だろう。 その最中、統帥が鍵を握り締めた。 紡いだ言葉は――ワタシヲニガセ。 ●それでもリベリスタ ――車に乗せられ、拘束された。 動いている車の中で何を聞いても返答は返ってこなかった。 ただ終焉のための生贄だと、聞いた。 今は、暗い部屋の中で、蠢く箱が隣にひとつ。 いつ開いてもおかしく無いけれど、私は仲間を信じる――。 猫の丸い目がこちらを見てる。 いつ飛び出して噛み付かれてもおかしくない状態で舞姫は覚悟を決めていた。 そして、動けない舞姫を目掛けて走り出した猫の牙が迫る。 ――壊れた壁から、人工的な光が零れる。 飛び出した猫を幸成が代わりに受け止めた。勇ましいその姿は、二度と仲間を失いたくないその一心から。 噛み付き、肉を抉り、俊敏に後ろへ下がった猫。 「大丈夫か?」 隙を見て『まめつぶヴァンプ』レン・カークランド(BNE002194)が声をかける。その一言だけで十分だろう。 仲間に拘束を解かれた舞姫は顔を縦に振り、AFから武器を取り出した。 「箱入り娘ならぬ箱入り猫ですか……来ますよ」 『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)がくわえた煙草に火を着けながら言う。同時に箱から獲物の臭いを嗅いだ猫が飛び出してきた。 立ち昇る煙が天井に着く頃、再び猫がリベリスタ達へ攻撃を仕掛け、レテーナに噛み付いた。 鋭い牙が素肌に突き刺さるが、レテーナはそれを受け止め敵の隙を作る。 その隙を見逃さなかった星龍が猫の眼を狙って1$シュートを放つ。 眼には惜しくも当たらなかったが、噛み付く猫をレテーナから引き剥がすことができた。 自らの強化をし終えたリベリスタの反撃が始まる。 最初に動いたのは幸成だ。 気糸を放ち、猫にギャロッププレイを放つ。 細い糸の縫い目を綺麗に寄けていく猫に、かすりはしたものの、その行動を制限することはできない。 「なかなか、すばしっこいでござるな……っ」 猫はそのまま走り、暗闇の闇と同化しつつ、再び攻撃を仕掛けて今度はウェヌスタに噛み付く。 「うきゅううー!!」 噛み付かれたウェヌスタは己の耳と尻尾を逆立てて驚いたが、そこにレンの両の手のカードが猫に当たる。 「ちゃんと餌をもらえてなかったのか? 悪い主人だな」 身体に引っかかるカードが不吉を纏わせて、猫を後退させた。 だが、猫の後退した場所の後ろにはレテーナが居た。 ダブルシールドを猫へ叩きつけ、ヘビースマッシュを当てた。 その瞬間。 ――ワタシヲニガセ。 猫の頭に響いた声。主である統帥の声だ。 その声にすぐさま反応した猫は、統帥の元へと走った。 「待ちなさい!」 レテーナ達がその後ろ姿を追う。 ●終焉の中止 あらかたノースキルを片付け終えたリベリスタ達。残るは統帥のみとなった。 「大人しくその鍵、渡してもらえませんか?」 烏頭森が統帥に話しかけるが、統帥は冷や汗を大量に流しながらも渡そうとはしない。 それもまた神秘への執着か、バロックナイトへの意思か。 「お、おおおおお前等なんか。す、すぐにぶっ殺してやるるうう」 震える声を吐き出せば、猫が統帥の前へとやってきた。 それに続いて、リベリスタが10人合流する。 ノースキル確保班が舞姫の姿を見て、少しほっとするが、まだ気は抜けない。 「や、やれ! ぶっころせー!!」 統帥がそう命令すれば、猫は従うしかない。 だが猫よりも早く、ももが動き出した。 けして猫にも負けぬ速さを駆使し、猫へソニックエッジを仕掛け、猫の胴をナイフが滑る。 ももを通り越し、再びウェヌスタへ走り出す猫。小さな手でウェヌスタをパンチすれば、魅了され、味方をついつい攻撃してしまう。 「今度は、外さないでござるよ」 刀身が黒く塗り潰された刀を握り、再び猫へギャロッププレイを放てば、今度はその行動を麻痺させる。 動けない猫に、零六の思い切ったギガクラッシュを命中させる。反動で自らにも傷を負ったが、そんなことお構い無し。まだまだ戦える。 そこにレンのライアークラウンが飛んだ。容赦の無いその追撃により、再び不吉を身に纏った猫。 そのレンの後ろで魅了にかかったウェヌスタへ、レテーナが丁寧にブレイクフィアーをさずけた。 ヴィンセントが空中より1$シュートを放つ。 光りの乏しい廃屋で、光る弾は吸い込まれるように猫の眉間を当てた。 幸成の麻痺のおかげで戦闘は案外スムーズに進んでいた。 止めを指すのは、やはり彼。 「この俺が……!!」 高速で回転する歯車をつけた大剣を振りかぶり―― 「主人公、だッ!!!!」 猫へと振り落とせば、それが致命の一発となった。 ――少し時は戻るが、戦闘中に隙を見て統帥が逃げ出そうとしていた。 それを見た烏頭森が臨機応変に逃げ道を己の身で塞ぐ。 「逃がしませんよ!」 「く……!」 スタンガンを片手に統帥へと近づく烏頭森。だが、まだ聞きたいことはある。 「鍵は頂きますけど、その鍵危なくないですよね?」 相手はもちろん言葉として答えはしないものの、心を読める烏頭森には筒抜けしている。 「ふふ、ありがとうございます」 アーティファクトについて洗い浚い頭に入った烏頭森は一言そう言い、相手を失神させるなんてお手の物。 静かになった廃屋で残ったのは、アーティファクトのみ。 ●帰る足が来るまで ロープやワイヤーを使い、これでもかと縛り上げ、動けないノースキルを前にリベリスタ10人が立つ。 未だ失神している者もいれば、意識が回復している者もいる。統帥も会話はできる状態だ。 「これを持って来たのはどんな奴でしたか?」 率直に烏頭森が聞いた。 近くでウェヌスタがグルルルと喉を鳴らしてライオンたる威風を見せていたが、やはり口は開かないまま。 だが先程と同じく、リーディングにより回答さえ見えればそれで十分。 「ふむ……顔まではわかりませんが、若いフィクサードですか」 「断片的すぎるわね」 烏頭森が見えた情報は本当にごく一部のもの。レテーナもその頭を抱えた。 だが、カレイドの眼にもいつかその男も引っかかるだろう。 今はまだ尻尾をつかめなくとも、いつかは……。 ノースキルへ尋問の最中、ヴィンセントは隣の部屋へと来ていた。 数分前まで猫の入っていた箱は、再びエリューションを待ちかねてその口を開けたまま静止していた。 それにAngel Bulletの口先を向け、銃弾をひとつ放つ。 射出されたと共に堕神の箱はアーティファクトとしての存在を消した。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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