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【座布投】求)体験談

●とある事故
 近現代に於いて、相撲の座布団とは凶器だ。
 投げにくい仕様に変わったはいいが、都合一貫二十八両程の質量を放り投げた時の破壊力は時に、人の命にすら危機をもたらす。
 ――否、この晩に於いては危機どころか命を奪いすらした、のだろうか。

 存続の危機に立たされた国技、増して然程の地位もない男の死を覚えているほど人は情に厚くなく。
 その死は何も変えなかったというのは、余りにも薄情だったのかもしれず。
 そもそも、『何故投げられたのか』を確固として認識できぬままであり――

 その男は、意思を置き去りにして夜に狂った。

●シリアス(笑)
「……概要を説明しましょう。
 今回、皆さんに排除をお願いするのはE・フォース『ズブネリ』。放り投げられた座布団で首の骨を折って死亡した不幸な力士の、やるせない気持ちがエリューション化したもの、ということだそうです」
 シリアスそうな流れから一転して、色々と突っ込みどころが多い説明に入った『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000202)に、リベリスタは一斉にツッコミを始めた。

 ――何で名前からして四十八手なの!?
 ――今声震えてなかったか!? すごくさ!
 ――座布団で首が折れるのかよ!?

「ま、まあ落ち着いて下さいよ……そこばっかりは、アークの研究班にいちゃもん付けてもらわないと」
 研究班ならいいんだ。

「話を戻しますよ? ……『ズブネリ』は、自らの取り組みに対して『座布団を投げられた』ことにいたくご立腹のまま死んだ力士の情念そのものです。ですので、『座布団を投げる』という行為に正当性を持たせ、自己矛盾を与えるのが効果的のようです。何しろ、力士型なので力押ししようにも確実にカウンターが飛んできます」
 座布団の舞は傷害罪にあたりませんか。
 力士って投技じゃん、カウンターってオマエ。
 ぶちかましは先手じゃん。張り手も先手じゃん。何で力士に後の先があるんだよ。

「いやまあ、最後までお願いします。……で、です。アークがこのE・フォースに対処するために考えた作戦は一つ。『ひたすら座布団を投げるような話を振りながら倒す』ということです」

 今度こそ空気が凍りついた。
「笑わせる話をしろ」「笑われた話をしろ」、そんな感じの六面ダイストークではないのか。
 テーマがアバウトでならない。

「……それはそれ、これはこれということで。
 あ、あと普通に攻撃するとカウンターが飛びますが、話題がコケるとコケさせた人に対して大ダメージが飛ぶそうです。
 寧ろ、単純に殴り合いを成立させたら、カウンター連発で残っていられる人が少ない気も……」
 最後トンデモないトラップ敷きやがったな。

「と、取り敢えず相手は能動的な攻撃は凄く稀なので、頑張って――座布団スルーを」
 だから傷害罪とか器物損壊にあたりますってば。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年10月16日(日)23:45
 ざぶなげ でも ざぶとう でもいいと思うな。

●エネミー『ズブネリ』:E・フォース、フェーズ1、移行前。
 基本的に自分からは攻撃しない。相撲取りらしく、ぶつかっていきつつ反応はする。
・理不尽なカウンタースタンバイ:条件(下記)を揃えない限り、攻撃に対し下の何れかを距離に合わせて発動。
 ごっつぁんです:物近単・カウンター発動。攻撃者に受けたダメージの1/3を上乗せしてくる。
 ぶちかましミサイル:物遠単・カウンター発動。上同。
・納得いかんでごわす:物遠単:条件失敗時にカウンター発動。対象に受けたダメージを、攻撃力に上乗せ。

●戦闘ルール
・『座布団を投げるような話』(=とんでもない、とか頓狂)を3回1セットで振る限り、カウンターは発生しない。
・三度目でオチがつかないor余りノリがよろしくないと「納得~」発動。

 正直な話、話を振り続ければ無防備なんです、きっと。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
★MVP
ナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
ホーリーメイガス
七布施・三千(BNE000346)
ソードミラージュ
天月・光(BNE000490)
クロスイージス
春津見・小梢(BNE000805)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ホーリーメイガス
ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)
ナイトクリーク
宮部・香夏子(BNE003035)
覇界闘士
四辻 迷子(BNE003063)

●はっけよいって命令語なんだぜ
「ハッケヨイ」
 夜気を裂いて朗々と響き渡るその声は、その巨体を引き写した様に重厚で威圧的で、地にふれんとばかりに伏せられたその身が数瞬の後に最大速度を炸裂させ、にべもなく自分達を叩き伏せる――のであれば、どれほどリベリスタ達は血を滾らせたことだろう。
 全くもってどうでもいい思索だが、少なくとも『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)にとってはそのE・フォース『ズブネリ』の姿は殊更に印象深く移ったに違いない。

「フォース化するほどの意思を持った力士……ぬぐぐ、勿体無い……」
 いち相撲ファンとして対峙した以上、その意思はたった一つ。「納得して死ねるよう引導を渡す」こと。うさぎなりの信念がそこにはある。
「滑稽だな、嗤える」
 その一方で、単に相手をエリューションの一体として淡々と処理すべしと考えているのは、『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)。常に常識に重きを置く彼女である。半ば冗談にしか思えないこの相手に対し、ヤケクソ気味に冷酷な意思を向けてしまうのは致し方ない。マトモに向き合ったら自分が何だかアレではないか。

「座布団が当って死ぬという話し自体がネタだな。きっとこいつは関西人……ネタの為なら命をかける!」
 ちょいちょい、ちょっとそこな『素兎』天月・光(BNE000490)さん、何だか微妙に戦おうとかじゃなくて、素直に対抗心が透けて見えますよ? もうネタにはネタで返そうぜのノリがバリバリですよ?
 相手が相手だから今回ばかりは許されよう。ジャスティス(笑)
「えっと、座布団投げるくらいの話だからあんまり面白くなくてもいいんですよね……っ」
 七布施・三千(BNE000346)は、些か以上に戸惑い気味だった。まあ、彼のリベリスタ経験でもこんな馬鹿げ……否、稀有な感性を持つエリューションはそう居なかっただろう。お疲れ様です。

「座布団って賑やかしに飛んでくるし、おひねりみたいなもんだよね! そうじゃなかったら……うん、残念だったね」
「座布団でどうやって死ねるんだろう。豆腐の角に頭ぶつけて死ぬくらい難しいと思うの……」
 座布団を繋げて投げにくくしているのは、実は国内最大の某国技館だけらしい。しかし、繋がった座布団ですら投げ方はあるわけで、そりゃもう凶器でしかない。ていうか、頭に当たれば素で首にかかる圧が半端無いのだ。そんなことはいざしらず、『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)と『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)は心底不思議そうに首をかしげていた。或いは残念がっていた。因みに、小梢さんは本気出していい時期だと思うよ、私見だけど。

「香夏子初仕事でちょっとドキドキです。働くのは好きじゃないですが生きるのはお金が必要なので
頑張って稼いで帰ります」
「実質の初仕事がこれとはのう……まあよい、かるーく終わらせるとするかの」
『第1話:さらば10歳』宮部・香夏子(BNE003035)と『紫煙白影』四辻 迷子(BNE003063)にとっては、この依頼がリベリスタとしての緒戦となる。噂名高い悪鬼羅刹の如きエリューションやアザーバイドに比べればどこまでもふざけきった相手だが、さりとて経験の浅い彼女らが力押しで攻めきれるほど御し易い相手であるかと問われれば、否と応えることだろう。そこは、経験。細かい「アホらしいこと」の積み重ねが、何れ大きな脅威を倒す力の根源となったり、或いはならなかったりするのである。

「ハッケヨイ」
 すっかり無視を決め込まれているズブネリが、再び厳かに発声する。「ハッケヨイ」、とは「発気揚々」が訛ったもので、気合を入れる言葉である、という人がいる。或いは其れも正しいのだろうが、事実としては少々異なるらしい。
 そも、この掛け声は力士に対し使われる命令的用法が一般的だ。故に、この場合に於いては「早く競いなさい」=「早く私と戦え」と言っていると取るのが正しい。
 そう、この「ズブネリ」、どこまでもふざけきったエリューションでありながら、その奥底に滾る精神性はまさしく武士(もののふ)。うさぎがこれを知っていれば、尚の事惜しいと考えただろう。
 自らは手を出さないという矜持の元構える彼の前に、リベリスタが立ちはだかる。互いの意地とボキャブラリーとネタを掛けた一戦の火蓋が、切って落とされる。

●いいから早く笑えよズブネリ
「じゃあ、わしから話すとしようかの」
 迷子が一歩前へ出て、ズブネリと対峙する。ズブネリも聖徳太子ではないので、一人ずつ攻撃を仕掛けるという案は大いに有益であったといえる。その反撃の脅威から順列を組んだのも、然り。
「昔々あるところにそれはそれはとんちが得意な一休という小坊主がおった」
 迷子が拳に乗せて語ったのは、一休のとんち話では比較的有名な類の橋を渡る話である。「端を渡れないなら真ん中を」という、アレだ。それだけならどうということはないただの小話だ。だが、今回の依頼では三段オチが求められる。つまり、これ前フリ。
「昔々略……前通った橋に寄ると「真ん中も歩いては駄目」と張り紙が増えておるではないか。
すると一休は何事か念じるとふわりと浮いて橋の遥か上を飛んで渡ってしもうた。一休はリベリスタだったんじゃのう、簡易飛行とはかくも便利なものなのじゃ」
 二発目。顔を張られながら、しかしズブネリの表情は疑問符が乱舞している。一応最後まで聞いてやるよテイストだが、ヤツは神秘と化したとはいえそもそも神秘と無縁だった存在だ。専門用語を使われても念仏の一節ほどにも効果が無いだろう。
「昔々略……とんち上手な小坊主の話を聞きつけた殿様が一休を城へ呼びつけた」
 そしていきなり飛んだ。橋の話じゃないんだ。屏風の虎なんだ。やり取りは普通なんだ。
「すると屏風から抜けだした虎があっというまに一休を食い殺してしもうた。今風に言うとE・ビーストというものじゃな…恐ろしい話じゃ……」
 それで三発目。ズブネリは数秒硬直すると、両の拳を地面に付けた。戦闘の合図だ。
「え、ちょ」
「どぉぉす、こぃぃぃぃィ!!」
 スパァァン、と小気味いい音を立ててズブネリの一発が決まる。迷子、くるくると宙に舞う。
 ……まあ、元一般人に専門用語の乱舞はとか、色々とあるんだけどね。
「こ、これこそ納得いかんではないか……」
 フェイトを駆使して復活した迷子、涙目の訴えだった。だが心配しなくても良い。今の三発は確実に入ってるよ!

「次は香夏子が話す番です」
 二番手・香夏子。働きたくない子供の権化みたいな子の出番である。
「ここは香夏子に、どーんとお任せです、やー」
 やる気は十分らしい。

「いきなりですがクイズです。お金持ちの男の子が池に落ちたらどんな音がするでしょう?」
 本当にいきなりだった。戸惑いつつ、ズブネリは当たり前のように「ボッチャン」と応じる。
「第二問です。空き地にある土管が爆発したらどんな音がするでしょう?」
 全力香夏子、二発目の顔面攻撃。ズブネリは涙目になりつつ「……ドッカン?」とか答えてる。いかん、このエリューション律儀だ。
「まあ、正解にしておきましょう。第三問。今やってるやり取りは何でしょう?」
 流石に、この一言には全力で首を捻るズブネリである。クイズ遊びではないのか、というその態度に、しかし全力香夏子は拳の勢いを緩めず、叩きつける。
「オヤジギャグです」
 ああ、そういう――流石に、ズブネリ納得。座布団が飛んでくるが如き理不尽である。
「基本カウンターしかしてこないみたいなので香夏子怖くないです」
 もはや勝利宣言同然の香夏子であった。

「じゃあ、次は私の番だね。思いっきり叩くよ、めっちょり」
 三番手、小梢。めっちょりとかいうんじゃありません、はしたない。
「それじゃ、カレーの話で……本場のインド人がやってるカレー屋があってね、カレーを頼んだらスプーンが出てこなかったんだよ」
 一発目。確かにめり込んでる。剣なのに。E・フォースなのに。それはそうと、ズブネリは興味深げ。掴みはオッケーらしい。
「ひょっとしたら本格的な店なのかもしれないと思って手で食べてたらね……」
 何かを思い出すように、二発目を叩きこむ小梢。思い出すというか、ノリ的なものなのだろう。ズブネリは受け止めつつ、しかしその話に隙が無いか確かめている。でも現状、隙らしいものは……

「インド人が申し訳なさそうにスプーンを持ってきたんだよ。っていう話さ!」
 溢れんばかりの小梢のドヤ顔。放たれる全力張り手。多少は腕に覚えのある彼女であるからして、一発轟沈は免れたものの、そのダメージは少なくない。むしろ体力が半分を切った。ルーメリアと三千の必死な治療で何とか持ち直したが、何ていうか、厳しいなこのエリューション。

「では、次は私ですか」
 四番手、うさぎ。ズブネリに対し殊更に思い入れを持つうさぎにとって、失敗は許されない。多分、きっと。故にその初動は早く、死の刻印を叩き込みつつ小話を語り始めた。
「滅法強かった力士の引退後、彼の活躍の裏に八百長の疑惑が出た」
 一撃を受け止めたズブネリの顔が歪む。単純な苦痛からではないだろう。であれば、もっと直感的な苦悶の表情を浮かべる筈だ。
「執拗に不正を疑う記者に対し、ついに親方が苦い顔で『確かに一つ、不正はありました』」
 この言葉もまた、重い。師すら認める不正だ。どう収束を持っていくかによっては、その反応も全く違うだろう。
「――気色ばむ記者達に親方『実は断髪式、殆どの人が鋏を入れるふりしかして無かったんです。あいつ髪が薄くなり過ぎで、私まで髷が持ちそうになかったんで……』」
 ぱぁん、と三発目が音を立てて放たれる。最後にして会心。思わず膝を衝くズブネリを見下ろしたうさぎは、無表情でありながら『感情豊かな風に』それを見下ろした。

「知ってるか? 座布団投げは三つに分けられる」
 それ自体が小話の一つであるかのように、ユーヌは護符を構え、ズブネリへと悠然と歩み寄る。心の底からの失望と冒涜がなければ、生み出せぬような表情を顔に貼り付け、陰陽の印を切る。行動を潰し、戦闘の勢いを削る影が落ち、ズブネリを覆い隠す。
「金星を上げたとき、試合に対する賞賛、ブーイング、この三つだ」
 できの悪い子供に言い聞かせるように、もう一度。既にうさぎから猛毒を受けていた彼には堪らない追撃だったことだろう。それでも倒れないのは、その全身に蟠る負のオーラ……位階を高め、敗北に抗おうとしている証拠だ。だが、それでも攻撃は受動的に、攻めてこない。矜持か愚鈍か。ユーヌにとっては、確実に後者。
「話題にならなかった? なら、存在そのものが間違えなんだろう」
「オ……オオォォォッ!」
 三度目の言葉は、さしものズブネリとて流しはしなかった。返す刀で打ち込んだ張り手は、しかしその身を覆う不運の呪縛であらぬ方向へと逸れ、効果を失う。
「おっと、失敗なんて意味がなかったな。生前から不運過ぎて今更無意味か。良かったな、不運不吉への絶対的耐性だぞ?」
 手馴れた様に、一歩も動かないまま避けきった彼女は、更なる言葉を叩きつける。それが動揺を誘うものであれ、元より思案の中にあったものであれ、ズブネリにとっての心的ダメージは少なくはない。

「さて、ルメの振る話は……お、思いつかない、ここはサイコロで決めよう」
 話を振る為に賽を振るだなんて、ルーメリアさんてばお茶目。
「面白い話!」
 取り敢えずこれで一区切りと言うことでよろしいでしょうか。既に矢は飛んでってます。ずぶっとな。
「……お、面白いはなしは……」
 引っ張ってる、引っ張ってる。それでも耳を傾けるとかズブネリさん厳しいくせに律儀だった。目をあちらこちらに向け、申し訳なさそうにあっちにこっちに視線を仕草を指向し、兎に角何か捻り出そうとして、
「無し……」
 ああ、「話(は、無し)」だけにね。突っ込みどころを逃したズブネリ、ただ唖然呆然。反撃すら忘れて立ちすくんでしまった。刺さっていた三本の魔力の矢が雲散霧消したところで、やっと気づく有様だ。不吉って怖いな。

「こんちこれまたよりよいお日柄で……座布団もよく乾く陽気だ。これで女房の尻も軽くなったら困りもの。さてさて、手前の出番ですか」
 和装を施した光の軽快な話口は、周囲の毒気を抜くのに十分すぎる破壊力があった。扇子のひとつでも見えそうなその仕草は、まさに噺家のそれに遜色ない。
「お相撲さん相手には手前のような兎は辛い」
 参った、と言う風に顔に手を当て、心底消沈したような雰囲気を作る光。しかし、その動作から攻撃の予備動作は全く無い。代わりのように、他のメンバーの攻撃が入った程度だろうか。そう、彼女は行動の全てを話し続けることに費やすことで、味方に対する意識を逸らす作戦に出たのだ。自身が戦ってもいいだろうに、その辺りはまさにネタに生きる者としての矜持か。かっけぇ。
「なぜかって? 兎はうのもの上手ものってもんで、上手をとられちゃちゃかり上手投げってなものですわ」
 二言目三言目を立て続けにまくし立て、どうだといわんばかりの表情を向ける光に、ズブネリはぐうの音も出ない。流石、ネタに根性を賭ける少女の生き様である。あ、アンカーにバトンタッチな。終わっちゃダメな。

「ええと……八番目ですから、僕の番ですね」
 僅かに緊張の趣を顔に貼り付け、三千が構える。だがしかし、自信を持てと自分に言い聞かせているが故か、僅かにその表情には力強さも感じられた。芯の強い子なのだろう。それは、現在までの彼の経験が物語っていた。
「僕がこの前、街を歩いていたら、占い師が街角にいたんです。折角なので占ってもらうことしたんです。
どこか良い方角はありませんか? って聞いたら、その占い師さんは、『八卦が良い』と言いました。
 八卦というのは、八方位のことだと知っていましたから、八方位どこに言ってもいいんだなとわかって嬉しくなりましたよ」
 導入部は、非常に穏やかな入り方であった。彼らしいと言えば実に彼らしい、許容が感じられる一節であり、それ単体でも機能する話である。
「次の日、同じ占い師さんにまた占ってもらったら、また『八卦が良い』と教えてもらったんです。次の日も、その次の日もです。さすがに、僕も不安になってきて、情報を集めてみたら……どうやらその占い師さん、お客さんみんなに『八卦が良い』って言ってたんですよ」
 二度目。体験談らしいそれは、幾日にも亘って占いを聞きに行く律儀さと、次を予測させない不思議さとを兼ねており、何とも言えぬ『引き』の強さが感じられる。彼らしい、といえばそうだろう。
「どういうことですか! って問い詰めたら……その人、元・行司さんだったんです。
 占い師にはなったばかりで、何を言ったらいいかわからなくて……とりあえず『はっけよい』と言ったら、それを『八卦が良い』と勘違いされてしまっていたらしいんです。思い込みってこわいね、という話でした」
 自分に言い聞かせるように、自信満面の三千。あ、でも纏まってる。ズブネリさんすげぇ納得してる。そしてまた膝を衝いた。総勢八人のネタの乱舞である。フェーズが進んだとはいえ、それでも耐え切るのは難しいレベルだろう。未だ構えを直しても。リベリスタ達にとて迎撃の準備あり。

●ノコッ テナイ
「えぇっと……そういえば、ミートスパを割り箸で食べるとなんか焼きそば食べてる気分になったの」
『不思議な話』の目を出したルーメリア、必死に捻り出す様に体験談を口にする。ああ、確かにそういうことありますもんね。
「あれは不思議だったなー……」
 おどおどおどおど。決してオチないなんてことは、そんなことは
(オ、オチがねぇの……)
 あるんかい。ぺちーんっと。

「輪廻転生は存在する」
 堂々と、ユーヌは宣言する。目の前のズブネリを見下す目をそのままに。
「一生だけで人間こんなに馬鹿になれるはずがないだろう?」
 不遇を呼ぶ影が落ちる。ズブネリを追い詰める、その勢いで。
「特に死んでも理解しない人間とかな?」
 一気に、言葉すら紡がせぬ様に畳み掛けていく。まさに破竹。

「ドォォス、コィィィィイィ!」
「おやおや、頭に来ましたか? そんなに怒ると禿げますぜ?」
 気合いを入れんと、声を震わせるズブネリに対し、しかし光は冷静且つ、陽気に応じる。
「いやいや、励まして欲しいのは貴男の方でしたな」
 話すことを楽しみ、楽しませようとする姿勢。それはある種、戦いに対する真摯さと同居するものなのだろう。一切の気のてらいが感じられない。
「しかし、もう禿げます頭もない。毛頭無いというオチですわ」
 はっはっは、とばかりにオチを付けて笑う彼女に、ズブネリはペースを握られっぱなしだ。不吉や不運など無くとも、今の彼女には当てる拳もあったものではあるまい。

「今回のお話は幕締めにてござい」
 光の声に応じたわけではあるまいが、ズブネリが、風に流れて消えていく。精神のみで構築されたからだが崩れていく。
 背を地につけること無く。然し二度の『相撲における敗北』をして、彼は夜の中へと消えて行く。

「ふ、ふつーにエリューション倒すより疲れたの……」
「やっと終わったのです。香夏子は帰って寝たいのです」
 心底疲れた風情のルーメリアと、帰路に就こうとする香夏子をよそに、うさぎはズブネリが消えた場所を眺め続ける。
『力士としての敗北』を。その意向は、勝利として叶えられた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 ご参加ありがとう御座います。そして、お疲れ様でした。
 ネタ依頼ですのでテイストは軽めに、しかしネタ方面ではある程度きちっと判定させてもらいました。
 個人的には、脳内こねくり回して必死に練りだした小話はどれも価値あるものと思います。
 何がダメか、などについてはリプレイを参照頂ければよく理解頂けるかと。

 MVPは、ステータスシートを全力でこの依頼にシフトしてかかってきてくださった犬束・うさぎさんに贈ります。
 あ、でもネタでほぼ全文埋めた方とか、拮抗してましたよ。MVP付与は凄く悩みます、毎度のことですが。

 では、またの機会にお会いしましょう。