●これは私が視た『運命』ですぞ 「ねぇ……出るって、出る、絶対ここ、出るってぇ……!」 「ハハハッ、なんだビビッてんの?」 「おーーーーい!!」 「ちょっ、ばか、デッカイ声出さないでよ!」 どこにでもありそうな肝試し。バタ臭い墓場。 男二人と女が二人、計四人。 傘をさして、たった一つの懐中電灯に寄り集まって、しとしと雨の中を一歩、一歩。 怖がりながらもまた一歩。 古臭い、視界の悪い墓地。 足場の泥をばちゃんと鳴らして。 雑い石製の十字架、ボロボロの天使像。 昼に見たらなんて事無くっても、夜のそれらは表情を変える。おっかない。 暗い怖い、でも面白半分。 その面白半分の所為で、自分達がグチャミソミンチになる事も知らないで。 異変に気付いて振り向いたってもう遅い、異形はすぐそこ、大口開けて。 ぱくっ。 ごきっ。 ●そして作戦会議ですぞ 「ヒャァ、グロいグロい」 リベリスタ達には背を向けて、モニターに映る自らが視た『運命』に『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)は何処かフヌケた様な声を出す。 実際、モニターには――腐った異形達に喰い散らかされている男女の姿が。 「――サテ。皆々様どうもこんにちは、あるいは初めまして。メタルフレームでフォーチュナの名古屋・T・メルクリィですぞ。名古屋さんなりTさんなりメルクリィさんなりお好きにお呼び下さい」 言いながらモニター映像を巻き戻し、静止画にした所でメルクリィが事務椅子を回してリベリスタ達に向き直った。ニヤリと口角を笑ませて一同を見渡すと一間を開けてから口を開く。 「今回、皆々様にやって頂きたいお仕事は戦闘経験の浅い方や肩慣らしをしたい方にうってつけのイージーな内容ですぞ。 内容はそれなりにシンプル……『一般人を救出し、エリューションを討伐する』。 気を抜いてさえいなけりゃァどって事ないでしょうな……フフ。気さえ抜かなければ。 あぁだからってカチコチに緊張する事もないですぞ? ま、取り敢えず皆々様は私の話を耳かっぽじってお聴き下さい」 取り敢えず、とメルクリィが肘掛に腕を突き指を組んだ。その奥の表情はやはり笑んだまま。 「ザックリ言うとですね、このモニターに映っているバタ臭ーいお墓に四人の一般人が肝試しに来とります。 ……ですがそこには三体のE・アンデッドが潜んでましてね、モニターで御覧頂いた通りこのまま放っておくと彼等は死んでしまいます。E・アンデッドに食べられちゃってね。 そーこで! 皆々様の出番です。何とか一般人をその場から立ち去らせるなりして、且つE・アンデッド達を討伐して下さい。 一般人達に付いては説得するもよし、偽るもよし、脅すもよし――しかーしここで注意です。 『神秘は秘匿されるべきである』――極力、神秘的事象が一般人達に知れないよう心がけて下さいね。 自発的に見せ付けたら皆々様の評判が下がってしまいますぞ? お気を付け下さい」 フォーチュナはニコヤカに言うが目があんまり笑っていない辺りこの点については真剣に取り組まねばならない様だ。しっかり考えておくとしよう。 リベリスタ達は仲間と目を合わせた後にメルクリィへと視線を向ける。ニッコリ、笑って説明を続ける彼の背後モニターには既にアンデッドが三体映っていた。 「ハイそれじゃいよいよお待ちかね……エネミーデータについて説明させていただきますぞ。 今回、皆々様に討伐して頂きたいのは三体のE・アンデッド。いずれもフェーズは1、性能は三体とも異なっておりまして、リーチの長いフラット型、タフなパワー型、スピード型の三つです。 彼等はチームプレイのクソも無いんで、皆々様全員で協力して油断さえしなけりゃーそう苦戦はしませんでしょうな。だからって驕り自惚れは絶対NGですぞ? ま、詳しいデータはそこの資料にも纏めておいたんで気の済むまで御覧下さいませ。皆々様の助けとなれば僥倖、頑張って夜なべして作った甲斐がアリマクリってモンですぞ」 サテ。メルクリィがモニターを切り替えると先程から映っている墓地の全景が表れた。そこはかとなくチープで古臭いが中々の広さがある。墓石や天使像が散在しているが、夜闇に浮かび上がるそれらは何となく不気味だ……。 「場所はこの墓地ですぞ。時間帯は深夜、御覧の通り暗いわ雨降ってるわで視界はあんまし宜しくないですな~。しかも地面が雨でグチャグチャ、何の対策も取って無いとズッコケますぞ! お気を付け下さいませ。 そうそう、例の四人以外の一般人が来る確率は限りなく零なのでご安心を。っていうか来ないです。E・アンデッド達の方は皆々様の気配を察知したら自ずとやって来るでしょうな。 ――以上で説明はお終いですぞ。宜しいでしょうか?」 メルクリィがリベリスタ達を見渡した。彼らが頷いたのを確認するとニッコリ笑って頷き返し、その凶悪で低い声をブリーフィングルーム内に響かせた。 「ではでは皆々様! ――くれぐれもお気を付けて、行ってらっしゃいませ。 私はいつも皆々様を応援しとりますぞ。」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年10月15日(土)23:10 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●しとしと波瀾の香り そぼ降る夜の細雨。 古い黒いアスファルトに小さな波紋を幾つも作る。 犇めく濡れた墓碑。細い水が刻まれた文字を伝う。 最中に足音。四つ。 おそるおそる、たった一つの懐中電灯を頼りに。 絶対出るって、怖くねーし、なんて声と一緒に。 「ねぇあそこ、誰かいる」 「ウソぉ」 「え、マジで……?」 「だって、ほら明かりが――」 かくして照らし出されたのは――朧なランプ明かりに照らされた屈強な男が二人。 墓地を背景に懐中電灯の方を睨み見据える彼等の手には無骨なスコップ。 ヒッ……思わず四人の一般人が固まった瞬間、『我道邁進』古賀・源一郎(BNE002735)は絶対零度の凄味を利かせて言い放った。 「――この様な刻限に何用だ」 その隆々とした体躯に降る雨を滴らせ、赤い瞳は四人を射抜く。 彼の傍ら、『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)はニヤニヤとスコップで肩を叩きながら彼らを見渡した。 「おう、ガキども。こんな時間に、夜遊びかい?」 不敵な笑みと共にコキリと首を鳴らしてソウルはアスファルトにスコップを突く。恐怖に固まり言葉も出ない彼らへ次いで源一郎が静かに口を開いた。 「この墓地は我らが使用中故、用向きならば日を改めよ」 「そーゆーこった、今日は此処で遊ぶにゃ日が悪ィ」 それとも。咽の奥で笑いながらソウルは目を細めた。 「俺らと一緒に『遊んで』いくかい?」 「或いは、死体の仲間入りをするか」 源一郎の言葉に四人はビクリと後ずさった。そんな彼等に一歩、徐に歩を進めるや彼はスコップを突き付ける――選べ、と。 「あ、いや、そのっ……す、すいませんっ……!」 蒼い顔を見合わせて言い淀む一般人達。そそくさと踵を返し――やや離れた位置にてバイクに跨りこちらへ眼を飛ばしている『Alternate』オルト メイガス(BNE003057)と目が合い、「ヒィッ」と足を竦ませた。 「何見てんだよ。……さっさといかねーと殺して埋めんぞコラァ!」 愛機Ghostを吹かして威嚇。あわあわとよろめく彼等にソウルは舌打つ。 「ガキどもがッ夜遊びしてねえでとっとと失せろ!」 ガンッとアスファルトを突いて一喝。瞬間、「すいませんでしたぁ~っ」と泣き声交じりに一目散、傘も落っことして四人は走り去って行った。 「……肝試しのシーズンも過ぎたのに何で夜の墓場に足を踏み入れるかな~。 万華鏡で事前に神秘の情報を拾えて良かったよ」 取り敢えずは一安心。物陰から出てきた四条・理央(BNE000319)は呆れた息を吐く。強結界も張ってあるのでもう誰も来ないだろう。 同じく姿を見せた『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)は二人へ「お疲れ様、カッコよかったよー」と笑いかけて――雨に濡れそぼつ墓地の方を見遣った。 「……そういえば、ソウルや理央と知り合ったのも、墓場だったね」 あの時の依頼は、アンデッドじゃなくてエレメントが相手だったけどと付け加える。今思えば懐かしいものだ――確か二人一組で墓場を散策したっけ。 「あれからもう4ヶ月。あたしだって成長したんだって、見せておかないと。ね」 「そりゃな。可愛い後輩もいる事だしよ」 「今回も頑張ろうね」 振り返ったレイチェルの微笑みに理央とソウルは頷き答えた。 そうと決まればゾンビ退治に向かうのみ。 ギギギー……古めかしい軋音と共に墓地への門が開かれた。 ●雨墓地ゾンビ 「と、とても雰囲気があり回れ右して帰宅したくなります……」 懐中電灯で辺りを照らしつつ風見 七花(BNE003013)はおそるおそる歩みを進めていた。おっかない。でも、ジャーナリストを目指すならゾンビぐらい蹴散らせないと。暗くて雨と泥でぐちゃちゃになってしまいそうなのも我慢我慢。 (それに墓場に出るのがE・アンデッドなら話は別です。 おばけじゃ魔道は通じないかもしれないけどエリューションならイケるはずです) グッと機械の右手を握り締めた。 その一方『紫煙白影』四辻 迷子(BNE003063)は咥えた煙管の先を揺らしつつ辺りに懐中電灯を設置して照明としてゆく。彼女をはじめ安全靴を履いた面々は泥濘む地面に足を滑らせる事は無い。 「新米らしく先輩殿たちの胸を借りるつもりで謙虚にやらせてもらおうとするかのう」 まぁ煙は堂々と吸わせてもらうが、と思いきや生憎の雨。仕方が無いので殻の煙管だけを口遊びに咥えている。 「前回に続き幽霊が相手か。二度目とはいえ、油断しない様にしねぇとな……」 煙雨を懐中電灯で照らす『聖母の生まれ変わり?』澄芳 真理亜(BNE002863)は油断なく歩を進める。雨合羽に水が伝う。 最中、チラと目を遣る方向には源一郎とソウルの強面チーム――追っ払いに成功して良かった、と思う。自分がやってら多分ナメられかねなかったろう……好きで童顔じゃあないんだけれども。 それは兎も角、誰一人倒れさせやしない。 真理亜が小さく深呼吸をして周りを見渡したその刹那、傍の理央が急に足を止めた。それと同時に展開される守護結界――誰もが直感する。 『来た』 と。 「墓場はガキの遊びにゃ丁度いいかもしれねえけどよ、死者の眠りをさまたげるのはいけねえやな」 不敵な笑みと共にパイルバンカーを構える機械兵の視線の先には闇から蠢き現れた三体の異形。どろどろの口から腐敗臭漂う呻き声を漏らし、目玉が腐り落ちた空っぽの眼窩で来訪者へと粘着いた視線を送っている。 「ゾンビも同様だ。死人は大人しく、死んでおけって話だ。 でなきゃ、死人にいつまでも囚われる人間ばかりになんだろうがよ」 手筈通りに動き出す。一歩、ソウル同様前へ出たのはフィンガーバレットで固めた拳を握り締める源一郎。 「作戦通りに戦えば、問題は皆無」 其々も自己強化を済ませてゆく。 かくして戦闘の火蓋が切って落とされた。 「こいよ、マッハ。てめえの足が勝つか、俺の肉体が勝つか勝負だぜ!」 ハイディフェンサー、オートキュア。堅牢に守備を固めたソウルは飛び掛かって来るマッハをヘビースマッシュで迎え撃ち、 「抑えを役割と課そうとも、隙有らば打ち倒すのみ」 源一郎は豪拳を唸らせてビッグへ飛び掛かって行く。 作戦は二人がマッハとビッグを抑えている間に残りがロングへ集中攻撃。 前へ出たのはレイチェルと迷子。 「フォローは任せて、迷子!」 「うむ、頼むぞえ? ……経験不足とは言えわしは覇界闘士じゃ、張り切って努めさせてもらおうとするかの」 迷子は拳に燃え盛る炎を纏い、レイチェルはその身に纏う瑕疵・聖雪夢想を純白に輝かせてロングを見据える。 ロングが唸りながら飛び掛かって来る――最中、滑らないようにと石畳へ移動した七花の詠唱が雨の墓地に響いた。 「……行きます!」 構築された魔力は輝く魔法陣を作り出し、刹那に魔力のミサイルが空を裂いて一直線に飛んで行く。着弾、猛然と走っている最中に真正面から攻撃を受けたロングのバランスが崩れた。 そこを逃さず迷子が業火の拳を叩き付ける。赤々と燃え上がる炎が苔生した墓石を照らした。「火が付けば夜中でも少しは見えやすくなるかのう?」 不遜に笑み、迷子は出血によるダメージを期待して斬風脚の構えに入った。が、その身を焼く炎に呻きながらロングが彼女目掛けて長い腕を振り上げる。咄嗟に間に入ったレイチェルがラージシールドを構えたが――マジックミサイルの鈍い爆音がロングの腕を弾き妨害した。 「墓場に遊びに入って襲われるとか映画かよ。むしろギャグかよ」 周囲にマジックミサイルの魔法陣を展開させたオルトが舌打ち、凶悪な視線でロングを睨む。 「ギャグかおめーら。コミカルすぎんだろ」 長い手を振り回し前衛二人を攻撃するロングへオルトは更に魔法弾を飛ばすべく詠唱を始める。しかしその時ロングが彼女を睨み返した。口を開けている――酸を飛ばす気か! オルトはすかさず横に飛ぶ。だが瞬間に泥で足を滑らせて転倒してしまった。何か足場対策をしてこれば良かったと顔を顰める彼女の前に素早く立ち塞がったのは理央、古びた盾で酸を防御する。 「ッ……!」 直撃は免れたものの、飛び散る酸の飛沫は理央の頬や身体を焼いた。その間にも七花はマジックミサイルで前衛を援護し、前衛二人も攻撃を続ける。斬風脚がロングを深く切り裂いた。 「ぐッ、」 その最中。ビッグの巨腕に殴り飛ばされた源一郎の体が立ち並ぶ墓石に直撃した。脆い墓石は崩れ、源一郎は瓦礫の中から身を起こす。血交じりの唾を吐き捨てた。 ソウルもヘビースマッシュを空振りした隙にサマーソルトを喰らい、意識を揺さぶるショックによろついている。 それを見渡す真理亜は既に詠唱を始めていた。 「――喉が枯れるまで歌ってやるよ。だから倒れるんじゃねぇぞ!」 天使像の傍ら。清らかな福音と共に響くのは癒しの祈り。 理央も破邪の光で味方を苛む状態異常を打ち払い、レイチェルも続けて天使の歌を奏でる。 福音と光、痛みも傷も奇麗に消える。 「そろそろ決めさせてもらうとするかの」 蓄積したダメージによろめくロングへ迷子が躍り掛かった。振り払われる腕を流れる水の如く躱し、それを足場に跳び上がって――繰り出すのは業炎豪打、その顔面を強烈に叩き潰して熾烈に焼き潰す。 迷子の着地とロングが倒れたのは同時であった。 次はマッハだ――迷子が大煙管を構えて見遣った瞬間、マッハとその傍にいたビッグを炸裂した魔炎が真っ赤に包み込んだ。七花のフレアバーストである。 その間にも真理亜はレイチェルと共に天使の歌を奏で、理央はジャベリンを投擲する。七花と同様、石畳へ移動したオルトは詠唱によって魔法陣の構築を完了させた。 「こんな面白いやつらに負けるとかねーわ。飛び散れ!」 裂帛の声と共に放たれるマジックミサイル。鋭い緑の視線の彼方、それはマッハ目掛けて飛んで行くが躱されてしまう。だがその代わりに着地した所を狙った迷子の斬風脚が深くマッハを切り裂き、次いで七花のマジックミサイルも着弾する。 ギャア、悲鳴と共に墓石に倒れ込むゾンビ。 その前にソウルが立ちはだかる。 「戦いは、火力だってことをその身に教えてやるぜ!」 叩き付ける渾身の強打、ヘビースマッシュ。 杭に貫かれ吹っ飛ぶそれを狙うのは真理亜の青い瞳、紡がれる詠唱、展開される魔法陣。 「やられちまう訳にはいかねぇんだよ!」 放たれる魔法の矢。光の直線を描いて飛んでいったそれはマッハの頭部を完全に射抜き切った。 倒れ転がるそれが動く事はもう二度と無い。 「やるじゃねえか真理亜」 「どーも。……あと名前で呼ぶな」 真理亜の毒突く様な返事にソウルは呵々と笑った。 「ほら笑ってないで。残り一体だよ」 理央はそんな二人へ声をかけつつ守護結界と陰陽・刀儀を掛け直す。 「源一郎、大丈夫?」 「うむ、問題無い」 レイチェルは単身ビッグを抑えていた源一郎へ浄化の鎧を施し、源一郎は駆け付けた前衛の面々と共に武器を構える。 七花とオルトのマジックミサイルが飛んで行き、迷子の斬風脚が空を裂く。咆哮を上げて振り下ろされる巨腕をレイチェルと理央の楯が受け止める。 重い一撃。 楯ごと圧される。 だが。 「「負けるかぁ!!」」 逆に圧し返した。 そこへソウルがヘビースマッシュを叩き付け更に圧す。 上体を揺らす巨大なゾンビ――その視界に源一郎が映る。そして消える。超スピード、無頼は敵の隙だらけな背中を取った。 掻ッ切る。 腐った血潮が迸る。 容赦無しのナイアガラバックスタブにビッグが膝を突いた。 同時に進められていたのは魔炎の詠唱。オルトがビッグを見据える。 「火葬にしてやるよ。跡形も無く消しゃ、復活しようもねーだろ!」 ビッグを飲み込む真紅の業炎。煉獄から噴き上がるかの様な火柱はゾンビを文字通り消し炭に変えてしまった。 ジュウゥ。空から降る雨、黒コゲから立ち上る煙。 そして静寂が訪れる。 ●静かな夜の雨 しとしと、雨降る墓地に土を掘る音が響く。 ソウルと源一郎が用意していたスコップで迷子とオルトが穴を掘っているのだ。 オルトは火葬を、迷子は土葬を提案したのだが――ジャンケンの結果、迷子が勝利したのだ。 (何で俺がこんな事せにゃならんのだ) 露骨な舌打ちを挟みつつ半ばヤケクソでスコップを振るうオルトの傍ら、迷子は相変わらずの調子で空の煙管を咥えたままチマチマ穴を掘っている。 「ふー、齢77の老体には堪えるわいー」 「俺ァ81なんだけどな!!?」 そんなこんなで出来た穴にアンデッドを埋葬してゆく。 「死者にも男の敬意ってのは必要だろう?」 と、ソウルは死体達へ火の点いた葉巻を手向けた。理央は手を合わせて黙祷している。 一方の七花も手を合わせていた――しかしその内心は。 (化けて出ずに安らかにお眠りくださいね……。絶対ですよ!) 何だかんだで幽霊は怖いのだ。 「……済まなかったな、ゆっくり寝てる所で騒いじまって。 その上、あんた達が暴れたって思われたらいい迷惑だもんな」 真理亜は倒れた墓石などを元に戻す等の後片付けを行っている。安らかに眠ってくれ、と心の中で呟いて。 「墓場で戦闘するっていうのも罰当たりなんだけど、しょうがないよね」 真理亜の手伝いをしつつレイチェルは苦笑する。一段落ついた後に静かになったそこを見渡し、一言。 「お騒がせしました」 終わったことをアークに連絡したら帰途に就こう。 修練の積み重ねになれば此度は成功だな、と源一郎は仲間と共に踵を返した。 「さあメルクリィへと報告せねば」 AFを取り出した。多分、あのお気楽男の事だからドえらく喜ぶ事だろう。 しとしと、雨が降る。 静かな墓場は――きっと明日も静かなんだろう。 天気予報によれば、明日は晴れるそうだ。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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