●滲み寄る殺意 「何であいつなんだよ!」 怒り任せに吐き出した言葉と同時に、彼は足元の草をめちゃくちゃに踏み荒らした。 沸騰した脳内に思い浮かんでくるのは、仲睦まじく言葉を交わす二人の男女の姿。 彼、二宮秀治には、幼い頃から想いを寄せる幼馴染の少女がいた。 「なずなを好きになったのは、俺の方が先だったんだぞ……!!」 力任せに足を地面に叩きつける。 幼い頃からずっと彼女が好きだった。けれど、もしこの気持ちを伝えて受け入れられず、幼馴染という関係ですらいられなくなってしまったらと考えると怖くて、想いを伝えられずにいた。 けれど、そうして躊躇っていた結果がこの様だ。 「あいつだって、知ってたはずだろ……!!」 彼女を奪った彼――高橋賢治――は、高校に入ってから初めてできた友達だった。 彼女を好きなことだって話して知っていたはずなのにどうしてなんだ。 「こんなの、裏切りだ……っ!」 喉の奥から絞りだすように言葉を吐き出しながら、拳を強く握った。 「いやあ、まったくもってその通りだ」 突然、背後から返答が聞こえて、秀治は驚いた表情で後ろを振り返る。 「誰だ!?」 「通りすがりの人間だよ。偶然声が聞こえたもんでな?」 背後から現れた男は、口の端だけを器用に上げて笑う。 「なあ、お前、好きな奴を奪っていった男のことが憎いんだろ?」 突然現れておきながら、男は無遠慮に秀治の話に立ち入ろうとする。 しかし、男の言うことは恐らく間違ってはいなかった。 憎い、といえば憎いのだろう。言いようもなくぐるぐると渦を巻く感情はきっとそれに近い。 しかし、素姓の知れぬ男を前に心の内を明かしてもいいものかと、探るような目つきで男を見る。 「そう疑うなって。俺はいい話を持ってきたんだよ」 やけに機嫌のよさそうな男の態度に、ますます探るような目を向けてしまう。 しかし、次に男の発した言葉は、もやを抱えながらゆっくりと心の中に落ちてきた。 「――殺しちまえばいいんだ」 そうすれば、彼女を取り戻せる。 ●すれ違う思惑 「一般人が殺される前にフィクサードを倒して欲しい」 ブリーフィーングルームにて、目の前のリベリスタたちに向けて『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が言った。 「まず今回の事件の背景だけど……簡単に言ってしまえば、好きな人を別の人にとられたことへの逆恨み。二宮秀治という少年が想いを寄せていた幼馴染の女の子が、彼の友達と恋仲になってしまったみたいなの。それで、フィクサードに友人の殺害を依頼した」 自分よりも先を越され、向けどころのない怒りを抱え込んでいたところにフィクサードが現れ、その気持ちにうまくつけ込まれた。 そそのかされる言葉は、冷静さを欠いていた彼には酷く魅力的に聞こえたのだろう。 「事件の現場となる場所には彼が友人を呼び出していて、そこをフィクサードに襲わせる算段になってる。でも、『万華鏡』システムで得られた情報では、フィクサードは彼の友人を殺した後、彼をも殺そうとしているようだった。だから、皆にお願いしたいのは彼と彼の友人の保護、そしてフィクサードを倒してもらうこと」 イヴが得た情報によると、敵はこのフィクサード一人と、そのフィクサードが従えていると思われる犬のエリューションビーストが二匹。フィクサード自身はインヤンマスターの能力を使ってくるとのことだった。 「さっきは、彼の友人と幼馴染が恋仲になったって言ったけど、どうやら彼の幼馴染とは実際には付き合っていないみたい。彼にやきもち妬かせて、彼女に告白させる為に一芝居打っただけ。もし余裕があれば、彼の誤解を解いて二人を仲直りさせてあげて」 ささいな誤解が元で殺意を抱いた秀治の行いは決して簡単に許されていいものではない。しかし、 冷静ささえ取り戻せば、自分の行いを反省することもできるだろう。 「それじゃあ、くれぐれも気をつけて」 見送るイヴを背に、リベリスタたちはブリーフィングルームを後にした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:瀬戸 孝也 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年10月11日(火)23:01 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●向けられる狂気 市街地から離れた場所にある空き地。へんぴな場所にあるせいかあまり人が寄りつかないそこには、今、二人の少年の姿があった。 「秀治、わざわざこんなところに呼び出してどうしたんだ? 話があったなら、別に学校でも――」 賢治が続けようとした言葉を遮って、相対していた秀治がいつもと変わりのない様子を装いつつ、けれど少しだけ深刻そうな様子で言う。 「いや、学校だとできないような特別な話があったんだよ」 声だけ聞けば深刻そうに聞こえるが、賢治へと向けられる瞳は妙に冷めていて、そのちぐはぐさが奇妙だった。 そんな友人の様子に違和感を抱いたのか、賢治はわずかに首を傾げる。 しかし、違和感の正体までは掴み切れなかったようで、どことなく釈然としないような顔をしながらも、秀治に訊ねた。 「……もしかして、なずなのことか?」 恐る恐る、といった様子だった。 その言葉に、一瞬場が沈黙に包まれる。 だが、その刹那、沈黙の隙を縫うように場違いに明るい男の声が突如として空間を支配する。 「ご名察~! 何だ、呼ばれた理由ちゃんと分かってるんじゃねえか。っつーことで」 男はどこからか現れたエリューションビーストに手で指示を出すと、賢治に向かって凶暴な瞳を向けた。 「死ねよ」 賢治が目を瞬く暇もなかった。 エリューションビーストが獰猛な口を大きく開き、正に襲いかからんとした瞬間、その間に割り込む影があった。 「待ちなさい!」 賢治を背にかばい、エリューションビーストとの間に間一髪割り込んだのは『夜翔け鳩』犬束・うさぎだった。 突如として現れた存在に、フィクサードは舌打ちして苛立たしげな表情を浮かべる。 「おいおい、いいとこで邪魔すんじゃねえよ」 剣呑な雰囲気を隠そうともせず、フィクサードはもう一匹のエリューションビーストをすぐ動けるよう待機させる。 それを視界の端に捉えながら、うさぎは賢治をかばったまま秀治へと呼びかける。 「二宮さん、正気に返りなさい! こんな事本当は望んでない筈だ!」 秀治は気まずそうに視線を逸らすだけで何も言わない。まるで、向けられる言葉に背を向けるかのように。 そんな彼の前に新たな人影が現れる。 「秀治、落ち着いて、あたしの話を聞いて欲しい」 うさぎと同じく、フィクサードたちからかばうように秀治の前に立ったのは、『スターチスの鉤爪』蘭・羽音だ。獣化している部分は既に幻視で隠している。 「好きなコが友達に取られたって思ってるのは、秀治の間違いなの」 本当は、なかなか告白できずにいる秀治を動かすために付き合ったフリをしただけ。二人が仲良くしているのを見ただけで決めつけるのは早い。嘘だと思うのなら友達に聞いてみてからでも遅くないと、一言一句に想いを込めて言葉を紡ぐ。 羽音が秀治に語りかけている間にも、後ろから追いかけてきていた仲間たちが続々と空き地へ到着する。 「羽音の言う通りだ」 追いついた仲間の内の一人、『伏竜』天城 龍彦が秀治に向かい合って言う。 「しかし、今は邪魔者が居る。詳しい話はあと。二人は何があっても動かないでくれ。おれが、おれ達が守る」 空き地に集まったリベリスタたちの厳しい瞳がフィクサードに向けられる。 向けられる瞳とは対象に、フィクサードは酷く愉快そうに笑う。 「ははっ。いいぜ、まとめてかかって来いよ。楽しい時間を過ごそうぜ?」 ●攻防 話に聞いていた通り、エリューションビーストの動きは素早かった。 今回参加したメンバーの中でも突出して素早さの高いうさぎと羽音よりも早く、二匹が動き出す。 向かう先には、かばい役を交代した龍彦と『ザミエルの弾丸』坂本 瀬恋の背にかばわれている秀治と賢治がいる。 「させないッスよ」 そう言ってエリューションビーストの進路を遮るように間に立ったのは、『守護者の剣』イーシェ・ルーだった。 打ち合わせ通りに犬のエリューションビーストに狙いを定め、初撃からギガクラッシュを放つ。雷を纏った強力な攻撃は、その分自身にも反動が返ってくる。 「まったく、勘違い乙ッス」 攻撃の反動に耐えて歯を食いしばる。そして、視線は犬に据えたまま秀治に言葉を向ける。 「アンタの殺意がこの事件を招いた。それだけは忘れちゃなんねぇッスよ」 こっそり応援だけはしてやるッスけどね、と心のなかでひっそりと付け加える。 イーシェの攻撃の手を逃れたもう一方のエリューションがその横をすり抜けようとする。 だが、それを見計らっていたかのように待ち構えていた『最弱者』七院 凍がもう一方のエリューションに向けてブラックジャックを放つ。 「どいつもこいつも回りくどいね」 秀治も、賢治も、なずなも、フィクサードも。 三次元よりも二次元に心が傾いている彼には、三次元のそうした思惑は理解しがたいのかもしれなかった。 ちらりと秀治に視線を向け、その後すぐに空き地の入り口へと視線を向ける。 そこでは、凍の式神のシノと馬の和尚が秀治が逃げ出さないように見張っていた。もし逃げ出すようなら、邪魔をしておけと指示を出してある。 二人の攻撃に続くように、瀬恋に賢治のかばい役を交代して前に出てきたうさぎも、一瞬の間にエリューションとの間を詰め、メルティーキスを叩き込む。 その攻撃をまともに食らったエリューションには死の刻印が浮かび、毒に侵される。 同様に、龍彦にかばい役を任せてきた羽音も前に出てきて、うさぎが攻撃したのとは別のエリューションに向かってメガクラッシュを叩き込む。 既に底上げされていた攻撃力に加え、全身のエネルギーが込められた一撃にエリューションは体勢を大きく崩され、陣形が乱れる。 「おいおい、そっちばっか構ってないでこっちも構ってくれよ」 フィクサードがそう言うと同時、呪力によって生み出された魔を宿す雨がこの場の全員に向かって一斉に降り注がれる。 龍彦と瀬恋はすかさず秀治と賢治をかばい、二人は傷一つなく無傷のまま。 しかし、容赦なく浴びせられる雨は、龍彦と凍の二人を凍結状態に陥らせる。 「今回復してやるから待ってろよ」 仲間にオートキュアーをかけ、支援に徹していた『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼスがブレイクフィアーを仲間にかけるも、凍結は未だ解かれぬまま。じわりじわりと、二人の体力を削っていく。 「あーもー、喧嘩は良くないっすよーつか喧嘩ならイーけど様子おかしいよ!」 ローゼスと同様に仲間にオートキュアーをかけてまわっていた『1年3組26番』山科・圭介が、キュアーの切れた仲間に技をかけ直しながら悪態をつく。 しかし、通りすがりのセイギの味方としてはこの状況を放ってもおけない。 だが、エリューションに攻撃が集中している今、フィクサードは完全にノーマーク。こちらが敵の全体攻撃に巻き込まれているというのに、一方の相手はといえば好き勝手に動ける状態だった。 早急にエリューションを倒してフィクサードに狙いを定めなければ、今はオートキュアーで補えている回復もやがて追いつかなくなるだろう。 エリューションの打倒を急ぐあまり、フィクサードを抑える為の人員を割かなかったことは、フィクサードに自由な行動を許すことと同義。あまり有効な策とは言えないだろう。 リベリスタたちも絶え間なく攻撃を繰り出すが、フィクサードも同様に絶え間ない攻撃を繰り出してくる。 状況は五分五分だった。 「じっとしてろよガキ。死にたくなけりゃね。」 フィクサードの繰り出してくる遠距離攻撃や全体攻撃に耐え、瀬恋は賢治をかばい続ける。 圭介やローゼスがかけてくれたオートキュアーの効果があるとはいえ、その回復量は決して多くはない。 むしろ、今では回復量よりも徐々に蓄積されたダメージの方が上回っていた。このままでは、いつまで立っていられるかも分からない。 それは、秀治をかばっている龍彦も同様だった。しかしそれでも、ただ一心に秀治をかばい続ける。 「思い通りには、させない」 こんな相手に膝ををつくのは情けない。その強い思いだけで、今にも崩れ落ちそうになる膝を叱咤して立ち続ける。 「あ、あんたら、何でそこまでして俺をかばうんだよ」 リベリスタたちが到着してから目を逸らすばかりで、一度も言葉を発しなかった秀治がここに来てようやく口を開く。 「決まっている。勘違いしたままに終わらせるのは、惜しい」 生きていれば、友とすれ違う事もある。もっとも、今回のことに関しては二人にも悪い所はあるが。 「ま、そうだね。少なくとも殺し殺されって程のことじゃないね」 龍彦の言葉に瀬恋もうなずく。友達だと言うなら、普通に尻を叩いてやればいいんだと瀬恋は思っている。 二人の言葉に、秀治は言葉なくうつむき、四人の間に沈黙が下りる。 だが、その目の前で行われる仲間たちの戦いは一際激しさを増していた。 ●終幕 「ははっ。あんたらもなかなかやるじゃねえか!」 次々と繰り出されるフィクサードの攻撃に、リベリスタたちは一進一退の攻防を続けていた。 辛くもエリューションビーストは退けたものの、バッドステータスを織り交ぜて繰り出される敵の攻撃は、予想以上にリベリスタたちの身を蝕んでいた。 圭介とローゼスのオートキュアーの助けはあるものの、その回復量は微々たるもので、全快には程遠い。 「へらへらと……笑わない、で……!」 羽音がフィクサードの間合いを詰め、ギガクラッシュを繰り出す。返ってくる反動に耐えながらも、常より強力な一撃に、フィクサードがよろめくのを確認する。 「くっ……!」 リベリスタたちに余裕がなくなってきているのと同様に、フィクサードもまた、平静を装っているだけで実のところは徐々に余裕がなくなってきていた。 その隙を見て、今までほとんど支援にまわっていた圭介も攻撃に加わる。 今まで敵の動きをよく見て、動きのクセは掴んでいる。そのクセから推測すると、有効そうなのは――。 「ここだ!」 敵の動きの先を予測し、ピンポイントで正確に敵の体を打ち抜く。 その攻撃に続くように、隙を置かず、うさぎがメルティーキスで追撃する。 「絆を裂くような真似……許せません」 続けざまに繰り出される攻撃にフィクサードがわずかに怯むが、すぐに体勢を立て直して反撃してくる。 「こんの野郎……っ!!」 符術で作り出された鴉の式神が、今しがた攻撃を加えてきたばかりのうさぎに向けられる。そしてそれは、狙いを違えず対象を穿った。 ローゼスがすぐさまオートキュアーをかけ直し、うさぎの体力がわずかに回復する。 「あれこれ悩んで傷ついて人間ってのは成長していくもんだ。ただ、それを壊そうとするフィクサードなら、手加減する必要はねえな」 ローゼスがオートキュアーを施す間に集中を行っていた凍がフィクサードに迫り、ブラックジャックを繰り出す。黒いオーラはフィクサードにしかと命中し、フィクサードはいらつくように眉を寄せる。 「お前ら全員ぶっ殺してやる……!」 苛立たしげに言葉を吐きだし、呪力を込めようとする。 しかし、それよりも早くイーシェが間合いを詰めて肉迫し、武器を振りかぶる。 「人に罪を犯させて、諸共皆殺しッスか! 悔い改めろ!」 振りおろしざまに、渾身の力でギガクラッシュを叩きこむ。 自身に返ってくる反動と共に与えられた強烈な一撃は、フィクサードを沈めるのに十分な威力だった。 「生きて帰れるなんて甘い夢見させねぇッスよ」 イーシェの言葉がフィクサードに向けられるが、フィクサードはもう、ぴくりとも動かなくなっていた。 ●探る想い 秀治と賢治は無言でお互いに向き合っていた。お互いに、何を言えばいいのか言葉を探っているような雰囲気だ。 そんなじれったい雰囲気に痺れを切らしたのか、なりゆきを見守っていた瀬恋と龍彦がおもむろに二人に近づくと、瀬恋が賢治を、龍彦が秀治を立て続けざまに殴った。勿論、手加減はしてあるが。 「鬱陶しいんだよ。そんなに気にするなら殴り合いでもしてスカっとしな」 確かに、うわべだけの言葉で謝っても根本的には解決しないだろう。それならば、いっそのこと殴り合いでもしてしまった方がすっきりとするかもしれない。 「二宮秀治。自分が如何に愚かな事を選びかけたかを、深く反省するべきだ」 龍彦は秀治に向き直って、真摯に訴えかける。 龍彦のその言葉に続いて、瀬恋は秀治に向き合うと男らしく言い切った。 「あと、テメェはそのヘタレ根性をなんとかしろ」 「なっ……!?」 まさか女の子からそんなことを言われるとは思っていなかった秀治は、分かりやすく動揺する。 凍も、その歪んだ正確直した方がいいと思う、と同意するが、心の中でツッコミを入れる程度のノミの心臓なので心の中だけで呟いておく。 その様子を見ていたローゼスが快活に笑う。 「坂本の言う通りだな。とりあえず、てめーら二人は殴り合え。互いに友人だというなら、何も考えずに真っ直ぐに突っ走れよ。殴り合って頭空っぽにすりゃ、見えてくるものもあるだろうさ」 感情をむき出せるのは、子供の特権だからな。そう言うローゼスの言葉には子供よりもずっと長い年月を重ねて生きてきた者ならではの重みがある。 「まあ高橋さんも回りくどい事をするから誤解された訳です」 内心の必死さを隠しながら、軽い調子でうさぎが言う。 「そうそう。好きなら好きとちゃんと伝えないと、いつまでも待ってもらえるか分かったもんじゃねぇッスよ」 「うん、告白すればいいと思うの」 息の合った調子でイーシェと羽音が言葉を続ける。 そもそもが、秀治が男らしく告白してしまえば今回のようなややこしいことも起きなかったことを思えば、言われてしまっても至極仕方のないことだ。 「まあ、修羅場潜って良い経験なったろ。殴り合いはともかくとしても、お前ら一回ちゃんと話し合えよな。したら多分全部解決すっからさ?」 笑顔でそんなことを言われてしまえば、二人にはもう返せる言葉はなかった。 しばらくの沈黙の後、賢治はぐっと顔を上げたかと思うと、思い切りよく秀治を殴った。 殴られた秀治は、その衝撃でよろめき、二、三歩後ろに下がる。そして頬を抑えたまま、目を瞬いて賢治の方を見ている。 「これでチャラだ。お前も、俺を殴れよ。それでお互い様だ」 「いや……でも、俺は……」 言い淀む秀治に賢治が声を荒げる。 「ああもう、まどろっこしい。俺がいいって言ってるんだからいいんだよ!」 なおも秀治は言い募ろうとするが、片っ端から賢治にはねのけられる。 その様子を見て、リベリスタたちはお互いに顔を見合わせた。 もうここまでくれば、後はお互いにそれなりの方法で決着をつけられるだろう。 そうしてそれぞれに頷くと、リベリスタたちはその場を後にした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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