●突撃、Eチーム! よぉ、俺の名前は山田太郎。 巷じゃあちったぁ知られた作戦参謀。 ま、俺のような天才策略家でもなけりゃあ、こんな百戦錬磨の荒くれ者どものリーダーは務まらないんだけどな。 そういやぁ、まだ俺達のチームメンバーを紹介してなかったな。 紹介するぜ、まずはコイツだ、顔男! 端正な顔をしてやがるいけ好かない二枚目野郎だが、こいつがいなけりゃうちのチームは成り立たねぇ、チーム一の常識人さ。 ま、今はちょいとおねむのようだから、本人の声が聞きたきゃまた今度だな。 次に紹介するのは我がチームの紅一点、天使! 我がチームでも随一の情報通さ。その博識ぶりは天才策略家の俺も舌を巻くほどだぜ。情報収集は彼女に任せておけばOK、ってな。 まぁ、恥ずかしがり屋なんで、なかなか声は聞けないんだけどな。 お次はちょいとクレイジー、だが頼れるヤツさ。イカレ猿! 車の運転はこいつにお任せ、ちょいと正確がイカシすぎてイカレちまってるが、それも個性さ。個性派ってのは素晴らしいぜ。 声が聞きたいって? 悪いな、今は運転中なんで、もうちょい後にしてくれよ。 そして最後の一人の紹介だ。 我がチーム最高の腕、とでも言うべきだろうな。メカニックに関してはこいつの右に出るやつはいやしないぜ、金具! 国家元首だってブン殴っちまうようなヤツだが、高いところはからっきしなお茶目なヤツさ。今もせっせと、メカに精を出してやがるぜ。 どいつもこいつも一癖も二癖もある荒くればっかりだが、それがいいのさ。 なぁ、野郎共。 欲さえ満たせれば気分次第で何でもやってのける命知らず。 不可能を可能にし、巨大な壁を粉砕する、 それが俺たち、革醒野郎Eチーム! ●激突、Eチーム! 以上のような説明を、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が集まったリベリスタ達にしたのだが、それを受けてのリベリスタの一言。 「痛々しいな」 「そう思う」 イヴもコクリと頷いた。 「で、そのEチーム、だっけ? そいつらはどんな集団なんだ……?」 「まず、リーダー、山田太郎」 イヴがモニターに男性の姿を映し出す。まだ若い、二十歳前後の男性だ。 「本名、田中一郎。浪人生」 「浪人生かよ」 天才策略家設定どこいった。 「ノーフェイスでフェーズは1。能力は、高くジャンプできる」 「それ以外は?」 「それだけ」 「それだけ?」 「それだけ」 イヴはコクコク頷いた。リベリスタ達は、黙り込む。 「次、顔男」 モニターに、人の顔が映し出される。が、それを見てリベリスタが気付いた。 「……マネキンだな」 「そう、マネキン。紳士服用のマネキンのエリューションゴーレム」 マネキンに意志が宿った。ということなのだろうが。 「なるほど、確かに端整な顔立ちだな。マネキンだからな」 「マネキンだから」 イヴがコクコク頷いている。 「フェーズは1で、能力は、高くジャンプが出来る」 「こいつもかよ」 「それだけ」 「しかもそこも同じかよ」 思わず言わずにはいられなかったリベリスタだった。 「次に、天使」 モニターがまた切り替えられる。 「…………」 そこに映し出されたものを見て、リベリスタ達は一様に眉を顰めた。 「カラスだな」 「そう、カラス。革醒して二倍くらいの大きさになってるだけ。フェーズは1」 「なるほど、確かに知識量は豊富かもな。……鳥にしてはだけどな!」 そろそろ、何となく次も読めてきたリベリスタ達。 「次が、イカレ猿」 イヴの言葉の直後にパッとモニターに映ったのは、やはり彼らの予想通りのものだった。 「猿だな」 「猿」 イヴがコクコク頷いている。 「フェーズは1で、能力は凄く高くジャンプできること」 「その点で他より怖い……。の、かぁ……?」 リベリスタは自分の言葉にいまいち自信が持てずに首を傾げた。 「最後、金具」 「かなぐ?」 「こんぐ」 「まぁ、どうでもいいけど……」 そろそろ真面目に聞いてるのも疲れてきたリベリスタは、一つ息をついてモニターの方に意識を注いだ。 「金具は、これ」 イヴがパネルを操作してモニターに映し出されたのは、一台のワゴン車だった。 「……おい、そのこんぐってのは、どこだ?」 「もう映ってる。その車が、そう」 「……はぁ!?」 これには、さすがにリベリスタ達も驚いた。 「ワゴン車が革醒して、エリューションゴーレムになったもの。意志を持つ前は乗り捨てられてたみたいで、人に恨みを抱いてる。だから、放っておくと他のメンバーを乗せて、街に突撃しちゃうの」 「おいおい、おいおい……」 さすがにそれは、看過できることではなかった。 なるほど確かにメカニックだ、だって当人がメカなんだから、なんて考えている場合でもなかった。 「このチームは、受験に失敗した浪人生と、捨てられたマネキンと、人に飼われてて捨てられたカラスと、同じく人に捨てられた猿と、捨てられた車で成り立ってる。みんな、革醒したことで、人への恨みを明確に自覚してるの」 しょーもない連中のように見えて、こうして聞いてみるとなるほど、それらの恨みから街に突撃したくなったというわけか。 「しかし、俺達が今から言って、連中が街に到着する前に間に合うのか?」 リベリスタが靴にする当然の疑問、それに対し、イヴはやはり頷いた。 「絶対に間に合う」 「そう、言いきれる根拠は?」 「猿が運転してるから、道に迷う」 「…………あぁ、そう」 そう、言うしかなかった。 「今から向かえば、ちょうど、山の中くらいで捕捉できるはず」 「分かった、じゃあ、早速向かうとするか」 と、言いつつも、どこか力の入れどころが掴めていない、リベリスタ達であった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:楽市 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月08日(日)22:23 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●任務内容:金具を止めろ! 真夜中の山道を、一台の古びたワゴンが激走していた。 「風だ! 俺達は風になるんだ! この腐りきった世界に新しい時代を運ぶんだぁ!」 開けた窓から吹き込んでくる風を受け、やたら酔った発言をしているのは、Eチームのボスである天才策略家、山田太郎である。 ちなみに彼が乗っているのは、助手席だ。 「ッキャー!」 運転席ではデカイ猿が奇声と共に右に左にハンドルを切っていた。 「ギャア! ギャア!」 バッサバッサと、大鴉の天使が後部座席で翼を羽ばたかせ、隣に置かれた顔男が揺れによって体を左右に激しく振られている。 総じて、かなりうるさい。 「行っちまおうぜ、どこまでもー! 限界の、向こう側へぇぇぇぇ!」 道を塞ぐ何かが見えたのは、その直後だった。 敷き詰められたマキビシと、積み上げられたそこそこに太い丸太のバリケード。 「おい、イカレ猿! ブレーキ、ブレーキ!」 叫んだ三秒後に大慌てで自分の発言を覆す山田太郎。 「キャー!」 「猿に日本語が通じるはずがないってか。天才策略家の俺としたことが、誤算だったぜ!」 アッチャ~、と額に手を当てる山田太郎だが、そんなことをしている場合ではない。 一方、バリケード前では、幾つかの人影が動いていた。 「……来たか?」 最初にワゴン車こと金具の接近に気付いたのは、『甘党まっする』祭 義弘(BNE000763)であった。 「おー、おいでなすったようだぜ」 双眼鏡を覗いていたラキ・レヴィナス(BNE000216)も、走る金具を発見した。 彼らが見ている前で金具はやたら蛇行し、減速どころかさらに加速してバリケードに突っ込んだ。 雷鳴よりも尚激しい、激突音と破砕音。ひしゃげたマキビシが散り、丸太も折れて砕け、道の脇に転がっていく。 しかし金具は止まらなかった。フロント部分を激しく凹ませ、速度もさすがに若干落ち込みはしたが、まだまだ勢いは殺し切れてはいない。 「ま、即席のバリケードならこんなとこかね。じゃあ、行こうか!」 進路上に立つ雪白 音羽(BNE000194)が、背の翼を広げて手にスタッフを構える。 そして、リベリスタ達の一斉攻撃が始まった。 空気は唸り、切り裂かれ、光が瞬くと共に金具前面に火花が散った。そしてそのたびに、衝撃が音を生み、金具の車体を激しく震わせた。 「う、うおおお! なんだこれはいきなり奇襲か世界の終わりか現代社会の報復かそれともなんだ世界が俺達に対して働かせた抑止力かー!」 山田太郎がうるさい。 「ッキャー! キャキャー! ギャアギャア! ッキャギャアー!」 イカレ猿と天使も合唱しててうるさい。 顔男は頭を車体にぶつけながら無言を保っている。さすがはクールな二枚目。 リベリスタ達の攻撃に晒され、さすがの金具も速度を落とした。 「さー、来ました来ましたよぉ。今回のわたくしはクールにワイルドでいきますよォ!」 『息をする記憶』ヘルマン・バルシュミーデ(BNE000166)が、言って駆け出し、その身を投げ出し金具の車体脇にへばりつく。 「ひゃっはぁぁぁ~! これはたまらんスリル! クレイジーな運転でございます!」 まずは言いたいことを言って、彼はその拳を運転席脇の窓に叩き付けてガラスを割った。 「お邪魔致します!」 「ッキャ~~~!」 ヘルマンが窓から手を突っ込み、ハンドルをグッと掴んだ。 激しい蛇行が、荒ぶる蛇行へと切り替わる。そしてヘルマンは自分の足を地面に押しつけ、さらなる失速を試みた。 耳障りな摩擦音が響く中、金具の向かう先には、二つの人影。 「脇から攻めている隙はなさそうですね。真っ向勝負になりますよ、いいですか?」 「被害を、出すわけには、いかないし、ね。がんばる……!」 『メタルマスクド・ベビーフェイス』風祭 爽太郎(BNE002187)と、『インフィ二ティビート』桔梗・エルム・十文字(BNE001542)の二人のメタルフレームが、突っ込んでくる金具を、真正面から受け止めようとした。 ドギャアン、と、衝突の激しさをそのまま音にして、二つの人体と一つの車体がぶつかり合った。二人はあらん限りの力で踏ん張って、その足が地面にベコンとめりこんだ。 「丁度ええタイミングや!」 言ったのは、小柄な少女にも見える『イエローシグナル』依代 椿(BNE000728)。 発動したスキルが、数多の呪印を描き出し、金具の動きをついに封じ込める。 「よ、酔う! 超酔う! 俺、乗り物酔いするんだってー!」 急停止した金具の中で、慣性に振り回される太郎が叫んだ。何故乗った。 「う、ううう……」 溜まらずドアを開け、外へと出た山田太郎が見たものは、金具のライトに照らされてそこに立つ誰かが濃い影を落とす。 地面に雄々しく剣を突き立て、『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)はEチームの面々に告げた。 「良くぞ来た、Eチーム、今回の作戦は我等と相打ち、戦う事だ。尚、この音声終了と共に即戦闘に入る、異論は認めん、健闘を祈る――だが容赦はせん!」 というわけで、戦闘開始! ●任務内容:Eチームを打倒せよ! 山田太郎が乗り物酔いで顔を青くしつつも、「フッフッフ」と含み笑いをした。 「そうか、この苦痛多き世界で、火事場の火薬庫の如き危険に身を投げ出す命知らずは、俺達だけじゃなかったようだな!」 「天才策略家か知らぬが、如何なる才も人を不幸にするならば害悪。覚悟せよ、田中一郎」 「田中一郎と呼ぶな! 俺は天才策略家、山田太郎だ!」 アラストールに言われ、ムキになって叫ぶ太郎だが、リベリスタ達にはその差が全く分からない。 「フ、まあいい……。俺達を敵に回した以上、今から貴様らには地獄を見せて――」 「あ、それ以上喋らないでいいです」 「ギャー!」 太郎の言葉を完璧に挫くタイミングで、『ミス・パーフェクト』立花・英美(BNE002207)がスターライトシュートをぶっ放した。 吹き飛んだ太郎が、ヨロヨロと起き上がり、 「こ、この程度、俺達が今までに見てきた地獄に比べれば――金具!」 太郎が呼ぶと、動きの止まっていた金具のタイヤがいきなり回り始めた。 「なんだ、どういうことだ!」 義弘が驚く。すでに猿も外に出ていて、運転席には誰もいないはずなのに。 「フフ、驚いたようだな。……そう! 金具は運転手がいなくても走れるのさ!」 「猿が運転する意味ないよな?」 「しまった! 気付かれたぁ!」 ボケ→ツッコミ→ボケ重ね。 流れるが如き展開であった。 「ま、まあいい! 今度こそまあいい! まあいいったらまあいいんだ! 死ねー!」 全然まあよくなく、山田太郎とEチームが、闇夜に高々と跳躍する。 「そりゃあ」 「ギャー!」 浮遊していた音羽のフレアバーストが、ジャンプしてたEチームを丸ごと焼いた。 「ちょ、ちょっと! 空飛ぶなんて卑怯じゃないかー!」 「まぁまぁ、あんま怒ったらあかんよ、田中」 「山田! やーまーだ!」 宥めようとする椿が、太郎をさらにキレさせた。 「もういい! 今度こそもういい! もういいったらもういいんだ! 死ねー!」 まあいいがもういいに変わった。そしてまたEチームが襲ってくる。 最初に接敵したのは、爽太郎とマネキンの顔男。 「その関節機構でどうやって跳躍したのかは知りませんが、受けて立ちましょう!」 紳士服売り場に置かれているポーズそのままに空から襲ってきた顔男に、爽太郎が思いっ切り拳を握り、そこに炎を滾らせ振りかぶった。 「ぬぅん! 業炎ハンマァーナックルゥ!」 拳に伝わる確かな手応え。マネキンの顔面に亀裂が入り、ついでに炎までもがその表面を燃やし始める。 しかし、爽太郎の攻めはそれに留まらない。 彼は燃えだした顔男を担ぐと、その身をグルリと天地逆にして地面目掛けて叩き付けた。 「必殺、業炎パイルドライバァァァァァ!」 グワシャア、と、どこかの漫画でありそうな音を響かせ、顔男が粉砕された。 「か、顔男ォォォォ!」 太郎が悲痛な叫びを発した。まさか、チーム一の色男が陥落する日が来るとは。 「だがまだだ! 俺の戦略は崩れちゃいない。見せてやれイカレ猿、おまえの力を!」 「ッキャー!」 顔男の二倍以上の高さを跳躍し、イカレ猿が桔梗を狙う。 「そりゃ」 「ウキー!」 その腹に、ラキの放った矢が刺さった。 「くーらえー」 落ちてくるイカレ猿を、桔梗がエネルギーを集中させたバスタードソードでフルスイング。哀れ、イカレ猿は大きな放物線を描いて彼方へと飛んでいった。 「おー、スゲェホームラン」 「そっちこそ、ないす、狙撃」 飛んでいったイカレ猿を眺めるラキに、桔梗は瞳をキュピンとさせてサムズアップ。 「イ、イカレ猿ゥゥゥゥ!」 太郎が絶叫を発した。まさか、チーム一クレイジーなアイツが倒れる日が来るとは。 「し、しかし、こっちにはまだ天使がいるぜ。言っちゃなんだが、天使は一味違うぜ!」 その一味違う天使が、今まさに狩られようとしていた。 「フン、こんなものが天使ですって?」 『悪夢喰らい』ナハト・オルクス(BNE000031)の神気閃光が逃げる天使を焼き払い、さらに、それに合わせて弓を構えた映美が、コインを射抜く精密射撃を見せる。 「ギャア! ギャア! クァ~……」 天使、墜落。 「やはり、父の弓は、完璧なのです」 そしてミス・パーフェクト、どや顔。 「て、天使ィィィィ!」 太郎が腹の底から大声で以下大体同文。 「あの、全然弱いんですけど?」 映美が言った一言が、山田太郎の心を容赦なく抉る。 だが、追い詰められた太郎の耳に届く、激しい摩擦音。 近接状態から業炎撃を喰らわせる『蜥蜴の嫁』アナスタシア・カシミィル(BNE000102) だが、見た目からして歪んでいるにも関わらず、金具の強度は凄まじいものだった。 「う~、さすがに車! カッタイよぅ!」 攻撃を受けてばかりではない。金具はライトを明滅させると、リベリスタ目掛けて突っ込んでくる。 「ぐ、おぅっ!」 避けきれず、ヘルマンが激突されて地面に転がった。 駆け寄った『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)が、彼にすぐさま傷癒術を施す。全身を軋ませていた痛みが失せて、ヘルマンが力無く笑った。 「ありがとうございます。治していただき、わたくし、感謝感激でございます」 「ボクはこれくらいしか取り柄がないものでな。」 一方、金具の隣まで逃げた山田が、失っていた余裕を取り戻した。 「フ、ハハハー! 天才策略家山田太郎、起死回生の策を見出す!」 「どこからその余裕が来るのか分かりませんが、残っているのは貴公等だけだ」 剣を片手に迫るアラストールに、太郎は腕組みをして叫んだ。 「いいぜ、見せてやる! 我がEチーム、最後の策を!」 ●任務内容:山田太郎をなんとかせよ! 「最終作戦発動!」 山田太郎が金具の運転席に乗り込んだ。 「実は俺は運転免許持ちだったのさ。ハーッハハハハ!」 「えー、イカレ猿が運転してる意味はー?」 「敵を欺くにはまず味方からって言うからいいんだよ! もー!」 ツッコんだら逆ギレされた。 「全員、ぶっ潰してやる!」 山田が金具のアクセルを全力で踏み込んだ。 真の運転手を得て、金具のタイヤが今までにない唸りを挙げる。そして―― ギャギャギャー! ドカァン! 近くの壁面に激突した。 「…………」 咄嗟に身構えたリベリスタ達の間に流れる、なんとも言いようのない空気。 「くっ、やはり、実技をもうちょっと頑張っておくべきだったか。誤算だったぜ……」 山田太郎はペーパードライバーであった。 「……ぇ~」 リベリスタ達が、困った風に互いの顔を見合わせる。 「とにかく、攻めろ! 攻撃だー!」 「「おー!」」 義弘の号令によって、金具への集中攻撃が始まった。 「斬風ソバット! 斬風延髄斬り!」 「ああもう、もう少しシリアスに、パーフェクトに決めたいのに!」 「叩く! 叩く! とにかく叩く心意気!」 「ふむ、皆と協力して強大な敵を倒す。なかなか心躍るものですね」 「うわっちゃ~、清々しいまでのフルボッコ……。まぁ、やっちゃうけどさ」 メガクラッシュとか、ヘビースマッシュとか、業炎撃とか、斬風脚とか、さらに遠距離からのガトリングだの、フレアバーストだの。 フルボッコのフルボッコに、さらに重ねてフルボッコ。 「トドメだァ!」 最後に義弘が放ったヘビースマッシュが、金具を完全にスクラップへと変えた。 結果、金具、チュドーンと爆発。黒煙を上げる。 こうしてEチーム最強の金具もまた葬られ、一人残った山田太郎は―― 「なぁ、自分、田中さんやっけ? なんで人恨むん?」 「あ……、や、山田……」 「どっちでもええ。受験勉強をしたのも、試験を受けたんも、合否の結果を導き出したんも全部自分やろ?」 「え、あ……、はい、そうです。はい……」 「かつての貴方は真面目で、それゆえに思い詰めたのかも知れません。しかし、失敗から学ぶことをせず、志を、忍耐を、勇気を、何かを成就させるために必要な全てを忘れてこんな行動に走った挙げ句に名前まで偽るとは……」 「あ、すいません。その、あ、山田って、カッコイイかなって、思って……」 リベリスタ達に周りを囲まれ、椿と爽太郎に説教を喰らっていた。 「なぁ? 受験に失敗したからって、人様に迷惑かけちゃいかんよな? なぁ?」 義弘の視線が怖い。とても怖い。 説教を喰らいながら、しかし山田は自称天才的な頭脳をフル回転させて、なんとかこの状況から逃れるための活路を見出そうとしていた。 その耳に届く、アラストールと音羽の会話。 「フェイトを得られたのか分かりませんね」 「結局生きてる強運も、それっぽいと言えばそれっぽいが……」 これだ、と、彼の頭が閃き、そして太郎はすぐさまそれを実行に移した。 「そうか、そうだったのかー!」 「な、なんや……?」 「ああ、分かったぜ。そうなのか。俺もようやくフェイトを得たぜー!」 「…………」 騒ぎ出す山田太郎を、リベリスタ達はものすっごく胡散臭げに見つめる。 「ほんなら聞くけど、フェイトってなんや?」 「え」 太郎の動きが固まった。 彼は、顔に汗をダラダラ流しつつ、答えた。 「お、穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚めて入手するパゥア?」 問いかけた椿が、満面の笑みで頷いて、 「思えばEチームな、捨てられて恨みを持つ言うんは納得やね。人の都合で捨てられて、人の為に討伐される。……悲しい話や」 そこまで語り、彼女は満面の笑みのまま言った。 「ただし山田太郎、テメーはダメや!」 そして始まるフルボッコ。 「ら、らめぇぇぇ、フルボッコらめなのぉ~!」 夜中の、ひとけの全くない山中に、浪人生の哀れな悲鳴がこだまする。 「策士、特に策士っぽいとこ、なかった、ね」 「それだけは言ってやるな。な?」 桔梗の残酷な評価を聞いて、義弘が肩を叩いてかぶりを振った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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