●情報 ――CASEⅠ 四階歩いてたときだったかなぁ。 誰かが私の髪を引っ張ったの。 ふと、後ろを見たら、誰もいなかったのよ。 でもたしかに、引っ張られたんだって! すごい力だったわ。もう、びっくりした。 なんだったんだろう……。 ――CASEⅡ 授業中に教科書が落ちたんだ、それも窓の外に。 こう……勢い良く投げたみたいな! 俺も、誰も、触ってないのに、飛んでったんだよ! それが一回なら、まあ風かなって思ったんだけど……。 俺以外の人でも、何十回って起こるんだ。 なんかこの学校やばくね? ――CASEⅢ そういえば先日ですけど、四階の廊下の曲がり角で手があってね。 いや、角から手だけだして。 その手が、なんと真っ黒なの。 最初友達のいたずらかなーって思ってね、気にしなかったんだけど。 なんだかちょっと怖くなったわ。見間違いかしら。 「――っていう、情報が多いんだよな、最近。この学校はさー」 とある中学校の生徒会室。 集まった生徒会の七人のメンバーが、最近校内で多発する不思議な事件の話をしていた。 「あー聞く聞く。でも誰かのいたずらじゃないの?」 「そう思うけど、有り得ないとこから物が落ちたりとかあるんだぜ?」 「まさに学校の怪談! 面白いねー」 「えー、怖い怖い。触られたとか嫌だけど、実害って起きてなくな――っ!?」 メンバーの一人が話しながら、ふと窓の外を見る。 窓の外で、上から落ちてきた『人』と目が一瞬だけ合った。 「え、今、誰か落ちたよね……?」 校庭から叫び声が聞こえていた。 ――本日未明、××中学校の×××さんが、屋上から転落。 病院に搬送されましたが、間も無く死亡しました。 遺書は見つかっておりませんが、事故と自殺の両方を……―― ――CASEⅣ 落ちたの。 私、その子の隣にいたんだけど。 いっぱいの手がね。 手が、こう引っ張っていって、あの子落としたの、窓から。 信じてよ。嘘は言ってないわ。 嘘は言ってない。手がいっぱいあったの。 すごいたくさん。 数えてないけど、うーん……たくさん。 ● 「先日あった中学生の転落事故。どうやらこっち関係みたい」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が新聞を広げてそう言った。 「でも、あれって警察が調べて事故って事になってましたよね」 リベリスタの一人が、聞き返す。 「うん。警察は誤って窓から転落。事故死と断定した。でもおかしいのは、窓の距離。アークの情報員が学生に聞いたんだけど、どうも変だったの」 最後の中学生は、引っ張っていって落としたと言っていた。 つまり、中学生が立っていた場所から窓の距離は離れており、かつ何かが引っ張った。 その誰かというのが、『いっぱいの手』である。 「おそらくE・フォース。日に日に増えてるみたい。だから、急いで学校に向かって調査して欲しい」 学校というのは人の集まる場所である。負の感情も集まりやすいのだろう。 その結晶がE・フォースを生み出したとアークは考えた。 「エリューションは夜に活性化するから、夜に現場へ行って。特に女子高生が引っ張られた四階を探してみて」 そこが目撃情報の一番、多い場所だ。 「ところで、黒い手ってなんだ?」 「それは本体みたい。増殖かなんかして、手を増やしてる……そのいっぱいの手の本体」 学校に住み着いたE・フォースは一体。 だが厄介な事に増えるらしい。 こうしている、今も増えているのだろう。少し大掛かりな仕事になりそうだ。 「学校の鍵は開けてもらっているから、後は宜しくね」 リベリスタはブリーフィングルームを後にした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月29日(木)23:12 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●夜の学校探検 昼は学生の活気に彩られる校内も、夜は不気味な暗さを持つ。 先の見えない廊下に、誰もいない教室。 普段、知ってる学校のイメージとは離れたその建物は、異質なものが住み着いたという噂と共に、恐れを増す存在となっていた。 ……といっても、それも今日までだろう。 光源により、暗い廊下に人工的な明かりが灯る。 「敵の成り行きがどうであれ、人に害なすものは殲滅します」 懐中電灯の持ち主、『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)はいつも通りの控えめな表情で、光の先を見つめる。 「そ、そうですけど……。う、廊下の先が見えないよ……」 その後ろから『他者像幻視』世阿弥 鏢(BNE003019)は、その場のホラー系の怖さに影響され腰低く歩く。 持っている光源がランプとばかりに、更にホラーの雰囲気に自ら陥ってるのを呪っている最中だ。 (むむ、肝試ししようと思ったけど女の子ばかりか……。仕方ないからお仕事に集中しなきゃ) 周りを見回しても年下の少年の姿が無いことから、ひとつ野望が消えた『茨の魔術師』リアナ・アズライトだったが、その分彼女の戦闘に期待したいところだ。 そんなこんなで、ここは正体不明の何かが出るという、噂の学校の四階へと続く階段前。 四という文字は死と連想する人もいるが、それは今回とは関係無いと予め断っておこう。 フォーチュナの導きによれば、四階付近に無数の手が出るということだが、未だ敵影は見えず。 「さて、ここからは二手に分かれましょう」 小鳥遊・茉莉(BNE002647)がそう仲間に呼びかけると共に、予め決めておいた班で行動を始める。 こちらは校舎向かって左側班。 「電灯のスイッチはこれかなー?」 『素兎』天月・光(BNE000490)が階段横にあった四階廊下の電灯のスイッチをいれると同時に明るくなり、各々の光源が必要なくなる。 「まさか、入学前に依頼で来る事になるなんて……」 『呪殺系魔法少女』招代 桜(BNE002992)が、頭上の電灯を見ながらそう呟いた。 とりあえず必要の無くなった光源をAFへと仕舞いながら辺りを見る四人。 敵の数が多ければ多いほど、その姿は視覚的に捕らえやすい。 四階への階段を上り終え、ふと長い廊下を見ると――。 それはまあ、いることいること。うじゃうじゃと動く手の大群。 エリューションは元々夜に活発化するものだが、その通りに隠れるつもりもなく居る。 「敵発見。黒い手は未だ確認していないけれど、四階は手で大変なことになってるわ」 レイチェルがすかさず、もう一方の班へと連絡をする。 「さてさて、お掃除開始ってとこですかね」 リアナがグリモアを開いた。 少し時間は戻って、右側班。 四階への怪談を上っている最中に、突然点いた電灯に少し驚きつつ、仲間の仕業だと分かりAFへと光源を仕舞う。 「まるで学校の怪談だな、今回の一件は」 『捻くれ巫女』土森 美峰(BNE002404)が率直な印象を語る。 「確かに。学校ではよくあることなのでしょうか?」 それに返答した山川 夏海(BNE002852)。 美峰が事前にこの学校について何か大きな事件があったのか調べたが、先日の中学生の落下事故以外に引っ掛かるものは無かった。 今回の敵はE・フォース、人の念が革醒したものだ。 学校という人が集まる場所には勿論、大量の感情が絡み合い、交差し合う。それはプラスの感情もあれば、マイナスの感情のものもある。 何か面白いことが起きればいいのに。 何か事故があったら面白い。 何か変なものが存在すれば素敵。 そんな感情が今回のE・フォースの出現の源泉だと考えるのがもっともだろう。 所謂、この世で一番恐いものは人だ。という説も少しは理解ができそうだ。 そして、四階。 同時に反対側の班にいるレイチェルからの連絡を聞いた。 「ああ、大丈夫よ。敵は私達にも見えているわ」 桜がそうレイチェルに返し、連絡を切る。 廊下いっぱいに蠢く白い物体。 目的の敵はそれらでは無いが、リベリスタは武器を持つ。 ●お掃除開始! 「見敵抹殺皆殺し! 魔法少女招代桜、全ての敵を殲滅するわ!!」 己の武器である楽器を左手で持ち、右手の人差し指を敵へと向ける桜。 十歳の少女、やるな。可愛いじゃないか。先輩達の戦闘に立ち、決めポーズをする。 手はリベリスタ達に気づき、戦闘体勢。一個一個の手がリベリスタを襲う。 光が飛び出し、残影剣で白い手をなぎ払っていくが、目的はそれじゃない。 白い手に攻撃しながら、辺りを見回し、『黒』を探す。 その最中でさえ、白い手が光の身体を殴る。 白い手は数の暴力だ。その多さで攻撃が止まらない。 叩いたり殴ったりで、個としては痛くは無いが、その数がリベリスタの行く手を阻む。 「邪魔です!」 レイチェルは向かって来た白い手を自身の手で払い、叫ぶと共に、白き純たる光が視界内の全ての白い手を射抜いた。 それまで飛んでいた手だが、神の光にやられて、力なく手を広げて地に落ちる。 「先輩どいて! そいつら殺せない!」 レイチェルが後ろに下がり、最後に桜が落ちた手達を焼き払う。 火達磨となり、燃え上がる手達。 沈黙し、動かなくなる手も居れば、火達磨になりながらも再び宙へ浮かぶ手もいる。 「早く、黒い手を探し出した方がいいですね」 集中し、次の一手へと備えたリアナが呟いた。 白い手の攻撃は絶え間なく続く。 その頃、反対側でも攻撃が始まっていた。 茉莉が光の陣を組み上げ、炎を放ち、白い手を燃やす。 燃えていない手に夏海はひたすら、フィンガーバレットを叩き込んだ。その身に受ける白い手の攻撃に構わず、黒い手を探しながら。 「さ。凍って割れちゃって下さいねー」 先ほどの恐さはもう打ち払った?は両手を広げ、魔氷の雨を降らせ、白い手を止める。 その間に美峰が守護結界を展開。 それのおかげで、体力は減りにくいものの、こちらはどうも数の処理は向こうの班より大変らしい。 白い手の攻撃が終わらない。 殴られ、叩かれ、塵も積もれば山となろう。 ――残り合わせて四十一。 ふと、レイチェルが女子高生が転落したらしい窓を見た。 その瞬間、十体の手が増えるのをその目で確認。ならば、近くにいるはずだと目を凝らすと―― 「黒い手、発見です。廊下の窓の下です!」 咄嗟にAFでもう一方の班と、仲間に伝える。 確かに見えるのは、真っ黒に染まった手だけの滑稽な存在。 どんな感情が集まればそれになるかは分からないが、それこそが今回のターゲットである。 自身の存在をアピールするかの様に、リベリスタへ手を振る黒い手。余裕綽々か。 そして、人差し指をリベリスタ達に向ける。まるで攻撃の指示をしている様だ。 それに忠実に従い、リベリスタへ攻撃を仕掛ける白い手達。 光が咄嗟に飛び出した。廊下を蹴り、窓枠を足場に、壁を蹴る。 白い手を避け、辿り着く先は黒い手。 「悪いけどこれ以上、生徒たちを引き込むわけにはいかないよ!」 一本でも人参ソードを目にも止まらぬ早さで振り、黒い手にふたつの傷をつける。 その後、光の背後で再びレイチェルの神気閃光が煌びやかに光った。 だが、それは殺さずの光であるために、白い手の数は減らない。 手の攻撃は途切れることを知らない。 リベリスタの身体を殴り殴り叩き叩き。疲労は蓄積されていくばかり。 「一気にいくよっ」 合流した夏海がいつの間にか黒い手の背後を取る。 黒い手へ一閃――だが、寸前のところで黒い手が巧みに避けた。 桜が楽器を奏で、魔法陣から炎を召喚。 黒い手と戦う仲間には当たらないようにしつつ、神気閃光で弱った白い手を燃やし尽くしていく。 残った手達には、リアナの雷が追撃をし、最後に美峰が氷柱の雨を降らす。 だが、先程より数が減った白い手の中心に見える黒い手は未だ健在。 宙に浮き、少しだけその黒い身体が発光。そしてまた、十体が増えた。 ふと、黒い手が夏海を指さす。そしてそれに従うように白い手が数体、夏海の身体を掴んだ。 「な、なんですかー!」 両手、両足、更には腰や服までがっちりと掴まれ、そして引きずれらて行く。 夏海も引きずられまいと身体を揺するが、手は動じない。 その先には窓。そしてここは四階。落ちればどうなるかは、考えずとも分かることだ。 不運にも転落した中学生はこうして尊い命を失ったか。夏海も覚悟を決めた。 「きーっ! 仲間はやらせないわよーーーっ!」 窓まで残り数メートルのところで稲妻が夏海を引っ張る白い手を弾いた。 稲妻の主はリアナだ。咄嗟に仲間を救う、素晴らしい判断である。 夏海とリアナは持ち場に戻り、状況は立て直し。 再び増える手と、その中心で情緒不安定に遊ぶ黒い手。 「倒しても倒しても沸いてくる……なんて素敵なの!!」 桜が喜んだ。 まだ、敵もリベリスタも余裕はあるのだ。 ●増えては減って 夏海が再び黒い手の背後を取り、黒い手をフィンガーバレットで一閃。 かすった程度だが、それでも体力を削ったとこに変わりはない。 それに続いたのは鏢だった。 「生み出すなら手じゃなくて胴体とか足とか、別のあるでしょー!」 身体の部位だけというのは怖くはないだろうか、というツッコミをいれるべきだろうか。 今にも泣きそうな、瞳が潤んだ愛らしい姿……かは仮面で分からないが、泣きべそをかきながら集中に集中を重ねた凍結へ誘う雨を降らせる。 それは黒い手をも巻き込んで、白い手を凍てつかせた。 大分鈍くなった手だが、攻撃だけは止めない。 相手が女の子だろうと容赦無しに殴りかかっては、当たり、避けられの繰り返し。 そして、ひとつの白い手がリアナの腹部にピンポイントで命中する。 胃液を吐き出しそうになり、思わずよろけたリアナだが、すぐに体勢を立て直す。 光が黒い手へと剣を振ったが、すかさず白い手が邪魔して黒い手には当たらなかった。 更にレイチェルがピンポイントで黒い手を狙うが、かすった程度で終わる。 攻撃を阻まれ、回避され、なかなかに面倒である。 「黒い手、なかなかやりますね……だけど、これなら!」 桜が集中から展開した四色の魔方陣を周囲に広げる。 そこから放たれた光は黒い手を見事に命中。 びっくりしたのだろう。黒い手が地面に落ちては麻痺で痙攣を繰り返す。 言葉や表情があれば、感情が分かるのだが、どうも手だけだとよく分からない。 リアナが再びチェインライトニングを放つ。 雷に巻き込まれて、地に落ちた白い手が消えていく。 残りの数は着々と少なくなってきており、残りは黒い手を含めてあと六。 「燃えちゃいなさい!!」 そこへ茉莉が更に追い打ちをかけて数を減らす。 燃え上がる手は、灰となり消えて、残るはあと、黒い手のみまでやってきた。 「あと、もう一息です!」 最後に美峰がリアナの傷を札で癒した。 また十秒経って、十体増えた。 順調に数が減っているため、こちらの体力の削れ具合いも段々と少なくなってきている。 確かに敵の攻撃を受けているが、耐え切れる。 「チャンス!」 隙を見逃さなかったリアナがチェインライトニングを発動。 まだ生まれたばかりの白い手の十体を巻き込み、攻撃。 雷に撃たれたと思いきや、すぐにレイチェルの強力な神気閃光が貫いた。 神の光の影響をもろに受けた手の攻撃は、見切られリベリスタ達は軽く寄けることができる。 勝機が見えた。 「白い手、全て燃やし尽くします!」 最後に、茉莉がフレアバーストを詠唱。 唸りでた炎に巻き込まれた白い手達は、灰となり消えていく。 ――残すは黒い手、のみ。数は脅威の、形勢逆転。 己の武器を握り直し、未だ麻痺の癒えぬ手の本体へ、リベリスタは集中攻撃をかける――。 ●帰るまでが遠足という言葉がある 黒い手の消失と同時に白い手も消えていった。 「ちょっと派手にやらかしましたね」 レイチェルに言われて、辺りを見回すリベリスタ。 リベリスタが暴れた痕跡は学校に似つかわしくなく。辺りは焦げていたり、凍っていたり。 まあ、きっとアークがなんとかしてくれる……そう思った矢先。 「お掃除すっるよー!」 光が学校の掃除用具をどこからともなく持ってきた。 それを夏海が受け取る。 「……早く帰って、寝たい」 リベリスタ達、もう一仕事がんばって! E・フォース討伐で疲れているだろうが、身体に鞭をいれてせっせとお掃除。 来た時よりも美しく!とはいかなかったが、証拠隠滅程度にはなった。 「さてさて、淀んだ空気は皆纏めて出て行きなさいな」 リアナが窓を開け、空気を入れ替える。 その最中、美峰が窓の外を覗き、事故死した学生を思って手を合わせた。その姿は巫女真柄の姿。 それを見た茉莉と桜も、その後ろで手を合わせた。 事故と断定されたその事件だったが、事件の真相はリベリスタがきちんと知っている。 「はあ……。入社したまでは良かったんですけど、前途多難ですねコレ……」 掃除用具を片付けた鏢が依頼の感想を述べた。 「あ、そうだ! ちょっと待っててね!」 掃除も終わり帰るその時、光が忙しく教室内へと消えていった。 数十秒後、何事も無かったように戻ってきて、帰路へ着く。 ――次の日、四階の教室の黒板に『手と手を取り合えれば友達!』と書かれていたのを生徒が見たとか。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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