●猛者現るアル 「ゴルァアアアんだてめぇブチ殺害するアルァーコラァ!!」 そこに猛者が居た。 猛者はガンを飛ばしていた。 それは正面、巨大な虎のE・ビーストへ。 「喧嘩売ってんのアルァー!? アルル゛ァアア!!?」 怒声を放つ度、猛者の筋肉に血管が走り、筋肉が隆起してゆく。 「クンフーの妙技……網膜に焼き付けさらせアルァーーーーーッ!!!」 刹那、業炎を纏った拳が虎を跡形も無く吹っ飛ばした。 ●ニーハオバトル 「……覇界闘士。 覇界闘士は格闘武器の扱いに特化した武道家です。 攻防命中回避全てにそつがなく、同時に高い継戦能力を備えます。 達人ともなればその動きを捉えるのは容易ではありません。神域の技量は敵を苦も無く屠るのです」 書類に書かれた文字を口にして――『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)が事務椅子をくるんと回し、リベリスタ達へと向き直った。 「ニーハオ皆々様、イヴ様かと思いましたか? 思いましたか? ンン? 思ったでしょ? 私はメタルフレームでフォーチュナのティバストロフですぞ。宜しくお願い致します。 まぁそんなこんなでちゃちゃっと本題に入りますぞ。耳かっぽじってお聴き下さい」 言いながら彼がリベリスタ達に見せた書類には『ノーフェイス:覇界闘士モドキ』という文字とその画像、更にその説明が記載されていた。 「御覧の通り、覇界闘士に酷似した能力を持つノーフェイスが現れましたぞ。その名も『HN』……”覇”界闘士モドキ”ノ”ーフェイスの略ですな。」 資料を卓上に、機械の腕を伸ばしたメルクリィがモニターを慣れた手つきで操作する。映し出されたのは虎の毛皮の被り物を頭にすっぽりかぶった筋骨隆々の猛者――何だか胡散臭い中華風胴着を身に着けているが、そこから覗く体躯は本物だ。そしてそれこそがこのノーフェイスの武器なのだろう。 「皆々様の中にも覇界闘士の方がいらっしゃる筈ですから良く分かるかと思いますが、『HN』は攻守命中回避全般にバランスがグレートなファイターですぞ。 そうそう、それに『HN』には状態異常系が効きませんぞ。なんでもクンフーパワーだとか……四千年的1000万パワー? 合計40000000000クンフー? まぁおっかないって事ですな」 つまり小細工抜きでどつきあう、という感じになるのだろう。リベリスタ達が表情を引き締める。それを見渡したメルクリィが薄笑みと共に説明を続けた。 「『HN』の攻撃方法は覇界闘士のそれとほぼ一緒です。自己回復技はありますが自己強化術は持っておらず、その代わりに強力~な独自技を持っている様ですぞ。 極限に高めた闘気を光線として両掌から放つ攻撃で、必殺を伴う場合があります。お気を付け下さいね。 しかし! 『HN』はこの技を使った後、しばらくスキルが使えなくなりますぞ。この時間を上手くチャンスに繋げて下さいね」 言い終わると、一応渡しておきますぞと新たな書類を卓上に置いた。覇界闘士のスキル説明が記載されている――後でしっかり読むとしよう、必要があれば仲間の覇界闘士に色々訊いてみるのも良いかもしれない。リベリスタ達は顔をあげてフォーチュナへ意識を向けた。 「次に場所についての説明です、しっかり聴いて下さいね」 リベリスタ達の顔が自分の方を向いた所で、メルクリィが説明を再開した。モニターには青々とした竹林が映し出されている。竹の所為で少し視界が悪いし、飛行するには竹が邪魔になりそうだ……しかし竹を使って三次元的に戦う事も出来そうだ。 「今回の戦場となる場所はこの竹林ですぞ。――う~ん、竹以外……何も無いですな。それにしても青い。 時間帯は夕方です。明るいので光源については問題ないでしょうな。人里から大分離れてますし、多分誰も通りかからないと思いますぞ。 ――説明は以上です。それでは皆々様」 メルクリィのクマが酷い機械眼球がリベリスタ達に向けられる。そして一間の後に、ニコヤカな声がブリーフィングルームに響いた。 「頑張って下さいね。くれぐれもお気を付けて! 私はいつも皆々様を応援しとりますぞ。」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月20日(火)01:58 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●开战! 青々と茂る竹林に差し込むのは夕紅の鮮やかな光。 葉々を通り抜けた疎らな光、閑雅な色どり。 落ちて朽ちた葉を踏み締めて『がさつな復讐者』早瀬 莉那(BNE000598)は鋭い聴覚を研ぎ澄ませつつ辺りを見渡した。 「HN……か。ああいう馬鹿の相手してると数年前まで路地裏でやってた喧嘩を思い出すぜ」 脳裏に過ぎるのは血と暴力に満ちたあの場所。集中状態のまま浅く息を吐く。 「敵はひたむきに戦うタイプ……相手にとって不足なし、だわ。 場所も敵もすっきりしてて、気兼ねなく戦えそうね」 ライフル型火炎放射器『AZF-1フラムドラッヘ』を構えた『拍動する炎』アリア・ローゼンタール(BNE000670)が不敵に笑う。その傍で『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)は飛び難い戦場に眉根を寄せつつ慎重に進む。だが彼女が憂いの表情を浮かべる理由はもう一つあった。 ――ノーフェイスとの戦いは、いつも胸の痛むもの。 (倒さねばならぬ存在とはいえ、その人となりを忘れぬよう……できる限り心に刻みつけていきたいわ) 「正々堂々、か……そういうのも悪くねえなあ? こんな奴が8人来てくれりゃあ、一対一で出来たんだろうが……」 チッ、クソったれ。『不退転火薬庫』宮部乃宮 火車(BNE001845)は舌打ちを打つ。 (尤も、オレが強けりゃ一人で戦れたんだろうけどよ! 大体モドキって本来紛いモンだろが。何で本家より性能たけーんだよ。情けないオレに腹が立つぜ) 手甲『鬼爆』同士を打ち合わせ、火車はその赤い瞳に闘志を燃やす。 「ようは、喧嘩だろ喧嘩」 竹に凭れ『BlackBlackFist』付喪 モノマ(BNE001658)は咥えた煙草の先を揺らし、意気揚々に無骨な黒手甲『咆哮搏撃』の拳を握り締める。クンフーの妙技とやら、見せて貰おうか。 その傍ら、かははっと好戦的に笑うのは『雷帝』アッシュ・ザ・ライトニング(BNE001789)。 「良いねえ良いねえ。面白え喧嘩が出来そうじゃねえか。力と力の真正面からのぶつけ合いってこったろ? 良いぜェ、俺様の速さと手前ェの技。どっちが上か試そうじゃねェか!」 各々が自己強化も済ませ、準備は万端。風が吹き抜ける――青い葉をざわざわと、どこか不穏に鳴らして行く。 「 !」 莉那が彼方を素早く見遣った。リベリスタ達も目を向ける。 (わ、わぁ、なんだか騒々しい胡散臭いのがきたのです) でもこっちだって(気合とか気迫な意味で)負けてない!ニニギアはそう意気込み、『鋼鉄の信念』シャルローネ・アクリアノーツ・メイフィールド(BNE00271らせた。 「暑苦しい。ただただ暑苦しい敵だな。……そんな暑苦しさも嫌いではないが」 真っ赤に燃える炎は自分の柄じゃない。 ――静かに青く燃える焔となろう。 来る敵を、今かと見澄ます。 「来やがったかァアルァ~リベリスタ共ォ」 かくして。 青の彼方。虎革の奥から眼光をぎらつかせ。 HNは大地を踏み締め姿を現した。 「喧しいです五月蝿いです。ていうかそのアルァ口調は一体何ですか……」 全く。『鉄腕メイド』三島・五月(BNE002662)は息を吐き身構える。 「まぁ胡散臭い謎クンフーノーフェイスですが強いことには変わりないはず。 私の成長の糧になってもらいます、貴方も」 「フン、随分と小喧しいな男の娘アルね」 五月を鼻で笑い、武人は己がペースで歩み続ける。そんなHNへと一歩前、アッシュは愛ナイフ『疾風』『迅雷』を構える。 「よォ、ンなコソコソしてねェで正々堂々かかって来いよ。無頼のおっさんはもうちっと貫禄あったぜェ?」 「!」 無頼の、という言葉にHNが足を止めた。歯を剥き唸る様に吐き捨てる。 「あの野郎はセコいアル。ソドミラの仇とかなんとか言っといて、ホントは、アイツ…… ――いや、いいアル。俺は貴様らをブチ殺害するだけアルァ!」 「上等だ。……オレはコレしか使わねえ」 火車が拳を突き出し宣誓した。HNも口角を吊り上げ、応える様に豪拳を構える。 「てめぇに喧嘩売る為に待ってたんだよ。さっさとやりあおうぜぇぇぇ!」 威風を纏ったモノマがHNへガンを飛ばしつつ猛進する。 「面白ェアルァアアゴラァア! 死ぬで来いアルァ!」 HNも飛び出し、リベリスタ達も踏み出し――死合、開始。 ●激战! 挨拶代わり。 間合いを詰めたモノマが繰り出すのはスキルでも何でもない、しかし強烈な頭突き! 「グッ、」 HNの状態が仰け反る――その反動で頭突き返し! 鈍い音。スパークする視界。揺れる脳味噌。覚束ない足元。垂れる血液。 だが、良い。それで良い、それが良い! 「ハハハッ――突き抜けろおぉぉぉ!」 喧嘩。これは、喧嘩。 勝った方が正義、打ちのめした方が勝ち! モノマが掌打を叩き込み、破壊的な気を送り込む。 「逃げも隠れもしねェ! さあ派手に喧嘩をおっぱじめようじゃねェか!」 踏み止まったHNへアッシュが一気に接近する。疾風迅雷、叩き込むのは澱みなき無双剣戟。莉那も加わり、見事な連携で幻影剣を閃かせる。 しかし武人は不敵に笑むのみ。 「オルァアアルァ!!」 三人の猛撃を躱した瞬間に鋭い蹴撃。それは真空刃となり、モノマ、アッシュ、莉那の身体を深く切り裂いた。吹き上がる血潮が竹に、HNの虎革に飛び散る。 「リカバーは任せて!」 すぐさまアリアがブレイクフィアーを放ち仲間の流血を止め、ニニギアが清らかに詠唱を行う。 「全力で治すわ、安心して思い切り戦ってっ」 必死で癒し、守る。 強力な攻撃を怯まず受け止める仲間達を尊敬すると共に、支えたいと思う――ニニギアの思いに揺らぎはない。 「手前のクンフー見せてみろぉー!」 最中、思い切り踏み込んだ火車の鉄拳が業火に輝く。 「言われなくってもなァアアルァ!」 応えるHNも拳に炎。 業炎撃。互いの焔拳がぶつかる。歯を剥く。更に業炎撃、業炎撃、業炎撃! 炎を散らして心を燃やし、互いの意地を見せ付け合う。 一歩も退かない。退けば負け。 「しゃらくせぇえ!」 「ゴルァアアアア!」 赤が交差する。 互いを強烈に殴り合う。 よろめいたHNへ更に業炎撃を仕掛けるのは五月。しかし直後の魔氷拳で凍りついてしまい――豪拳が迫る。 「――正面からぶつかるのみだ」 受け止めた。割って入ったシャルローネの凛然たる青い眼差しがHNを射抜く。 回避は苦手だ。ならば受け止めるのみ。傷は仲間が癒してくれる。 鍛え上げた肉体と頼りになる味方。どうして耐えられない道理があろうか? 「はぁッ!」 研ぎ澄まされた炎の烈拳。それは二つ。アリアのブレイクフィアーによって立ち直った五月が加わったのだ。 更にアリアは『AZF-1フラムドラッヘ』から炎を発射し、竹へと飛んで回避したHNをアッシュ、莉那が同じく竹を足場に追う。 巨躯の割に素早い。が、これはどうだ。五月が斬風脚を放ち、HNが足場にしようとしていた竹を斬り倒す。 「!」 「貰ったァア!」 刃が煌めく。アッシュのソニックエッジ、莉那の幻影剣がHNを切り裂く! 「それが、どうしたァアル!」 肌を裂かれるままに憤怒の表情を浮かべたHNが二人の体を引っ掴んだ。しまった、二人の目が見開かれ――落下、ぐしゃり、重力、巨体が二人の体を圧し潰す。 「げはっ……」 「うぐ、ッ」 全身が軋み、痛み、悲鳴を上げる。 「突き抜けろぉおお!」 立ち上がったHNへ掌打を構えたモノマが突進する。シャルローネも加わるが、二人を擦り抜けた蹴撃による真空刃が彼らを、その背後の竹諸共切り裂いた。 フーッ、と噛み合わせた歯列からHNが息を漏らす。その視線の先には仲間を回復している真っ最中のニニギアとアリア―― 「おい! 余所見してんじゃねえぞ!? オレに隙だらけの愚図ぅ 殴らせるつもりかボケぇ!」 轟――HNを容赦なくぶっ飛ばす、火車の業炎拳。竹を薙ぎ倒して巨体の背が地面に付く。 「グッ、 ……!」 HNの視界、その一杯。 掌打を構えたメイド少年。 「……沈め!」 衝撃。仰向け状態のHNの胴体に突き刺さる、強烈な土砕掌。 「ぐふハッ――」 HNの身体がくの字に折れる。軋んだ体から血反吐を吐く。 そして、笑う。 「……ッハ、ハハハハハハハハハ!」 五月の足を掴み、上へ放り投げる。笑いながら。中空の五月、竹を足場にそれを―― 「! てめぇッ」 意図に気付いた火車が火炎を拳に駆けだすも、HNは情けを掛けなかった。 業炎撃、下へ――斬り裂かれ鋭く尖った竹へ、五月の身体を叩き下ろす。 腹を貫かれる鈍くて柔い感触。 「……っ!」 己の腹を突き破った竹を、真っ赤に染まったそれを。 信じられない。 目を見開いたまま、五月はごぼりと血を吐き出し――血の海に力尽きた。 「貴様ッ!」 飛び出したシャルローネが火車と共に火焔の豪拳を叩き込む。他の前衛面々も取り囲むように飛び掛かり、猛攻撃を繰り出した。 少しずつ、だが確実にダメージを与えている。 こちらもHNの一撃の度に大きく体力を持っていかれる。 「頑張ってっ!」 そのたびにニニギアが、アリアが癒していくが……誰も彼もが、血みどろ。 「かっははっ! 良いねェ良いねェ、楽しいぜ! もっともっとだ。まだまだ遅ェ! まだまだ足りねェ!」 「なまぬりぃんだよっ! もっとあんだろ!? 見せてみろよ!」 血みどろ血だらけ。 それでも踏み込む。一歩も引かない! アッシュの剣戟が不可視のスピードで閃き、モノマの業炎撃が赤く唸る。 傷口から赤を奔らせ――それでもHNは揺らぐ事無く掌打を構えた。 「オラァアアアアルァアア!」 裂帛、衝撃。砕、破。 前衛陣の視界が急転する。 気が付けば激痛と共に竹へ頽れていて……何が起こった?吹っ飛ばされた! 「チッ」 モノマは『デュアルサイドアンカー』を竹に射出し巻き付け跳んだ事で辛うじて回避したが、舌打ちをするなりアンカーを切り離し勢い良く飛び降りる。 HNはアリアの目の前――放たれた火炎放射を正面突破し、魔氷を纏った拳を振り上げる。 「――真っ直ぐ過ぎね」 アリアはその一撃を軽やかなステップで回避した。『AZF-1フラムドラッヘ』を思い切り振り上げる。 「お返しッ!!」 カウンター、強烈なヘビースマッシュ。その間にニニギアは天使の歌を奏で、吹き飛ばされたリベリスタ達はHNへ向かう。 HNはそれらを一瞥するなり――跳び下がる。構える。 「! 下がれッ――」 莉那が気付いた瞬間。 HNが掌から放った凄まじい閃光に リベリスタ達の視界は 真っ白に 染まり切った。 ――気付けば誰もが倒れている。 助かったニニギアは息を飲む。傍のアリアも力尽きており、見渡せばあちらこちらに。 しかしニニギア以外に立っている者はまだ、居た。 「っ……早瀬てめぇ!」 血だらけ、アッシュを庇った莉那が力尽きる。アッシュはすぐさま彼女を支えた。 見るも無残な傷――莉那は目を閉ざしたまま。 だったが。 「ふん、お前はチームの奴だし……別に、他意とか、ないからなっ、……!」 フェイトによって莉那が目を開ける。無愛想に吐き捨てるなり、アッシュから顔を背けて凛然と立ち上がった。 「武道家が手前の体を武器にしねえとか……無様だわなぁ? ……全く、情けねえ話しだ。この人数居てこのザマか。 情けねえ……情けねえ限りだ、ったくよぉ……!」 「まだだ。まだ燃え尽きるには早すぎる……ッ!!」 運命消費。火車は咥内の血を吐き捨て立ち上がり、シャルローネも鋼鉄の信念を瞳に構える。 最後の最後まで。 諦めた奴の、負け! 「いくぜぇ! おらぁっ! ぶちぬけぇぇぇぇ!!」 フェイトによって立ち上がる力を得たモノマが業炎を拳に飛び掛かった。HNも拳を突き出すがそれを力押しで撥ね退け、一撃を叩き込む。 逃がさない。ニニギアが天使の歌を奏でる最中、HNの真っ正面に立ち塞がったシャルローネの魔落の鉄槌が一切の容赦も無く振り下ろされる。 次いで火車もHNの蹴撃を防ぐなり業炎撃を繰り出し、莉那が幻影剣を煌めかせ、アッシュが超速突撃する。 「遅ェぜ、俺様の前に立って良いのは未来の俺様だけだ! ……この喧嘩ァ! 俺様の、勝ちだァ――ッ!!」 貫くは最速。奔るは一条。速く鋭く雷鳴の如く。 剣閃は不可視、その数は無限無双。 「ぐ、っくふハハハハハハ! 面白ェアルァアアア!!」 満身創痍でHNは笑い、その拳に業炎を蘇らせる。 その炎は何処までも赤く、激しく――まるで生命を燃やしているかの様な。 いや、きっと多分、この武人は。 「あぁ――面白ぇよな、面白ぇよ」 一歩。 迎え撃つのは火車、その燃える拳。 一歩、 ――豪拳が重なる。 ●寂静 砕いた。 届いたのは火車の拳。 灼熱の一撃にHNが燃え上がった。 真っ赤。焔。 せめて、これの最期は。 『覇界闘士』が燃やしてやる。 ……跡形も無く。 「――手前の剛直さ、面白かったぜ」 頻りに垂れ滴る血を拭う事無く。火車は炎の中の武人に告げる。 「約束アルァ」 炎の中。HNは彼等に声をかける。笑いながら。 「また いつか 喧嘩 してくれアルァ」 笑いながら。 拳を伸ばす。 今更言葉など不要。火車は突き出す拳を返事とした。 拳が合わさる。 HNは笑った――満足そうに。 そのまま、笑ったまま、頽れて、 ――燃え尽きた。 静寂。 吹き抜ける風だけがさっきと変わらない。 灰を彼方に運んで、竹の葉を鳴らして。 気付けば辺りが薄暗い。日が沈み、夜がやって来る。 「そんじゃお前等、お疲れさん」 一言、何事も無かったかのように火車はさっさと踵を返してしまった。はーヤレヤレ、なんて呟きながら肩を回して何処へやら。 それを見送り、ニニギアはHNが散った場所にしゃがみ込むと静かに祈りを捧げる。 この人里離れた静かな竹林で、あの武人はどんな気持ちで過ごしていたのだろうか。 寂しかったのか、強さを高めて充実していたのか。 ――真相を知る者は、もういないけれど。 せめて思う。 (どうか、安らかに。) その姿を見守り、アークに完了報告を済ませたモノマは少しだけ残念な気持ちであった。 (あの虎の毛皮の被り物がちょっと気になってたんだよな……) できればモフモフしたかった。 「手前ェは強かったよ、来世でまた喧嘩しようぜ」 ふー……長い溜息を吐き、アッシュは葉々の隙間から垣間見える薄暗がりの空を見上げた。 「HN自体の性格と見た目も含めてそれほど嫌いって訳じゃないが、ノーフェイスとして覚醒したのが運の尽きだったな。 フェイトを得てリベリスタになれてたら、アタシのチームに誘ってやってもよかったかもしれないが……」 莉那も同じく空を見上げて呟く。あの武人は運命に愛されなかった、たったそれだけが、結果。 「悪くない相手だった」 シャルローネは深く、そしてゆっくり息を吸い、吐いた。 きっと1対1ならば勝利は出来なかっただろう。 風が吹く。 血潮も炎も掻き消して、夜を連れてくる。 寂寞。静寂。 そこにはもう、誰も居ない。何も無い。何も。 やがて竹林は暗くなり、黒く染まり――暗転、閉幕。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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