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行け! クラウンレンジャー!

●観客のいないステージで
「はははは、レッド……貴様の命運もようやく尽きたようだな」
「くっ!」
 複数のライトが照らす中、赤いスーツの『レッド』が膝を屈して倒れこむ。
 ダメだ、力が沸いてこない――!
「立て!」
「レッドお願い、立って!」
 ――ブルーにピンク。悪い、俺はここまでらしい……。
 仲間達は、そこにあるらしい見えない壁を突き破ろうと必死だ。怪物は満足そうに彼らを一瞥し、最後にレッドを見下ろして言い放った。
「では、この遊園地のお菓子は全て頂いていこう!」
「だめ! 皆の笑顔が失われるばかりか、貴方、晩御飯を食べられなくなってしまうわ!」
「独り占めはいけないと教わらなかったのか? 第一、そんな手では歯磨きも満足に出来ないだろう!」
 ピンクとブルーが怪物を諌めた。何故か諌めた。
「うるさい! ちなみに食後はコーヒーだ! もちろんブラックでな……ククク……」
「そんなことをしたら眠れなくなっちまう! お前、正気か!?」
 レッドが真に迫る口調で呼びかけるが、怪物は見向きもしない。
 大変だ! このままでは、皆のお菓子がなくなってしまう――!

●舞台裏
「――という、夢だったらよかったのだけど」
 ブリーフィングルームの椅子に腰掛け、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は大仰そうに肩を落とした。
 依頼の現場は町外れの遊園地。穏やかながら娯楽の少ないこの地域で、近隣住人には唯一咲くの花のように愛されてきた場所だ。
「そこでは不定期に、オリジナルのヒーローショー『クラウンレンジャー』をやっていたそうよ。ここ最近は、色々な不都合が重なってずっと開催出来なかったみたいだけど」
 イヴは一枚のポスターを皆に広げて見せる。そこには、翌週にショーを催す旨が書かれていた。
「久しぶりのショー。スタッフ達はより気合を入れて連日のリハーサルに励んでいる。でも、それに使われるスーツが……エリューションに」
 ポスターにはレッド、ブルー、ピンクのスーツを着てポーズを決めている戦士3名と、いかにも悪そうな禍々しいデザインの怪獣が威嚇するように両腕を広げて写っていた。
「このスーツ達もショーへ向けて張り切ってるみたい。スタッフ達には今のところ危害も加えず大人しいままで気付かれていないけど、夜になるとスーツ達だけで勝手にヒーローショーを始める。……そこに割って入って、倒して欲しい」
 スーツ達は怪獣も含め、練習中に妨害や挑発をした者には確実に敵意を向けてくる――そこまで伝えてから、イヴは視線を落とした。
「古くてチープな雰囲気の遊園地よ。ショーのシナリオは危機感も薄くて滑稽なもの。でも」
 この依頼を完遂すること。それはスーツ達が本番を迎えられないまま、戦いで傷つき使い物にならなくなってしまうことを意味していた。
「園内はろくに警備もされていない。忍び込んで戦うことも容易に叶うでしょう。代わりのスーツや着ぐるみは本部が用意するから、戦いが終わったらこっそり入れ替えてきて」
 一通りの情報を伝えた後、イヴはやや間を置いて思い出したように口を開いた。依頼の成功には直接の関係はないけれど、と前置きつきだ。
「……ヒーローみたいに技名を叫んだり、それっぽい演出をしたり。そんな風に戦うのも良いかもしれない」
 彼らにとっては、これが最後のショーなのだから。





■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:チドリ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年04月23日(土)23:37
 成功条件は全てのエリューションの撃破。
 ステージは他の様々なイベントにも利用出来るよう広く作られています。

 以下、エリューション・ゴーレムとなったスーツ達が演じているキャラの設定です。彼らはノリノリで演じているため、役になりきって動くでしょう。彼らは練習の妨害や挑発に対し、演技の延長のように戦いに応じます。

●レッド
 口調の荒い熱血漢。お調子者で少しお馬鹿な体力派。
 武器はゴツくて大振りの剣ひとつ。
 ブルーの苦言に耳を痛めながら、密かにピンクに想いを寄せているようです。
 必殺技『獄炎剣フレイムバースト』:刃に炎を纏わせた一撃。かなり強力です。

●ブルー
 少し嫌味な感じのクールイケメン。頻繁にレッドを諌めます。
 無数の投げナイフを全身に隠し持ち、冷静さを生かして戦います。
 しかし決め手にやや欠け、いつもレッドにイイところを持っていかれています。
 必殺技『霧雨演舞』:1人に一度に大量のナイフを浴びせかけ、切り刻みます。

●ピンク
 紅一点。うら若くか弱い乙女を自称しますが真相やいかに。
 魔法の弓を駆使してハートフルに仲間をサポート。
 ブルーにデレてレッドにツンツンですが、内心では頼りにしているようです。
 必殺技『ハートオブリフレッシュ』:近くの1人の傷を癒します。

●(怪獣)カロリーオーバー
 大好物であるお菓子を全て奪い、子供達を不幸に突き落とさんとする怪獣です。
 毎日夜更かし、夜でもお菓子をお腹一杯、歯磨きしない(指が太くて不器用で上手く磨けない)、部屋を掃除しない。まさに悪の権化です。
 必殺技『アンチヘルシーライフ』:不摂生のストレスからその場で大暴れ。近くにいる全員に攻撃します。

 殺傷性がない技でも「必殺技」と言うのはお約束です。


参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
覇界闘士
ヘルマン・バルシュミーデ(BNE000166)
クロスイージス
白石 明奈(BNE000717)
デュランダル
歪崎 行方(BNE001422)
覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)
覇界闘士
龍音寺・陽子(BNE001870)
ナイトクリーク
クリス・ハーシェル(BNE001882)
デュランダル
降魔 刃紅郎(BNE002093)

●演目の前に
 闇の中を少女が走る。
 眼前の光に縋るように――何かから逃げるように。
 物陰には、謎の影が潜んでいた。
「往くぞ……彼奴らのラストショー、最高のスプリング・エンターテインメントに昇華させてやる!」
 影の一人が怪しげに笑い、別の影が懐から何かを取り出す。
「この角度で良いか。よし、始めるぞ」
 足音と息を切らす音が、いやに大きく響いていた。

●予定外の遭遇
「おのれ、邪魔をするな!」
「そうはいかねぇ。子供達の笑顔を守るんだ!」
 照明が当たるステージで三色のスーツと怪獣の着ぐるみが睨み合う。
 予定ならば、少々の苦戦の後に観客の声と仲間の力で逆転劇を描くのだろうが――。

「助けて、クラウンレンジャー!」
 暗闇を抜け『司会のおねえさん』白石 明奈(BNE000717)がステージに躍り出た。大きく肩を上下させ濃い疲労を表す。
「敵幹部が攻めてきたの! ……わっ!」
「ボクは斬少女チョッパーガール。助けを求めても無駄なのDEATH!」
 次いで現れた『斬少女チョッパーガール』歪崎 行方(BNE001422)が明奈の腕を引っ掴み、怪獣の近くへ引き込む。
 黒い装飾を纏い、隈の厚い目を細め笑う――まさに、悪役。
 さらにもう一人の少女が、闇をするりと解き姿を晒した。
「ククク……ごきげんよう。私は敵組織の幹部『改造博士ドクターシャドウ』」
 名乗ったのは『影使い』クリス・ハーシェル(BNE001882)。羽織る白衣がばさりと舞った。
「久しぶりだなぁ、クラウンレンジャー」
 客席中央から現れたのは『爆炎鬼・ボンバーヒアソビ』宮部乃宮 火車(BNE001845)だ。不敵に笑い、瞬時に装備を纏う。笑みと共に胸中をも秘める仮面が顔を覆った。
「決着をつけに来てやったぜぇ! このヒアソビ様がなぁ!!」
 明奈が「そんな、爆炎鬼・ボンバーヒアソビまで!」と震えると、戦士達は戸惑うよう見つめ合い――頭上から響く新たな声に顔を上げる。
「おまえ達! そこまでだ!」
 ギターソングを伴う細い影。首にはマフラーがなびく。
 支柱から「ハッ!」とキレの良い声を響かせ『太陽の娘ドラゴンハウリング』龍音寺・陽子(BNE001870)が降り立った。
「『太陽の娘ドラゴンハウリング』参上!」
 戦士達と怪獣は登場シーンをきちんと見守っていた。一呼吸置き、レッドが明奈に声をかける。
「今助けるぜ! ところであんたは?」
「司会のおねえさんよ!」
 白石明奈――否、司会のおねえさんはきっぱりと答えた。

 同刻。
 上から戦場を見下ろす四つの目があった。
「ふふン……これは見物ですねぇイ」
「正義とは難儀なものよ。くくく……っう」
 含んだ笑いが胃のもたれに掻き消されていく――。

●新たな英雄、銀河の王
 チョッパーガールがおねえさんを前に突き出した。彼女が盾役のように身構えているのは気のせいだ。
「やれ、カロリーオーバー!」
「加勢とは有難い! くらえ、『アンチヘルシーライフ』!」
 演出に確りと乗り、命を受けた怪獣は戦士達の元へ飛び込んだ。駄々をこねる子供の如く四肢をでたらめに振り回し、身を打った者達が苦痛に呻く。太陽の娘も攻撃を受けたが、漂う微風が傷を塞いだ。
(この風は……)
 照明の外の闇にちらりと赤い髪が見えた。彼女は礼の代わりに無言で頷き、鋭い爪を備えた腕を振る。
 腕に、ごう、と激しい炎が宿る。爪と炎が怪獣を食らい、太陽の名に相応しく赤が派手に舞い上がる。
 苦悶の声を上げる怪獣の横を、レッドがおねえさんへと駆けた。その前をヒアソビが塞ぐ。
「余所見すんな―― 『ボンバラス・オーグ』!」
 ヒアソビの手から太陽の娘と同じく炎が湧き立ち、燃える拳を身体ごと叩き込む。レッドもその意気に応えてか両腕を構え拳を防いだ。
「させないわ!」
 鋭い光が空を切り、ヒアソビの脇腹に突き刺さる。痛みに揺れる視界に映るのは弓を構えたピンク。
 戦士達の確かな手応えに、ヒアソビは仮面の下で笑っていた。
 同じ頃、ブルーもおねえさんを救うべく駆けていた。しかし阻む者がいたことも同じ。
「そこをどけ! ドクターシャドウ!」
 ブルーの焦燥など何処吹く風。影の博士は眠そうに目を擦り、深夜にも関わらず板チョコを頬張っていた。
 ゴミ? 勿論、ポイ捨てだ。
「なんてことを……誰が片付けると思っている!?」
「ふふふ」
 博士は愉快そうに笑い、欠伸を一つ漏らす。足元から影色の僕が浮かび上がる。
「紹介しよう。私の改造した『影魔人ブラックゴースト』だ」
 主を援護する神秘の影。その意志の元、主に寄り添い離れない。
 ブルーが活路を求めナイフを放つ。狙いは正確だったが、元より回避力に優れる博士が身を翻す。ナイフは浅く肌を裂き、落ちた。
「『あのお方』の手を煩わせる必要も無い。貴様らはここで私達が葬ってやろう」
 博士の身から気の糸が飛び、ブルーに絡みつく。
 レッドにはヒアソビ、ブルーにはドクターシャドウ。常に仲間二人を攻められ続ける現状、ピンクはその傷を癒すことで手一杯だ。与えた傷も度々癒え、倒れる気配はまだ薄い。チョッパーガールにはおねえさんが盾のように立ち……いや、立たされ手が出せない。
「手強いわね……『ハートオブリフレッシュ』!」
 ピンクが手でハートを象り、溢れた光でブルーを癒す。
 広く駆け回る太陽の娘に怪獣は翻弄されていた。その動きが鈍り始めた頃、苛立つチョッパーガールがオーラを纏いピンクへ武器を向ける。
「余計な真似はやめるDEATH! 『サウザンドチョッパー』!」
 ピンクに深い傷が刻まれ、レッドが焦りを見せる。彼自身の力量はリーダー相応に高く、ヒアソビをじりじりと押していた。
(伊達じゃねぇ、ってか)
 ヒアソビの胸の奥に、敵対心と似て非なる何かが宿り始める。
 上方ではまだ見ぬ二人が戦いを見守っていた。金髪の男がにやりと笑み、口内炎の痛みに頬をさする。
 身を縛られがちなブルーの消耗は早く、察した幹部の命令が飛んだ。
「ブルーに止めを刺すDEATH!」
 指示に呼応し、怪獣が唸る。
「大変! ブルーがピンチよ!」
 おねえさんが叫んだ――その時。

 暗がりから矢が飛んだ。矢は弧すら描かぬ速度で怪獣を貫き、慟哭が響く中に新たな戦士が踏み込む。
「俺様が手を貸そう、クラウンレンジャー!」
 集まる照明と視線。彼はびくりと一歩退き、ぐっと堪えて息を飲んだ。
 進め!
 負けるな!
 そう、俺様は……!
「『救護戦隊☆タスケルンジャー』参上!」
 影から癒しの力で援護していた赤い髪の少年。
『救護戦隊☆タスケルンジャー』霧島 俊介(BNE000082)――もとい、新たなヒーローの「レッド」。

 怪獣一体、幹部が三人(+おねえさん)。
 戦士三人、太陽の娘、そして新たなレッド。
 何人かは疲弊を見せていたが、未だ誰も倒せぬ怪獣にチョッパーガールの苛立ちは頂点に達した。
「無能な怪獣などいらないDEATH!」
 彼女は獲物に力を籠め、無慈悲に怪獣に振り下ろした。既に満身創痍にあった怪獣の身が大きく裂け、沈む。
 すると唐突に、高い笑い声が響き渡った。
 どこか粘着質なこの笑い方は――。
「無様だなァチョッパーガールぅ! そのようなひんっ……っっじゃくな怪人で、あぁのお方を満足させられるとでも思っているのかァア!」
 ずん、と床が揺れる。
 下からせり上がるよう、長身の逞しい男が姿を現した。
 浅黒い肌に銀の髪、野性味溢れる風貌――王の風格を備えた『暴食銀河覇王キングライガー百世』降魔 刃紅郎(BNE002093)が厚い胸板を張り、片手で胃を押さえる。
 笑い声の主は王に添う執事風の男『超悪執事シタッパー』ヘルマン・バルシュミーデ(BNE000166)。皆を見下すよう片眉を上げ笑うと、口内炎がまた痛んだ。
「ぬぅん!」
 咆哮、ひとつ。
 声にまで重厚な圧力を含ませ、王の重き剣が問答無用にブルーを薙ぐ。
 執事が「さっすが、『覇王爆砕斬』の威力は素晴らしい!」と手を叩く。ブルーが口惜しさを剥き出しに刃を放ち、王の腕をざくりと削るが――王は腕を一瞥、首を捻る。現状が児戯に過ぎぬと告げるように。
「わが名は『暴食銀河覇王キングライガー百世』!」
 王たるもの、名乗りは咆哮の如く堂々とあるべし――血管が切れそうな程に。

●友の定義
「超悪執事シタッパーに、暴食銀河覇王キングライガー百世まで来るなんて!」
 恐怖を纏った親切な解説が響き渡る。
「でもヒーローは絶対に負けないわ! そうよね?」
「当然だろ!」
「一気に畳み掛けるぜ!」
 おねえさんの声援に新レッドが同意を示し杖を構えると、先輩の方のレッドも煽られヒアソビに炎の剣を突き出した。
「これで止めだ!」
「ちっ!」
 炎に生きた幹部が、燃える。
 がくりと一度膝を着き――仮面の下で、彼は笑った。
「ああっ、ついにヒアソビが!」
 おねえさんが放った神々しい光が、乱入した役者達に降り注ぐ。
「お前らと戦るのは……悪かぁ……無かった……ぜ……」
 ヒアソビはレッドに背を向けぬまま、明るいステージの外へ倒れ込み――光に消えゆく炎と共に、闇へ溶けた。
 ヒアソビが倒れたその時、影の博士はブルーへと迫っていた。
「弱いなブルー! 貴様らを倒したら、よいこ達をさらって怪人に改造してやろう!」
「させるものか!」
 ブルーが糸を解き、大量に出現させたナイフ全てを博士の身に叩き込む。
「『霧雨演舞』――これで!」
 対して、博士は待っていたかのように、笑った。
「ふふっ、そうら! 『霧雨演舞』!!」
「何っ!」
 白衣が翻り、生まれた死角から刃が飛ぶ。
「ブルー!」
 ピンクの悲壮な声に、太陽の娘も彼を見やる。
 博士の刃はブルーが投げる大量のナイフの間を縫い、ブルーを貫いていた。青い身体が沈み、ピンクが失意に口を覆う。
「ぐっ!?」
 勝利を収めたはずの博士が苦しげに呻いた。苦痛に耐えかね、刃を床に落とす。
「先ほどの攻撃か。やるな、ブルー……」
 ブルーの散り際の一撃が確実に博士の命を削っていた――力ない足取りでその激戦ぶりを示す。影を操る博士もまた、闇へと消えていった。
「太陽の娘よ。斯様な所で遭うとはな!」
 娘へ王が肉薄する。無骨な拳をその身に当てると、彼女は自ら派手に跳んだ。新たなレッドが一応心配そうに駆け寄る。
「キングライガー様ァア! 一撃で戦士を吹き飛ばすとは流石でございますゥ!」
 王が彼女を攻撃したのだと強調し、仰々しく王を称える執事。
「ふむン……よぉし、ここは私の華麗なるパゥワァーで! 憎きクゥラウンレンジャー共を一捻りにしてくれよぉウ!!」
 彼は悪意と攻撃性に満ちた笑みを客席へ向け、ゆらりと戦士へ向き直った。
 標的は――ピンク。
「いきますよォ……『超滅執事拳(ぐれーとじぇのさいどばとらーこぶし)』ィイ!」
 片眼鏡を光らせ空を蹴る。拳とは言ったが、蹴った。蹴撃は大気を裂き、鎌の如くピンクを貫く。
「レッド! 皆を、守っ……」
 終始支援に励んだ彼女には充分な傷と疲労が蓄積されていた。癒せぬ深い傷を受け、ピンクが膝を折る。
「くくく……我ら銀河帝国の精鋭に勝てると思うてか!」
 帝国側には未だ、王に執事、幹部が一人残る。対する三人の胸に苦い想いが滲む。
「負けねぇ……」
 レッドの声は震えていた。

「……ぇよ」
 闇の中から僅かに声がした。一同が周囲を見渡す。
 ――情けねぇ声してんじゃねぇよ。
 再び立ち上がるのだ。拳で地を殴ってでも。
「お前らの力は、そんなもんじゃ……ねえだろが!」
 火の粉の中、一人の男が立ち上がる。顔を覆う仮面が溶けるように消えた。
 戦士達を鼓舞したのは――宿敵だった、ヒアソビだった。

●帝国の最期
 気に入らない。
 執事が示す感情は、実に明瞭だ。
「……王に逆らうおつもりですかァ」
 機械の指をこきりと鳴らし、床を蹴り上げる。斬撃はヒアソビを――否。
「貴方の処分は、後程じっくりとォオ!」
 蹴りがレッドを一閃。直撃は免れたが、傷は浅くない。彼が執事を睨み炎の剣を振るうと、熱さ、そして癒しの光と微風にその顔が歪んだ。
「やめろォオ私の口内炎を治すなァァ!」
 彼らには健康は害そのもの。喘ぐ執事におねえさんと新たなレッドが胸を張る。
「健康になるのが弱点ね、シタッパー!」
「食後は歯を磨けよ!」
 癒しの力は救護戦隊の名に違わず強力だった。新たな仲間の頼もしさにレッドが希望を見出し拳を握った時。
 背に、王が迫る。
「あぶなーい!」
 レッドの身が真横に飛んだ。床を転がりつつ、一撃の主へ訴える。
「何しやがる!」
「迂闊な! 狙われていたぞ!」
「えっ」
 全力で打撃を加えたヒアソビが真顔で言い張ると、レッドも王の姿に目を向けた。その間へ少女が一人飛び出す。
「お前達の好きにはさせない!」
 太陽の娘が跳躍し宙を舞う。爪が照明を跳ね返し閃いた。
 レッドが剣で床を突き立ち上がる。スーツは傷だらけだが、切っ先を真っ直ぐ王に向け――王もまた、輝きを纏い巨大な剣を突き出した。
「『暴食連撃剣』!」
「『獄炎剣フレイムバースト』!」
 厚い金属音が響き渡る。
 剣が貫いていたのは――。
「レッド!」
「……へっ」
 赤いスーツが倒れ込む。新レッドが駆け寄るが、傷は癒せぬ程深い。
 身を焦がしたままの王が迫り来る。痩身の少年が立ち阻むと、王は「ほう」と愉しげに剣を構えた。
「お……俺様は新ヒーローなんだ!」
 一際大きく声を上げ、新レッドが自身を奮い立たせる。彼の言葉は神聖な力を呼び起こし、恵みの音を響かせた。
「くらえ! 聖なる奇跡! スーパーエンジェルソォング!!」
 清い力が辺りに降り注ぎ、王達が目を剥いた。全てを癒すその歌は、彼らには、劇薬。
「ぐああっ……! 胃もたれが治っていく……や、やめろっ! 我の血圧を下げるなぁああっ!」
「あぁっ! 寝不足が解消して力が抜けるDEATH!」
「なんという癒しパワー……これが人間の、いや新たなるヒーローの力……か……」
 次々と倒れる帝国の面々を、床に伏したままのレッドが見ていた。
 ――これで、守れたんだ。
 王が沈むと同時に、スーツに宿った意志も消えていった。傷の深さによるものか、それとも。
 新たなヒーローを担う少年が抱き起こした時には、それはもう動かなくなっていた。

●閉幕
 スーツを取り替えた後、一行はステージで小さな画面を囲んでいた。
「ここが見せ場な! 新番組としていけるんじゃねぇ?」
「ふふ、我の照明もなかなか良い動きをしていたようだ。このまま打ち上げといこうではないか」
 興奮を見せる火車のデジカメを刃紅郎が覗き込む。
 新たなヒーロー――俊介は、傷だらけのスーツを手に言葉を紡いだ。
「意志は継ぐ。安心してくれ」
 ヒーローとリベリスタ。平和と笑顔を願うのはどちらも同じ。
「さあ、みんな一緒に!」
 明奈が数回手を叩き、客席へ腕を差し出した。皆の顔を確認するよう一度ぐるりと顔を見渡す。
 ――最後の一言を、皆と共に。

「今までありがとう、クラウンレンジャー!」

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 楽しく相談して頂けるといいなあ、と思って出したOPでした。……なんだかすごいことになっていました。
 文字数がいつも以上に強敵でしたが、やや演出面を強めに作成しました。
 言動や演出等、ここまで徹底したものになったのは参加者の方々のお気持ちあってのものです。他、詳細はリプレイ内に籠めましたので、どうぞお受け取り下さい。
 個人的には二丁拳銃の赤い刑事や、アメコミ風文字入り忍者が好きでした。

 ご参加ありがとうございます。お疲れ様でした。