●どっしーんどっしーん みしみしばきばき、何でもかんでも薙ぎ倒すぞ。 ぐしゃぐしゃぼきぼき、何でもかんでも踏み潰すぞ。 ぶちぶちどっかん、何でもかんでも叩き潰すぞ。 目指すは愛しき仲間の元へ。 足音鳴らして地響き立てて。 巨人が来るぞ、みんな逃げろ! ●巨人警報発令! 「さーーて、グーテンモルゲンですぞ皆々様」 事務椅子をくるんと回して『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)がリベリスタ達へと向いた。 組んでいた脚を解いて床に下ろす彼の背後モニターには――巨人。スライムでできた巨大な人型のモノが。4mはあるだろうか……動きは鈍いようだが、一歩の毎に木を薙ぎ倒し、巨大な足跡を作っている。正に化物と呼ぶのに相応しい。 「おったまげましたか? ですがこれ、私が実際に視たノンフィクションなんですよね。 この巨人の正体は、スライムの様な不定形のものが幾つもの欠片に分裂してこの世界に現れたアザーバイド、その欠片の一つ……その名も『やわらかた巨人』」 ベキベキベキ、ズッシーンとメルクリィの背後でアザーバイドが巨木を薙ぎ倒した。それにしてもデカイ、かなりパワーがありそうだ。 お手製資料を卓上に置いたメルクリィが薄く歯を剥いて微笑み、リベリスタの顔を見渡す。 「この『欠片』の現在の目標は、基本的に『同類と寄り集まってより大きな姿に戻る事』です。 『欠片』が多く集まるとそれだけ強力化しちゃうんで、今の内にちゃちゃっ撲滅するのが一番です。 そう言う訳で、今回はこの『やわらかた巨人』を皆々様に討伐して頂きますぞ」 表情こそ薄笑みのままだが、機械仕掛けのフォーチュナの声には真剣なモノが宿っていた。 気を引き締めたリベリスタ達が頷く。メルクリィはそれを確認して頷き返すと、早速説明を始めた。 「ではでは『やわらかた巨人』について説明してゆきますぞ、耳かっぽじってお聴き下さい。 御覧の通り『やわらかた巨人』はデカくてヘビーでパワフル&タフネスです。特に防御面がダントツに強固ですぞ、生半可な攻撃じゃ歯が立たないかもしれませんな――しかしその分かなり動きはすっとろいですし、高度な知力も備えてません。 それを証拠に攻撃方法は単純そのものです。腕を滅茶苦茶に振り回す攻撃にはノックBが、足で踏み潰す攻撃にはショックが伴いますぞ。正にゴリ押しですな。単純ですが強力なので、絶対に油断なさらずに。 中でも一番気を付けたいのが、正面へそのままドッシーンと倒れ込む攻撃ですな。……説明せんでも分かりますよね、物理が苦手でも分かりますよね皆々様……『デカくて重たいモノの下敷きになったらどうなるか』って事ぐらい。 ――これには必殺が伴う場合があります。くれぐれもペッチャンコにならんとって下さいね、皆々様」 コツ、コツ、メルクリィが事務椅子の肘かけを指先で叩く音が響く。ペッチャンコ。想像したくもない。表情に緊張を走らせるリベリスタ達をゆっくり見遣って――「お聴き下さい」、機械の人差し指を立てる。 「確かに『やわらかた巨人』は強力です。真っ正面から無策にワンマンプレイ状態で突っ込むと、そりゃーもー苦戦するでしょうな。 しかし、皆々様全員が全員を信頼し、策を練って、全員が己の力を最大限に活かす事が出来れば、きっときっと大丈夫。安心なさって下さい、皆々様は一人ではないのです。 勿論、私だって皆々様の仲間。戦いには参加できませんが、情報面では全力サポート致しますぞ!」 メルクリィがニッコリ微笑んだ。彼の言う通り、自分達は8人も居る。それだけ可能性は広がっているのだ。 リベリスタ達は互いに顔を見合わせると強く頷いた。勝利せねばならない、明日の平和の為にも。 「――それじゃ場所についての説明を致しますぞ」 リベリスタ達の視線が自分に戻ったところでメルクリィが説明を再開する。 彼が操作したモニターには小広い草原が映し出されていた――山間の原っぱだ。生い茂った草は大体自分達の膝丈強ぐらいだろうか。多分足を取られたりはしないだろう。 「今回の戦場はこの山間の草原ですぞ。一般人はおそらくやって来ないでしょう、ご安心を。 時間帯は夜明け間際となるでしょうな。薄暗いですが、戦闘には問題無いでしょう。広さも結構あるから思いっ切り戦えますぞ。存分に暴れてきて下さい。 ……これで説明は終わりです。詳しい諸々は底の資料に纏めておきました、一応御眼通しを願います。 以上で宜しいでしょうか?」 フォーチュナの低い声がブリーフィングルームに響いた。リベリスタ達が頷いたのをしっかり確認すると、メルクリィは彼らへと笑いかける。 「ではでは皆様――お気を付けて! 皆様の勝利を心から祈っておりますぞ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月20日(火)22:35 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●只今警戒中! 黎明――赤、橙、紫、青、藍、とりどりの色合いが空に広がり、様々な色に染まった細い雲が縷々と横たわっている。 早朝のヒヤリとした空気。穏やかな風。時折遠くで鳥の声。朝露に濡れた薄暗くて静かな時間。 しかし、そこには緊張の空気が流れていた。 「迷惑なものを、召喚してくれたよね。 他の欠片と合流する前に……ここでしっかり、倒さないと……」 巨大なカッター型大剣『風切刃』を軽々と振るって草を刈りつつ『スターチスの鉤爪』蘭・羽音(BNE001477)は呟いた。足場確保の為にも出来るだけ邪魔な草は減らしておきたい。鋭い風を巻き起こし、羽音は黙々と大剣を振るう。 「奇妙な巨人ですが、やはりアザーバイドです。 その存在自体が既にこの世界の敵であり、私たちが倒すべき存在です」 やわらかた巨人の進行方向にて待機している『鋼鉄の戦巫女』村上 真琴(BNE002654)は森の彼方を見据える。 他の『欠片』との合流を阻止するべく、確実に葬るために戦わなくてはならない。 「壊させない。私達が住んでる世界を 壊させない。私達が生きる未来を 壊させない。私達の大切な人達を!!」 手にした刃を握り締め、『雪風と共に舞う花』ルア・ホワイト(BNE001372)は敢然と勇み立つ。 護る為ならばどんな巨大な敵にだって立ち向かってみせる。 全然怖くない、と言えば嘘になるが――ルアは周囲を見渡した。 (私1人じゃ無理でも、皆が居れば、絶対大丈夫なんだから!!) 見渡すそこには仲間達。大丈夫、きっと大丈夫! 「スライムで出来た巨人とは……面妖じゃのぅ。 タフネスらしいが……なーに、足元から切り刻んで達磨落としの刑にしてやるわい!」 五つ又バール『猫の爪みたいなもの』を肩に遣りつつ『エア肉食系』レイライン・エレアニック(BNE002137)は気焔万丈と口角を吊り上げる。 その傍、地に突いた邪斧『アンタレス』に緩く凭れかかる『黄道大火の幼き伴星』小崎・岬(BNE002119)は「スライムな巨人かぁ」と呟いた。 岬にとって共同作戦なんて初めてだが……やる事はいつもと同じ。 「『レベルを上げて物理で殴れば良い』じゃなくて、叩き潰すだけなんだよー」 そうだな、『Dr.Faker』オーウェン・ロザイク(BNE000638)は朝風に金髪を揺らして彼方を見澄ます。 「巨人は往々にして、小人に倒される。……童話の世界によくある話だが、それを再現してやろうではないか」 そう、如何な敵でも徹底的に叩き潰すのみ。『ひよこ饅頭』甲 木鶏(BNE002995)も同意と決意に頷いた。 布陣し待ち構えるそんな仲間達の後方、 『おじさま好きな少女』アリステア・ショーゼット(BNE000313)はちょっと残念そうに小首を傾げた。 「やわらかた巨人……可愛い名前だなー。 そのまま可愛く大人しくしてくれてたらいいのに」 しかし――敵は敵。情けも容赦も掛ける訳にはいかないのだ。 この世界を崩界させない為にも。 最中に吹き抜ける一陣の風――それに乗って、轟音、地響き、木々が薙ぎ倒される音。 来た。 リベリスタ達は各々自己強化術を発動させてゆき、草刈りをしていた羽音もすぐに戻り強化術を自らに施す。 武器を構える。地響きはどんどん大きくなる。木々がざわつき、鳥がけたたましく飛び立ってゆく。 近付いてくる。 薙ぎ倒して、踏み潰して、地面を揺らして。 唸って、壊して、蹴散らして。 めきめきめき、 ずーん。 かくして巨木を踏み潰し、リベリスタ達の正面に現れたのは大きなスライムアザーバイド――やわらかた巨人。 ぐおー。まるで『そこをどけ』と言っているかの様に荒々しく唸って、巨大な腕を振り上げて。 進路の『障害物』を排除すべく――襲いかかって来た! ●巨人襲来! 「うぅん、とっても大きいです」 肩から見渡すとどういう風景なのだろうか……うずうずするも、今は集中時。 手筈通りに散開してゆく。 巨大カッターと邪斧を其々手にした羽音と岬はやわらかた巨人の左右へ、回復担当のアリステアは後方上空へ、他の者は巨人のブロックへ。 ――体中のギアがパチパチと音を立てながら弾けていく感覚。 遅くなる世界。 ハイスピードを発動したルアを追える者はいない。 自分の出来るのは作戦の為の時間稼ぎ。 「やぁッ!!」 花風連閃、澱みなき連続攻撃をやわらかた巨人へ叩き込む。 (堅い……!) 真琴もヘビースマッシュを、木鶏も斬風脚を繰り出すがやわらかた巨人はケロリとしている。その一見モチモチ柔らかそうなスライムボディは相当強固なようだ。 ぐおー、むぉーん、やわらかた巨人に口はないが、荒々しく唸っては巨腕を振り回す。地面を叩き付ける強烈な一撃は凄まじい地響きを鳴らし、そしてルア、真琴、木鶏を遥かへ吹っ飛ばしてしまった。 やわらかた巨人が後方へ回ろうとしている羽音、岬へ振り返る。目はないが、睨まれた――二人はそう直感した。 ここは一旦攻勢に転じるべきか、二人が巨大な得物を緊張の面持ちで構える。踏み潰さんと巨人が足を持ち上げる。 そのまま、やわらかた巨人の動きが止まった。 「やれやれ……じっとして貰わんと、困るのでな」 オーウェンが幾重にも展開させた呪印封縛がやわらかた巨人を厳しく束縛したのだ。その合間にエネミースキャンを行い、作戦の為に巨人の重心やバランス測定を試みる。 やわらかた巨人は低く呻いてスライムボディをプルプルさせるも呪印は巨人を逃がさない。 今の内だ――互いに目配せし合った羽音達が行動を再開する。 「オーウェン!」 「うむ」 レイラインも彼を呼び掛け動き出す。丁度吹っ飛ばされた仲間達もアリステアの天使の歌によって回復し、体勢を立て直す。 「皆で無事に帰ろうねっ!」 アリステアの応援。皆の気持ちは一つ、『何が何でもこの巨人を倒す』――やわらかた巨人が呪縛を振り解いた。しかし臆しはしない、攻撃のついでに踏み出した一歩を躱したルアが撹乱する様にソニックエッジを放ち、振り上げた巨腕を真琴と木鶏が協力して攻撃し妨害する。攻撃を喰らってもアリステアがすぐにブレイクフィアーを、天使の息を放つ。 その間に羽音と岬はやわらかた巨人の後方を陣取る事に成功した。ただし真後ろではなく、やや横にズレた位置、それぞれ左右の足。 「いくよ、岬……」 「おっけーだよー」 風切刃、アンタレスを振りかぶる。 全身のエネルギーをそれらに集中させてゆく。 刃の煌きが増していく。 「……いっせーのー、」 「でっ!!」 轟。 強烈無比なフルスイング、二人のメガクラッシュが巨人の左右の足にタイミング良く決まった! そんじょそこいらのエリューションなら粉砕しているであろう大衝撃にやわらかた巨人の体が大きくぐらつく。 そこにレイラインが真っ正面から突撃する! 「引っ掻きまくってくれようぞ!!」 高速跳躍、目にも止まらぬソードエアリアル。多角的な猛攻撃。後方へ、更に押し遣る。 そしてその反動を使ってレイラインは鮮やかに空中を舞った。 ――その後方には大きく跳躍したオーウェンの姿。 「後は……ッ」 空中、レイラインの足にオーウェンが足を掛ける。 「任せたぞよオーウェン!」 足に乗った彼を飛ばす様に。レイラインが思い切り足を振るう! 「ぶちかましてやるのじゃー!!」 レイラインの、リベリスタ達の視線が後方へ傾くやわらかた巨人へ――そしてオーウェンへ緊張と共に向けられる。 「さて、この衝撃で……倒れたまえ!」 やわらかた巨人の頭部と思しき個所へ両手を翳す。呻く巨人が腕で叩き落そうとしたが――遅い、圧倒的な思考の奔流はやわらかた巨人へ容赦なく迸る! そして―― 地面から吹っ飛ばされてしまいそうな凄まじい地響き。轟音。 巨人を後方へ転倒させる事に成功したのだ! 「まだだよーっ!! 追撃ーっ!! みんな、いくよー!!!」 ルアが声を張り上げて一直線に跳んだ。集中によって研ぎ澄まされた花風の剣戟が舞う。 真琴や木鶏も今こそ好機と攻撃を繰り出す。 起き上がらせない様に我武者羅、一心不乱に。 「ここで、決める……!」 羽音も激しい電気となったオーラを纏った『風切刃』を大きく振り上げた。電撃一閃、渾身の力を以て叩き付ける。反動で肌が焼けようとも痛覚遮断を発動した羽音は怯まない、何度も振り上げ落雷の様な荒ぶる一撃を落とし続ける。 「重装甲やお前さんのような軟体用に開発した特殊兵器だ。存分に味わいたまえ」 オーウェンは妖銃「血山河」の呪われた弾丸をありったけぶち込んでゆき、『アンタレス』の黒い影を引き連れて岬は全エネルギーを集中させてゆく。 「重くて危険って事は逆に考えると立ち上がるのも大変ってことだねー。 接近戦の極意は転かして踏みつけるー、って偉い人が言ってたー」 相変わらずの口調で言いながらも、その一撃は凄まじい。大火、『火星に対抗する者』の意味を持つ邪斧は何もかもを燃やし尽くす地獄釜の如く貪欲に獲物を喰らう。 一方のレイラインはその頭部を幻影剣によって斬り付けまくっていた。 「爪とぎには……向いておらんみたいじゃのぅ!」 『猫の爪みたいなもの』を振る嘘の手は決して休めない。 やわらかた巨人はとんでもなく堅い。 だが、攻撃を止める訳にはいかない。 ただひたすらに――どんなに堅くとも重ねられる攻撃は着実に巨人を追い詰めてゆく。 さながら長い年月をかけて同じ場所に雨水が少しずつ当たる事で削っていく様に。 (でも私たちはそんなに時間をかけることは出来ない……) ブロードソードを振るいつつ真琴は思う。 だが、努力はする。無事に皆と倒す為に! かくしてやわらかた巨人が起き上がる。ゆっくりと、しかし止める事が出来ない。襲いかかった羽音と岬を殴り付けてふっ飛ばし、後方にて怨霊銃を構えていたオーウェンごと巻き込んで地面に強く転がした。 させるか、と飛び掛かるルアとレイラインをそのままに、真琴を踏みつけ立ち上がった――その肩に、木鶏が。 「わぁ、わぁ……!」 肩に飛び乗ってみたらそのままこうなってしまった。 (すっごく高い!) このまま居座れるだろうか?そのモッチリした肩の上、何とかバランスと保ちつつ……ハッ!と閃いた。 「――高い肩 登るは良いが 降りられぬ」【木鶏】 どやっ。 一句詠んだ所で満足。腕を振り上げるやわらかた巨人の側頭部に思い切り業炎拳を叩き込んだ。 ぐぅー、巨人が呻く。少しよろめく。少しずつだが確実にダメージは入っている――あと少しだ、諦める訳にはいかない! 「皆の怪我、治してみせるからねっ!」 アリステアが詠唱する。澄んだ声が戦場に響く。 癒しの願いは清らかなる者へ。 至上の福音を。美しき調べを。 ――聖なる奇跡を! 空から鳴り響く福音。 それは仲間達の傷を癒し、立ち上がる力を与える。 「そう簡単に通すわけにはいかぬぞ? 行きたいのなら、わらわをなぎ倒してみぃ!」 「私は、負けないっ!」 振り回す巨人の腕すら足場にして、高速を誇るレイラインとルアが剣戟を閃かせる。 「通しませんっ……!」 真琴もその足へ剣を振るい、とうとう落下した木鶏も残念そうに巨人を一瞥するなり斬風脚を放つ。巨人が暴れる。 そこへオーウェンが呪印封縛を放った。動きが止まった巨人へ躍り掛かるのは回復しきった岬と羽音。 構えた巨大な得物――『風切刃』には電撃が、『アンタレス』には研ぎ澄まされたオーラが。 「絶対に、通させない……」 「いっくよー!」 息ピッタリに叩き込まれる豪撃。 ぐおー、巨人が唸る。そのスライムボディは傷だらけで――あと少しだ、誰もが思う。 巨腕に吹っ飛ばされても、踏み付けられても、何度でも立ち上がり立ち向かう。 あと少し――だが、同時に焦り。 巨人はかなり進んでいる。このまま進まれ続けたら……。 「……だめだよ」 最中。やわらかた巨人の正面にルアが立ちはだかる。 「貴方はここに居ちゃだめなんだよ。 ここは私達の世界。貴方の世界じゃないの」 最高速度、最大出力。 花風は疾風となる。 「ここは、わたしたちの世界なのよ!!! 負けない! 皆が居るのにこんな所で負けてられない!!!」 駆け抜けるのは澱みなき連続瞬撃。 巨人の身体が大きく揺らいだ――そこへ一斉に飛び掛かる影は、八つ。 直後、朝焼けの空に凄まじい地響きが鳴り響く―― ●希望の朝が来た 「うーん……」 見事打倒した巨人の傍ら、しゃがみ込んだアリステアはそのモチモチボディをつんつんと突っついては眉根を寄せた。 「戦わずに済むのが一番よかったのになぁ……」 ちょっとだけ、心が痛いかも。 「分裂して動き出す、とか……ないよね?」 彼女の傍、羽音も同じくしゃがみ込んで物言わぬ巨人を眺めている。 「……やわらかた巨人って、結局……どっちの、感触なんだろ?」 ふとそんな事を思ったので呟いてみる。近くに居た木鶏もそう言えばとしゃがみ込み、アリステアも興味を示したので皆して手を伸ばし、ペタペタ触ってみる。 モッチリしっとり。うっとり。不思議な感触。 やわらかい……けど、これがとんでもなく堅いのは身を以て知った。 やわらかいのにかたいってどういう事? アザーバイドはなんでもありだ。 結論:やわらかたい。 一方、ルアは心底ほっとして朝焼けの眩い光をぼんやり眺めていた。 「よかったよ。本当によかったの……。 落ち着いたらちょっと涙がでてきちゃった」 みんなお疲れ様、がんばったね。と袖で涙を拭いつつ笑うルアに岬は元気良く頷き、真琴も仲間達に労いの言葉を掛ける。 「即席にしては……上手く決まったのぅ♪」 レイラインはアークへ連絡を済ましたばかりのオーウェンへ笑いかける。 出したのは掌。オーウェンは応える様に薄く笑い――ハイタッチ。 朝日が昇る。 世界が光に満ちてゆく。 空は次第に澄んだ青へ。 誰もが目を覚まし、動き出す。 今日も、新しい一日が始まるのだ。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|