●色々、諸々。 「もう何よ! 母さんも父さんも大嫌いッ」 ――なんて吐き捨てて、家を飛び出してきた。 彼女は反抗期。両親と激しい口論をしたのだ。 「ったく……何よ……」 ブツブツ文句を言いながら、夜の道を行く。辿り着いたのは近所の広い公園。 イライラして仕方ない。すこしブランコにでも座って落ち着こうか――なんて一歩踏み出し、立ち止まる。 「もう嫌だ……もう嫌だわこんな世界フフフフフ……俺は勝ち逃げ……所謂つまりそれは勝ち逃げ、俺は勝ち組ウヒヒヒヒ……」 謎の独り言――それもとびっきりネガティブな。 (……うわっ、あのオッサンまさか……じ、自殺しようとしてる……!?) 彼女の視線の先には、藪の中で木に括り付けたロープを前にニヤニヤしているやつれた男性が一人。そうとう精神が参っているのか、かなりおっかない。 ヘタに話しかけたら「君も一緒に死んでくれ!」と襲いかかられそうだ――そんな恐怖を感じるほど、彼は異様なオーラを纏っている。 (やだ、怖っ……) 止めるべきかもしれない――でも彼は赤の他人だ、それに死を覚悟した人間は何をしでかすか分からない。 アタシは悪くない、アタシは悪くない。自分に言い聞かせ、彼女はそそくさと公園内へと走り出した。 「はぁ……」 そして辿り着いたブランコの前、それでも彼女の気は重い。 (どうしよう、やっぱりあのおじさん……止めに行こう!!) 思い立つや彼女は振り返った。 そのまま、硬直、 ……後ずさる。 「え……やだ、何よコイツ……!」 グルル。彼女の背後、牙を剥くのは、腐り爛れた大型の犬。 かくして巻き起こる悲劇を、遠く離れた位置にある次元の裂け目から除く三つの目がただ傍観していた―― ●たいへん大変 「色々と、大変な事が起こったよ」 集まったリベリスタ達の方へと『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が純白の髪を靡かせて振り返った。 「簡単に言うとね―― 一般人がE・アンデッドに襲われそうになっててその近くにほっといたら自殺してE・アンデッド化しちゃう男の人がいて更にその近くにバグホールがあってほっといたらアザーバイドがやってきちゃうの」 イヴが一息に言った言葉に、リベリスタ達は目を丸くした。何じゃそら。息を吐き切ったイヴがゆっくり息を整えて、リベリスタ達を大きなオッドアイで見渡す。 「見て」 と、モニターを見遣れば今回の戦場である公園の上からの図が映っていた。中々に広い公園だ。地図には印が三つあり、それぞれ『1:E・アンデッドと一般人A』『2:自殺しようとしている一般人B』『3:バグホール』との説明が付いている。 「まずは1の『E・アンデッドと一般人』から。 ここにはE・アンデッドフェーズ1『ゾンビ犬』がいて、一般人『花田・彩香』に襲いかかろうとしている。 貴方達にはこの『ゾンビ犬』の討伐と『花田・彩香』の救出をして貰うよ。 『ゾンビ犬』の攻撃方法はいたってシンプル。飛び掛かって噛みつくだけだし、手こずるような相手じゃないよ。 『花田・彩香』については適切なアフターフォローをしてあげてね」 次にこっち。イヴが『2:自殺しようとしている一般人B』のマークを指差した。 「ここの藪の中で、もう一人の一般人『合田・貴久』が首吊り自殺しようとしてる。彼、会社をリストラされた上に妻に逃げられちゃって自暴自棄になった元サラリーマンなの。 ――問題はね、彼が死んだらE・アンデッドフェーズ1『首つりゾンビ』になっちゃうの。戦い方は、長く伸びた首をしならせて頭突きしてくるぐらいだからこっちも苦戦はしないと思うよ。 でもベストなのは彼の自殺を食い止める事。可能な限り『首つりゾンビ』を発生させないように動いて」 ふぅ、とイヴが一旦息を吐いた。説明しなくちゃならない事がたくさんあって大変そうだ。 「次に『3:バグホール』について。 このバグホールね、そのまま放っておいたらアザーバイド『三つ目さん』が来ちゃうの。すぐに閉じれば問題無いんだけど――もし『三つ目さん』が来てしまったら適切な処理をお願い。 こっちの世界の言葉は通じないから、テレパスとかが必要だね。話し合えば何とかなるわ。 彼女はまだ子供で好戦的じゃないから、こっちから手を出さない限りは何もしてこないよ。でも指からレーザーを出す事が出来るから、もし戦いになったらそれを使ってくると思う。そんなに強くないよ。 これも『三つ目さん』が来る前にバグホールを閉じる事がベスト。時間を無駄にしちゃ駄目だよ」 一息吐き、イヴがモニターを操作した。公園の各所の画像が展開される。 「時間帯は夜。外灯が疎らにあるから視界については問題ないと思う。『花田・彩香』『合田・貴久』以外の一般人はこないと思うよ。 それから――これらの『1』『2』『3』はほぼ同時進行しないといけないよ。一つずつこなしていくのは時間的に無理。それぞれが結構離れた位置にあるしね。チームに分かれてこなすのが得策だと思う。 やる事が多いけど、一つ一つはとっても簡単。しっかり情報を整理して、話し合って、皆で協力すればきっと出来る筈。 それじゃ皆、頑張ってね。応援してる」 やっと説明を終えたイヴは、やれやれと大きく息を吐いた。お疲れ様。 さて、自分達も頑張らねばならない――リベリスタ達は互いに顔を見合わせ、頷いた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月14日(水)21:53 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●1:E・アンデッドと一般人A――22:05 「き、今日ボクは生まれ変わるんだ……!」 ガチガチガチ。歯の根は合わず、へっぴり腰。 犬恐怖症克服の為。『コドモドラゴン』四鏡 ケイ(BNE000068)は自分にそう言い聞かせながらも『現役受験生』幸村・真歩路(BNE002821)の背後にガッツリ隠れている。 「しかしよくこんな一箇所に問題山積したものだわね。何か悪い気でも溜まってるのかしら、この公園」 一方の真歩路は堂々凛々。『ビートキャスター』桜咲・珠緒(BNE002928)も「せやね」と頷く。 「まー、でも世界全体でみるとふつーの事なんかもな」 そう言う珠緒の視線の先には拳を鳴らす『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)の背中。 「おい、そこのあんた! 下手に動くんじゃねぇぞ!」 ゾンビ犬に狙われて後退る花田・彩香へ猛が呼びかけながら飛び出して行く。真歩路も続き、「ひぃ……べ、別に怖くないですし……!」と見栄を張り走り出すケイ――珠緒も続きつつ、 (E・アンデッドとは言え犬一匹に……ぶっちゃけ火力過多なんやなかろ) なんて思うも、初心者の自分は先輩方に任せるのみである。 かくして素早くゾンビ犬と彩香の間に割り込んだ四人。 「間に合ったかな? もう安心なんよー」 珠緒の役目は彩香の護衛。ギターを掻き鳴らして結界を張りつつ彩香に微笑みかける。顔面蒼白の彩香は助けに気が抜けたのか、腰を抜かしかけたので咄嗟に支えた。 「いやぁぁあぁ! やっぱりだめぇぇえ! ひぃ! こっち来ないでぇぇえぇ! い、いぬゥ……や、やっぱりムリィィィ!」 最中、聞こえてきたケイの大絶叫に笑いかけたままの珠緒の顔がちょっと引き攣る。彩香も引き攣る。 ゾンビ犬は真歩路が巧みに遊具の影へ誘導し、戦いはそこで繰り広げられていた。 ケイは皆の後ろで泣き叫び逃惑いながらライアークラウンを飛ばし、 「鬼さんコーチラ、手の鳴る方へ♪」 真歩路は素早く犬の背後を取り、腐った皮膚を容赦なく掻ッ切る。 更に流水の構えから猛の強烈な斬風脚が連携良く決まる。両断された犬が倒れる。 フェーズは1、それに連携の取れたチーム。迅速にケリを付けられた上にこちらの損害は皆無だ。 フゥ、一息吐くと猛はマントで犬の死体を隠し、「来るんじゃなかった……」と顔中涙やらなんやらで酷いまま縋り付いてくるケイの顔を、真歩路は苦笑しながらハンカチで拭ってあげつつ彩香達の元へ向かう。 「怪我とかは……なさそうか? ついてねーな野犬に襲われるなんてさ」 「あの犬なら何とか皆で追い払えたわ。 公園に住み着いてる野良犬のようだから、後で保健所に連絡しなくっちゃね」 「え? でも、あの犬、何か変な……」 「へっ、そうだった? それより、大丈夫? 噛まれてない?」 真歩路の誤魔化しに彩香も気の所為だったのかと思った様だ。暗いし怖かったしその所為だと思いつつ頷く。 「彩香さんも怖かったですよね……?」 まだ震えているケイの言葉に彩香は苦笑した。そこへアクセスファンダムによって他の組に1コール入れた珠緒が、 「さて……もう夜も遅いけど、家帰れるか? 何か帰られん事情あったりする?」 「っ、……」 「――解った、何か悩み事でもあんだろ? 聞いてやるから、ちょっと話せよ。 そうさな、先ずは飲み物でも飲んで落ち着くか」 俯いた彩香に笑いかけ、猛は傍の自動販売機へ向かう。 「あたし達は塾帰り。何か悩んでるなら聞くわよ? 吐き出すだけでも気分転換になるものだし」 真歩路も微笑み、戻って来た猛が彩香にジュースを渡す。 そこからは堰を切った様に。 しかし彩香が吐きだす愚痴を否定する者はいなかった。相槌を打ち、続きを促す。 「親と喧嘩、ねえ……んで、飛び出して来た訳か? 親父さんとお袋さんの懸念も解るっちゃ解るんだがな。 自分の考えが通らなくて、飛び出す様じゃまだまだ子供って事さ。どうせ、飛び出したとこでそこからどうするかなんて考えてもないんだろ?」 彩香が吐き出しきった所で猛がニッと笑う。沈黙が彼女の答え。 「本気でそうしたいと思うんなら、何が何でも親くらい説得してみせろよ。構って貰えるうちが華だぜ、……俺じゃ考えられねえわ」 ケラケラ笑う――本当は、少しだけ羨ましい。 「そうだね……、ありがと! なんか愚痴ったら自分が馬鹿らしくなってきちゃった! あたし――うん、頑張ってみる!」 彩香は立ち直ってくれたようだ。一安心――真歩路が手を差し出す。 「それじゃ帰りましょ! 家の近くまで送るわ」 「せや、メアド教えてーな! 愚痴聞いたり、気晴らしのカラオケとかならいつでも付き合うんよー」 珠緒も笑いかける。彩香は笑顔で頷いた。 ●2:自殺しようとしている一般人B――21:58 「──こんなところで何をしているのですか?」 死のう死のう、呟き台の上でロープに手を掛けた合田・貴久へ声を掛けたのは『不屈』神谷 要(BNE002861)。 「自殺」 返事は簡潔。振り向きもせず彼はそのまま―― 「……生きたいと願っても叶わなかった人も居ます!」 要は思わず声を張り上げた。驚き振り返った貴久へそのまま続ける。 「私の弟はどれだけ足掻いてもダメでした。 だから、自ら死を選ぶ人は許せません。それに、悲しい、です」 彼女の脳裏に助けられなかった弟の顔が過ぎる。 世界から何か一つ無くなるだけで、こんなにも悲しい。 貴久にゆっくり歩み寄りつつ、その手を握る。 「利己的なのは承知しています。でも、言わせて下さい。 ──私が悲しまないで済む様に、生きて下さい」 握った手は離さない。貴久は俯いた。 「私には、君の様に死を悲しんでくれる人はいない」 取り敢えず今すぐ死ぬ気配はないが、それでも彼の心は。 相当に荒んでいた様だ。 先ず流れ出たのはやり場のない怒り、憎しみ。 それから、悲しみ。寂しさ。 絶望、諦め。 要は彼の手を握ったまま、時折擦りながらひたすら聴いた。 最終的に貴久は台に座り、泣き崩れる。 その肩を優しく撫でつつ、要は携帯電話にこっそり合図の1コール。自分がすべき事は行った。 死ぬ気になれば何でもできるってこと、魔法少女が教えてあげるの! 合図を受け取った『夢見がちな』識恵・フォウ・フィオーレ(BNE002653)が藪の中から飛び出した。 「誰かいるんですか!? 助けてください、あっちで女の子が野犬に襲われて……!」 その格好は一般的な女の子。心は魔法少女だけど、魔法少女はメタモルフォーゼで活躍するもの! 靴と遺書と首吊りロープは華麗にスルー。緊急事態だから目に入らないモノとして、識恵は貴久に縋り付く。 「女の子……?」 識恵の言葉に貴久がハッとした。まさか、さっき見かけたあの子……!? 驚いた表情で識恵を見る。彼女は目に涙をいっぱい溜め、震え、あなただけが頼りなんですと全身を以て訴えかける。 この場に居る大人は自分だけ――目が合った要が促す様に強く頷く。 「……分かった、案内してくれ!」 貴久が立ち上がった――それは物理的な意味でもあり、精神的な意味でもある。 靴を履き、あっちと識恵が指差した方へ走り出した、瞬間。 「まじかる当て身なのー!」 どすっ。 ばたっ。 ――沈黙、静寂、時間経過―― 「……はっ!?」 目覚めた貴久は跳ね起き辺りを見渡す。識恵と要の顔。 「野犬はもうどこかに行った様です」 「おにいさん、コケて気絶しちゃってたの」 「そ……そうだったのか」 識恵のマイナスイオンも相俟って貴久の心はすっかり落ち着いた様だ。ちょっと残念さが漂うけど。 「……誰かの為に勇気を出して行動できた。その思いやりの心は、きっと合田さん自身も救ってくれるの」 擦り剥いた貴久の額の傷を手当てしながら識恵が笑顔で言う。 「駆け出した時のおにいさん、格好良かったなの! ――ありがとっ」 とびっきりの笑顔。感謝、励まし。 「……、」 貴久は何も言わなかったが、その顔は苦笑の様なはにかみ笑いの様な、何処か吹っ切れた様な。 ただ確実に分かる事は、もう一安心だという事。 ●3:バグホール――22:11 「悪い事は重なると言うが、間が悪いな」 未然に防げる程度なら防ぐのが仕事。さっさと終わらせるか――『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)はそう思っていたのだが。 「女の子の対応を任されるとは、これだからリベリスタは止められないぜ!」 ひゃっほぅと笑う『欠落』小坂 紫安(BNE002818)の視線の先、三つ目。 バグホールからやや離れた所、アザーバイドはキョトンとしてリベリスタ二人を見上げていた。 ユーヌが紫安に目配せをする。頷いた彼が一歩前へ、三つ目さんと視線を合わせて微笑みかけた。 『こんばんは、お嬢さん。ボクは小坂紫安。さしずめキミの王子様と言ったところかな? ボクはキミの言葉はわからないから一方的に会話しちゃうけど、これからの会話、わかったら右手を上げてね。否定なら左手を上げてね』 受け取ったテレパスに少女は目をぱちくりさせた。そのままそろっと右手を上げる。 『よーし。まずここは異世界。キミの住んでいる世界とは違う世界。経緯はわからないけどキミはバグホールという穴からここへ来てしまった。 ……まあ理解しがたいかもね。それでさ、この世界にはキミみたいなレディーにはまだ早いんだ。 ゾンビ犬とかゾンビおじさんとか、まあ色んな危険がこの世界にはあるんだ。 で、キミが安全に帰れる様にボクがエスコートしに来たってことなのさ。理解したかい? ……って、ちょっと~!?』 三つ目さんは。 ユーヌが用意したおはじきや剣玉、そして彼女自身の柔らかな羽にすっかり興味津々であった。三つの目をキラキラさせている。 「マジでか……」 そもそも子供相手に長話など難しかったのだろうか。何だか空しい気持ちの紫安を余所に、三つ目さんの傍にしゃがみ込んだユーヌに少女がきゃわーとじゃれついてゆく。 「触っても良いが千切ってくれるなよ」 子供の相手は苦手だ。自分では泣かせるのが関の山だろう……が、どうして向けられるあどけない好意を踏み躙る真似が出来ようか。それくらいの常識は弁えている『普通の人』のつもりだ。 少女はユーヌが渡した玩具を下げていたポシェットに浮き浮きと仕舞いこむと、彼女の羽を心地よさそうにモフモフしている。 (いいなぁ……) なんて、見守る紫安の心の中なんぞ露知らず、ユーヌはバグホールへちらと視線を遣ると少女を抱えて羽を広げ、ふわりと宙へ浮かび上がった。 「……さて、空中散歩としゃれ込もうか」 「♪♪」 三つ目さんはすっかりご機嫌の様だ。嬉しそうにはしゃぐので「あまり暴れるなよ、落ちても知らないぞ」とユーヌが苦笑する。 紫安は仕方ないのでそのままその様を眺める事にした。――まぁ、これはこれで、悪くない。寧ろ眼福! そして、たっぷり寄り道してからバグホールの目の前。 終点、着陸。 『10年したらまたおいで、デートしようよ!』 紫安がニコヤカに三つ目さんへ呼び掛けた。バグホールに入って行く最中、三つ目さんは満面笑顔で――左手を上げた。 「ちょぉおおおい何でぇええ!?」 ユーヌも笑う中、三つ目さんは帰って行った。 そして静寂に包まれる頃――異世界への門は、緩やかに閉じる。 ●4:リベリスタ達――23:27 「はぁ……犬、犬ぅ……うぅぅ……」 「おい……もう犬はいねーってば」 勘弁してくれと猛は縋り付きまだ震えているケイに苦笑する。そのまま片手にあった自販機で購入したジュースをぐいと飲み干し、ゴミ箱へ奇麗なシュートを決めた――そこで足音の方を向く。 「みんな、ただいま~」 「やー、上手いこといってホッとしたわぁ」 彩香を送り届けてきた真歩路と珠緒が戻って来たのだ。 「彩香さん、猛さんに『ありがとう』って」 真歩路の伝言に猛は「そーか」と照れ隠しの様にニカッと笑う。 「ありがとう……この恩は忘れないよ、ありがとう」 そこへ男性の声。四人が向いた先には貴久の深い感謝を受ける識恵と要が居た。 「いいんです、いいんです。 ……それでは」 「おにいさん、まったねーなの!」 「うん、……また。元気で」 彼女らに別れを告げ、貴久は去って行った。その足取りは軽く、活力に満ちているのを皆は見逃さなかった。 「おーい皆~!」 ほどなくして紫安とユーヌも戻って来る。 「聞いてくれよ~ユーヌちゃんったらボクを抱えて飛んでくれな――」 「皆うまくいったみたいで何よりだ」 「あぁー」 大体、羽は中二っぽいのが嫌で隠しているのだ――紫安の言葉をぶった切り、ユーヌは集まった皆を見渡してその無事を確認する。 「ま、兎にも角にも一件落着、って奴だな!」 猛の言葉に一同が頷いた。 彼女なら、彼なら、あの少女なら、もう大丈夫だろう。 かくして『悲劇』と定められていた運命は変えられた。 静寂と平穏が満ちたそこを一度振り返り――リベリスタ達は、帰路に就く。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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