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Vice of Crimson


 夕暮れの赤い太陽が、廃ビルを照らす。
 少女が一人、荒れ果てた部屋の中央で仰向けに寝ていた。
 服装はボロボロのセーラー服で、虚ろな目が天井の一点だけを見つめる。
 足首と手首は拘束器具があり、身動きがほとんどとれない。
「さぁて、今日は何をして遊ぼうか?」
 少年が一人、やってきた。
 まるで御伽噺の世界から来たような、赤いシルクハットに赤い燕尾服のロメオ。
 遊びに誘われた少女は何も答えない。いや、答える気力も無いという方が正解だ。
「痛みに喘いでみる? それとも、快楽に溺れてみる?」
 そう言いながら、少年は手に巨大な鎌を持つ。
 それを少女の右肩に容赦も慈悲も無く振り下ろす。
 鮮血に濡れる少女は絶叫した。
「逃げたいのなら逃げてもいいんだよ。でもその時は俺も容赦はしない」
 綺麗な顔で笑う少年は、少女に癒しの微風を送る。
 傷は完全治癒。
「じゃ、次はどこ斬ってみようか?」
 そしてまた少女の体に鎌が切りかかる。

 少年にとってはただのお人形さん遊びなのであった。
 死なせないよう、大事に大事に癒しの風で繕って。
 でも、壊れたらまた新しいのを持ってくるだけ。
 けれど、今回のお人形は特にお気に入りだった。フェイトを持ってるから。
 もし、うっかり致命打をあてても、フェイトが守ってくれている。
 これほどの良物件は無い。

 少女に再び逃れられない痛みの地獄が始まった。
 幾度、幾度、この少年に体を弄ばれては、元通りに戻されたことか。
(嗚呼、どれほど待てば助けが来るのだろう――ううん、来るわけが無いよね)
 涙なんて、枯れ果てた。


「お願い、リベリスタの女の子を助けてあげて……!」
 珍しく焦りの表情を見せる『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、集まったリベリスタに訴えた。
「女の子が、フィクサードに捕まってるの。フィクサードはCrimson Magicianていう、悪名高いフィクサード。あんまり人前には姿を現さないのだけど、気に入った人間を攫っては弄ぶ趣味の持ち主」
 その捕まっている少女を助けるというのが今回の依頼の内容。だがリベリスタには疑問が残る。
「そのフィクサードは倒さなくて良いのか?」
「残念だけど、Crimson Magicianとまともに相手したら、逆に皆の命が危ないの。だから女の子の救出を最優先として行動して」
 リベリスタはそれ以上は聞かなかった。
 そして、イヴからもらった資料に目を通す。
 その横でイヴは――
「貴女の助けは、聞こえたから」
 イヴは小さな両手を絡ませ、祈り手をつくる。
 今もフィクサードによって、自由を失っている彼女のために。
 健気に祈るイヴの願いは、リベリスタに託された。






■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:夕影  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年09月15日(木)21:53
 頑張ります、夕影です
 なんと、逃げゲー
 以下詳細

●達成条件:牧野杏里の救出
 救出し、廃ビルの玄関より外に出たら、少年は諦めます
 あくまで少年は少女を追うので、再び少女を少年の手に渡れば失敗とします

●牧野 杏里(まきの あんり)
・革醒したばかりの14歳のリベリスタ(ジーニアス)
 衰弱しているため、歩くのは困難でしょう
 意識ははっきりしています

●敵情報:Crimson Magician(くりむぞん まじしゃん)
・ヴァンパイアで、外見年齢は10代半ばの少年
・悪名高いフィクサード
 神出鬼没です
・職は、デュランダル
 デュランダルですが、ホーリーメイガスのスキルも使用
 デットオアアライブ
 ダブルアクションLV3
 美学主義
 スピードスター
 面接着
 幻想殺し
 超直感
・女の子が好きです
 特に若ければ若い子がグッド!
 若い子のお願いなら聞いちゃうぞ!
 でも限度はあるよ!!
・おしゃべりと、赤い血に染まるのが好きな趣向です
・意外とフレンドリー

●場所
・廃ビル
 薄暗いです
 3Fまであります
 入ったら仕切りも何も無く、柱と階段があるだけの殺風景です
 階段は正方形であるビルの両端にあり、上に行く階段と下への階段は離れています→階段から階段へ歩くのを5ターンとします
 中は荒れ果ててますが、壁に外への穴があいてるとか、そういうものはありません
 ビルは脆く、強い負荷がかかると倒壊します
 外への窓は開きません。侵入は1Fの玄関扉のみをお使いください
 杏里さんは3F中央に放置されています
 クリムゾンさんは2Fに居ます

●その他
 方法によっては、戦闘無しでも乗り切れます
 皆様のご参加と、熱いプレイングお待ちしております
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
アナスタシア・カシミィル(BNE000102)
ソードミラージュ
早瀬 莉那(BNE000598)
ソードミラージュ
雪白 凍夜(BNE000889)
プロアデプト
★MVP
ヴァルテッラ・ドニ・ヴォルテール(BNE001139)
ホーリーメイガス
ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)
ソードミラージュ
天城・真希菜・イングリッド(BNE002549)
ソードミラージュ
リンシード・フラックス(BNE002684)
クロスイージス
戊 シンゲン(BNE002848)

●神出鬼没
 光が弱く、少し暗い廃ビルの前に八人のリベリスタが到着した。
「随分と厄介なフィクサードみたいね」
 『ジャガーノート』天城・真希菜・イングリッド(BNE002549)が、玄関扉を開けつつそう言った。
 玄関扉を入ってみれば、何もない廃ビル内。
「はふぅ、フィクサードの趣味は総じて悪趣味だよねぃ」
 『蜥蜴の嫁』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)が二階への階段の位置を確認しつつ、言葉を漏らす。
「そうですな。今回の相手も惨い、という一言に尽きる」
「趣味の悪い、人形遊びですね」
 返答する『鉄血』ヴァルテッラ・ドニ・ヴォルテール(BNE001139)と『剣華人形』リンシード・フラックス(BNE002684)。
 趣味も人それぞれと言ってしまえば終わりだが、今回の人を人とも思わぬ趣味には嫌気がさした。
 リベリスタは迷わず二階への階段を上がり終え、周辺を見回す。
 だがおかしい。
 奴が、いないのだ。人影さえ見えない。
 誰もいないのか? そうリベリスタが思いかけたその時。
「リベリスタとは珍客だ」
 頭上から声がした。
 天井へ顔を上げると、光に照らされる不気味な赤い目がふたつ、こちらを見ていた。
「殺されに来たなら他当たってよ。殺す趣味は無いよ。うっかり殺すことはあるけど」
 面接着により足は天井に着き、リベリスタを見下ろす。いわゆる逆さまの状態の少年。
 派手な赤いシルクハットを片手で抑え、無邪気に笑う。
「あんたがCrimson Magicianか」
 『がさつな復讐者』早瀬 莉那(BNE000598)が問う。
「ご明答! で、何か御用?」
 そう言いながらビルの奥へ、天井を歩き出すCrimson Magician(以下クリムゾン)。
 その姿を目で追う『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)は片手を高くあげて返答する。
「ルメ達と『たたいてかぶってじゃんけんぽん』で遊ぶの!」
「は!?」
 とてつもなく、一般的な遊び。
 予想外の用事に心底驚いたクリムゾンは、面接着を無意識に解除してしまい、頭から地面に落ちた。
 立ち上がり砂埃を忙しく払い、顔をあげた目線の先に見えたのは『復讐者』雪白 凍夜(BNE000889)。
 凍夜はクリムゾンに厳しい目線を送り続けた。
 それに対しクリムゾンは笑みを返し、手を振る。その後、ルーメリアに視線を移す。
「残念だけど、俺はもっと面白い遊びを知ってるからそっちを教えてあげようか?」
 提案はばっさり却下。あんまりお気に召さなかった。
 だがリベリスタもそれは想定の範囲内。
「じゃんけんに勝ったときの攻撃側は、武器で攻撃だ。面白そうじゃないか?」
 戊 シンゲン(BNE002848)が特別ルールを説明する。
「それは面白そうだ。でもなんでいきなりそんな事を?」
 流石のクリムゾンも疑問に思った。
 いきなり八人のリベリスタが来たと思えば、遊びに来ただなんて普通無い。
「何か企んでると思ってる? はふふ、まあチョットだけでも付き合ってよぅ、あたし達そんなに強くないってクリムゾン殿なら分かるでしょ?」
「まあ、そうだけど。ただ遊ぶだけっておかしくない?」
「何か気になるコトがあるのなら、出血大サービス! 勝ったら丈夫なリベリスタを数人手に入れられるってどうかな? 初心者なリベリスタよりは長持ちする自信はあるんだけれど」
「全員はいらないから、そっちが負けたらそこのお嬢ちゃんを景品って事で」
 アナスタシアの条件に食いついたクリムゾンは、好みにピンポイントのルーメリアを指さす。
「ふぇえ!」
 驚いたルーメリアだが、ここで嫌だと言えば頭上の階で横たわる少女を救えない。
 渋々、その条件を飲む事にする。
 あくまでこれは杏里を救出するために、クリムゾンの気を外らすひとつの作戦だ。
 本気でゲームをしに来た訳ではないから、負けてルーメリアがクリムゾンの玩具になることは無い。
 クリムゾンを遊びに誘うことは成功したリベリスタ達。
 自身のシルクハットを取り、ポンと叩くと巨大な鎌が出てきた。
 シルクハットはリベリスタでいう、AFのような物なのだろう。
 その時、クリムゾンの目線はリベリスタを見ていなかった。
 その瞬間を見逃さなかったヴァルテッラの直感により、足早に三人ほどその場を後にした。
 残ったリベリスタも各々のAFから武器を取り出す。
「ところで、初心者のリベリスタって階の上に居る子のことかな? 君達五人がその遊びで勝ったら持っていっていいよ」
 バレていた。
 救出しに来ていたのに、それを悟られる言動は迂闊だった。
 幸運なのは、クリムゾンが目を離した隙に三人ほどいなくなった事だ。
 クリムゾンは五人のリベリスタが杏里を助けに来たと勘違いした。
 準備は万端。血生臭い遊びが始まった。

●流血遊戯
「では、まずは私からお相手しましょう」
 最初に前に出たのはリンシードだった。
 お互いの武器を地面に置き、ゲーム開始。
「じゃんけんぽん」
 リンシードの勝ち。
 予めかけておいたハイスピードが役にたったか、自分の武器である剣を拾う手が素早い。
 幻影剣を発動。高速で動く剣の軌跡を描く幻影。
 碧眼の瞳がクリムゾンの胴を捕らえて、それを斬る。
「これちょっと気に入ってたのに」
 防御をしなかったため、ダメージは確かに負ったクリムゾンだが、余裕の言動。
 切れてしまった自分の服を惜しそうに見つめた。
「次はあたしが相手するよぅ!」
 今度はアナスタシアが前に出て、武器を地面に置く。
 少し静寂があった後に勝負に移る。
「じゃんけんぽん」
 アナスタシアの勝利。
 バールのようなものを拾い上げ、上から下へ叩き落とすようにクリムゾンの頭を力いっぱい殴った。
 今回も防御無しで、そのまま攻撃を受けたクリムゾン。
「俺こう見えても歳は結構いってるんだ。こういう遊びは懐かしくて楽しいね!」
 切れた額から血が流れたまま、満面の笑みで語る。
 変形した帽子を後ろへ投げ、華やかな金髪を晒す。
「次はアタシだ」
 アナスタシアと入れ替わり、次に出たのは莉那。
 先程と同じく武器を置き、じゃんけんを行う。
 あいこが何回か続き、最終的に勝ったのはクリムゾン。
 マズイと瞬時に悟った莉那はすぐさま、己の身を守る体勢に入る。
 クリムゾンが鎌を振りかぶったその一瞬、彼の片頬が釣り上がる歪んだ笑みが見えた。
 鎌の切っ先は莉那の身体を襲い、溢れた真っ赤な血が弧を描いた。
 体力がごっそり持っていかれた莉那はその場に倒れる。
 だが、クリムゾンの天使の息が降り注ぎ、傷が癒えていった。
「すぐに終わっても面白くないしな。出血大サービス」
 鎌から滴る彼女の血を愛おしそうに舐め取るクリムゾン。
 快楽と欲望に忠実。完全に遊びを楽しんでいる様子だ。
「次は、我だ」
 莉那の身体をアナスタシアがクリムゾンから遠ざけ、代わりにシンゲンが前に出る。
「あぬしには、負けない」
「勝たないと、君達が損だもんね」
 再度行われた、じゃんけん。勝者はクリムゾン。
「俺の勝ち!」
 鎌を拾いあげ、巧みに振り回す。
 その間に防御の体勢に入るシンゲン。
 今度は上から刃先が振り落とされる。
 その最中、靴のつま先で地面を三回叩く音が聞こえた――。

●三階にて
 先程の階のひとつ上。
 クリムゾンが隙を見せ、ヴァルテッラが凍夜と真希菜に移動を促し、階段を登り終えた。
 部屋の中央にボロボロのセーラー服を来た少女、杏里がぐったりと倒れていた。
 杏里の耳には足音が聞こえ、クリムゾンだと思い恐怖に震える。
 が、何か違う。足音が多い。
「あんたが牧野杏里だな。遅れて悪い、助けに来た」
 かけられた声は、クリムゾンとは全く違う声。
 杏里はふと見上げると、黒いの髪の少年――凍夜がそこに立っていた。
「貴女の声を聞き届けた娘にお願いされて、助けに来たわ」
 杏里の傍らに膝をつく真希菜。優しい声で言い、杏里の長い髪を撫でた。
 凍夜は手首の枷を、ヴァルテッラは足の枷を破壊する。
 そして、真希菜が杏里の身体を起こしてやった。
「あの、あの」
 聞きたい事、言いたい事は沢山あった。
 しかし上手く言葉が出ない。声を抑えた嗚咽だけが漏れる。
 痛みに枯れた涙は、嬉しさで大粒の涙となり頬を流れ落ちる。
 杏里の目に、リベリスタ達が悪い人には見えなかった。
 述べられた言葉からも分かるように、助けに来てくれたことは伝わっていた。
「もう安心。と言いてぇとこだが野郎はまだ健在だ。これから脱出する」
 杏里は涙を拭い、頷いた。
 まだ完全に救出し終わった訳ではない。
 感謝の言葉はきっと、全てが終わった後が望ましい。
 凍夜が杏里を背負ったが、衰弱によりその身体はとても軽かった。
 杏里は思いつめたように表情を強ばらせる。
「あの、もし逃げられないと思ったら、私の事は諦めて下さい」
 口から発せられたのは予想外の言葉。
「助かりたい、そう思っていました。けれど貴方達を失うのは嫌です。きっとあいつは私だけを追――」
「大丈夫だ、絶対助ける」
 杏里の言葉が終わる前に、凍夜が主張した。
「そうです、そのために私達が居るのです」
 ヴァルテッラが自身の上着を杏里の肩にかけてやった。
「だから、安心して大丈夫よ」
 最後に真希菜が再び杏里の背中を撫でた。
 杏里は顔を縦に何回も振りながら、再び涙を流した。
 
 階段横。
 真希菜が指を小さな音で五回鳴らす。
 階下に居る仲間の一人にはその音がしっかり聞こえ、その耳が僅かに動く。
 脱出の合図。ここからが、本番である。

●逃亡劇
 鎌の刃がシンゲンを襲うが、それは当たらない。
 上の階からの合図を耳にした莉那が、クリムゾンに飛びかかり、その勢いで倒す。
「告白を通り越して、襲うのは大胆じゃないかな!?」
 莉那に組み倒された状態のクリムゾン。
 予想外の出来事で、なおかつ少し顔が赤くなる。
「うるさい、遊びはここまでだ!」
 直感的にクリムゾンが三階への階段のを見る。
 真希菜が凍夜と杏里を隠していた。しかし。
「面白くない。五人じゃなかったんだね」
 思い返せば、自分を睨む目線もあった。
 その者達が気付かぬうちに三階へ行き、人形を持ち出していたと瞬時に悟るクリムゾン。
 強引に莉那を押し退け、鎌を拾う。
「あれを持ってかれるのは嫌でね」
 奪還しに来るようだ。
 奥の方で杏里を背に抱えて走る凍夜と、それを守るヴァルテッラと真希菜。
 その壁となりつつ、後退する五人。
「邪魔だよ」
 にっこり笑いながら、鎌を振ると真空刃がアナスタシアを襲った。
 豊麗な身体から出血が起こる。
 その横をクリムゾンは目もくれずに通り過ぎる。
 だが、まだ杏里には届かない。
「ふふ、ここは妥協して、私なんかどうですか」
 リンシードがその背中にソニックエッジを叩き込み、それが見事に当たる。
 身体が麻痺し、思わず舌打ちをしたクリムゾン。
 それに伴い、リベリスタが階段の方向へ走った。

 凍夜と杏里。天城を一階へ逃がし、ヴァルテッラは二階の階段前に陣を取った。
 少し遅れて、リンシードとシンゲンと莉那が一階へ向かう。
 アナスタシアはヴァルテッラと一緒に最後尾として残り、その姿をルーメリアは見る。
「みんなで帰らないと、意味がないの!」
 ルーメリアは二人を階下へ降ろそうと引っ張るが、二人は動かない。
「はふぅ、大丈夫だよぅ」
「そうですぞ。先に降りてて下さい」
 納得いかないものの、ルーメリアは負傷しているアナスタシアに治癒の風を紡いだ。
 その二人の前方。
 麻痺の解けたクリムゾンが立つ。
「邪魔だって言ってるじゃないですか……俺は殺しは嫌いな方なんですよ?」
 不機嫌な顔でヴァルテッラとアナスタシアを睨むクリムゾン。
 二人を無視して通り過ぎようとした。
 だが、それはできない。
「追いたいかね? であれば、私を倒して行くことだ」
 クリムゾンの体をブロック――つまり、掴んで階下へ通さなかった。
 慌ててクリムゾンは離れ、本日二回目の舌打ちをした。
「敬意を評して、とっておきをあげます」
 そう言い、クリムゾンは素早くヴァルテッラの懐へ入った。
 鎌を振りかぶったその瞬間、足元のコンクリートにヒビが入る。
 金髪の下から、光る赤い目が笑っている。
 破滅的な破壊力を持った鎌が、吸い込まれるようにヴァルテッラに直撃した――。

●野暮用
 凍夜と真希菜は無事に廃ビルの外へ移動していた。
 凍夜は背中の杏里を降ろし、そばに真希菜が寄り添う。
「あの、他の方々は?」
 真希菜に問う杏里。
「大丈夫よ、今出てくるはずだから」
 杏里は心配そうに真希菜の服を掴む。
 その会話を横に凍夜が再び廃ビル内へと歩き始めた。
 すれ違いで、リンシードとシンゲンと莉那が出てくる。
「おい、どこいくのだ?」
 シンゲンが凍夜に聞く。
「俺は野郎を一発殴ってくる」

 ――クリムゾンの一撃を受けたヴァルテッラは床に倒れ、その身体から光が溢れた。
「此処は通さないよぅ!」
「ふん、貴方達の粘り勝ちです」
 アナスタシアは構えたが、クリムゾンは戦意喪失していた。
 直感で杏里が手の届かない所に行ったのがわかった。
 言葉を交わし、クリムゾンはゆっくり階段を降りる。
 ルーメリアはヴァルテッラに駆け寄り、天使の歌を奏でる。
 一階へ着いたクリムゾンは外にいる杏里を見る。
「興冷めだね。日の当たるとこは嫌いだよ」
 その後ろ。階段の死角で待ち構えていた凍夜がソニックエッジを仕掛ける。
「今の俺じゃ手前ぇにゃ適わねえが、俺は、手前ぇみてえな糞野郎を絶対に許さねえ」
 気づいたクリムゾンがぐるりと凍夜の方向に向き、問う。
「君、名前は?」
「リベリスタ、雪白凍夜だ。痛みと一緒に憶えとけ」
 クリムゾンは満足気に笑う。
 凍夜の二撃を無抵抗に身体に受ける。
「雪白凍夜ね。上の階の子達を持って帰って下さい」
 そう言いつつ、クリムゾンは廃ビルの柱の一本を力任せに壊した。
 ビル全体が嫌な音をたて、震え始めた。
「さ、ここもすぐに壊れる。運命の導きで再び交わる事もあるだろう。それまでサヨラナ」
 そう言い残し、暗闇の中へ消えたクリムゾン。
 凍夜は二階の仲間の元へと走った。

●終着
 ルーメリアを先頭に、凍夜とアナスタシアに支えられながらヴァルテッラがビルから出てくる。
 杏里とリベリスタは、すぐに崩壊寸前の廃ビルから離れる。
「――ここまでくれば安全か」
 シンゲンが廃ビルを見つめながらそう言う。
 その横で杏里が真希菜に支えられながら、自らの足で立ちあがりヴァルテッラの手を握る。
「あの、ありがとうって言葉だけじゃ、足りないくらい感謝しています」
 その顔は、可愛らしく微笑み、リベリスタ達を見回した。
「見つけてくれて。助けてくれて、ありがとうございます。このご恩は一生忘れません」
 帰路へ着くリベリスタを、遠くから赤い瞳が見ていた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
なんていう字数の猛攻!!削りがすごかったです
危ないところもありましたが、それは大丈夫でした
歩いて5ターンですが、走っていたのでその分早く階下へ逃げれました
MVPはヴァルテッラ様へ
重傷は重ねましたが、身体をはった一役がなければきっと追いつかれていたでしょう
勿論、他の方もかっこいいプレイングがありました
それはリプレイ内で描写されていると思います
牧野杏里さんはアークに保護され今は療養しております
クリムゾンさんは機会がまたあれば出したいと思っております
それでは次の依頼もがんばってください!