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求ム正義ノ味方


「ボス、スーツは全部完成しましたぜ!」
 そう言った男がバッと広げたのは、特撮にでも出てきそうな悪役戦闘員の衣装だった。
 彼の後ろに同じ衣装が数着綺麗に畳まれているところを見ると、何かの撮影にでも使うのだろうか。
「おうご苦労、ところで俺の怪人衣装は出来てるのか?」
「あ……すみません。あれすげー面倒なんで、設計図通りに作るのはちょっと……」
 の割に、ボス格の衣装は手をつけてすらいなかったらしい。
「なんてこった! いいか、怪人ってのは特撮の華だ、戦闘員もだが……やはり怪人がしっかりしてないとチープだろ!」
「いや、俺等元々が制作費だの持ってる集団じゃないですから! そこは諦めてくださいよ!」
 しかも相当資金繰りに困っているらしく、このスーツも全て彼等の手作業で作られたモノのようだった。
「まぁ……良い。こっちは場所の調達はしておいたぞ。幼稚園の方にも『自主映画撮影』という事で許可はもらった」
 ぐっと拳を握り締めて計画の進み具合を実感したボスは、何やら自信満々の様子で続けて言う。
「風の噂に聞いた限りでは、アークとか言う組織があるらしいからな。そこの連中とやりあうための準備は整ったというものだ」
 この言葉を拾えば、彼等はフィクサードの集団だという事が良くわかる。
 だが――この連中は、何やら悪事を働くフィクサードとは違う雰囲気を持っているような感じだ。
「アークの連中が現れれば計画通り。現れなければ……気は進まないが、悪い事をするしかないな」
 一応悪事を働くという気持ちはあるようではあったが、それについてはあまり乗り気でもない様子である。
 果たしてその計画とは――?
「とりあえず特撮の悪役よろしく、派手にぶっ飛びたいモンですね! アークとか言う組織にそんな気概のあるヤツがいれば良いんですが!」
 最初から敗北する気ですか、あなた達。
「ちゃんとスーツに火薬仕込んどけよ、火傷しない程度のな! そして負けたら!」
「全力で逃げる! そうすれば、また次がありますからね!」
「よし、計画はばっちりだ! 派手に吹っ飛ぶぞ、お前等!」
 ただ正義の味方に派手にぶっ飛ばされたい。
 フェイトを得て手にした力を私利私欲のために使うフィクサードの割には、その目的はとても珍妙なものだと言えるだろう……。


「なんともおかしな集団ですね」
 ひとまずの説明を終えた『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は、そのフィクサード達の珍妙な目的に、軽く苦笑いを浮かべていた。
 フィクサードの数は11人ととりあえず数は多い。
 だが……。
「ボス格を除いて、単体では正直なところ弱いと言えますね。しっかり連携すれば苦戦することはないと思います」
 戦闘員に扮したフィクサードは、やはり戦闘員らしくぶっ飛ばされるための役回りになるようだ。
 それでも武器を持っているのだから、油断をすれば思わぬ打撃を受ける事には変わりない。
「問題はボスの人です。ボスを名乗るだけあって、強さは戦闘員の人達とは比べ物になりません」
 とは言っても、束になってかかればどうという事はないだろう。
 油断さえしなければ、の話だが。
「そして彼等の計画ですが、幼稚園の許可を得て撮影の名目の元、幼稚園を襲撃する演技をするようです」
 もしここでアークのリベリスタが現れなければ悪事を働いてでもと考えているようだが、計画がカレイドスコープによって筒抜けになっている時点でその心配はない。
「彼等の計画に乗る場合、戦場は幼稚園を離れて人気のない山にある川辺になります。そこまでの移動は彼等がバスを用意しているようなので、それも問題ないですね」
「罠の可能性はないのか?」
 その時、1人のリベリスタが彼女に疑問を投げかける。
「確かにその可能性もないとは言えないですけど、恐らく限りなく低いでしょうね」
 不意打ちを仕掛けてくるような卑怯な相手ならば、最初から回りくどい方法を使って場所を移すような事をする事もないだろう……と和泉は考えているらしい。
「相手の計画に乗らずに、拠点を急襲するのもありかもしれませんけどね。一応、拠点の位置を地図に記しておきました」
 そう言って広げられた地図には、山の中腹に○がつけられていた。
「拠点は屋内のため、ちょっと戦いにくいかもしれません。ですが拠点を急襲するのもありだと思いますよ」
 ただ、ぶっ飛ばされた後は『全力で逃げる』と言うフィクサード達の事だ。
 計画を潰されれば、逃げたフィクサードが何らかの無茶をする可能性もある。乗るか乗らないかは自由だが、敢えて計画に乗る方が結果はいい方向に向かうかもしれない。
「あ、計画に乗る場合は捕まえなくても多分無害でしょう。何らかの悪事を働く動きを見せて、わざとぶっ飛ばされに来るだけの人達ですから」
 リベリスタ達の修行相手としては丁度良いのではないだろうか。
 笑顔でそう言った和泉は、内心そんな事を考えているのかもしれない。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:雪乃静流  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年09月22日(木)18:18
雪乃です。
ゆるんゆるんなフィクサードのシナリオをお届けします、存分にぶっ飛ばしてあげてください。
正義の味方っぽい名乗りを上げるとフィクサード達がとても喜ぶでしょう。

計画に乗る場合
戦場は山中の川辺になります。人目もなくだだっ広いので、思う存分暴れても問題はありません。

計画に乗らない場合
戦場はフィクサード達のアジトになります。
彼等が衣装を作るために使ったミシンや、家電のコード類がそこかしこにあるので、足場は良くないかもしれません。

敵詳細
ボス(マグメイガス)
マジックミサイルやフレアバースト、チェインライトニングで、怪人よろしく派手な攻撃を行います。

戦闘員(デュランダル×5、覇界闘士×5)
デュランダルはメガクラッシュ、覇界闘士は業炎撃で攻撃を仕掛けてきます。
実力もなく、気がついたらぶっ飛ばされてそうなほど空気な人達かもしれません。
火力は一応あるので、油断すると思わぬ痛手を被るでしょう。

それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ソードミラージュ
天月・光(BNE000490)
プロアデプト
星雲 亜鈴(BNE000864)
スターサジタリー
モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)
デュランダル
桔梗・エルム・十文字(BNE001542)
覇界闘士
龍音寺・陽子(BNE001870)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)
クリミナルスタア
小坂 紫安(BNE002818)

●幼稚園は我等が頂いた!
 とか凄くタイトルで偉そうに勝ち名乗りを挙げているフィクサード達。
 だが実際は……。
「ちょっとそのスーツダサいぞ!」
「こら、殴るな!」
 園児達にスーツが格好悪いとボッコボコに殴られていたとか。
「石投げちゃえ、この怪人弱そうだし!」
「痛いから石投げるな!?」
 むしろこの園児達、凄い強いかもしれない。
「最近のお子様はなんだか強くなったものよ……痛ぇっ!?」
 腕を組み、頷くボス。しかし格好をつけていても、後ろから飛んできた石がぶつかって軽くタンコブが浮かび上がる姿には、怖い怪人と言うイメージなど微塵の欠片もない。
 このままでは園児達にやられてしまう、早く来て、正義の味方!

「待てーい!」
「そこまでだ! お前たちの悪事、お天道様が許してもこの正義の味方のリベリスタが許さない!」
 とか言ってるうちに来た!
「前後から!? くそ、登場が格好良過ぎて惚れるぜ!」
 最初から演出を重視したのだろう。
 後から登場した『高校生イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)は幼稚園の門から普通に入ってきたのだが、最初に声を上げた『戦うアイドル女優』龍音寺・陽子(BNE001870)は、なんと幼稚園の屋根の上にいた!
「そうじゃない! 最初はこう言わなきゃならないんだった、何者だ!?」
「……蒼き炎(フラムブルー)、俺の事はそう呼びな。……さあ、俺の炎に焼かれたい馬鹿はどいつだ?」
 さらには陽子の隣でクールに決めた『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)が名乗りをあげると、
「おお、かっこいい!」
「衣装も悪役よりキマってるぜ!」
 その姿に園児達から湧き上がる感嘆の声が出る辺り、正義の味方としてのイメージもしっかり出ているようだ。
「あ、衣装はぼくが作ったんだよ!」
 なお、彼等の身につける衣装は『素兎』天月・光(BNE000490) によるお手製です。
「手作りか、やるな……流石は正義の味方! 俺達よりキマってるのが悔しいが、今はそんな事は関係ない!」
 どこかベクトルのずれたところに嫉妬しているボスではあるが、彼等の目的は決して衣装の出来具合勝負などではない。
「ここまでの撮影完了しましたぜ!」
 そんな折、木陰から撮影していたらしい戦闘員がカメラを片手にばっちりだとサインを送る。
「じゃあ移動するぞ! あ、先生、ご協力ありがとうございました」
「いえいえ、子供達が色々無茶してごめんなさいね」
 深々と頭を下げるボスと、園児達の攻撃を謝る幼稚園の先生は何やら和気藹々で――重ねて言うが、この悪役達はフィクサードである。
「正義の味方の皆さん、バスのほうへどうぞ! ここで戦闘をすると幼稚園が壊れかねないですし」
 凄い下手に出ているけど、彼等はフィクサードなんだよ!
「ここで戦ってけよー!」
「ごめんよ、後で編集して見せてあげるからね!」
 幼稚園児にも丁寧に接してるけど、彼等はフィクサードなんだよ!

「ところで、なぜ悪役とかやろうと思ったの?」
 移り変わる窓の景色から視線を外し、近くにいたフィクサードにそう尋ねたのは陽子だ。
 私利私欲のために、その力を振るうフィクサード。ならば普通は悪事を働きそうなものであるが、彼等はなぜその道を選ばなかったのだろうか。
「俺達は派手に吹っ飛びたい、ただそれだけが望みなんだよな」
 そんな素直な質問に、戦闘員スーツを着たフィクサードは素直にそう答える。
(ある意味ではリベリスタにとって仮想敵と言えるが……確かに私利私欲ではあるか)
 私利私欲を広い意味で考えれば、確かに彼等はフィクサードと言えるだろう。『ダークマター』星雲 亜鈴(BNE000864)は耳に届いたその答に、フィクサードも色々いるものだと思い目を閉じた。
 そのフィクサード達は目的が『吹っ飛ばされる事』だと明言しているせいか、車内においても攻撃してくるような気配は全くない。
(ほんと、奇跡ですね)
 これから戦う相手と共にバスに揺られ、和気藹々と喋る――その光景は『魔法幼女めいど☆モニカ』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)が奇跡だと感じるのも無理のないものだった。

「そういえば!」
 そんな折、バスに響いた素っ頓狂な声に誰もが振り向けば、『しまった』という表情で『欠落』小坂 紫安(BNE002818)が頭を抱えていたとか。
「どうした?」
 あまりにもいきなりの行動に、『インフィ二ティ・ビート』桔梗・エルム・十文字(BNE001542)が思わずそう尋ねたのは仕方の無い話だ。
「幼稚園の先生と仲良くなる時間がなかった!」
「……そうか」
 元からそういった事に薄い反応を返す桔梗が冷めた反応を返した事はともかく、他の仲間やフィクサード達は『ぶっちゃけ、どうでも良い』と思った――かもしれない。

●吹き飛びの美学!
 さらさらと綺麗な水の流れる川辺。
 少し視線を上にずらせば崖がある事を考えると、特撮の撮影にも適したロケーションだと言えるだろう。
「準備は出来てるか?」
「待ってほしい。崖の上に登るから」
 せっかく良い崖があるのだから、登らなければもったいない。演出を考えればそれは必要だと、亜鈴の言葉にフィクサード達は誰もがうなずいた。
「わかった、ちゃんと撮影してやるからな。降りてきたら始めよう」
 それどころか、ご丁寧にそこまでフィクサード達は撮影してくれるらしい。

「あぁ、こういう時はなんて言えば良いんだっけか?」
「そうですね、しばらくお待ちくださいってとこじゃないですか、ボス?」
 しばらくお待ちください――。
 
「じゃあ、行くぞ?」
 ここまでのお膳立ては整った。後は格好良くキメるのみだと、夏栖斗は周囲の仲間を見渡して言う。
「あ、ボクは後で登場するよ、ピンチ演出ってことで!」
 しかしこだわる光は、中盤からの参戦を望んでいるようだった。
「ラジカセの準備できました、いきましょう!」
「キミもBGMあり? かぶったな……」
 一方では専用BGMを背負おうと考えていたモニカと桔梗が、どうやら同じネタでバッティングしてしまったらしい。

「そろそろ良い頃合だと思うんだがな……おい、もう少しリアクションを大きく!」
 崖の上に登るとリベリスタ達が行ってしまってしばらくの後、フィクサード達は多少暇そうにしながらも吹き飛ぶ練習に明け暮れていた。
「ボス! 準備完了だそうですぜ!」
 そこへ崖の上から送られてきた合図に1人の戦闘員が指を差して知らせると、一斉に隊列を整えるように号令をかけるボス。

「飛去来器戦隊ポロリレッド!」
「ぽろりもあるよってか?!」
 まず最初に名乗りを上げた夏栖斗に対して、いきなり入った突っ込みはそこからだった。
「最初がぶっ飛んでると、後がかすみそうな気がしますねぇ……」
 うんうんと頷く戦闘員は、何やら持論を口にして評論家気取りですらある。


「星の導きにて悪を断罪する正義の味方、魔法少女アレイ!」
「世に蔓延るロリコン共に死の契約を。魔法幼女めいど☆モニカです」
 続きましては凛々しく、そして可愛らしく魔法少女になりきった亜鈴とモニカだ。
「本を片手にクールに、さらにステッキ……良い!」
 1人の戦闘員は亜鈴に何やらメロメロになっているらしく、『アレイちゃーん!』とか言い出す始末。
「あっちはスカート短すぎないか? 見えそうでちょっとドキっとするが……」
 さらにもう1人が視線をそらして言うものの、見えません。
 様々な事情が折り重なって絶対に見えません。
「いや、俺は足元のラジカセからBGM流れているほうが気になるぞ」
「雰囲気って大事だよな」
 などとざわつく様子は、もはや正義の味方評論家の集団なのだろうか。
「スイング・ガールも参上……悪人、全員星になれ」
 さらに姿を現した桔梗は、セリフを言い終わると同時に凄まじい勢いでバスタードソードをフルスイングしていく。
「これは……飛ぶかもしれん」
 耳に届く凄まじい風切音に、どのフィクサードも戦々恐々としたのは言うまでも無い。
 彼女もBGMを流しているせいか、その登場にフィクサード達は『これぞ正義の味方』と頷きあっていたとか。
「そしてボクは太陽の娘! ドラゴンハウリング!」
「ま、まぶしいっ!」
 続いた陽子が名乗りを上げると、背中に太陽を背負った彼女は光り輝いて見えた。
 あくまでも偶然が重なっただけなのだが、
「眩しすぎて映せない!」
 とカメラ係が軽く悲鳴を上げた事を、彼女は知る由もないだろう。
「さて、では行くぞ!」
「その前に崖から降りないといけないけどね!」
 そして先んじて名乗りを上げていた猛は、眼下のフィクサード達を指差すと、武器を構えて飛び掛る姿勢を取る。
 が、紫安が言うように崖の上からでは戦えるわけもない。
 飛び降りるのも危ない高さであると感じたリベリスタ達は、キメるだけキメた後そそくさと崖を降りていくのだった――。

「今度こそ良いな!?」
「来い、やれるだけの事はやった!」
 気がつけば、ここに辿り着いてからすでに結構な時間が過ぎていた。
 流石にもう良いだろう、始めようと促すフィクサード達に、桔梗は満足気な表情でバスタードソードを大地に突き立てる。
「よし見せてやるぜ、俺達のぶっ飛び道!」
 ならば行こうと突撃を指示したボスは、これは大事な事だと軽く前置きした上で戦闘員達に尋ねた。
「良いか、ぶっ飛びの基本は!」
「気になるあの子に玉砕だ! よっしゃ、ぶっ飛ぶぜ!」
 何やらテンションがMAXにまで到達した戦闘員達は、『気になるあの子』目掛けて一斉に飛びついていく。
 そう、気になるあの子へと。
「え、ちょ、俺達は!?」
「恐れをなしたか……!?」
 そうすると、当然の如く『女子にぶっ飛ばされたい』という欲望が解放されたのだろう。
「すまんすまん、まぁ思う存分ぶっ飛ばしてやってくれ!」
 まったく誰も突っ込んでこなかった夏栖斗と猛、そして紫安に、『これは詫び代わりだ』とフレアバーストの炎を炸裂させるボス。
「まさか、あんな攻撃があるだとっ!」
「そんなお詫び、いらないんだけどね!」
 爆発は特撮の基本ではあるが、とりあえず『強いな!』と驚いた表情をわざと浮かべて夏栖斗は言う。
 隣では衣装の袖を破いているせいか、素肌で炎を防いだ紫安はそのお詫びにとても迷惑そうな顔をしていた。

 が、男子連中を放置して欲望のままに女子達に突っ込んでいったフィクサードは、ぶっ飛んだ後こう言うだろう。
『鬼神だ、鬼神を見たんだ!』
 ――と。

 それもそのはず。
「キラキラ輝く超重鈍器、あなたの頭部にロックオン♪」
 狙われた!
「いくわよ必殺、悪人キラースウィング!」
 バスタードソード振り抜いた!
「いつでも誰でもホームラン、それがみんなのSWING GIRL♪」
「ぶるぁぁっ!」
 吹っ飛んだぁっ!
 さすがに星にまではならなかったが、桔梗のフルスイングの直撃に戦闘員の1人が仕込んだ火薬を迸らせながら激しく吹っ飛んでいった!
「歌って踊りながらとは恐ろし……いいいいい!?」
「余所見は厳禁♪ ぼくがぶっ飛ばしちゃうよ!」
 その様子に思わず見とれた戦闘員は、陽子の炎を纏ったパンチで必要以上に火薬を爆裂させながら空高く飛び――そして落ちる。
「なぁ、正義の味方よ」
「なんだ?」
 遠巻きに眺めているボスは、凄まじい威力を目の当たりにして猛に問うた。
「これが噂の女子会。いや、これは女死会なのか?」
「ははは……」
 しかし、猛には乾いた笑いを返すしか出来なかったようだ。否、夏栖斗や紫安も同じような反応である辺り、下手な事は言わないほうが良いと思ったのだろうか。
 さておき、彼等はどこまでが本気の戦闘不能で、演技の戦闘不能なのだろうか。
「ボクの炎と氷の魔術にて撃ち滅ぼしてやろう。今のパンチ、ちょっと痛かったぞ」
「だから、これはお返しです!」
 グリモアールから放つ光で攻撃した亜鈴や、とっておきのハニーコムガトリングを温存したモニカの1$シュートでも簡単にぶっ飛ぶ辺り、演技も混ぜている可能性が高い。
 この女子達の頑張りに、男子たるもの負けてなどいられない!
「俺達もいくか! 熱い血潮をこの腕に! 正義の炎が悪の野望を打ち砕く!」
 全力で打ち込んだ拳を戦闘員の顔にめり込ませ、真っ先に突っ込んだ夏栖斗がぶっ飛ばし大会へ参加すると、
「わかった。本気になった俺と戦うって事は、どういう事か教えてやるぜ……!」
 同じように1人を殴り飛ばした猛が彼と背をあわせ、お互いに『やるじゃないか』と称え合う。
 ――が。
「ボス、これじゃ吹き飛べな……がく」
「そうか、これじゃ確かに吹き飛べないね」
 戦闘員の背後を取った紫安に首元を切られた戦闘員は、吹き飛ぶことも出来ずにその場に崩れ落ちていく。
「さすがにそれはな。次の課題にしよう」
 等とポジティブに考える辺り、彼等の『吹っ飛び道』は相当奥が深いらしい。

「だが、良い吹き飛びっぷりだ! 最後はこの俺を吹っ飛ばしてもらおうか!」
 そしてボスが戦闘員達のやられっぷりを褒める頃には、戦闘員達は全員地に伏せていた。
 さぁここで真打登場だ!
「あ、ちょっと待ってください。BGM変えるし、後……」
 と思いきや、モニカがせっかくだからとラジカセのテープを入れ替えると同時に、崖の上に視線を移す。
「ご存知、愛と希望の美少女戦隊ラビットムーン! 輝夜様に代わってお仕置きよ! って、ほとんど終わってる!?」
 忘れかけていたかもしれないが、リベリスタ達もここまで光を温存していたのだ。
 もう戦いはクライマックスではあるものの、ここでの味方の増援は演出としてはありだろう。
「もう良いかな?」
「うん、良いですよ! ってこれ『大御堂重工音頭』でした、入れ替えるからもう少し待ってください!」
 ――急いでください、モニカさん。

 かなり時間がかかった気はするが、ファイナルバトルの準備はいよいよ整った。
「では正義の味方達よ、いく――」
 が、さぁ行くぞとボスが言い終える前に、
「疾風怒濤迅雷! アークの力をひとつに!」
「え?」
 攻撃するしない以前に、夏栖斗の口振りから攻撃をさせてもらえない可能性がボスの脳裏を過ぎる。
「いくわよ、殲滅! 亜高速片足打法! いつでも誰でも消し飛ばす、それがみんなのSWING GIRL♪」
「太陽の力を受けて、いざ!」
 打法まで変えた桔梗、そして太陽を背に構える陽子。これはまさか、戦隊お約束の――。
「メイドミサイル! イン兎! みんなまとめてぺぺぺのっぺなのだ!」
「わかりました、いきます、メイド・フィナーレ!」
 光とモニカが頷きあって構えるところを見ると、合体攻撃ってやつですかっ!?
「……こいつが俺の炎だ、灰になりな──蒼き炎(フラムブルー!)」
「こしあんぱーんち」
 紫安だけやる気のない感じだが!
 猛が格好良く決めたから多分プラマイゼロってことで!
「星の輝きよ! 我が力となりて我が敵を打ち倒せ!!」
 いや、さらに亜鈴が格好良さを倍増させた!
「俺達の組織名募集中ゥゥゥゥゥゥ!?」
 やる気があるのかないのかわからない爆音と共に、吹き飛ぶボス。

「これで悪は滅び去ったな……」
 最後のナレーションは、そのまま亜鈴に奪われていきました。

●帰るまでが戦いです
「じゃあ俺達はここで。送ってくれてサンキュな、また正義の味方ごっこしようぜ!!」
「あぁ、そうだな。派手にやられて体が痛いが」
 にこやかに挨拶を交わす、夏栖斗とボス。しかしここは、先程まで戦っていた川原ではない。
「帰りもしっかり送ってくれるとは、律儀な……」
 ここは山奥だからと、帰りもバスに乗るよう促したフィクサード達の言葉を思い出したのだろう。
 その律儀さに、亜鈴の表情には軽い微笑みが浮かんでいた。

 ただ、派手に吹っ飛ぶ。

 ひたすらにその目的を追求したフィクサード達は、悪事に手を染める者達とは違う、信念と呼べるものを持っていた。
「なあ、お前ら。正義の味方はやりたくねぇのか?」
 だからこそ、猛の口からその言葉が飛び出すのも不思議ではないと言える。
「……正義の味方に倒された悪役は、仲間になるってのも良いだろ。……それを望むんなら」
「ははは、悪くはねーな。だが俺達はまだ『悪役道』を極めたわけじゃない。極めた時に考えるさ」
 しかし彼等の信念は、その道を極めるまで折れることはない。
「そうか、ならばその道を極めてみせろよ」
 彼等が、最後まで信念を貫き通す事だけを願う猛は、軽く親指を立てて彼等を見送っていく。

 それで終わってれば良かったんだけど。

「次の戦いに向けて準備だ!」
「おう!」
 傷付いた身体を押してアジトへと帰還するフィクサード達。
 それを遠くから眺めているのは、バスに乗らずにアジトへと先行していた光だった。
「輝夜様は完全勝利を望まれている! そのためには手段を選ばない! それが僕の正義だ!」

 ドォォォォォン!!!

「――……何が起こった?」
「爆発です……」
 けほっと煙を吐く彼等は、コント然とした風貌で頭をアフロにしていたとか。
 吹き飛んだアジトはほとんど瓦礫の山と化している。彼等が死んでいないのは、運が良かったとも言えるだろう。
「爆発はろまぁ~ん」
 派手な爆発を確認した光は、どこか満足気だった。
「最後の最後でやってくれるもんだな……くそ」
 だがその光の声が耳に届いたらしいフィクサード達は、相当な怒りを覚えたようだった――。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした。
派手にぶっ飛ばされたので、フィクサード達も相当満足していることでしょう。
ただ、最後の最後で相当な怒りを覚えてしまったようです。
一本気な彼等は簡単に暴走はしないでしょうが、『もしかしたら』はあるかもしれませんね。

彼等は『悪役道』を極めることが出来るのでしょうか。
はたまた、『本当の悪』に染まってしまうのでしょうか……。

なお、怒ってはいても彼等が撮影した映像は軽く編集した後、幼稚園児達に上映したようです。
不思議な力も『CGってすげー!』で全てまかり通る、それが特撮。

では、また次回お会いしましょう。