● 「ボス、スーツは全部完成しましたぜ!」 そう言った男がバッと広げたのは、特撮にでも出てきそうな悪役戦闘員の衣装だった。 彼の後ろに同じ衣装が数着綺麗に畳まれているところを見ると、何かの撮影にでも使うのだろうか。 「おうご苦労、ところで俺の怪人衣装は出来てるのか?」 「あ……すみません。あれすげー面倒なんで、設計図通りに作るのはちょっと……」 の割に、ボス格の衣装は手をつけてすらいなかったらしい。 「なんてこった! いいか、怪人ってのは特撮の華だ、戦闘員もだが……やはり怪人がしっかりしてないとチープだろ!」 「いや、俺等元々が制作費だの持ってる集団じゃないですから! そこは諦めてくださいよ!」 しかも相当資金繰りに困っているらしく、このスーツも全て彼等の手作業で作られたモノのようだった。 「まぁ……良い。こっちは場所の調達はしておいたぞ。幼稚園の方にも『自主映画撮影』という事で許可はもらった」 ぐっと拳を握り締めて計画の進み具合を実感したボスは、何やら自信満々の様子で続けて言う。 「風の噂に聞いた限りでは、アークとか言う組織があるらしいからな。そこの連中とやりあうための準備は整ったというものだ」 この言葉を拾えば、彼等はフィクサードの集団だという事が良くわかる。 だが――この連中は、何やら悪事を働くフィクサードとは違う雰囲気を持っているような感じだ。 「アークの連中が現れれば計画通り。現れなければ……気は進まないが、悪い事をするしかないな」 一応悪事を働くという気持ちはあるようではあったが、それについてはあまり乗り気でもない様子である。 果たしてその計画とは――? 「とりあえず特撮の悪役よろしく、派手にぶっ飛びたいモンですね! アークとか言う組織にそんな気概のあるヤツがいれば良いんですが!」 最初から敗北する気ですか、あなた達。 「ちゃんとスーツに火薬仕込んどけよ、火傷しない程度のな! そして負けたら!」 「全力で逃げる! そうすれば、また次がありますからね!」 「よし、計画はばっちりだ! 派手に吹っ飛ぶぞ、お前等!」 ただ正義の味方に派手にぶっ飛ばされたい。 フェイトを得て手にした力を私利私欲のために使うフィクサードの割には、その目的はとても珍妙なものだと言えるだろう……。 ● 「なんともおかしな集団ですね」 ひとまずの説明を終えた『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は、そのフィクサード達の珍妙な目的に、軽く苦笑いを浮かべていた。 フィクサードの数は11人ととりあえず数は多い。 だが……。 「ボス格を除いて、単体では正直なところ弱いと言えますね。しっかり連携すれば苦戦することはないと思います」 戦闘員に扮したフィクサードは、やはり戦闘員らしくぶっ飛ばされるための役回りになるようだ。 それでも武器を持っているのだから、油断をすれば思わぬ打撃を受ける事には変わりない。 「問題はボスの人です。ボスを名乗るだけあって、強さは戦闘員の人達とは比べ物になりません」 とは言っても、束になってかかればどうという事はないだろう。 油断さえしなければ、の話だが。 「そして彼等の計画ですが、幼稚園の許可を得て撮影の名目の元、幼稚園を襲撃する演技をするようです」 もしここでアークのリベリスタが現れなければ悪事を働いてでもと考えているようだが、計画がカレイドスコープによって筒抜けになっている時点でその心配はない。 「彼等の計画に乗る場合、戦場は幼稚園を離れて人気のない山にある川辺になります。そこまでの移動は彼等がバスを用意しているようなので、それも問題ないですね」 「罠の可能性はないのか?」 その時、1人のリベリスタが彼女に疑問を投げかける。 「確かにその可能性もないとは言えないですけど、恐らく限りなく低いでしょうね」 不意打ちを仕掛けてくるような卑怯な相手ならば、最初から回りくどい方法を使って場所を移すような事をする事もないだろう……と和泉は考えているらしい。 「相手の計画に乗らずに、拠点を急襲するのもありかもしれませんけどね。一応、拠点の位置を地図に記しておきました」 そう言って広げられた地図には、山の中腹に○がつけられていた。 「拠点は屋内のため、ちょっと戦いにくいかもしれません。ですが拠点を急襲するのもありだと思いますよ」 ただ、ぶっ飛ばされた後は『全力で逃げる』と言うフィクサード達の事だ。 計画を潰されれば、逃げたフィクサードが何らかの無茶をする可能性もある。乗るか乗らないかは自由だが、敢えて計画に乗る方が結果はいい方向に向かうかもしれない。 「あ、計画に乗る場合は捕まえなくても多分無害でしょう。何らかの悪事を働く動きを見せて、わざとぶっ飛ばされに来るだけの人達ですから」 リベリスタ達の修行相手としては丁度良いのではないだろうか。 笑顔でそう言った和泉は、内心そんな事を考えているのかもしれない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月22日(木)18:18 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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