●愛の告白 「あの……実は、君のことがずっと好きだったんだ!」 夕闇迫る人気のない公園で告白しているのは中学生らしき少年。 学校帰りなのか、制服に鞄という恰好だ。 告白の相手は同じく中学生なのだろう、セーラー服を着ている少女。 顔を真っ赤にしている少年に、少女は戸惑いながらも答えようと口を開こうとするのを、男の声が押しとどめた。 「おいおいおい、何告白しちゃってるんだよー」 それはもちろん、告白した少年の声ではなく第三者の声で。 「え?」 現れた男は髪を金髪に染めたいわゆるヤンキーと呼ばれる風貌の男で、片手に金属バットを持ち、ゆっくりと2人に近づいていく。 「だから、なんでここで告白してんの? 誰の許可得てやってんの?」 「え、許可とか必要な……」 「俺の許可が必要だつってんだろ!」 ぐしゃり。 無造作に振り下ろされた金属バットが少年の頭を叩き潰す。 「い……いやぁぁぁぁぁぁ!!」 人気のない公園に、少女の悲鳴が木霊した。 ●運命の出会いは突然に 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は集まった面々を見て、こう言った。 「人の告白を邪魔するやつは死ぬべきだと思うの」 何のことかわからないメンバーに彼女は地図を広げ、言葉を続ける。 「この公園に、告白を邪魔しようとするヤンキーが出たの。 問題なくエリューションだから、遠慮なくやってしまって」 ヤンキーが出る時間は夕方。 人気のない公園で告白すると現れるらしい。 もともと人気のない公園なので、人払いする必要はないが告白するのは一組のカップルがよいだろうと彼女は言う。 「本物のカップルでなくても、愛の告白をすればすぐに出てくるから、男同士女同士でも問題ないと思うわ」 ヤンキーはとりあえず、愛の告白を邪魔できればいいらしい。 囮役以外は公園の外か茂みに隠れているのが良いだろう。 「ヤンキーは金属バットを使って攻撃してくるわ」 脳天をかち割る一撃と、バットの乱打、持ち手にチェーンをくくり付けて振り回して来たりするらしい。 「見た目は金髪でアクセサリーじゃらじゃらでチャラ男だけれど、攻撃力はそこそこあるから気を付けて」 必要になるかもしれないからと、イヴは懐中電灯を取り出し全員に手渡し、彼らにエールを送った。 「人の告白を邪魔するとどうなるか、わからせてあげてね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:りん | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月20日(火)01:56 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●公園へと向かう道。 夕焼けが西の空を赤く染める頃、8人のリベリスタたちは町はずれの公園へと足を向けていた。 リベリスタたちが相手にするのは、人の告白を邪魔すると言うエリューション。 「まったく不届き者にもほどがあるのじゃ……」 ぷりぷりと怒っているのはメンバー最年長の『傲岸不遜の海燕』海風・燕姫(BNE002503) だ。 男女の色恋沙汰は本人たち次第。 まだ見ぬエリューションを思い描き、『ドラム缶型偽お嬢』中村 夢乃(BNE001189)が言葉を発する。 「こういう人にぴったりの言葉がありますね。 『人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んじまえ』」 夢乃の言葉に『ラブ ウォリアー』一堂 愛華(BNE002290)も深く頷く。 人通りのない道の真ん中で拳を振り上げ、愛華はまだ見ぬエリューションへの怒りを滾らせる。 「人の恋路を邪魔するとはっ!! 告白ってすっごい勇気が必要なんだよぉっ! それを邪魔するたぁっ! このラブウォリアーがゆるさぁぁんっ!!」 その隣では『Holy Order』アルティ・グラント(BNE002505)がにっこりと笑いこう言い放った。 「人を呪わば穴が開くのです、胴に!」 ………何かが違うような気がするなぁと思いつつも、『雇われ遊撃少女』宮代・久嶺(BNE002940)はアルティに笑顔を返す。 「告白ねぇ…10歳のアタシにはよくわからないわね…」 まだまだ、恋に恋するお年頃。 そのお相手は大好きな姉。 女性たちの盛り上がりを前に、『日常の中の非日常』杉原・友哉(BNE002761)はそっと溜息をつき、帽子を深めに被りなおす。 (「……帰って寝たい」) だが仕事は仕事。 たまには面倒くさいこともしなければ。 これからのことを想像し、友哉は再び溜息をついたのだった。 そのやりとりから5分後、8人は公園の入り口に辿りついていた。 その公園を中心に、友哉は結界を張り巡らせる。 人気がないとは言え、念には念を。 少し暗くなりつつあるが、行動には支障はない。 明かりをつけるかつけないか、悩ましい時間帯だった。 「ふむ、なかなかのシュチュエーションだ」 ハイディ・アレンス(BNE000603)の言葉に他のメンバーも空を見上げる。 夕暮の赤と、夜の紺。 その2つの色が混ざり合い、絶妙な紫色を醸し出す。 真上には月と一等星が輝き、目を楽しませる。 太陽を見ようと公園の真ん中へと出ると、ビルの間に吸い込まれつつあるそれを確認できた。 「綺麗だな」 その光景に『鬼雉子』雉子川 夜見(BNE002957) もぽそりと感想を呟いた。 適度に手入れをされた公園は、多少殺風景ではあるものの、景観は悪くない。 人気もなく、このシチュエーションならば、確かに告白場所に使おうと思うのも頷ける。 ぜひとも、あの男の子の告白を成功させてやりたい。 「準備しましょうか」 ここでの告白を成功させてやるべく、彼らは行動を開始したのだった。 ●告白。 「久嶺、可愛いですよ……結婚してください」 「あぁっ……いけませんわ、お姉さま、ワタクシ達は双子で女同士……結ばれない運命なのよ!」 「そんなの関係ない、私は、久嶺が好きなんです!」 「お、お姉さま……うれしい!」 (「なぁーんちゃって、うへ、うへへへへ……」) 自分の肩を抱きながら久嶺は体をくねらせた。 その表情はものすごく緩みきっている。 彼女の脳内の会話が見えないメンバーにとって、その姿は大変怪しい。 突っ込みを入れたい衝動を押さえ、ハイディは茂みの中から外を見つめた。 彼らが居るのは告白場所から少し離れた茂みの中。 もうすぐ大事な告白が始まるのだ。 ここで大声を出してしまう訳にはいかない。 「はわぁ。 たとえ演技だとわかっていても告白ってやつはドキドキするのですぅ」 少し顔を赤らめて愛華が小声で呟いた。 自分が告白されるわけでも、するわけでもないのだが、人の告白シーンを盗み見るという不思議な状況に、思わず胸が高鳴る。 その横では夜見が険しい表情で辺りを見回す。 そのちぐはぐな光景に、燕姫は思わず苦笑した。 (「なんというか……青春じゃな……多分」) そして、決行の時は訪れた。 夕闇が、太陽と同じくらいになった頃、公園には1組の男女が立っていた。 帽子を被りサマーコートを着た少年と、和服の少女。 「中村。 悪いな、急に呼び出して……」 「ううん、平気」 軽く手を挙げて詫びる友哉に、夢乃は笑顔で首を振る。 「実は、君に俺の気持ちを伝えたくて」 「え……?」 気持ち?と首をかしげる夢乃に、そっと友哉が近づいていく。 手が届くところまで近づいた友哉は、まっすぐに夢乃の瞳を見つめて。 「俺はずっと前から中村の事……好きなんだ」 「!!」 友哉の突然の告白に夢乃は驚き、両手で口元を覆う。 そんな夢乃の右手を友哉はそっと取る。 「俺と……付き合って欲しい」 言葉と共に、その手は徐々に彼の唇へと近づいて……。 「おいおいおい、何告白しちゃってるんだよー」 無粋な声が辺りに響き、2人の間を切り裂くように金属バットが振り下ろされた。 ヤンキーの初手の攻撃は、彼らの読み通り友哉へと向けられていて。 わかっている攻撃ならば、避けるのも容易い。 友哉はバックステップで攻撃を避けると、そのまま夢乃の後ろへと下がる。 決して敵の攻撃が怖いわけではない。 だって、彼女が守ってくれると言っていたから。 「彼氏、逃げるのかよー?」 そう言って友哉の方へ回り込もうとするヤンキーに、5人が隠れている茂み……の木の上から声がかかった。 「待てーい!」 「へ?」 思わずそちらを振り向くヤンキー。 そこには木の枝の上に仁王立ちになったアルティの姿。 思わぬ姿にぽかんとなるヤンキーをびしぃっ、と指さし、アルティが叫ぶ。 「自分のリアルが充実しない鬱憤をカップルにぶつけて気を晴らす、性根が腐って腐って圧し折れた雑魚ヤンキー!」 「う、うっさい!」 叫び返すヤンキーを華麗にスルー。 「人の恋路を邪魔するやつは神に裁かれ死んじまえ、です!」 「いやいや、俺が殺すんだって」 ここのヤンキーの声ももちろん無視である。 「今ここに、正義に代わって引導を渡してやります! とうっ!」 掛け声とともに、彼女は木から飛び降りた。 ●告白のその先に。 アルティの放った聖なる光が炸裂しヤンキーを焼くと、ハイディの持つ懐中電灯の光がその姿をしっかりと捉える。 暗さを増してきた公園でその明かりは有難かった。 眩しさに目を閉じているヤンキーの前に素早く躍り出た愛華は、踊るように爪を振るう。 「遅い、遅ぉい!」 軽やかに振るわれた爪は避けようとしたヤンキーの胴体に浅い傷を負わせていった。 そこへ夢乃の後ろから友哉の攻撃が放たれた。 「俺、さっさと帰って寝たいからサクッと倒されてくんない?」 友哉が狙ったのはヤンキーの手。 矢はヤンキーの腕に当たったものの武器を取り落すとまではいかず、金属バットは未だにヤンキーの手の中だ。 仲間全員が入る位置に立ったハイディは、守護結界を張り巡らせ味方全員の防御力を上げていく。 これで多少の攻撃は防げるはずだ。 「恋のキューピッド参上よ! 持ってるのは恋を邪魔する外道を穿つライフルだけど」 低空飛行をしつつ放たれたライフルの玉は、事前に集中を高めたおかげで狙い通りの場所へと突き刺さっていた。 腕を押さえつつ、ヤンキーはバットを振り回す。 持ち手の先には長いチェーン。 ぶぅん、と大きく振りまわされたその先には、やはり先ほど告白をした友哉。 その攻撃から庇うように夢乃は即座に、友哉の前へと出ていた。 がす、と夢乃の肩にヤンキーのバットが直撃する。 多少軽減されているとはいえ、その攻撃は少し痛い。 だが夢乃はその攻撃に耐え、そしてヤンキーにこう言った。 「きゃー! 強いひとって素敵!! お付き合いして下さい!!」 「え……?」 夢乃の言葉に、先程までの勢いがぴたりと止まる。 どうやら免疫がないらしく一瞬きょとんとしたヤンキーの顔が、一気に朱に染まった。 「な……何告白してんだよ……! 誰の許可を得て……!」 もごもご、おどおど、わたわた。 予想外の反応を見せるヤンキーへ夜見の声が追撃をかける。 「許可が必要なら俺がしよう。 構わん、続けろ」 ちなみに彼はそう言いながらもオーララッシュを放ったりと何気に鬼畜です。 「ちょ、おま、何勝手に許可出して……!」 夜見の言葉に反応するヤンキーに、さらに夢乃の声がかかる。 「その金髪、すごく似合ってます!」 「うぁ、その! んなこと言われても嬉しくねぇし!!」 真っ赤な顔で慌てふためくヤンキーの右手へ燕姫の攻撃が直撃した。 「お主のその曲がった根性、叩きなおしてやるのじゃ!」 ヤンキーが集中攻撃をされた右手を押さえている間にと、ハイディが夢乃の肩を癒していく。 「平気か?」 ハイディの声に頷くと、夢乃は再びシールドを構えた。 ヤンキーが体勢を立て直す前にと、友哉の矢が飛ぶ。 狙いを定められたそれは押さえている右腕を貫通し、ついにその手は金属バットを取り落す。 「チャーンス!」 恋のキューピットこと久嶺はヤンキーの胸に狙いを定めると、正確にそこを打ち抜いていく。 「ぐっ……!」 打ち抜かれたヤンキーはそれでも倒れまいと足を踏ん張る。 そこへ放たれたのはアルティの魔法の矢。 「いいですか! 人の不幸を願うというのは正義に反することです! そういうやつは痛い目を見るのです! こうやって! こうやって! このっ、このっ!」 小さな魔法の矢はアルティの想いを乗せ、彼の肩へと突き刺さる。 「そろそろ終わりにしようか」 輝くオーラを纏った夜見の大太刀が、ヤンキーの胴を薙ぐ。 がくりと膝をついたヤンキーの頭に愛華が放った黒いオーラが巻き付き、そして。 「人の告白を邪魔する権利は誰にもなぁぁいっ!!」 愛華の言葉と共に引かれたその黒いオーラはヤンキーの頭部を締め付け、ばぎり、という鈍い音と共にヤンキーの動きを永遠に奪ったのだった。 ●家への帰り道。 「善罰です! 恨むならば貴方の捩れた性根を恨んでください!」 満足げな笑みを浮かべそう述べると、アルティはさっさと公園の出口へと向かう。 成敗すればもうこの公園には用はないのだ。 もうすっかり太陽はビルの向こうへと沈み、街灯の明かりが彼らの影を描き出している。 帰るか、という友哉の声に、彼らはそろって帰路へとつく。 「人の恋路を邪魔なんてしたらいけないよねぇ♪」 容赦なくヤンキーをぼっこぼこにできたからか、上機嫌で愛華は歩く。 その隣では肩を押さえている夢乃に、ハイディが寄り添っていた。 「あぁ……囮……。 幸せな気分だった……」 ぽそりと呟かれる彼女の声は本当に切実で。 ある意味精神的にダメージを受けていそうな彼女の肩に、ハイディはそっと手を置いた。 そんなやり取りを知ってか知らずか、久嶺の明るい声が響いた。 「あれは演技だったかもしれないけど……意外とお似合いかも?」 あれ、とは告白シーンのことだろう。 夢乃は思わず、ぎぎぎぎ、と友哉を振り返る。 振り返られた友哉はいつも通りの無表情で。 「送ってくか? あとでなんかあっても面倒だし」 その言葉をどう受け取ったかは、夢乃次第。 きゃっきゃ、とはしゃぐ女性陣を眺め、夜見はぽそりと呟く。 「初めての依頼だが、こういう依頼は、そうだな………、二度とゴメンだ」 本当に疲れたのだろう、夜見の足取りは重たい。 彼らの後ろ姿を見ながら、燕姫は微笑む。 (「片付けばまた一つ、世の中が平和になったということ。これで少しは安心できるというもの」) これで、公園での告白を邪魔するものはもう居ない。 あの中学生の告白の結果はわからないが、それが死という悲惨な終わり方にならずに済んだこと、それは嬉しいことであった。 「しかし何も殴って壊さずとも色恋沙汰は色々障害があるというのに……物好きなやつじゃったなあ」 星が瞬き出した空を眺めぽつりと零す。 今宵もどこかで、色々な恋物語が繰り広げられているだろう。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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