●祖は包み込む物 それは半透明の身体で海面を漂っていた。 その数は一つや二つではない。 無数に漂うその身体は海面を覆いつくすかのように数を増し、透明な身体を持つそれは人々に張り付いていった。 ●海に広がる半透明 「海は好き?」 集まったリベリスタ達に真白イヴ(nBNE000001)は問いかける。 「今回のエリューションは半透明の身体で海岸に押し寄せてくるの」 押し寄せてくるエリューションはそれほど力が強いわけではないらしい。だが、その数が多く、まともに全てを相手にしていたら体力が持たない可能性が高い。 「無数のエリューションがいるみたいだけど、核となっているのは一つだけ……それが他のを操って攻撃してくるみたい」 その核となる存在が海面を漂っている間に増殖したのだろう。周囲に漂っているのはその配下のようなもの。その大本となった存在を叩けば、他は文字通りに一網打尽にすることも不可能ではない。 但し、核となっている存在の周りを囲んでいるため、一気に近付く事は難しい。しかも、相手は向かってくる存在に対し群がる修正を有しているらしい。敵の力は弱いが、数が多いため、強行突破を試みても体力が持たない可能性が高い。水の中では陸上よりも体力を消費しやすいのだ。 「ほとんどは張り付いてくるだけだけど、数が増えると泳げなくなるから気をつけて」 そのエリューション達は断崖絶壁の近くを通りながら海水浴場へと向かっている。夏は終わりに近いが、海水浴客がエリューションに襲われれば、大勢が溺れる危険がある。 「出来るだけ海水浴場に近付けないで」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:草根胡丹 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月16日(金)22:53 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●海に広がる大きいの 「さー、アークに入っての初仕事……つか、リベリスタとしての初仕事や」 「初仕事は海岸掃除、か」 お互いに初仕事に向けて気合を入れながら桜咲・珠緒(BNE002928)とジル・サニースカイ(BNE002960)は海を見つめる。夏の終わりの風は少し肌寒いが、まだ残暑の日差しの強さは顕在。海の冷たさがまだ気持ちよいと感じられる季節だ。 「大量発生クラゲっぽいエリューション……」 「クラゲの大量発生か……さっさと処分して終わらせようか」 「……今回の敵はクラゲの様な物……なのでしょうか?」 その時期の名物ともいえるクラゲ。それのエリューションと思われるものの処分がアシュリー・アディ(BNE002834)や星雲 亜鈴(BNE000864)、雛月 雪菜(BNE002865)達に与えられた仕事だ。 「クラゲのエリューションか。ただでさえ大量増殖したら厄介なのに、この量かよ……」 その数はまだまだ遠くにいるにも拘らず、結城・宗一(BNE002873)の目に見えてしまうほど。相手が巨大と言うわけではない。単体の大きさはそれこそ普通の大きめのクラゲと同じくらいで、遠くから見えるようなサイズではない。 「標的が多く、張り付かれるとダメージ。なかなか厄介なヤツらね」 「刺しはしないとの事ですが、厄介な事に違いは無いですね……」 標的の厄介さにアシュリーは煙を吐きながら愚痴を、雪菜は溜息を溢した。攻撃能力だけ見ればそれほど恐れるに値しないのかもしれないが、目の前で実際に多数の標的を前にすると、一服どころか一箱片付けてしまいたくもなる。 「まぁ、こういうのの地道な積み重ねがいつか花開くのね。たぶん」 とはいえ、相手が常に増え続けているわけではない以上、ジルのいう地道な努力で何とかなるはずだ。 「海の平和を保つためにも、全部ぶっ潰さないとな」 それらを全て排除しなければ海水浴場にどんな被害がもたらされるのか分かったものではない。宗一の言葉に皆が頷き、再び海を見つめた。 「時期的にも今年最後の海だな」 エルヴィン・ガーネット(BNE002792)はその最後の海を楽しもうとビーチパラソルやビーチボールを抱えている。仕事前だというのに持ち歩いているのはなんとなくこの方が雰囲気出るかららしい。 「海水浴客に被害者が出る前に殲滅したいわね」 エリューションに邪魔されて折角の海水浴が台無しになるような事は海水浴客はもちろんアシュリーも嫌だ。 「わしは残念ながらというか何と言うか……機械の体じゃしあんまり人に見られたくないゆえ……普段着のままで行くのじゃ」 そう言って着物に身を包んでいる那須野・与市(BNE002759)だが、その下にはちゃっかりと学校指定の物を着込んでいたりする。やはり、海に対する思い入れは少なからず胸の内にあるらしい。 「視界確保も問題なさそうですね、では……参りましょうか」 そう言うと標的に向かって雪菜達はゴムボートを漕ぎ出した。 ●人は浮かんで敵沈む 「さて……戦闘開始だな」 意識を集中させ、亜鈴は海上へと身を躍らせる。海上の波に巻き込まれない高さを飛びながら、標的の元へと向かった。 標的の数は海をその身で覆い尽くすほど。時折波に揺られ、隙間が見えるのが相手が一個の個体ではない証拠だ。それがなければ、巨大なエリューションだと言われても誰も疑わなかっただろう。 「消えてもらうぞ」 亜鈴が目の前の一体に狙いを澄まし、攻撃する。貫かれたエリューションはそのまま萎んで見えないほどに小さくなった。 「迷惑なナマモノをきっちり掃除して、思いっきり楽しもうぜ」 エルヴィンも後方からマジックアローを撃ちこんでいく。やはりエリューションは攻撃を受けると萎んでいくようだ。攻撃に対する反応から見てもクラゲのそれとは少し違うような気もする。 「チェインライトニングや!」 珠緒の放った雷が海面に広がるエリューションを焼き、一直線に海が本来の色を取り戻したが……ほんの少しの時間で周りのエリューションが欠けた部分を覆い始めた。 「射撃なんてできないから必然的にこうなるのよね……」 その一方で囮役のジルは接近するエリューションを踊るように斬り刻んでいたが、波の勢いを利用して接近する個体や数に任せて突撃してきた集団を仕留めきれず、徐々に身体に纏わりつかれ始めていた。その感触はやはり生物のそれとは違う。ビニール袋のような感じだ。というか、このエリューションはビニール袋……海に流されてきたゴミのエリューションだった。 「あーもう! 切っても切ってもキリがないじゃないの!」 完全に自分の身体に張り付いた相手だけを斬るのは難しい。不可能ではないが、それをしている間に別のエリューションが張り付いてくるので意味がないのだ。 「仲間を見捨てられるわけが無いだろ?」 それを助けようと宗一が駆けつける。打ち漏らしをオーララッシュで切り捨てていた宗一のほうはまだ無事だったのだが、囮二人が一箇所に集まったのがまずかった。 標的が一つになったことで二手に分かれていた群れが一斉に殺到する。こうなれば、ちょっとやそっとのことでは防ぎようがない。瞬く間に二人とも全身を覆われてしまった。 このまま海に飛び込んでもミイラ取りがミイラになるだけだ。救助するため二人を浮かび上がらせ、海上で剥がしにかかった。 「そのまま動くな」 「動かないでほしいのじゃ、あたったら痛いぞぇ?」 亜鈴と与市が二人の身体に纏わりついているエリューションだけを狙って攻撃する。纏めて引き剥がしてもいいのだが、それだと剥がれたエリューションをまた攻撃しなければならない。その手間を惜しんでの行動だ。もちろん、それが可能だと言うだけの自信もあってのことだろうが。 剥がしている間もエリューション達は動き続けていた。囮がいなくなった分だけ、浜辺に向かう速度が上がっているような気がするのは、気のせいではないだろう。 「必要なら代わりに囮に入るぜ」 「泳ぐのは苦手なんだけどね……」 エルヴィンは必要とあれば海上へと離脱した二人の代わりに飛び込む。アシュリーも必要とあればいつでも飛び込めるように覚悟だけは決めながら、その支援に回る。 しかし、囮は元々二組。エリューションの群れもそれに対応すべく二手に分かれている。残りの群れはエルヴィンを無視して海水浴場のほうへと向かいつつあった。 「……海水浴場に向かわせる訳には参りません、此処でなんとしても」 「浜辺へは行かせないぞ」 雪菜は決意を口にしている間に、亜鈴は海に下りると向かってくるエリューションを迎え撃つ。全てが向かってくるわけではないが、近くのエリューションを密集させる事は出来るし、時間を稼ぐには十分。雪菜は亜鈴を無視して浜辺に向かおうとしているエリューションを追いかける。上空に待機している与市が集まったエリューションを蹴散らせば、溺れてしまうようなこともないだろう。お互いに仲間を信頼しているからこそ出来る行動であった。 「的が沢山あるから全部外れるなんて言うことはあり得んのじゃろうが……いやいや、それすらあり得るのじゃ」 だが、肝心要の与市が迷っている間にどんどん亜鈴はビニールに包まれていく。 「わしは残念ながらというか何と言うか……わしじゃし? 絶対に失敗するに決まっておるのじゃ」 迷ってる与市につっこむ者はいない。今回の標的は元々エリューションとしての脅威は高くない。誰かが近くにいれば、剥がして離脱することが容易に可能だからだ。だが、一番近い亜鈴は海中に没しそうになっている。つっこむ余裕はないし、何より、口の周りをエリューションが包み込んでいるのでまともに喋ることすら叶わなくなっていた。 「はぁ……」 溜息と共に視線が下を向く。そこにあるのは海上一面を埋め尽くすエリューションと海中に没した亜鈴の姿。 「?! 亜鈴様が大変なのじゃ!」 そして、スターライトシュートを連打する与市によってエリューションが蹴散らされると、思っていたよりはマシな状態だった亜鈴は無事救助された。 危機を脱した後も戦いは続く。群れの密度も最初と比べればまばらな感じになり、全体としての大きさは小さくなってきているが、まだまだその数は多い。範囲攻撃を仕掛けても最初ほど巻き込める数が多くなくなってきているのも時間が掛かる要因の一つだった。 「ねぇ見て。アレなんか露骨にそれっぽくない?」 ジルの指差した方向に視線を送ると、そこには一個だけ色の違う個体が浮かんでいた。正確に言うならば色違いではなく、それ自体が発光している。それはまるで何かの信号を発しているかのようにも見えた。 「早めに潰せば残りも楽になるだろ」 発見した核の情報をエルヴィンは伝達する。浜辺の方へと向かっているのが核の意思のようなものが原因だと考えれば、速めに叩けばその進行速度を落すことが出来るはずだ。 「ありったけの力で攻撃して粉砕するぜ」 核の位置を聞いた宗一は一気に間合いを詰めて、核を破壊する。そうすると今まで群れていたエリューション達が動きを止め、波に浮かんで流される程度しか動かなくなった。 まとまっていた間に数を減らしていたこともあり、動きの鈍くなったエリューション達を始末するのは時間はかかったが、それほど苦労するような事はなかった。 ●日向と日陰 「沈んだり錆びたり……は無いんだっけ。えーと防水スプレー防水スプレー……」 ジルは海で遊ぶための準備を念入りに整える。囮として暴れて疲れが残っていないと言えば嘘になるが、遊ぶことが出来ないような怪我を負ったわけでもない。折角海を綺麗にしたのだから、堪能しなければ損と言うものだ。 「海で遊べるのはやっぱりええね」 珠緒は引越し準備で遊べなかった分を取り戻すかのように思う存分に泳ぎまくる。 「む、これは欠けているな……」 「これなんかどうじゃろう? なかなか良いとおもわんかぇ?」 そして、海の楽しみは別に泳ぐだけでもない。貝合わせに使うための貝を亜鈴は与市と二人で選別していく。 「水着になれんわしに付き合ってもらってなんだか悪い気がするの……」 「帰ったら綺麗に磨かないとだな」 申し訳なさそうな与市に向かって両の手のひら一杯に集めた貝殻を差し出して亜鈴は笑みを溢した。 「わしなんかに付き合ってくれて本当にありがとうじゃ」 「いや、なかなか有意義な時間だったぞ」 与市と亜鈴は沢山の貝殻を手に微笑みあう。 「……水着くらい、用意しとくんだったかね」 宗一は皆が楽しそうに遊ぶ姿を見ながら、どこまでも広がる青い空と海を見つめる。別に水着がなければ遊べないわけではないのだが、やはり海に入れるのとは入れないのでは違うのだ。 「もう夏も終わりか、気付けばあっという間だったな」 結界の影響を受けて無人となってしまっている海の家でエルヴィンは空腹からお腹を鳴らし、アシュリーは海上にいた間に湿気てしまった煙草を咥え、夏の終わりがもたらす冷たい風に寂しさを感じるのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|