●ガッシャーーーン ――そんな大きな音と一緒だった。 それから救急車のサイレン、集う野次馬。 ガードレールに突っ込んだ車はものの見事にひしゃげていた。 粉々のフロントガラスには、ベッタリと赤い、赤い赤い血が。 「女の生首が」 ××通りで事故があったらしいよ。 車が突っ込んだって、ガードレールに。 そりゃもう、真っ正面からぐしゃーって。 なんでも運転手の男が死ぬ間際にこう言ったんですって。 「女の生首が俺の目を」 やだ、なにそれ? 怖いねぇ…… あの通り、出るらしいよ。 オバケ? 事故で死んだ男と、例の『女の生首』がね……。 ヒソヒソ、ひそひそ、噂は町中を這い回る。 血だらけの男は虚ろな目をして呟いていた。 既に息をしていない彼はハンドルを握り締めたまま、いつまでも呟いていた。 「女の生首が俺の目を塞いだんだ。 女の生首が俺の目を塞いだんだ。 女の生首が俺の目を塞いだんだ。 女の生首が俺の目を塞いだんだ。 女の生首が 俺の 目を、目を。」 ころころ、血濡れたタイヤが彼の足下を転がる。 ●作戦会議です 「サーーテ。皆々様こんにちは。あるいは、初めまして」 くるん、事務椅子が回ってフォーチュナの『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)がリベリスタ達の方へと向いた。ニタリと尖った歯を剥いて笑いかけると、集まった皆を機械の目玉で一望する。 「私、メタルフレームでフォーチュナの名古屋・T・メルクリィと申します。ご存じの皆々様はどうぞ宜しく、ご存じでない皆々様もどうぞ宜しく。 ……サテ、今日は私の歓迎パーティでもないのでちゃちゃっと本題に入りますぞ。準備は勿論バッチグーですよね」 言うが早いかメルクリィは機械の腕を片方伸ばしてモニターを手早く操作し始めた。同時にもう片方の手は卓上に資料を広げ、ついでに口で説明も入る。 「今回、皆々様にやって頂きたいお仕事は戦闘経験の浅い方や肩慣らしをしたい方にうってつけのイージーな内容ですぞ。 内容は非常にシンプル……『エリューションを討伐する』だけです。 油断さえしなければ苦戦する事ぁないでしょうな……えぇ、『油断』さえしなければ。 あぁだからってカチコチに緊張する事もないですぞ? ま、取り敢えず皆々様は私の話を耳かっぽじってお聴き下さい」 まずはこちらをご覧下さい。コツコツとモニターを指先が叩く音が響く。 映し出されていたのは夜の路地。 切れかけて点滅している街灯の下、照らされているのはひしゃげたガードレール。その足元に花束や食べ物がお供えされている。――見覚えがある。 「『見覚えがあるぞ』……と思いましたね、皆々様? ご名答です。ついさっき皆々様にお見せした、私が視た『運命』の現場です。 おっと、まだモニターから目を離しちゃあいけませんぞ。よーく目を凝らして下さい。 見える筈です、今回のターゲットが」 メルクリィの言葉にリベリスタ達はモニターを凝視した。 すると――居た。異形が。 ハンドルを握り締めた血だらけの男と、女の生首から腕が生えた中空を漂う異形と、血だらけのタイヤが。 「見えましたか? それこそがエリューション、今回皆々様に討伐して頂きたい存在です。 ――事の発端はこの生首。彼女はこの男性をストーキングしていて……ある日、彼の目を塞いだのですよ、彼が車を運転している時にね。 それによって車はこのガードレールにクラッシュ――この『運命』は先程視ましたよね――彼は死に、そして彼女と同じ存在『E・フォース』になってしまったのです。 このタイヤは彼の車のタイヤが『E・ゴーレム』化した存在です。彼か彼女か、どちらかの怨念が覚醒させたのでしょうか……」 メルクリィは膝の上で金属の指を組み、具にモニターを見据えている。「真相は分かりませんが」そう言うと、説明を続けた。 「では個別に説明してゆきますぞ、しっかりお聴き下さいね。 E・フォースフェーズ1『事故幽霊』。女の生首に長い手が生えてフワフワ漂っているコイツです。 攻撃方法はこの長い手で殴ったり、皆々様の首を絞めてきたりします。また叫び声による衝撃波で全体攻撃をしてきますぞ。 次にE・フォースフェーズ1『ハンドル男』。事故で死んでしまった彼です。 攻撃方法はこの握り締めたハンドルで殴り付けてきたり、頭に刺さった硝子をひっこ抜きそれに呪詛を込めて投げてきたりしますぞ。この攻撃には『呪縛』の状態異常が伴う場合がありますんで、もし固まっちゃったらすぐお仲間さんに治して頂くと良いでしょうな。 最後にE・ゴーレムフェーズ1『タイヤ』。『ハンドル男』の愛車のタイヤですな。 転がって突進するという戦い方をしますぞ。ぶちあたると吹っ飛ばされちゃったりするんでお気を付け下さいね。 これらにはチームワークのへったくれもありません。皆で協力すればきっと倒せるでしょう。 誰がどれを狙うか、しっかり話し合うと良いでしょうな。 ――以上です。お分かり頂けたでしょうか? 一応、詳しい事はそこの資料に纏めたんで、後で目を通すなりして下さい」 メルクリィがリベリスタ達を見渡す。彼らが頷いたのを確認すると、満足気に頷き返した。 それからモニターを操作して画像をズームアウトさせると、今回の戦場となるのであろう場所の全貌が映し示される。 「戦う時間帯は深夜。この事故があった路地です。 切れかけの外灯が一つぽっちで光源が心許無いですな。暗視などを使用できない方は懐中電灯とかを持っていくのが吉でしょう。 このガードレールも必要に応じて使うのもアリだと思いますぞ。まぁ無理に使う必要は無いんですけどね……何事もアイデアと度胸次第ですな。 それと、ひょっとしたら一般人がやってくるかもしれません。結界とか何かしら策を考えておいてくださいね。 ――これで私の説明はお仕舞いです」 言葉の終わりにメルクリィはニッコリと、まるでリベリスタ達の緊張を和らげるかの様に微笑んだ。もう一度彼らの顔を見渡して、意気揚々と言い放つ。 「では、頑張ってきて下さいね、皆々様。 私はリベリスタの皆々様をいつも応援しておりますぞ。――お気を付けて!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月18日(日)23:31 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●南無阿弥見参 「――なんか都市伝説つーか現代の怪談でありそうなシチュエーションね。 どうせならジェットばばぁとかの方が面白かったのに」 スクーターの座席、『スカーレットアイの小夜啼鳥』ジル・サニースカイ(BNE002960)はヘルメットを脱いでその紫髪を夜風に靡かせつつ夜暗の周囲を見渡した。 「でもまぁ、簡単に潰せる今のうちに潰しときましょう、ってね。 おかげで余裕ぶっこいていられるわけだしー」 まだここには自分達しかいないようだ――スクーターから降りるその瞳は注意深く暗がりを見据える。 「初めての事件参加よ。できるかぎり成功させたいもんね」 握り締めた拳銃へ『アブない刑事』鳶屋 晶(BNE002990)は視線を落とし、強く胸に誓いを立てる。 (この銃にかけて……皆と共に帰るわ!) そして顔を上げた晶の赤眼に迷いはない。これ以上被害を増やさぬ為にも頑張らねばならない。 それは『のんびりや』イスタルテ・セイジ(BNE002937)にとっても同じであり、晶の言葉に頷くと暗闇を懐中電灯の光で照らした。 「一般の方にこれ以上被害が出る前になんとかしないとですね」 彼女と同じく懐中電灯を手に、『聖母の生まれ変わり?』澄芳 真理亜(BNE002863)も用心して周囲を見渡す。 「……初依頼が幽霊退治か」 聖職者を両親に持つ真理亜は親と共に悪霊退治に同行した事がある。が、それはあくまでもサポートであり、本格的に戦うのは今夜で初めてだ。 今の自分の腕前がどこまで通用するのか――試させてもらおう。 無論、失敗する気は微塵も無い。仲間も力尽きさせるものか。 (……その、なんだ、『仲間』を守るのは、当然だもんな) やってやるぜ。真理亜の瞳には決意があった。 ……幽霊。真理亜の言葉に有馬 守羅(BNE002974)はギクリとする。 「いや、ホント。こういう怪談にはあたし弱いんだけど」 でも相手はエリューション、斬れば死ぬ。うん、大丈夫。 「ったく、平穏無事に死んでれば幽霊になってまで斬られる事も無かったのに」 なんて、己を鼓舞した後に溜息と一緒に愚痴を一つ。 「女、と引きずり込まれた男、のエリューション、か……。 こんな調子で、増やされていったら、たまらない、ね」 数多の依頼をこなしてきた『ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)にとって今回の任務は苦戦する事など無いかもしれない。されど、驕って油断する事は決してない。 (私が、足を引っ張るとか……一番、笑えない、し……) 先達としても頑張らねばなるまい。携えたクローに電灯の明かりがキラリと映えた。 「事故で亡くなったのはかわいそうですが……」 暗闇を見澄ます『ひよこ饅頭』甲 木鶏(BNE002995)は小さく呟き、己がガントレットをもう片方の指先でそっとなぞる。 エリューションと成ってしまった以上は再び眠ってもらわねばならない。 (可哀想に、E・フォースに殺されてしまったのね……。 なぜE・フォースからストーキングを受けてたのかはわからないけど、自身もE・フォースになって人を襲うとか、ぞっとしないわ) 誰かに被害を出す前に、誰かを殺めてしまう前に、完膚なきまでに終わらせねば――私の初陣に向いてるかどうかは別として。『呪殺系魔法少女』招代 桜(BNE002992)はそう思い、照らされた彼方を見遣る。 光源を持ってきた者が多いので視界については問題なさそうだ。それに念入りに重ねられた結界のお陰で人の気配もない。 となれば、後は――エリューションを倒すのみ。 近付いてくる気配。 ……居る。 「――お悔やみ申し上げます」 木鶏はそれに対し手を合わせた。直後にはもう、凛然と臨戦態勢。 「サーチ&デストロイ! 魔法少女招代桜、目にした敵は抹殺よ!!」 一歩前に出た桜は意気揚々と張り上げた声と共にマジカル☆チェンジ(という名の武装)、ドン引かれたって気にしない気にしない。気にしたら負けだ。 「それじゃ、いくよ……気をつけ、て」 天乃の声に応え、自己強化を終えたリベリスタ達は一斉に敵へと飛び掛かって行った。 任務は初めてという者も多いが――それが何だ。 負ける訳には、いかない。 ●生存or往生 手筈通りに手際良く散開する。 タイヤへは天乃、事故幽霊にはイスタルテと守羅、回復役である真理亜を除く残りはハンドル男――ハンドル男から的確に各個撃破する心算だ。 「しかし幽霊もハンドル男も、中々気味が悪いわね。 色んな情報で見てきたつもりだけれど、実に撃ち甲斐があるわ!」 言葉と共に、シューターとしての感覚を研ぎ澄ませた晶がオートマチックをハンドル男へ向ける。 ウウゥ。死した男の口から漏れるのは体中の傷が痛い為か、理不尽な死への憤怒か、生者への憎しみか、はたまた――知る由はない。だから、討ち滅ぼすだけだ。トリガーを引く。鋭く構えた銃口から1$シュートが発射される。 晶の一本気な気性を表すかの様な、ぶれる事無き直線の弾道。撃ち抜く。 「私が相手、ですっ……!」 その脇を転ばぬよう注意しながら駆け抜けるのはイスタルテ。彼女の役目はハンドル男が倒れるまで事故幽霊をブロックする事――漂う異形がこっちを向く。長い髪の間からぶら下がる白い腕。それが振り上げられる。女の顔が憎悪に歪む。 血走るその目と、イスタルテの青い目が合う…… 「――ギャァッ!!」 刹那に事故幽霊が悲鳴を上げて仰け反った。イスタルテのテラーテロールに射抜かれたのだ。 無頼の拳は使わない。力は強くないし、叩くのは得意じゃないから。 「喰らえッ!」 事故幽霊が怯んだその隙、イスタルテに続いた守羅が猛然と大太刀を下段に構えた。 全身のエネルギーが刃に宿る。 全力一閃。 斜め上空へとかっ飛ばす! 「よっし、ホームラン!!」 得意顔で大太刀をヒュンと振る守羅。 しかしその側面をタイヤが襲いかかる。 「……動かない、で」 冷静に、確実に。 天乃の気糸がタイヤを絡め取り、それ以上の行動を許さない。 「あ、……りがと」 「うん、頑張っ、て」 ツンツンとクーデレ。お互い目を合わせる事はないが、相手を蔑にする事も無い。 お互いの目標へと攻撃を開始する。 一方、ハンドル男と戦うリベリスタ達も健闘していた。 「当たらなければどうという事はな――ひぎゃっ!?」 足元から伸び上がった影と共に戦場を駆けていたジルであったが、その体にハンドル男が呪詛と共に投げた硝子が命中する。体が固まる。接近してくる男が憎悪に血だらけの歯を剥き、ハンドルを振り上げる。 「ヒャッハァアーーーー!! 私の演奏<カルテット>ッ! 存分にッ、味わいなさァいッッ!!」 ウルトラハイテンション。 瞳孔ガン開きな桜の魔曲・四重奏がハンドルを振り上げた男へ次々と着弾した。激しい魔術に縛られ苛まれ、ハンドル男が悲鳴を上げる。すかさず晶が1$シュートを撃ち込んでゆく。 貴様の様な魔法少女が居るか! というのはさておき、兎にも角にも今の内。メイジスタッフを構え、真理亜は詠唱によって清らかなる存在へと呼びかけ始めた。 「清かなる者よ。我が声に応え、今ここに慈愛の微風を為せ――」 真理亜の厳粛たる声が戦場に響き、癒しの祈りは清らかなる存在へと。 かくして生み出された癒しの微風がジルを包んだ。彼女の体から苦痛が消え、ついでに呪縛も解けた。 「……よくもやってくれたね」 ジルがハンドル男を睨む。男が頭に刺さっていた硝子を引っこ抜いて振り被る。投げる――が、それは晶の弾丸が的確にぶち抜いた。空中で爆ぜる。 銃口から立ち上る硝煙の彼方、晶の口唇が不敵に笑んだ。 木鶏が業炎撃でハンドル男を殴り付け、そこへジルが躍り掛かる。 「そーれ、ハエ叩き!」 ブラックジャック。破滅的な黒いオーラがハンドル男の頭部を完全に叩き潰した。 良し、次は――彼女らが振り返った瞬間、鼓膜を貫いたのは事故幽霊の凄まじい金切り声。衝撃波。全身を襲う。 「ッッ!」 全身が痛む……しかし木鶏は鋭く事故幽霊を見据えた。それはイスタルテの首を絞め付けていた。やや離れた所では殴り倒されたらしい守羅が大太刀を突いて立ち上がろうとしている。 「惚れた相手に熱心なのは構いませんが……迷惑をかけては、いけませんよ!」 凛喝とした声と共に小鳥が恐るべき速度を持った蹴撃を繰り出す。足技は苦手、なんて彼女は思っているが、それは真空波を巻き起こして仲間を締め上げる不気味な腕を正確に刎ね飛ばした。 「大丈夫ですか!」 「ケホッ……へっちゃらです!」 絶叫と血飛沫を上げるそれから飛び退きつつイスタルテは木鶏の言葉に応える。そこへ真理亜の清らかな詠唱――癒しの福音が鳴り響く。リベリスタ達の傷が癒えてゆく。 「完膚なきまでにぼこぼこにしてあげる!!」 その間にも輝くオーラを纏った守羅は事故幽霊との間合いを一気に詰めるや怒涛の剣戟ラッシュを繰り出す。大太刀の刃が、その軌跡が煌めいた。 「――そこッ!」 晶も正確無比なスターライトシュートで援護射撃を行う。光り輝く弾丸は闇を裂き、敵を容赦なく打ち抜いてゆく。 応戦する様に事故幽霊は金切り声を上げたが、真理亜の福音が立ち所にリベリスタ達の傷を癒して行った。 最中、ハイバランサーによってガードレールを駆けた天のはタイヤとの間合いを鮮やかに詰めた。その瞬間にはギャロッププレイ、気糸で縛り上げたタイヤへ――植え付けるのは、オーラで作られた死の爆弾。 「……爆ぜろ」 かくして、大爆発。反動で自らの身も少しだけ傷ついたが、気にかける事はない。爆煙――その中からタイヤが突っ込んできた! 「! ――うっ」 撥ね飛ばされる。受け身もままならず転倒する。 タイヤはそのままリベリスタ達へ突っ込んで行く。 しかしそれを見逃さない者がいた。 「ああもうちょろちょろと! 邪魔よ!」 ジルがスローイングダガーを投げる。凍結攻撃にタイヤが怯む、その一瞬。 「行かせ、ない」 タイヤの目の前に現れたのは天乃。――爆砕。ハイアンドロウ。 今度こそタイヤは完全に沈黙した。 手伝うよ――天のはそのまま顔を上げる。その視界に映るのは、組み上げられる魔術と共に射撃体勢に入った桜。凄まじい集中力と高速詠唱。練り上げられる魔力。 「演奏ならちゃんと弾けって? 失礼ね、ちゃんと弾いてるじゃない……!」 狙うは最後の一体、事故幽霊。 刹那に閃く四重奏。轟音、閃光。 恐るべき魔導旋律は激しい輝きと共に――悲鳴すら残さず、事故幽霊を葬り去る! 「――呪殺完了、私の演奏、如何でした?」 ジャン。ベースを奏で、桜のウインク一つ。 ●そして静夜 「『幽霊だから斬れません』、とか言われなくてよかったわ、ホント」 ヤレヤレ。静寂の訪れたそこを一瞥した守羅は大太刀を収めて一息を吐く。 完膚なきまでにぼこぼこにすれば成仏してくれるはず……なんて彼女らしい考えをしつつ見遣る場所は、切れかけた街灯に照らされたひしゃげたガードレール。 花を手向け、祈りを捧げる仲間達。 あの男は望んでE・フォースになったわけではない。 例え生前がどれだけ酷い人物だったとしても……死後は冥福を祈ってあげるものじゃなかろうか。なんて、黙祷を捧げつつ桜は思うのだ。 イスタルテも黙礼の中、彼の魂が天国へ逝ける事を心から祈った。 晶も警察としてホトケの成仏を願わずにはいられない。心の中で静かに祈った。 「ごゆるりと、おやすみなさい」 木鶏も手を合わせたまま呟く。傍でジルも同じく手を合わせていた。 その一歩後ろ、真理亜も黙ったまま祈りを捧げていた。 「陳腐な言葉しか言えないけどよ……安らかに、眠ってくれ」 なんて。両親の様に笑って送ってやる事は……自分にはまだ、到底出来ないけれど。 一足先に手向けを済ませた天のは本部へとの連絡を終了する。直に処理班などがやって来るだろう。 行こう、と声をかけると仲間達は立ち上がる。 最後に平穏が訪れたそこを振り返り――後は、静寂。 足音も消える。 暗闇。 点滅する光の下で、祈りと共に手向けられた花々が夜風に靡いていた。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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