●王の帰還 「我は王なり」 その存在は夜の闇の中、高らかに宣言する。全身に包帯を巻き、骨と皮だけで立ち尽くす死体。人はそれをミイラと呼ぶのだろう。 「起きよ、我が下僕」 宣告のたびに不可視の波動が辺りに広がる。その波動に反応するように、地面が盛り上がった。 起き上がったのは、死体。命なき骸がまるで王の命令に従うように起き上がり、おのれを起こした存在に向き直る。 「王は我なり。ここに我が王国の再興を宣言する」 応えるものは何もなかった。ただ死体だけが集い、王に従う。 「我が威光を広めるのだ。そして下僕を集めよ」 死者の王は進む。進軍のたびに王に従う下僕は増えていった。 ●死者の行進 モニターに写るのは二十を超える死体の行進。そしてその死体が掲げる輿の上に座る包帯姿のエリューション・アンデッド。 「討伐対象はこのエリューション・アンデッド。フェーズは2。今から『王』と呼称する」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は集まったリベリスタたちに向けて淡々と説明を開始する。 「このエリューションは他のと違って特殊な増殖性革醒現象を持っている」 「特殊?」 「人間の死体なら何でもエリューション化させることができる」 その意味を知り、リベリスタたちは息をのむ。『王』が進む場所に墓地があればそれだけ部下が増えることになる。いや、墓地だけではない。人が死ねば死体になる。この死体の軍団に殺されれば、彼らの仲間入りだ。 「『王』達はこの位置からこのルートを通ると予知できた」 モニターに地図が映し出される。山道を抜け、その先にあるのは小さな村。 「人口五十人ほどの村。墓地には百を超える死体が埋まっていると予想される。 今夜、『王』はここを襲おうとしている」 「つまり村を襲う前にこいつ等を止めろ、というわけか」 問うリベリスタにイヴは首を横に振る。 「村は見捨てて」 「何……!?」 「二十体のアンデッドを乗り越えて『王』に挑むにはこの人数では危険すぎる。 アンデッドが村を襲っている間、『王』は少量の護衛を残して孤立している。その状態なら苦労なく倒すことができる」 「じゃあ、村人たちには『死ね』って言うのか!?」 「みんなの命が大事」 淡々と答えるイヴを冷徹と攻めるリベリスタはいない。彼女とて村人は救いたい。だがそのためにリベリスタたちに『死ね』と言えるはずもない。 「増殖性革醒現象によりエリューション・アンデッドになる前に『王』を殺せば村人はEアンデッドにはならない。『王』を倒せば他のアンデッドは統率を失い烏合の衆になる」 つまり、『王』を倒せばこの戦いは終わるのだ。だからこそのこの作戦。 「……『王』は山道を縦二列の陣形で進んでいる」 苦渋の表情を見せるリベリスタたちにイヴは告げる。 「縦に伸びた陣形を横から強襲すれば、他アンデッドを相手することなく『王』を攻撃できる。 電撃作戦で倒せればよし。不可能なら二十体のアンデッドに襲われる。そんな危険な作戦もある」 地図に新たなポイントが光る。まっすぐに伸びる道。身の隠せそうな草木。ただしその気になれば二十人近くの乱戦は可能であろう広さ。 「作戦は皆に任せる。ただし危なくなったら逃げて。もし殺されたら、あなたたちを倒さないといけなくなるから」 イヴの言葉に苦い笑いを浮かべながら、リベリスタたちは顔を見合わせた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月06日(火)23:37 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●死者の行進 エリューションはそれ自体が常人が敵うことのないほどの戦闘力を持ち、その牙は覚醒者でも油断をすると死に至るものである。 それが二十体。真正面からぶつかれば、同数の覚醒者でも勝利は危うい。 ましてや八人ではさらに勝ち目は薄い。確実に勝利を得るためには、何かを捨てねばならない戦力差。 事実、遠くに見える二十体のエリューション・アンデッドを遠視しながら『デイブレイカー』閑古鳥 比翼子(BNE000587)は身震いした。 『村は見捨てて』 フォーチュナの声が蘇る。確かにそのほうが効率はいい。何より安全だ。 しかし、リベリスタたちはそれを選択しなかった。 (私は私の攻めを行う) 『レッドキャップ』マリー・ゴールド(BNE002518)は大剣を握り締め、呼吸を整える。恐怖ではない。戦う為に体内に力を込めるための呼吸。村は見捨てず、ここで『王』を討つ。決意を込めて、前の戦いで得た二対のナイフを握り締めた。 (村人を見捨て、世界を救うためにこの場をやり過ごせと?) 先祖より代々受け継がれてきた全身鎧に身を包み、『守護者の剣』イーシェ・ルー(BNE002142)は騎士の誉れを意味する片手剣を握り締めた。自分の心臓の音が響く。それは怒りだ。見捨てろ、という作戦に対する反発。世界も人も守るという彼女の決意。 「やれやれ、君たちの熱い青春っぷりにはさしもの僕も驚愕を禁じえないよ」 山道に響かぬように小声で『ディアブロさん』ノアノア・アンダーテイカー(BNE002519)は言い、肩をすくめる。死者に紛れる為に包帯で自らをぐるぐる巻きにしながら、村の事を思う。見知らぬ村。見たことも話したことも無いやつ等の為に、自らの命を賭けるとは。 「良いじゃん、若い内の苦労は死んででもしろって言うからね」 ノアノアは唇を笑みの形にする。視覚、聴覚など全ての感覚を動員し、奇襲のタイミングを図り始めた。 (この先には人が生活している『普通』の生活がある。普通じゃない僕達は力があるからこそ、守りたい。……いや) 守り抜く。『高校生イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)は静かに闘志を燃やして『王』を待つ。遠視のスキルを持たない彼にも行進が見えてきた。二列に並ぶ死者の行進。そして輿に抱えられた『王』の姿。 (難易度は高いですが内容は敵将を討てばすべて終る。シンプルです) 『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)は姿が見えた『王』に向かい意識を集中しながら、呼吸を整える。手にした灯りを落とし、不意打ちがばれないようにする。大丈夫、士気は高い。即効で終わらせれば勝機はある。神経を研ぎ澄まし、弓に手をかける。 (……怖いです。泣きそうです) アンデッドの行進を見ながら、『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)は自らの膝が震えていることを自覚する。正直逃げ出したくもある。だが、逃げるわけには行かない。恐怖におびえてしくじる事は許されない。サイは投げられる直前。ここまで来れば全力で戦うしかないのだ。 (博士は学校の頭。同じ指導者として王には負けられない!) 墨染めした包帯を身体に巻きつけながら『右手に聖書、左手に剣』マイスター・バーゼル・ツヴィングリ(BNE001979)は王を睨みつけ、杖を握り締める。人払い用の結界と、自らの体内に魔力を循環させて王を待つ。 「不意打ち後、二十秒。これを超えれば撤退だ」 夏栖斗は確認するように撤退条件を口にする。事実、それ以上戦えばアンデッドに完全包囲されてしまうだろう。そうなれば逃げることすらできなくなる。 ノアノアが軽く手を上げる。ゆっくりと指を折り、襲撃のカウントダウンを示す。3……2……1……0! 0を示すと同時にノアノアの手が上がる。それと同時にリベリスタたちは王に向けて駆けて行った。 ●開戦 「死体が死体連れて王様ごっこなんて、ちゃんちゃらおかしいね!」 一番槍は比翼子。二本の短剣を足で剣を掴み、空中を滑空しながら剣を振るう。ソードミラージュの跳躍力で地を蹴り、常人より長く空に留まりながらの剣舞。変則的な演舞は『王』の思考を困惑させた。 「行け! 此処で我ら敗れるは50の灯火が消える事を忘れるなよ!」 ノアノアは懐中電灯で戦場を照らし、戦場の光源を作る。明るくなった瞬間に『王』を見据え、その能力を見切ろうとする。流れ込んでくる情報から、現状必要なものを選択する。歯を噛み締め、情報を要約して告げた。 「こいつはきびしいぞ。さすが死にぞこないの王。体力がとんでもない」 「知らん。体力がどれだけあろうが、削りきるのみだ」 マリーが王の背後から剣を振るう。鎖骨の間を狙い、力を込めて剣を突き立てる。自らの体力を削り発電し、『王』の内部に直接雷を叩き込んだ。 「内部からの攻撃ってのはミイラでも効くのか?」 答えは無い。だがダメージを与えた感触はある。一撃の反動で眩暈を起こしながら、マリーは剣を引き抜いた。 「ご機嫌麗しゅうミイラの王様、ちょっと乱暴な謁見だけどな」 夏栖斗は三歩踏み込み、拳を『王』の肩に当てる。大地をしっかり踏みしめ、まっすぐに背筋を伸ばし、イメージする。体内の気を拳を通じて相手に送り込むイメージ。イメージは一瞬。思考から現実に戻った時には身体はすでに動いている。拳を通じて『王』の内部を衝撃が駆け巡っていた。 「よい。下賎なモノに礼節を求めはせぬ」 不意打ちを仕掛けられた。その事実に『王』は戸惑うことなく言葉を返す。焦りはない。むしろ余裕すら感じさせる。 「うるせぇ! そのまま舌噛んで死ね。この干物!」 口汚く罵りながら間合いを詰めるうさぎ。『王』が反応するより早くうさぎの指先が動く。包帯の上をなぞる指が刻むのは、死の刻印。滅びを逃れた死者の王を、地獄に戻そうと刻印が光を放つ。 「この険しい坂は他人に乗り歩ける貴方には登れません。 シメさせて頂きます。強行各襲、魑終光仁具(チェインライトニング)!」 戦場の新たな光源が発生する。それはマイスターが乗ってきたスクーターのライト。そのライトの逆行になる位置でマイスターは稲妻を生み、アンデッド全体を攻める。荒れ狂う電光は『王』を含め死者の行進全てを穿つ。 「さあ、死体の王様、死に直しの時間ッスよ。恐怖に喚き理不尽に嘆き、無様に逝くがいいッス」 イーシェは自分自身にオーラをまとわせ、『王』に突撃する。袈裟掛けに一撃、帰す刃でさらに一撃。『王』を倒すと精神を研ぎ澄ませた効果が、ここに現れる。回避など許さない。怒涛の攻めが繰り広げられる。 「こう暗闇で集中していると本当に梟みたいだ」 七海は『王』のみに意識を集中し、弓を構える。すでに乱戦となっているがそんなことは問題ない。重ね重ねた集中力が、まるで時間を止めたかのように世界をスローにする。弓が放たれる瞬間まで、世界は無音。放たれた矢が『王』の眉間に突き刺さった。 集中が解けた瞬間、戦場のざわめきが七海の耳を襲った。それは仲間の攻撃音もあり、そして『王』の命令もあった。 「我が敵を滅ぼせ。下僕よ」 『王』の命令に従い、アンデッドがリベリスタたちに向き直る。 「――来るぞ」 マリーがトレードマークの帽子を押さえながら言う。戦いは、これからだ。 ●攻防 「命あるものよ、呪われよ」 混乱から立ち直った『王』が命令する。目に見えない何かがリベリスタたちの身体にまとわりつき、意思の力を削いでいく。光の影に隠れているマイスターにもそれは纏わり付いた。いかに視覚を遮ろうとも、雷の軌跡をたどればそこにいることは認識できる。 ノアノアが邪気をはらう光を放つが、全てのリベリスタから王命から解放されたわけではない。包帯で顔を覆う『王』に表情などあるはずもないが、それでも愉悦の感情が浮かんでいるのを感じる。王からは逃れられぬ、と。 「行け、我が下僕よ。死者の行進に取り込むのだ」 そして王の周りにいたアンデッドが動き出す。 「『王』をかばう気はないようだな」 「初手で囲んだのが功を奏したか。この程度では死なないという自信もあるのだろうが」 マリーの言葉にノアノアが答える。真相はどうあれ、『王』への攻撃を遮ることがないのならやることは一つ。 「狙いは王のみ! 一気にたたきつぶすッス!」 「一気に攻めちゃえー」 イーシェと比翼子の刃が乱舞する。空を飛び交い三次元的に刃を振るう比翼子。一撃必殺の稲妻の刃を振るうイーシェ。 もちろん他のリベリスタたちも手を休めない。『王』の包帯を握り締め、逃さぬように拳を振るう夏栖斗。『王』の回避の先を読むように間合いを詰めて、印を刻むうさぎ。雷剣を振るい『王』を攻めるマリー。 マイスターが戦場全てに稲妻を放ち他のアンデッドごと『王』を傷つけ、七海の矢が前衛を囲むアンデット毎『王』を貫く。 「無駄だ。その程度では『王』は朽ちぬ。永遠ゆえに我は『王』!」 アンデッドの牙がリベリスタたちを傷つけ、『王』の指先がマイスターを指差す。まるで冷たい手で直接心臓を握られたような感覚。呼吸が乱れ、膝をつくマイスター。 「はっ、貴様はたかだか王。王如きに、魔王が敗れる訳にはいかんだろう」 ノアノアの放つ暖かい光が、マイスターを襲う虚脱感を取り除く。青い顔で立ち上がるマイスターだが、疲労は大きい。 ゆっくりとだが数が増え続けるアンデッド。前衛が抑えれる数を超えれば、あふれたアンデッドは後衛の方にも向かう。 しかしリベリスタたちの作戦は変わらない。あくまで『王』の一点集中。電撃作戦で頭を潰す。その方針に変わりはない。 アンデッドの爪に傷つけられながら、しかし振り返りもせずにそれぞれの武器を振るう。 しかし『王』は崩れない。かなりの傷を負っているのだが、それでも倒すには至らない。 戦闘開始から三十秒経過。撤退条件を示す鐘が鳴った。 ●分水嶺 リベリスタを囲むエリューションアンデッドの数が増える。蓄積したダメージのことも考えれば、これ以上戦場に留まればこちらが倒れる可能性もある。 何よりも完全に囲まれてしまえば退路がなくなる。今ここが引き際。せまるアンデッドの足音を聞きながら、リベリスタたちは踵を返―― 「時間か」 マリーは撤退の合図に短く応答し、剣を構えなおす。 退路を開く為ではなく。 「私に倒す以外の選択肢はない」 『王』を討つ為に前に。 「すまねぇッスが、やっぱり引くわけにはいかねぇッス」 イーシェも兜を脱いで『王』を見据える。これ以上は活力が足りない。血を吸ってエネルギーを得なければならない。戦い続けるために。村を守るために。 「これは作戦とかそんなんじゃなく誇りの問題ッス。アタシの心が引くなと言ってるんスから、仕方ねぇッスよね」 踵を―― 「何を言ってるんだ。マリー、イーシェ」 口を開いたのは撤退条件を設定した夏栖斗だ。 「そんなの今さらだろう。村は守るんだ」 「この辺で逃げないと危ないというのは、夏栖斗さんが決めたんでしょう」 「僕は忘れっぽいからな」 「まぁ、御厨さんはそういうと思いましたが」 「あたしも忘れたー!」 「酔狂だな。だがそれもいい」 ――リベリスタ達は踵を返さない。 各々に軽口を叩きあい、その顔には笑みさえ浮かべてさえいる。絶望的な戦力差の中にあって、誰もが瞳に絶望を写していなかった。 唯一の希望である『王』の撃破。それを目指し、大地を蹴った。 「次があれば、自分の力だけで登りなさい。バーゼル流強行術……。 矢害終即ッ『高王(ハイキング)』ッ!!」 こうなれば周りのアンデッドを狙うことに意味はない。マイスターはウィザーズロッドを構え、十字の印を切る。魔力が一点に収縮し、白い弾丸となった。放たれた弾丸は狙い外さず『王』の肩口を貫き、底から『王』の肉体を侵食していく。 「う~ん。そろそろ逃げ場もなくなって来たかな」 移動しながらの攻撃は、ただ移動するよりも移動距離は少なくなる。ましてやアンデッドの数はもうリベリスタの数より多い。後衛にまで迫ったアンデッドに傷つけられながら、七海は弓を放つ。一射の矢が七海の神秘の力で光の尾を引き、『王』とその周りのアンデッドの力を奪っていく。 しかし反撃とばかりに『王』の呪いがリベリスタたちを苦しめ、アンデッドの爪がリベリスタたちの肉体を傷つけていく。 「っ! ……山道の先には行かせません」 体力の劣るマイスターが倒れるも、運命の力を振り絞り立ち上がる。 マイスターだけではない。七海や比翼子も運命を削り、失いかけた意識を取り戻す。 「そのまま平伏しておれば、我が下僕となって永遠を生きれたものを」 「お断りだ。そんなことになったら閻魔様より怖いのに追い掛け回されっからな!」 夏栖斗の脳裏に浮かんだ人物は、そんなことになったら本当に追いかけて一撃を食らわしてくるだろう。おそらく無感情に。だけど泣きながら。させっかよ、そんなこと。 「死ね! 早く! この黴臭ぇ干物が!」 うさぎは恐怖と戦いながら、『王』に死の刻印を刻み続ける。刻印を打つ回数に余裕はある。だがアンデッドの攻撃を避けられるかどうか。 「わが意に従え――」 「その必要はない。死者の王よりも魔王の方が偉い」 『王』の威光からリベリスタを守り続けたのは、ノアノアの放つ光だ。思わず膝をつき動かなくなりそうになるところを、魔王の自信と柔らかな光が打ち払う。光を放つ背後から迫るアンデッドの爪。 「ノアノア!」 「構うな。後もう少しだ……!」 背後から攻撃を受け、傷つきながらノアノアは『王』を見る。にたぁ、と笑いながらノアノアは意識を失った。 ノアノアだけではない。さらに集まったアンデッドの猛攻で先ほどの攻撃に耐えたリベリスタも耐え切れずに膝をつく。意識がぼやける。重力にひかれて落ちていく感覚。 「ま……だ、だ!」 しかし運命に愛されたリベリスタは、その運命を燃やすことで奇跡を生む。 「やらせはせん。やらせはせんよ!」 比翼子が『王』の頭上を飛び交い、足ではさんだ剣で切り刻む。右に左に時には上に。大地を必要としない三次元的な戦い方。ひらりひらりと飛び交いながら、隙をついて刃が煌く。 「こちとら伊達や酔狂で正義ゴッコやってんじゃねぇッスよ!」 イーシェが稲妻の剣を振るう。『王』がその剣を右手で受け止める。 「ポーンばかり並べても鉄壁とは言えんぞ」 反対側からマリーが大剣に雷を纏わせ斬りかかる。その攻撃を左手で受け止める『王』。 「我は……『王』! 『王』は、滅びぬ……永遠に!」 激しく帯電した二本の紫電が死者の王を挟み込む。苦悶の声を上げ刃を弾き返そうと『王』は力を込める。 「貴様のなけなしのイノチはアタシが奪う! 死体は死に続けろ!」 「チェックメイトだ」 しかしそれよりも強く、二重の雷剣が『王』を襲う。退くことなく常に前に進む二人。その二人がさらに一歩踏み込み、剣を振り下ろす。 「『王』は……滅ビヌゥゥ、ウガアアァァァァァァ……!」 落雷に似た閃光と轟音。それが死者の王を物言わぬ骸に変える一撃となった。 ●勝利の証 『王』が滅び、統率を失ったアンデッドを掃討するのは容易かった。『王』の命令がなければ攻撃に対して反撃すらしない状態なのだ。 とはいえ、リベリスタの疲労も大きい。掃討が終わることには疲労もかなり蓄積しており、皆山道に座り込んで空を見上げていた。 「動けるヤツいるか?」 「あたしは無理ー」 「さすがにきびしいですね。アークに迎えに来てもらいます?」 「さんせー。山道を下るのは辛い」 そんな理由でアークの救護班が来るまで、全員そろって夜空を見上げていた。 空に見える炎の華。少し遅れて聞こえる炸裂音。 花火。 おそらく村で花火大会があったのだろう。夏の最後の花火大会。赤、黄、橙。色とりどりの花火が上がる。 「綺麗だね」 「ああ、少し木が邪魔で見難いけど」 「木に登ればもう少しよく見えるんじゃない?」 「そんな体力があれば、ですが」 結局、動くことかなわずそのまま花火を見る。花火鑑賞にベストポジションとは言いがたく、痛む傷を抑えながらなので美しいと思う気力もないけれど。 「――ねぇ」 誰かが呟く声。 「私たちは守ったんだよね」 あるものは肯首で。あるものは言葉で。あるものはジェスチャーで。あるものは無言で。それぞれのポーズでその言葉を肯定した。 空に浮かぶ花火もいつしか途絶え、その頃にはリベリスタたちもアークの救護班に収容されていた。 彼らの活躍は秘匿され、誰にも感謝されることなく村は明日も日常を刻み続ける。 しかしそれを不満に思うリベリスタはいない。 悲劇のない生活こそが、リベリスタの最大の報酬なのだから。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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