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【~if story~】犬と狼

●if 
 もしもの物語である。
 これより語られる物語は可能性として実在しうる、そう遠くない未来のことだ。
 神秘の世界――。
 フィクサード、あるいは他の脅威となる異世界の因子こそがリベリスタにとっての“敵”である。
 しかし、そのリベリスタとて分類上はエリューションに過ぎない。
 “人間ではない”と、そう考えることもできる。
 
 もし、人間とエリューションの戦争が起きたとすれば――。
 あなたは、いかなる決断を下すのだろうか。

●天寿法
 202X年、北欧のとある小国が消滅した。
 203X年、国連は人型エリューション人権条約を制定した。
 204X年、欧州連合はバチカン市国へ宣戦布告。神秘社会と人間社会との対立は決定的となる。
 205X年、バチカン市国、滅亡。

 約40年という歳月によって、科学は神秘を凌駕しうる領域に達しつつあった。
 人類は石器を、鉄器を、銃器を発明してきた。それと同じだ。破界器もまた、通常の人間が扱える、神秘とは程遠い凡百の道具へと進歩していた。40年前である1970年に初めて発明された携帯電話らしきものは、201X年の携帯端末へと格段に進歩した。現代における40年の歳月は、それほどに速い。
 その進歩を促したのは北欧のとある小国が消滅した大異変である。
 詳細は未だ諸説あるが、問題は、その大異変の元凶はバチカン市国であるとされたことだ。
 “世界を滅ぼしかねない怪物を倒すために、小国ひとつという最小限の犠牲を払った”
 小を捨て大を救う。
 リベリスタの行動理念を守り、自らの勢力を激減させ、最大限に世界全体へ寄与したバチカン市国に対して列強各国――表社会の支配者達が抱いたのは恐怖に他ならない。
 かねてより、各国は自国のリベリスタ勢力を養い、神秘防衛に務めてきた。裏返せば、遠く古より神秘なくして国家は成り立たず、その盟主たるバチカン市国による間接的な支配下にあった。
 バチカンは最小の国家にして最大の権威で在り続ける。いつまでも。
 ――そう、神秘に属するものの大半は信じていた。
 しかし反旗は翻された。
 エリューションにまつわる情報は次々と表社会の白日の下に晒されてゆき、ついに国際法により人型エリューションが定義づけられ、通常の人間と同等の人権を保証することになった。
 しかし、全てにおいて人間より秀でた人型エリューションに人間と同等の権利を制定すれば、そこに生じるのは埋めることのできない“格差”だ。なにせ、寿命さえもまるで違うのだ。
 だとしても圧倒的に数において勝る人間には、民主主義の名の下に“格差”を埋めることができた。これまで人型エリューションが享受してきた特権を制約する法律が次々と定められていく。
 ついには『人型エリューション天寿法』といわれる“限りなく平等な法律”まで登場した。

 “我が国は人型エリューションが人間の平均寿命に達した時、その天寿を全うさせねばならない”

 人間と等しい人権を得るならば、人間と等しい寿命を以って死なねばならない。
 これは即ち、百年余りをすでに生きた人型エリューションへの死刑宣告でもある。厳密には、基本条文に付随して“莫大な納税”ないし“過酷な役務”といった免除の手段はあれど、それらは勝手に与えた人権を根こそぎ奪い返すものにほかならない。
 この法律が悪法か、否か。
 それはより後世の判断に委ねられるとして、この天寿法は人型エリューションの勢力を二分した。
 『俗人派』
 『超人派』
 俗人派は天寿法を受け入れ、人間社会に埋没しつつも日々平穏を謳歌したいと願った。
 超人派は天寿法を受け入れず、神秘社会に隠れてあるがままの自分を謳歌したいと願った。
 205X年、超人派の総本山となるバチカン市国はついに滅亡した。
 これから語られる物語は、そんな世界での、小さな事件である。

●犬
 『告死局』第二作戦会議室。
 ここは天寿法の名の下に、天寿の強制執行を行っている行政機関の一室である。
 あなたは『告死局』に属する執行官だ。制服規定はないものの、職業柄、黒いスーツ等を選ぶものが多いのか、同席する仲間や職員の服装も黒を基調としている。
 会議室の内装は、さりとてそう大仰でもない。どこの企業にもありそうな、観葉植物が枯れない程度に日差しの届く一室だ。不審な点は、部屋の片隅にケース入りのカプメンが2箱、40食も常備されている点くらいだろう。
「お集まりですね。今回の執行対象について、これより執行官の皆さんにご説明いたします」
 黒田しのぶ監察官。
 市松人形と影に日向にいわれる切り揃えた黒髪を除けば、取り立てて特徴のないフォーマルな女だ。
 いや、黒田しのぶには最大の特徴がある。
 それは“特別ではない”ことだ。せいぜい、育ちの良さとキャリア組らしいソツのない仕事ぶり、二十七歳と若くして管理職の地位にあるという程度のことだ。
 黒田しのぶは異能を持たない。
 百年そこら生きることも危うく、些細な骨折ひとつ治るまでに一月もかかる、それでいて未来を予見するといった長所すらない“ただの人間”だ。もっとも、現在においては“正規化破界器《ノーマライズ・アーティファクト》”によって革醒者の圧倒的優位は失われて久しいが――。
 そうした通常人は常に、執行官の上に立って指揮する監察官として配置される。
 建前はさておき、危険分子である革醒者にその革醒者を取り締まる組織の主導権を握らせることはできないわけだ。
 毒を以って毒を制す。
 ――劇毒扱いされてなお、告死機関に執行官として所属せねばならない理由があなたにはある。
 その真の理由を知るのは当人のみとして、多くは“天寿法の免除”というエサの為だ。
 莫大な納税か、過酷な役務か。
 “常人を超越した能力を有する権利の代償に、多大な義務を負うこと”
 高所得者は累進課税によってより多く税を支払うように、革醒者もまたより多くの義務を求められる。つまりは執行官という役職こそ“過酷な役務”の一例、というわけだ。
 天寿法の適応は、満25歳より。免除を得る場合、告死局の管理登録を受けることと天寿の設定年齢に達するより先に納税か役務をこなしていく必要がある。
 ――これらの現状に不平不満を抱く革醒者は少なくはなかった。
「今回の執行対象は旧アーク所属の革醒者、名は――」

●狼
 雑踏を、人の海が慌ただしく波打っている。
 幻視を纏わず、学友と駄弁りながら歩くフェリエの混血の女学生とすれ違った。一瞬、こちらを奇異の目で見つめ返していたものの、すぐに自らの身を置くごく当たり前の日常へと戻っていった。
 “あなた”は考える。
 世界を救った英雄のひとりが今、救った世界に置き去りにされつつあるという現実について。
 現在の崩界レベルは5%前後。極めて安定したボトム・チャネルにおいて、かつてほどに深刻なエリューション事件は少ない。こと、自然発生する怪物たちは激減した。
 崩界した世界は旧来の住民を拒否するならば、崩界なき世界は新たな住民を拒否するのだろうか。
 地下鉄に乗る。
 あれから何十年と経って、人口減によって電車の混雑はマシになったかと思えば、採算性のために路線の運行本数を調整しているので常に快適とは言いがたい。
 電子書籍より未だに紙の本が愛読されていることは車内をちらりと見渡せばわかる。
 ふと広告を見やれば、どこかで観た顔が映っていた。
 革醒者であることをいち早くカミングアウトしたことで話題になったアイドル(※性別は想像に任せる)で、老いることのない永遠の美貌によってブレイクから長い年月を経ても未だに表舞台で晴れやかに活躍している。
 広告は、新型の“リミッター”についてだ。
 各能力を常人と同等程度に抑制するリミッターは、革醒者の“自主規制”の極地というべき産物だ。日常生活において、自由に解除できないリミッターを装着していれば、革醒者は“不要な可能性”を排除できる。
 透視、洗脳、幻惑――。
 能力の悪用は容易い。しかし、能力を悪用していないことを証明するのは困難だ。李下に冠を正さず。国立学校は例外なくリミッター装着なしに学生は受験できない。先ほどすれ違ったフェリエ二世の女子学生はことさら抵抗感もなく、オシャレの一部として腕輪型のリミッターを着けていた。新世代の革醒者にとってはすでに日常の一部だ。
 新聞の一面記事に躍る活字は『リベリスタ、飛行機墜落阻止! 乗客二百五十七名を救う』だ。
 喜ぶのは早い。華やかな英雄は一握り。世に起きる大きな飛行機事故の数など、年間二桁も無い。日本国内の死亡事故に限っていえば、何十年間と起きていないのだ。事故は未然に防ぐものだ。誰もがそうは輝けない。
 バチカン市国での決戦にて、革醒者の自由と権利を謳って戦った者達の多くは死した。よくて国際手配の犯罪者、かつてのフィクサードと等しい存在に身を落とした。
 神秘の世界では今や、フィクサードとリベリスタの垣根はより曖昧となりつつある。
 凡人の世界に尽くすか埋もれることによってのみ存在を許される屈辱に、より高次の存在であると己を位置づける実力者たちは耐えかねたのだ。
 あなたは電車を降りる。
 一斉に動く人の潮流に埋没しながら。

 真夜中の神社、その境内にて。
 術式はとうに完成していた。今時期に輝く五芒星――。儀式を行えば、異界への門は開く。
 地脈、月日の計算は完全だ。
 月を見やれば、数十年前と何一つ変わることなく神秘に満ちた蒼白い光で輝いてくれていた。
「行こう、時間だよ」
 あなた達はこの世界を去ることにした。
 その理由は、各人それぞれに異なるやもしれない。
 絶望を抱いて去る世捨て人か、あるいは新天地へと旅立つ冒険家か。
 いずれにせよ、この世界に帰ってこれる手段も心算もない。ただ、静かに去るのみだ。
 蒼月よ、誘ってくれ。
 我らを拒む、この世界の外へ。

●犬狼相対す
 神社の境内の中心にて、異界門たる五芒星の魔法陣は今まさに開かれようとしていた。その時だ。
「告死局です! ただちに儀式を中止してくださいっ!」
 黒服の女――黒田しのぶは拳銃型正規化破界器を構えて、警察手帳と逮捕令状を突きつけていた。
 最奥に陣取る彼女が狩人ならば、獲物を四方より囲んでいるのはさしずめ猟犬だろう。
 猟犬たる執行官は皆、訳あってこの現状に甘んじているものの牙たる得物は錆びれてはいない。
 然るに、その標的たる革醒者たちは野犬――いや、狼というべきか。
「Dホールの不正規の出現は重罪です! 並びに、度重なる告死局の通牒に応じず出頭拒否を行ってきた件についても令状が出ています! 武装を解き、ただちに投降なさい!」
 黒田の銃口は震えていた。
 正規化破界器の装備があったとて、彼女の想定する敵戦力にはまるで刃が立たない代物だ。ましてや、まだ若い彼女は場数を踏んでいるわけでもない。
 前任者の死亡後、転属されてきて半年、出動は十回をとうに越えているが一度は命に別状がないとはいえ病院送りにされている。
 それでも怖気づかず、ハッキリと罪状を告げられたのは執行官への信頼に拠るものだろうか。
 しかし、当の執行官たちにも標的たる革醒者たちにも“ゆらぎ”は生じていた。
「お前は……!」
 誰ともなく零す。
 旧アークに属していたリベリスタ同士の、シニカルな再会がついに果たされた。
 たとえ頭でわかっていたとしても、その、当時と変化のない――あるいは面影を残した懐かしい顔ぶれに一人ひとりその胸に湧く感情もあったであろう。
 状況は緊迫していた。
 ひとつ言葉を間違えれば、即刻、血で血を洗う戦いのはじまりとなる。
 もっとも、包囲陣形を敷いている告死局側は当然ながら必勝の構えで望んでいる訳だが――。

『誰ぞ、門ヲ開くのハ』

 一変する状況。
 突如、異界の門を食い破って“何か”が来襲したのだ。
『誰ゾ、門ヲ開イたのハ』
 “何か”が言葉していた。
 一瞬にして黒田しのぶ監察官の肉体を奪い、己が人形として。
『我ハ“シラユキツネ”ナリ。幾星霜の時ヲ経て、今まタ返リ咲かン』
 操り妖狐は月夜に啼く。
 人の喉を通して出るとは思えぬ甲高い咆哮と共に、妖狐は黒服の至るところより純白の耳や尾、手脚を垣間みせ、禍々しくも美しき神秘で人形を彩ってゆく。
『コの感謝、どう表シて見セようぞ』
 白狐のお面がカラカラと鳴る。
 混沌とした状況下、誰かの与える“正しさ”などない。
 狐と。
 犬と。
 狼と。
 三つ巴の戦いを見守り照らすのはただひとつ、月影のみ。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:カモメのジョナサン  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2015年06月08日(月)22:46
カモメのジョナサン、立つ鳥後を濁す。
――こういう未来ifもの、むしろ来歴作りがメインじゃないっすかね?

●【~if story~】
可能性のひとつとしてありうる、ちょっとだけ未来の物語での依頼です。
この依頼の結果が他の依頼に影響することはありません。

●作戦目的
 この依頼は、所属する陣営によって作戦目的が変動します。
 どちらか一方の陣営が目的1、2を達成すれば、依頼達成となります

 ・【犬】サイド
  1、【狼】サイドの捕縛、ないし執行
  2、アザーバイドの撃滅および一般人への被害抑止(=ヒトツキツネ逃走阻止)
  3、監察官 黒田しのぶ救出。ただし、上記二項を優先として場合によっては殺害を追認する

  ※Dホールは破壊しなくてもヒトツキツネ撃滅と同時に消滅します

 ・【狼】サイド
  1、【犬】サイドの撤退、ないし撃退
  2、Dホールに突入、異世界へ出立する
 
  ※【狼】サイドは黒田しのぶの救出は目的にあたらず、また、殺害も当然問題ない
   【狼】サイドは必ずしもアザーバイドを撃滅しなくともよいが、してもよい

  ※『狼はDホール破壊されて旅立てず、犬はアザーバイドの逃走を許す』などは双方依頼失敗

●チーム分け
 理想としては、相談によって参加人数÷2ずつに皆さんでチーム分けしてください。
 どっちかに完全に偏らせても構いません。
 相談3日めまでに決まらず、チーム分けがどうしても定まりそうにない場合はID末尾2桁の値の高い人順に狼サイド、低い順で犬サイドといった感じでどうぞ。

●場所
 満月の夜、神社の境内。
 夜間は人気のない、さほど大きくもない並程度の神社である。
 奥側に本社、手前側に鳥居と石段がある。石段を駆け下りれば、すぐに住宅地が広がっている。

●世界観
 詳しくは劇中参照。重要なポイントを抜粋すると

 1、『約40年後の世界である』
 2、『神秘界隈が公に&衰退している』
 3、『常人派と超人派が争い、超人派総本山バチカン市国滅亡』
 4、『天寿法を司る告死局に属する【犬】と未だ神秘世界に属する【狼】がいる』
 5、『普通の人として暮らすフェリエ二世や華やかに表舞台で活躍する人もいる』

 という感じになります。
 あなたのキャラはどのポジションになりそう? なんてアレコレ考えて選んでみてください。
 40年後の舞台ですので【外見】【設定】を掲示板にて掲示してくれると助かります。
 ※プレイングに書くと文字数きつそう&他の参加者にもわかると良さげなので
 
●アザーバイド
 下記に記載するのは敵の情報になります。今回は万華鏡や事前の予測がないため、戦闘中に知り得る情報としておいてください。

 ・“狐っ繰りさん”『シラユキツネ』
  アザーバイド。人に憑依して操り人形とする妖狐。白雪狐。♀っぽいけど性別は♂。
  憑依対象に多大な運命の加護がある場合は憑依できないので黒田しのぶを選ぶ他なかった。
  ただし激しい負傷(一時的な戦闘不能)など“つけいる隙”が大きい場合、憑依対象になる。
  憑依対象が死んだ場合、近くに再憑依できる対象がいなければ自然消滅する。
  憑依は瞬時に完了する為、中断や妨害は難しい。また強さは素体のスペックに左右されづらい。
  憑依中、魂を喰らって暫く急速に回復しつづけるが再憑依しないといずれ回復は止まる様子。
  氷雪を操ることもでき、多彩な能力を有する。好物は毒りんご。
  一方では義理堅い一面もあり、気分次第で召喚者の質問に答えたり願いを叶えることもある。
  憑依を解く方法は不明。あるにはある、らしい。

  【空蝉】 ……子狐か、もしくは隣接した敵か味方を身代わりにして回避、さらに物理反撃。
         被攻撃時、1ターンに1度だけ任意で発動する。
  【氷結地獄】…氷の結晶を投擲、炸裂させ氷雪による刺殺と衝撃と冷却で無差別攻撃。
         射程は遠距離、着弾点の周囲10mに影響。地形を氷雪により悪化させます。
  【狐狗狸さん】自己を含めてランダムに1名、特異な呪殺によって強制的に戦闘不能にする。
         極端に運が下がっている(ファンブルが出た)場合、自分が呪殺される。
  【狐の恩返し】自分を除く、任意の1名の気力と体力を回復させ、さらに幸運の加護を与える。
         たまによかれと思って即死級の極上毒りんごをあーんと食べさせてくれる。
  【七人の子狐】7体の雪像による子狐を作り上げて、手駒として操ります。かわいい。

 ・『七人の子狐』
  シラユキツネの手駒となるEフォースです。七色の帽子を被った小型の白い狐です。
  氷雪地形では大幅に能力が向上しますが、その範囲外ではさして強くはありません。
  敵単体にのみ攻撃でき、物理攻撃、氷雪による神秘攻撃、かばう行動などができます。
  また、物理攻撃は魅了や混乱を引き起こすことがあります。
  火力も耐久性もそこそこ。一方、命中回避速度など機敏さはあります。

●【狼】サイド【犬】サイド
 本依頼における“あなた”つまり参加者は、二つの立場どちらか一方で参加していただきます。
 なお、片方の陣営が所属者0名になった場合、NPCが代わりに配置されます。
 両陣営は敵対関係にあります。ですが、掲示板でのご相談は両陣営なかよくどーぞ。

 ・【狼】サイド
  告死局に属さない野生(?)の元アーク所属のリベリスタです。
  ちなみに“偶然その場に駆けつけちゃったYO!”的なアイドルやヒーローや学生も一応こっち。
  誰か1名以上、Dホール開いちゃった人が居るとありがたいです。もちろん居なくてもOK。
  いずれにせよ体制側に属しておらず、自由を重んじる人が多いかもしれません。
  
  なお、アザーバイド出現は【狼】サイドにとって想定外の出来事となります。
  仮に出現しても小物は即座に退治できますので想定では最小限のリスクで旅立てるはずでした。

 ・【犬】サイド
  告死局に属する飼い犬(ネコだろうと)の元アーク所属のリベリスタです。
  フォーマルな黒服がそれっぽいですが、とくに服装に規定はありません。
  上司は黒田しのぶ監察官。
  革醒者の負う“過酷な労務”の一例ですが、適度な給与や日常生活の自由はあります。
  ただ、アークよりお堅いのはお役所だからです。
  告死局の執行官はときどき同じ革醒者に裏切り者扱いされたりします。
  一方では率先して一般人に尽くす公僕たることで革醒者の地位向上に貢献しているとも。
  なお、告死局に万華鏡はないのでアザーバイド出現は【犬】サイドにとっても想定外です。


――と、こんな感じです。
設定作りキャッキャウフフに興じるもよし、チーム対抗戦に興じるもよし、どこぞの駄狐の死因を捏造するもよし、みなさんifストーリーをお楽しみください。
参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
フライダークホーリーメイガス
メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)
ハイフュリエミステラン
シィン・アーパーウィル(BNE004479)
アウトサイドマグメイガス
月草・文佳(BNE005014)
ハイジーニアスソードミラージュ
院南 佳陽(BNE005036)

●半年前
 これまでも、これからも。
 世界は狂いなく、「優しさ」もなく、残酷なまま。
 縁日の金魚が訳もなく死に果てるように、二年間を共に過ごした監察官は今まさに殉職した。
 児戯に等しい毒ひとつで死んでしまった。救急箱は、また、開くことができなかった。
 『NonStarter』メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)は追憶する。
 家族は、きっと努力した。
 家族は、家族であろうとした。
 家族は、だからこそ苦しみ、悩み、惑い、苦しみ、悩み、惑い、苦しみ……キリがなかった。
 社会にひとり巣立つことはメイの優しさ。メイの残酷さ。家族の今を、知ろうとは想わなかった。
 四十年という歳月は長い。齢十三の幼い少女とて、望む望まざるを問わず要らぬ知識を得た。日々の稼ぎのためにと、永久の乙女として世渡りもした。
 メイは告死局に流れつく。
『寿命年齢なので死になさい』
 ある日いきなりそう告げられるより、過酷な任務でミスした結果『死んじゃった』という方があきらめがつく。だから今ここに居るというのに。
 監察官は死ぬ。
 また次の監察官がやってくる。
 こんな風に、何もなしえなかったクセして身勝手にも満足げに死んでいくのだろうか。
 ほんの少し、妬ましかった。
 
 白い病室、白いカーテンが青空にそよぐ。
 眠っているのは後任の監察官、黒田しのぶ。着任二回目の出動にして今まさに意識不明の重症だ。
 命に別状はない。メイの応急処置は的確だった。
 『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)は訳もなく、点滴を見つめていた。
 一滴、また一滴。時を刻む。
 守るべきはずだった人々は『力』を手に入れた。
 きっともうこの世界に『正義の味方』なんて必要ない。
 ――けれど僕は「正義の味方」であることを自分に課した。この力は、誰かを守るために使わなきゃいけない。幾度『裏切り者』と罵られても、僕は猟犬として生きる選択を後悔しない。
 一滴、また一滴。血を流す。
 夏栖斗にとって己個人の幸福の追求は耐え難い苦痛となっていた。“はじまり”が呪いならば、一生、解けてくれるなと願う。『皆』が幸せになれる時、ようやく『己』を許せる。黒田はそんな人生に憧れ、肯定した。
「正義の味方に憧れてもね、良い子は真似しちゃダメなんだよ、しのぶちゃん」
 まっすぐで、無鉄砲で、ひたむきで。こんな生き様に憧れる、向こう見ずな女だ。
 もしも“アイツ”みたく家庭を築けていたら、こういう親不孝がとりえの娘に育ったのだろうか。

●一時間前
 境内に五芒星を刻み、『狐のお姉さん』月草・文佳(BNE005014)は小刀『ほおづき』を仕舞った。
 月明かりを頼りに、借りっぱなしの本を開いてみる。
 大事なのは薫り。記述ではない。
 院南 佳陽(BNE005036)の香水の残り香を、未練がましく手離せない。
 捨てたのはこっちの方なのに。
 約四十年の月日を経て、文佳はとうに還暦を過ぎた。その銀髪は精彩を帯びている。ただ『妖狐のようで綺麗だろうな』と洒落っ気に任せて染めたのだ。
 天寿法。
 告死局。
 『私は元々、それなりに秩序がないと息苦しくなる性ですから』と、佳陽は早々にこの世界、この国の法の下に身を置く決断を下した。共に歩む道もあったろう。だけど文佳は彼女を捨て、神秘の闇へ身を潜めた。
 忘れ得ぬ、恐怖神話の爪痕。無念のうちに散った組織の仲間、そして今に至るまでの歳月、共に輝かしい未来を信じて戦ったリベリスタ達のことを。この国、この世界はその信念と犠牲をあまりに蔑ろにしすぎていた。
「……文佳さん、本当に、良かったのかい?」
 狼の長。
 『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)の気遣われて、文佳は本を『都鳥』の懐に隠す。
 新田は壮年期の貫禄が身についている。実際、いや、雷音という最愛の妻と家庭を築いた新田には子供どころか、小学生の孫娘までいるのだ。
「俺は魔術に疎い。“向こう側”の世界に旅立つ計画には、文佳さんの魔術知識が欠かせなかった。だが何も」
「やーやー、それは今更ってものでしょ」
 軽妙に語る。
「新田さんの見つけた“ボトルメッセージ”がある訳だし、二度と帰れない訳でもないし」
「……俺は帰らない覚悟だ。ヴァチカンが陥落した後、一部のフィクサードは異世界に逃亡した。その時、世間は労せずしてボトムの安寧に繋がると黙認した。数年後、あのメッセージが流れ着いた」
 ――生きたい。
 切実な願いだ。これから穴を穿つ“向こう側”の世界に待ち受けるのは、この世界を捨て新たな世界を己が欲望のままに喰い荒らす暴虐邪智に満ちた宿敵――フィクサード達だ。自らを開拓者コロンブスになぞらえ、かつて西欧列強が新大陸の征服と支配を成し遂げていったように、その暴威を以って罪なき人々を虐げている。
 しかしこのメッセージは公にならず、闇に葬られた。所詮、他人事だ。
「――整理はつけてきたよ、俺は」
 強欲。
 全てを護るという理想への果て無き強欲さは、もはや狂気という言葉でも表現しえない。
「生理的に気持ち悪い、ってなもんですねぇ」
 『桃源郷』シィン・アーパーウィル(BNE004479)は浮遊を解き、鳥居の上で退屈げに胡坐した。
 夜風に棚引く桃色の髪、妖精伝説を彷彿とさせる幻想少女。
 虹彩異色の双眸は、遠い未来を見透かすように見つめる。闇夜にあって電光に浮かぶ、人の街を。
「自分は身軽な旅行者ですからねぇ、皆さんの計画に便乗させてもらって、また次の世界に旅立つってのは気軽なもんですよ。こう世界がくだらない窮屈なものになっちゃあ観光もままならない」
 シィンの言葉は暗に惜しんでいる。かつては在った、この世界の失ってしまった“何か”を。
 フュリエという種族は大恩を返すべくアークに協力してきた。
 『完全世界ラ・ル・カーナ』のフュリエは元々上位世界に住まうアザーバイトだ。その助力は本来、一時的なもの。最期の事件を機に、大半のフュリエはボトムを去り、残ったフュリエはこの世界に永住することを選択した。
 が、記憶喪失者であったシィンには元よりフュリエとしての帰属意識すらない。文字通り、常にそうであるようにピンクは変獣は宙に浮いている。それが彼女らしさ。
「根無し草の自分としちゃー理解できねーんですけどねぇ、せっかくできた妻子を捨てる覚悟って」
「だろうな」
 肩を竦め、新田は自嘲した。
「ふふっ」
 なんとなしに文佳も釣られて微笑った。懐の本を、きゅっと抱きしめて。


 ――境内、深夜。
 包囲陣形の一角にて、執行官 院南 佳陽は怜悧な眼差しで“敵”を睨めつけていた。
 新田、シィン、文佳。
 文佳と偶発的遭遇を遂げたことへの動揺は思考の隅に追いやると、冷静に戦術を組み立てる。
 メイが合図をくれる。
『標的、シィン』
 不敵に宙空を漂う変獣ことシィンはメイ曰く『永久機関』といえる錬気を極めたフュリエだ。
 強大な攻撃、補助、回復をいつまでも乱れ撃てる上に、エル・ユートピアは物理攻撃の完全遮断が可能だ。神秘に長けるメイ以外に撃破は成し難い。
 佳陽のスピードは光速の領域と称えられる一方、パワーは控えめだ。守護神といわれた堅牢な新田の守備を斬り伏せるのは至難の技。となれば標的は文佳のみ。高い命中精度と絶大火力を誇るシルバーバレットこそ脅威だが、典型的な後衛型、こと回避は苦手としており狙い目だ。
 正直、文佳とふたり一緒ならば勝算が立つ。そのバ火力で短期決戦を仕掛ければ、長期戦向けの両者には有利なはずだ。
 だのに、敵である。
 大好きだった黒髪を、何ら断りもなく銀髪に染めて。
「――せめて、ヒイヒイ鳴かせてあげないと」
 双鉄扇『朝焼け・夕焼け』で口許を隠しつつ、佳陽は愛しの憎き女狐を見つめる。
 ぞくり。
 文佳の尻尾がぶわりと膨らんだ。
「や、やー、佳陽、お久しぶり。元気してた? 積もる話もあるし、この後――」
 銀弾の術式を紡ごうと文佳は一瞬にして九字を切る。
 勧誘(物理)。
「お茶でもしない? 異世界の喫茶店で」
 一条の銀光が貫いた。佳陽の残像を。
 瞬ッ。
 七閃、十三閃。
 音も、痛みさえも遅れて生じるほどに佳陽の連撃は速い。
 打突の集中豪雨に打ちのめされて、その痛打に文佳は早くも片膝をつく。相性差は明白だ。その額に、冷たい鉄扇の骨がぴたりと宛てがわれる。
 すん、と鼻を鳴らす。昔使ってた、香水の匂い。文佳の懐中を探ると一冊の本が出てきた。
「……!」
 断頭台の刃の如く、佳陽は冷たい瞳で見下ろす。
「文佳さん」
「ひぅっ」
 恐怖に震える狐――否、ネコ。
「ありがとう、私は貴方に感謝しています」
「え?」
 不安。
「気乗りしない仕事が多い中、貴女と再び出逢うことができて……本当に嬉しい」
 期待。
「なにせ、捕まえて色々とできるのであれば、愉しみようもありますので」
 絶望。
 佳陽は、タチの悪い笑顔を湛えていた。
 

 月下の薄闇、桜花煌めく。
 極葬細雪。
 夏栖斗のトンファーが凍てつく氷の百花繚乱で夜闇を彩る。
 標的は成す術なく、氷像に閉ざされ永劫の眠りにつく。本来ならば。
 新田の纏うバリアが、否、その金剛にも等しい強靭な身躯が極寒の桜花を払い除けた。
「老けたのは見た目だけかよ、相棒」
「夏栖斗、お前、戦術眼はまだまだ、だな。俺は、ただ守りきればいい」
 不動明王の如し新田の鬼気、その威圧感にも関わらず夏栖斗は不敵に構える。
 背後では、その人智を凌駕した戦闘に気圧された黒田が呆気にとられていた。
「しのぶちゃん、下がっていて」
「は、はい!」
 集音と直死嗅ぎによって不意打ち警戒を行い、黒田の安全を確保した夏栖斗は新田に問いかける。
「なあ、相棒。うちの妹はどうした? おいていくのか?」
「雷音は……ああ、あれは、良く尽くしてくれたよ。俺には過ぎた嫁だった――。華、月、風。子供たち共々、別れは済ませてきたよ」
「そうか、そう決めたのか」
 黙す。
 雷音の納得したことだ。追求点はない。第一、新田の考えは夏栖斗だからこそ深く理解できた。
 激突する両雄。
 言葉は不要。


 桃色の変獣シィンは一人、鳥居の上で高見の見物を決め込もうとしていた。
「おやおや、これはこれは懐かしい面子がお見送りで」
 無限魔本ウロボロスは進化の末、小型のタブレット端末型に形態変化を遂げている。シィンは魔本をめくり、さて、支援でもしてあげようかと思索した。
 熾烈な閃光によって昼夜が覆る。メイ・リィ・ルゥの審判の光条が新田を、文佳を、シィンを焼き払わんとした。空虚魔装アーカーシャの防御術式が働くも手痛い傷を負わされた。
「くっ、しょっぱな手加減なしですか」
「全力でもこっちが不利かも。だから死なせても仕方なし。後で始末書の一つも書くことにするね」
「自滅の道ですよ、これ」
 フィアキィが舞い、緑樹のオーロラを展開、自他の傷を癒していく。
「わかっています? 所詮ボトムは最下層、強大な外敵が現れた時、以前みたいに抗えないってことを。いつか革醒者と人間の立場は逆転することを。郷に入っては郷に従えと言えど、既に郷もなければ従う道理もなし。――自分が帰属したのは、あくまでアークな訳で。自分はこのつまらなくなった世界に見切りをつけ、オサラバさせて貰うだけですよ」
 メイは標的を睨み、再度、審判の光条を以って応えてみせる。削り合いが続く。
「負け犬だね」
「……で、その心は」
「この世界はいつまでも残酷だよ。例えボクらが世界を救っても、それだけで優しい世界になってくれる訳がなかった。ボクは流されて、悲嘆に暮れるだけだった。世界を変えようと、本当の意味では戦おうともしなかった。だから“ボクも”負け犬だね」
「面白い見解ですけど、同じ穴のムジナでは?」
「そうだよ」
 魔術書『和歌集・写本』が燦然と光輝する。応じて、無限魔本が白い項を延々とめくっていく。
「護りたいモノも護ってくれるモノもない負け犬同士、どっちが先に死ねるか競争してみない?」
「丁重にお断りします、よ!」


 三つ巴の戦い。
 操り妖狐は月夜に啼く。
『サァ、我二何ヲ願う?』
 犬と。
 狼と。
 銀狐の仮面に得物を突きつけ、一呼吸、視線を交わした後、夏栖斗と新田は宣戦布告する。
「返せ!」
「帰れ!」
 痛烈な先制攻撃を撃つ。
「手伝え相棒! こいつら逃しちゃ一般人に被害が出る! それにしのぶちゃんを助けたい!」
「ああ、一時休戦だ。向こうの世界より先に、今此処で助けなきゃいけないヤツがいる」
『なラぬ! ならヌ! ナぜ我ヲ拒む!』
「勘違いされては困るな。お前のために開いた門では無いし、好きにさせるつもりも無いさ」
 氷結地獄。氷の結晶が炸裂、境内は瞬く間に氷河期の真っ只中と化してゆく。
 氷雪で象られた七匹の仔狐が現れるや否や、夏栖斗と新田を狙って殺到した。が、夏栖斗の俊敏さ、新田の堅牢さによっていなされる。
 佳陽も軽快にステップを刻み、仔狐を翻弄する。散々しばき倒して包帯だらけの女狐をお姫様だっこして。
「憑依を悪用しなければ今すぐ危害を与えるつもりはなかったのですが、血気盛んな同僚が失礼しました。今からでも遅くないので、これ以上、うちの役立たずな上司を苛めて哀れな部下の仕事を増やさないでくださいまし」
「本音、漏れて…ぐはっ」
 吐血多量。文佳は危うくきつねうどんに叩き直される寸前だった。
 他方、メイとシィンの対峙は錯綜していた。
 “狐もろとも狼を一網打尽にする”という方針の下、狐もシィンも新田までも審判の光条によって焼き払わんと乱れ撃つ。狐対峙もやぶさかでなし、と協力する気だったシィンもまた執拗なメイの攻撃に応戦、『フーラカンの激昂』によって業火の竜巻を乱舞させた。
『何ト破天荒ナ……!』
 シラユキツネは急速に自己修復を繰り返し、仔狐は倒せど倒せど蘇る。しかし、明らかに犬と狼どちらの実力もこの妖狐を凌駕していた。
「しのぶちゃん!」
 夏栖斗は直死の匂いを嗅ぎつけ、光撃と炎舞の飛び交う真っ只中を駆け、自ら、白狐の盾となる。
「がああああっ!」
「相棒っ!」
 焼け爛れて煙をあげる片腕で、夏栖斗は皆を制止する。
「メイ! 僕を回復しないで! 相棒! お前もだ!」
「……そうする」
 メイは寡黙に肯き、夏栖斗の意を汲んで仔狐への牽制に徹する。そのメイに迫る敵襲を、状況を読んだ佳陽が早々に音速の閃撃で排除する。半年前とは違う。今度は――死なせない。
「……ああ、そういうノリで」
 シィンの胸に宿るのは未練と名残惜しさだ。
 もし、今、この“輪”に加わってしまえば、一時は在りし日の過去に舞い戻れるかもしれない。
 ――そうやって思い出に縋って生きることを、シィンは望まない。
「どうか、お土産はご期待なさらずに」
 だからこそ一人、シィンは次元の門の向こう側へと旅立った。

「お前も早く行けよ! 今を逃すともうチャンスはねーぞ!」
 夏栖斗は猛る。
 仔狐を叩き伏せ、白雪狐を消耗させていく。憑依の条件に気づいたのだ。憑依にはつけいる隙が必要となる。それが一番素体として脆弱な黒田を狙った理由だ。憑依を誘発させ、傷ついた夏栖斗を宿主に選ばせる。それが黒田しのぶを、皆を守る最適解だ。
 無論、自分の生死など二の次だろう。
 救いようのないバカ、と新田は苦笑する他なかった。
「行けよッ!!」
 夏栖斗の死に物狂いの突進をわざと喰らい、虚空の穴寸前まで押しのけられる。
「……死ぬなよ、夏栖斗」
 背を向け、門前に立つ。そして文佳にAFで指示を送る。生憎と、瞬時に自分を瀕死にしようとしても新田の体は頑健すぎた。
(でも!)
(頼む!)
 境内の隅に横たわっていた文佳は傷ついた体を奮い立たせ、九字を切る。
 砂蛇のナイフを握り締め、勝利の幻想、極限の破壊を想起する。
「キツネちゃん、その子を返してよ。その子は普通だ。僕の魂の方がきっと美味しいよ。なぜ、だって? たった半年だったけど、しのぶちゃんさ、僕の娘みたいに思ってた」
 ――見過ごせるか。
 ――だって、お前こそ、俺が守りたかった世界の、最も大事なパーツの一つなんだから。
「生きてね」
 銀の弾丸が胸を貫いてくれた。
 砂蛇の刃が腹を抉りぬいた。
 驚愕する夏栖斗の手が止まり、自刃は中断を余儀なくされる。
『我、汝ヲ貰い受ケル』
 白い狐面が、視界を塗り潰そうとする。
「■ざけ■な、快!」
 掠れてゆく叫び。
 透明になっていく自我。
 残された余力を振り絞る。さぁ逝こう、“向こう側の世界”へ。


●二ヵ月後
 『告死局』第二作戦会議室。
 黒田、夏栖斗の退院祝いの宴会が催されていた。無論、散々に迷惑を掛けた二人の自腹で。
「いやホント、金輪際ああいう無茶はしないからさ~」
「右に同じくです!」
「ボクはサビ抜きで」
「もしもし、特上寿司五人前を――」
「五人?」
 メイの疑問符を解消すべく、佳陽が示した先に佇むのは告死局の黒制服を着た文佳だった。
 無論、黒髪である。
「え~、本日づけで配属されました執行官の月草で――」
「私の嫁です」
 赤い狐のできあがり。
「末永く爆発して」


 “向こう側の世界”、深々と雪積もる北国の町にて。
 後に幾多の世界を渡った次元旅行記として有名となる無限魔本ウロボロスの記述に拠れば、シィンはこの地にてとある英雄と再会を果たしたとされる。
 その名は――。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
皆さん、おつかれさまでした。
ありえたかもしれない未来のおはなし、いかがだったでしょうか?
今回の依頼は――成功です


作戦目的につきましては
【犬】サイド
>1、【狼】サイドの捕縛、ないし執行 
 ※全員の捕縛という記述はない

【狼】サイド
>2、Dホールに突入、異世界へ出立する
 ※全員の出立という記述はない

というわけで両陣営とも一応の目的達成、ということになりました
じつは片方だけしか達成できない、というわけではなかったという…
アザーバイド シラユキツネは厳密な撃滅こそないものの
およそ望みうる最良の形での、見事な攻略でした! 素晴らしいです!

犬側と狼側、双方が違う道を歩んでいく結末でしたね
このifの未来の先にも、きっと皆さんらしい物語が紡がれていくのでしょう
……金魚の名前から貰ってきて、はて、よかったものだろうか
とかく、なお四十年後の未来では、きっと法的にも科学的にも百合合法です、はい、絶対

では、皆さんまた機会がありましたらお会い致しましょう!