●ミラーミス破れた世界 ルゴ・アムレス。 そこは様々な戦士が集う世界。流通は物々交換か勝負事により行われ、いきなり喧嘩が始まる事もおかしくない。そんな戦いが中心の世界。 住人の気質は荒々しいがけして戦いの後を引く事はない。殴りあうことで禍根を流しているのか、友情が芽生えているのか。ともあれ殺伐とした空気はあまりない。 しばらく前までは半径五キロの盆上の大地に黒い塔が突き刺さるように立っていたのだが……その塔が突如消失する。塔の主であるこの世界のミラーミスが討伐されたというのがもっぱらの噂だ。 消失した塔の分だけ大地が広がり、世界の強度が下がったという。その結果、上位世界の圧力により様々な問題を抱えることになった。ルゴ・アムレスに通じるDホールが消え去り、修羅世界は風前の灯か。 ……と、言うのは事情を全く知らぬ者の意見であった。 ●闘争の空気が吹き荒れる世界 「皆様、お久しぶりです」 Dホールを潜り抜けたリベリスタを迎えたのは、右半分が白、左半分が黒とに分割された髪の毛とドレスを来た少女だ。ボトムチャンネルの年齢に照らし合わせれば、十五歳に満たないだろう。 彼女の名前はアム。この世界のミラーミスである。力のほとんどを世界の維持に費やして、アム自身はさほど力を有しない存在となっていた。 かつてリベリスタとアムは交戦し、リベリスタが勝利を収めた。その結果、ミラーミスの力であるルゴ・アムレスの黒塔は消失し、世界に拡散した。そしてDホールを開けていたミラーミスは自分が回復するまでDホールを開ける事が出来なくなっていた。 そしてしばらくして、この世界へのDホールが開く。世界と世界を繋ぐトンネルの出口で待っていたのは、件のミラーミスだった。 「聞いてください。あれから色々な事があったんです」 アムは嬉しそうにリベリスタに世界の事を話し出す。 塔の中にあった『街』は世界に散り、それを繋ぐ為の街道が現在建設中だとか。かつて塔の階層を統治していた守護者を中心に現在工事に勤しんでいるという。 また、『街』を発展させて文化を広げている守護者もいる。それにより新たな文化が生まれ、ルゴ・アムレスは戦闘以外にも発展していく。 勿論、戦いを忘れているわけではない。かつて黒塔があった場所は、様々な戦士達が集い修練する場所になっている。そして、 「土地が広くなって、そこに新たに街を起こす人も増えてきました。その長の権利をかけて戦うこともあります」 無人の野を開墾し、街を作る。そしてそこを誰が治めるかを決めるかは戦って決めるルールになっていた。挑戦者を退け続ける限り町長はその立場を維持できるという。 既にある街の長に戦いを挑むものもおり、群雄割拠さながらの状況でもあった。それでも血生臭いところまで発展はしない。物欲よりも闘争を。それがこのルゴ・アムレスであった。 「今日はゆっくりしていってください。皆さんの世界のお話もお聞かせ願えませんか?」 リベリスタとの交戦により改革された修羅世界。 そこを観光するもよし、戦闘するもよし、用意された宴に興じるもよし、ミラーミスと話をするもよし。覇道に進むもよし。 色々あった騒動もひと段落着いた。骨休めにゆっくりするのもいいだろう。 ルゴ・アムレスの風がリベリスタを歓迎するかのように、静かに吹いた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年05月08日(金)22:03 |
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■メイン参加者 11人■ | |||||
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● 「アムさんは……ミラーミスなんですよね?」 ルゴ・アムレスのパーティ会場で依子はおずおずとアムに問いかける。依子の手には一冊の本。赤いカバーの本を抱きかかえるようにして依子は言葉を続けた。 「私も持っている魔道書のナナシさん。力を失って眠ってしまったナナシさんの自我を取り戻せませんか?」 「まどうしょ?」 瞳に涙を浮かべながら依子は事の経緯を話し出す。内向的で自分に自信がなかった依子に、道を示してくれた本。革醒と言う道を示し、最後は自分の力を振り絞って自分にフェイトを与えてくれた。 その本を元に戻すことが、依子の目的だ。世界其の物たるミラーミスならなにか知識があるのかもしれない。そう思ってこの世界にやってきたのだ。 「対価が必要なら私に出来ることならなんでもします。何かヒントになる事でもないでしょうか?」 必死に訴える依子。その涙を拭くようにハンカチを渡して、アムは口を開いた。 「結論から言えば、私が出来ることはありません」 その言葉に絶望する依子。 「この本は、貴方が智を持って起こしてくれることを待っています」 自ら運命を切り開くのがリベリスタだと知っている。だから彼女もきっとできる。アムはそう信じて言葉を続けた。 「いつか貴方がこの魔道書に認められるほどの実力を持った時、本は貴方に語りかけてくるでしょう」 「さて、アムさんに他皆様方お久しぶりです。お元気そうで何より」 「皆様もお元気そうで何よりです」 シィンの挨拶に、アムは嬉しそうな笑顔で答えた。 「此方は一つ大きい事が片付いて、一区切りですねぇ」 「何か大変なことでもあったんですか?」 「ええ。世界が滅びかけまして」 まるで昨日の献立を言うような軽さで世界滅亡の危機を告げるシィン。その軽さと事の重大さに目を丸くするアム。 「大丈夫ですよ。もう終わったことです。ある女の個人的な事情と自棄っぱちの大騒動でして」 「『D-CASE』……とんでもない相手(ミラーミス)だったんですね」 その名前を聞いて苦笑いするアム。その表情には相変わらず破天荒な人たちだ、という喜びも含んでいた。 「自分も折を見て、此方に移り住みたいなぁと考えていますので、今日はその下見も兼ねてです」 「こちらに?」 「ええ。自分の目指す所は、所謂『自分自身で世界を体現する』こと。言葉に直せば、ミラーミスが近いわけですから。 そういう存在が近く、尚且つ己の領域を持つことができる此処は、ある意味理想な訳です」 自らの理想を語るシィン。アムはそれを黙って見ていた。夢に向かって走る姿は、いつだって輝かしい。 「まぁ、友達が先にこっちに住んでるってのもありますしね」 ● 「やっほおおおおおう! やっぱりわたしはこっちの空気の方が合ってるやねぇ」 「初めてって感じのしない世界ね」 フランシスカと天音がアム作り出したのゲートを通ってルゴ・アムレスの大地に転送される。その空気を吸いながらはしゃぐフランシスカと、始めてくるのにどこか懐かしげな感じを受けている天音。 フランシスカの要望もあり闘技場に近い街に転送してもらったのだが。 「やー。流石に競争率高いわねー」 「皆、戦ってるね」 闘技場に近い街は皆押さえておきたいらしく、家を押さえる為の戦いがそこかしらで行われていた。それをほほえましい顔で見るフランシスカ。 「家は……よし、ここに決めた! そういうわけで勝負よ!」 同じ空き家を求めていた虎のような剣士と戦いを始めるフランシスカ。いきなり始まる戦いに目を丸くする天音だが、それがこの世界のルールだと理解して肩をすくめた。成程、あの姉が居つくわけだ。 剣戟が幾分か続き、勝鬨を上げるフランシスカ。負けたほうは悔しそうだが遺恨はなさそうだ。 「お嬢ちゃん強かったな。またやろうや!」 「望むところよ! ……ところで話は変わるけど聞きたいことがあるの。アマノっていう人知らない?」 幻想纏いに写された画像を使い、詳細に人相を伝えるが虎の剣士はその姿を見たことがないという。この剣士だけではなく、町の人に色々聞いてみたのだがその手がかりすらつかめない。 「……どこに行ったのやら。おそらく守護者紛いの事をしているかか、あるいは挑戦者をしているんだろうけど」 腕を組んでため息をつく天音。二人が探しているのは天音の姉である。故あって、この世界の修羅となったのだ。 「そうねー……らしいと言えばらしいかな。 よし、今度はこの街の長に聞きに行くわよ。他の街の情報を知ってるかもしれないわ」 言って黒の大剣を振りかざすフランシスカ。この世界の交渉は基本『戦って勝ってから聞く』である。 「フランシスカ。貴方戦いたいだけでしょう?」 「否定はしないけど、探したいのも事実よ!」 天音の冷静な言葉にきっぱり言い放つフランシスカ。彼女は姉に会ってどうするのだろうか。きっと戦いを挑むつもりなのだろう、と断定する。そういえばどんな姉だったのか、これを機会に聞いてみたくなった。 「それじゃあ行くわよ!」 「あ、待って」 天音は家の庭に石碑を建てて、姉への言葉を刻む。これを見に来るかどうかはわからないが、それでも彼女に伝えたくて刻む。 彼女の既知の者にこの世界にいることを連絡済である旨を刻み、フランシスカの後を追った。 「別荘か。悪くないな」 結唯は自分の家を得るために森を散策していた。このルゴ・アムレスを探索する為のセーフハウスとしてだ。 最初は丸太を汲んでログハウスでも組むかと考えていたが、そう簡単にできるものでもないと知って諦める。基礎工事など丸太を組む前に色々やることが多く、流石にそれだけに時間をかけるわけには行かない。 「流石に素人がゼロから作れるものでもないか」 というわけで使われていない小屋があるという情報を聞いて、森の中を歩いていた。若干険しいが、革醒者の肉体能力なら問題ない範疇だ。 そしてたどり着いた小屋は、数年単位で放置されていたのか結構荒れ果てていた。まずは掃除だな、と腕を組む結唯。 「こんなことなら式神を持ってくるべきだったか」 今度来た時は式神に掃除をさせるか。今は住む為の最低限で十分だ。空気を入れ替え、寝る場所を確保し、生活用の水を汲む。雨露を凌ぎ、ゆっくり寝るだけの状態までは持ってこれた。 まずは気の向くままに歩いてみよう。まずは闘技場か。結唯は扉をあけ、修羅の世界を歩き出す。 ● 闘技場。この世界の中央にあるこの場所には、様々な戦士達が集っていた。大小さまざまな舞台で戦い、それが待ちきれないものは待ち時間を利用して戦う。そんな場所だった。 「異界の戦士の力、御教授願います」 そんな闘技場に剣を携えてやってくるアラストール。 「ほう。どんな相手がお好みだい、ねーさん」 「私は剣士です。剣を交えることができる相手なら」 「なら俺が相手してやるぜ」 前に出てきたのは猿顔の男。二本の刀を腰に挿し、親指で自分を指差しながら歩いてくる。 「二刀流ですか。いいでしょう」 相手の得物を見てアラストールは剣を構える。じわりじわりと間合を計り、どう攻めるかを思考していた。 動いたのはどちらが先か。互いの刃が交差し、激しい金属音が響く。左右の刀を交互に繰り出しながら攻めて来る相手に対し、アラストールは剣と鞘でその攻撃を凌いでいた。 初手の攻撃を基点とした連続攻撃。アラストールは相手の剣技をそう分析していた。初手をあえて受けさせてこちらの攻撃軸を固定し、そして二撃目でダメージを与えてくる。成程見事だ。 あえて敵の戦法にあわせて全力を引き出し、その上で自分の全力を返す。それがアラストールの戦い方。勝ち負けではない。相手の戦い方を尊重し、全力で受け止めること自らも高めていく。 ギリギリまで追い詰められるアラストール。この極限の状態こおs、自らを示す時。信じた鍛練を信じ、防御を捨てて剣を振るった。剣は二刀の隙を縫い、猿顔の男の喉元で止まる。 「負けだ。最後の一撃はすごかったぜ」 「いいえ。貴方の武技も素晴らしかった。また手合わせできますか」 そして始まる第二ラウンド。 「向こうは盛り上がってますね」 それを舞台上から横目で見ているうさぎ。 「こっちも盛り上がろうぜ」 「そうですね。何せ一年ぶりだ」 目の前の相手に向き直るうさぎ。そこに立つのは龍の学ランを着た一人の女性。ヤヨイと呼ばれるこの世界の住人である。 「私もそれなりに強くなった心算です。当然、貴女もそうでしょう?」 「もちろんさ。そんじゃ楽しもうや!」 ヤヨイの戦い方は素手格闘。真正面からぶつかるケンカスタイルだ。うさぎもそれにあわせるように真正面からぶつかった。徒手空拳の距離まで迫り、防御を捨てた肉体同士のぶつかり合い。 『強くなりたい』 うさぎの心を占めるのは、その一言。力が足らないために何かを取りこぼすことがもうないように。あの悔しさを、あの悲しみをもう繰り返さない為に。 それを不純な動機とうさぎ自身は笑う。それでも救えるのなら救いたい。一歩でも前に。少しでも先に。そのために『強くなりたい』と切に思う。 ヤヨイの額がうさぎの額とぶつかり合う。パチキ。ヤヨイの必殺の一撃といえる技を受けてよろめくも、まだ倒れない。 「やるじゃないか」 「ええ。勝ち負けはどうでもいいですが、全力は出させてもらいますよ」 もっとも、戦う理由はそれだけではない。楽しい喧嘩、楽しい逢瀬。この世界の人たちとの絆。戦いの中で、それを強く感じていた。 戦いは終わらない。この世界であった人達、すべてと喧嘩(でーと)するのだから。 ● 「話には聞いてましたが、これはなかなか……」 「これは……滝? 見事なものね」 聖とシュスタイナは目の前の光景に見入っていた。 遥か高く空流れ落ちる滝。青い岩肌を流れる水は水の透明度もあるのか澄んでいて、青い龍が流れているような錯覚を産む。飛び散る飛沫が陽光を受けて虹を作り、轟音が激しく耳を打つ。それは圧倒的な水の生み出す芸術。このルゴ・アムレスという世界が作り出した一枚絵。 闘争の世界ルゴ・アムレス。その世界に行こうと言いだしたのは聖だった。最近塞ぎこんでいるシュスタイナの気分転換のために、少し強引に連れ出したのだ。 「滝や森林は心が安らぎますからね。もっとも、私も此処まで雄大だとは思いもしませんでしたが」 聖はこの世界のミラーミスに相談し、それならとこの場所へのDホールを開けてもらったのだ。彼自身どういう場所かは詳しく聞いていなかったため、不意打ちに近いものがあった。伝聞では闘争の世界だと聞いていたのだが、そればかりではないようだ。 (引き籠ってた私を見兼ねての事でしょうけれど、行先が異世界というのは……) 最初は苦笑していたシュスタイナだったが、ボトムチャンネルにはない光景に心奪われていた。何よりも、その気使いが嬉しかった。ここは自分ひとりではこれなかった場所。ロケーションという意味ではない。二人で同じ『場所』を見て感動することに意味があるのだ。自然と綻ぶ顔。 「空気が心地いい。……連れ出して下さって、ありがとう」 シュスタイナは聖の手を握り、微笑んでいた。大丈夫、まだ笑える。不安が消えたわけではないけど、それでも力が沸いてくる。 「大丈夫ですよ」 握られた手を強く握り返し、聖は静かに告げる。彼女の不安は知っている。そのことも、貴方の不安も、その先も。全て大丈夫だと。そう言い放つ。 「見失ったりしませんから……絶対に探して見つけ出しますよ」 シュスタイナも、行方不明の彼女の姉も、けして見失わない。例えいなくなってもすぐに見つけ出して見せる。だから。 「シュスカさんも、貴女のお姉さんも……一人で苦しむ事は無いんだから」 その言葉にシュスタイナの笑みが変化する。無理して作っている笑顔ではなく、不安も何もない素直な笑顔に。 「貴方がそう言うと、不思議ね。ちゃんと見つかるような気がする」 根拠なんてない。理由なんてない。 でも見つかる気がする。確信めいた思いだけが、二人の心にあった。 『折角だ。まだ広がりきってない世界なら果てを見るのもおつなもの』 こんなユーヌの一言により、彼女と竜一はルゴ・アムレスの端に立っていた。竜一の膝の上に乗る形でユーヌが座っている。 「しかし、まあ、みないうちに世界も広がったもんだ」 竜一は広がった世界を確認するように周りを見回す。前に来たときは塔の上から見えた世界の端。今仮に黒塔が立っていたとしたら、神秘の力を使わないと見ることができないほど遠くにあるのだ。能力を失った身としては敵わぬことか。 「光なき闇。正に世界の果てだな」 ユーヌが世界の果てから外を見て、頷く。星すらない真っ暗な闇。それが世界の果ての光景だった。飛び降りれば底のない穴が広がっている。ある種の恐怖を想起させると同時に、未知の常識に触れた感動も呼び起こさせる。 今はここが端だが、アムの成長と共に世界は広がるのだと聞いた。もっと広く、もっと遠くに。 「そう考えると、世界に果てなどないのかもな。今の果てがあるだけで」 「果ては終わりで境界だ。既知の果てに引かれたライン。 だからある意味世界の果てだな、ここも」 座ったままの状態で、ユーヌは竜一に向かって体重を預ける。神秘の力を失っても、ここの大きさと暖かさは変わらない。背中一杯で彼の存在を感じながら、言葉を続ける。 「ここには未知が詰まっている。私が知らない未来(こと)ばかりだ」 先の戦いで神秘の力を失った二人。だがその事は二人の仲に大きな影響を与えることはなかった。出来ることが少なくなっただけで、竜一とユーヌの関係は変わらない。それを示すように竜一はユーヌに頬ずりする。 (今まですべきことをするべく、突っ走ってきた。これからは、ただ大事な人の事を思って生きるのも悪くない) 世界の端から虚空を見ながら、竜一は静かに思う。確かに先は見えないが、それでも行き止まりではない。まだ見ぬ未来に何が待っているのだろうか? 苦難か、絶望か、挫折か、それとも達成か、希望か、成功か。行って見なければわからないのだろう。 光なき虚空はまだ見えぬだけの未来。そこを歩くことが人生。今までだって歩いてきた。これからも歩いていこう。二人で歩けば、どんな闇でも怖くはない。 互いの体温を感じながら、二人はそう思っていた。 ● 黒塔がなくなり、世界は変わる。 闘争の世界という本質は変わらずとも、少しずつ変化していく世界。 次にDホールが開くのはいつになるか。その時、この世界はどうなっているのだろうか? それを楽しみにしながら、リベリスタ達はボトムチャンネルへ続くDホールを潜った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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