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【~if story~】BADEND! 死が支配する国

●<混沌組曲・急>と呼ばれた抗争
 2013年3月16日、アーク陥落――
 ケイオス・“コンダクター”・カントーリオ率いる『楽団』と呼ばれるネクロマンサーとアンデッドの群れがアークビルを占領した。そこに納められていたジャックの骨を得て、最強のアンデッドを生み出す。
『楽団』は死体の数だけ戦力を増す。アークとの戦いで力あるアンデッドを得た彼らは、ジャックのアンデッドと共に破竹の勢いで日本を死の国に変えた。
 国そのものがバロックナイツに占拠され、その情報は世界に知れ渡った。神秘秘匿は不可能となり、諸国は国内の革醒者組織(リベリスタ、フィクサード問わず)を強化して、自国の防衛に回る。
 日本を助けようとする革醒者組織はあったが、その悉くが『楽団』に取り込まれていった。それを見て、手を出すものは徐々に減っていく。いつしか助けの手は途絶え、日本は死の国として認知されるのであった。
 かくして日常は崩壊した。

●そして――
「へっ。生きている革醒者を見るのは久しぶりだな」
 その男は貴方たちを見て静かに笑った。アンデッドも腕を奪われ、素人が見てももう永くない。そんな状態なのに、まるで希望を見たかのように笑ったのだ。
「この町を支配するネクロマンシー『佐久間』の情報、欲しくないか?」
『楽団』は日本各地にネクロマンサーを配置し、死者を管理していた。一人当たりのネクロマンサーが支配できる死者は百人が限度。生きているものはネクロマンサーに仕えるか、逆らいレジスタンスになるか。その二択だった。
 どちらを選んでも明日知れぬ運命。それでもまだましとばかりに多くの人はネクロマンサーに仕える。だがネクロマンサーの気分次第でその望みは消える。レジスタンスは言うに及ばず。力ある革醒者のアンデッドが護るネクロマンサーに挑むなど、唯一の例外を除いてありえない。
 そう、元アークのリベリスタ以外には。
「あいつはこの先のホテルでふんぞり返っている……護衛のアンデッドと、元革醒者のアンデッド……俺達は手も足も出なかったが、あんた等なら……クソ、もう駄目か。頼むぜ、リベリスタ」
 いって男は力尽きる。貴方達は彼の持つメモを受け取った。『万華鏡』なき状況で、敵の情報を得られる事は幸運だ。
 この町のネクロマンサーを倒したところで、影響は微々たる物だ。日本にいるネクロマンサーの数は多く、またそれらが使役するアンデッドの数も多い。数も質も圧倒的な相手。
 それでも。それでも貴方達は戦いから逃げる事は出来なかった。
 元アークのリベリスタとして。

●ネクロマンサーの宴
 ホテル屋上階。そこでこの町を支配するネクロマンサーの佐久間は宴に興じていた。
 芸を強制して、つまらなければ殺す。見た目が気に入らなければ殺す。声が気に入らなければ殺す。酒が切れれば殺す。
 死んだ人間は、アンデッドとなって佐久間の力となる。逆らおうにも、ただの人間にが革醒者のアンデッドには勝てるはずがない。無残に殺され、佐久間の力になるだけだ。
 子を産むためだけに、かろうじて生かされている人達。彼らに出来る事は、ただ耐えるのみだった。
「ぐはははは! 踊れ踊れ! 死にたくなければな!」
 力を得て、笑いを上げる佐久間。死を操る力を持つものが、全てを支配する。
 悲しいかな。これがこの国の正義なのだ。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:どくどく  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2015年04月19日(日)22:09
 どくどくです。
 もし、あの時『楽団』が勝利していたら? そんなイフストーリーです。
 このシナリオは本編とは全く関係ありません。システム上、名声や経験点などが増えますが、まぁ多少の矛盾は見逃していただけるとありがたく。

◆成功条件
ネクロマンサー『佐久間有戸』とアンデッドを全て倒す。

◆敵情報
・佐久間有戸(×1)
 ヴァンパイア×ネクロマンサー。二十八歳男性。『楽団』日本占拠時にネクロマンサーの力に革醒しました。その力を持って『楽団』傘下に入り、支配する力を得た事によりタガが外れました。町を死と暴力で支配しており、逆らうものは殺し従うものも気分で殺しています。使用楽器はトランペット。
 霊魂を弾丸と化して打ち出し、複数の相手を麻痺させるスキルを持っています。
 彼自身の戦闘経験は低いですが、彼に従う革醒者アンデッドが常時佐久間を守っています。

・革醒者アンデッド(×2)
 生前は革醒者だったアンデッドです。両方とも女性の覇界闘士。徒手空拳でネクロマンサーの護衛につきます。
 炎を拳に宿して殴って燃やしたり、蹴りで風刃をとばして相手を出血させたりします。 

・一般人アンデッド(×10)
 未革醒者のアンデッドです。元は町の人間でしたが、戯れで殺されています。他のアンデッドは別の場所を警備しているため、ここにはいません。
 噛まれると毒が回ります。

◆場所情報
 ホテルの屋上階。階層全てを使用したスイートルーム。そこまでの護衛アンデッドを蹴散らしての登場です。
 部屋の中は明るく、足場も広さも問題なし。生きている一般人は沢山いますが、戦闘になると分かれば勝手に避難していきます。なお神秘秘匿の必要はありません。
 戦闘開始時、敵前衛に革醒者アンデッド(×2)と一般人アンデッド(×5)が、敵後衛に佐久間(×1)と一般人アンデッド(×5)がいます。敵前衛とリベリスタの距離は十メートル。敵後衛までは二十メートルとします。
 事前付与は一度だけ可能です。

 敵の強さは難易度相応。死の国の希望となってください。
 皆様のプレイングをお待ちしています。

参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
ノワールオルールクリミナルスタア
依代 椿(BNE000728)
ハイジーニアスデュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
ハイジーニアスクリミナルスタア
坂本 瀬恋(BNE002749)
ハイフュリエミステラン
シィン・アーパーウィル(BNE004479)
アウトサイドアークリベリオン
水守 せおり(BNE004984)


「ここか……」
「間違いあらへん。このホテルの上にネクロマンサーがおるんや」
 メモを受け取った『不滅の剣』楠神 風斗(BNE001434)と『縛鎖姫』依代 椿(BNE000728)は駅前にあるホテルを見上げていた。この屋上にネクロマンサー佐久間がいる。革醒者のアンデッド二人と多数の一般人アンデッドに守られたこの町を支配する革醒者。
「行くぞ」
「ちょ、ちょい待ちぃや! むやみに突っ込むと危ないで!」
「ネクロマンサーがいる。それだけで進むには十分な理由だ」
「せやかて落ちつかなあかんて! 相手の数は多いんやから」
 アーク崩壊後、風斗と椿は共に旅をしていた。一時は地下に潜って傷を癒し、力をためて日本を放浪する。目的は――
「ネクロマンサーを殲滅し、日本を解放する。躊躇う時間も惜しいぐらいだ」
「……ホンマ。いつか死んでまうで、その戦い方」
 直情型の風斗とストッパーの椿。どちらかが欠けていればこの死の国に飲み込まれ、アンデッドとなっていただろう。そういう意味では名コンビだ。
「じゃあどうする?」
「とにかく様子見て隙を――」
「ひとーつやーいてはおーのがーためー。ふたーつやーいてーはとーものーためー」
 見ぃへんと、という言葉は突然の歌声にかき消される。物騒な音楽のほうに二人が振り向けば、『桃源郷』シィン・アーパーウィル(BNE004479)が僅かに中に浮いた状態で二人に迫ってくる。
 その耳の形には覚えがある。風斗はその種族の名前を口にした。
「フュリエ」
「いやあ。お久しぶりです。実はあなたたちが誰だかわからないんですが」
 シィンは悪びれることなくアークの同僚を『知らない』と言う。
「いやぁ、一体何をやらかしたんだか、名前以外何にもわからないところをアークに拾われましてそしたらすぐにアークが解体されて居場所がなくなっちゃいましてねぇ。
 かろうじて解るのが、アークに関連してたものだけだったので、皆さんに遭えて本当に嬉しいのですよ!」
「記憶喪失……なんか?」
 額を指で押さえて椿は悩む。シィンの表情と所作は演技には見えない。おそらく本当に記憶喪失のだろう。
「アークですって!」
 アーク、の言葉に反応したのは『祓戸青姫』水守 せおり(BNE004984)だ。姉がアークい所属していたこともあり、その噂は聞いている。日本を守るためにネクロマンサーと戦い、そして散ってしまった……。
「あの……もしよければ一緒に戦ってもいいですか?」
 突然の申し出に風斗、椿、シィンは顔を見合わせる。おそらく無所属のリベリスタだろう。見たことはない顔だが、悪意は感じられない。
「いいだろう。ついてこい」
 承諾したのは風斗。
「罠かもしれへんで」
「そのときは壊すまでだ」
「豪気ですねぇ」
 そして四人のリベリスタは一丸となって、ホテルの中に入っていく。
「思ったよりもアンデッドの数が少ないですねぇ?」
「誰かがアンデッドと戦っているみたい」
 襲撃があると予想していたシィンはが首を傾げ、せおりが所々に残る傷跡を見つける。
 疑問に思いながらも、彼らは歩を進める。罠の可能性を考慮して階段を登り始めた。

「侵入者だと? さっき腕をもいだ『毒退く』が特攻してきたのか?」
「どうやらそれとは違う者のようです」
 ネクロマンサーの佐久間はスイートルームで『ザミエルの弾丸』坂本 瀬恋(BNE002749)の報告を聞いていた。サングラスに黒スーツ。如何にもな感じのボディガードの姿。瀬恋は神秘の力を使い、性別すら欺いて佐久間に仕えていた。
 新たな侵入者か、と面倒さそうに佐久間は腰を上げ……ようとして瀬恋に向かって手を振る。
「お前が相手しろ。この俺が出るまでもない」
 尊大なこの男の態度には、毎度ながら辟易させられる。事実、実力も大した事はないだろう。だがそれが瀬恋にとって都合がよかった。いざとなればすぐに逃げることが出来る。アークが潰れたことに思うことはあるが、怒りに任せて暴れても高が知れている。
「わかりました。この部屋で迎え撃ちます。入れ違いになってはことですから」
「フン! 入れ違いになってもコイツラで潰すだけだ」
 佐久間は傍らにはべらせている女性型アンデッドを撫でる。革醒者のアンデッド。それが佐久間の最大戦力。
「佐久間有戸。その生命、貰い受ける」
 扉が開かれ、一人の男が入ってくる。激戦を思わせるボロボロの服装は、かつてアークが存在していた頃の制服だったもの。数々の勲章は傷だらけで色あせている。何よりもその男には左腕がなかった。
「ほほう。聞いた事があるぞ、貴様アークの守護神と呼ばれた男か」
 したり顔で佐久間は『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)のことを思い出す。アーク戦のときに最後まで抵抗したリベリスタ。
「その名を呼ぶな……!」
 ぎり、と奥歯をかみ締めて快は呼ばれた字を唾棄する。思い出すのその名で呼ばれた最後の戦い。残骸と死骸の中、左腕を失った混沌組曲と呼ばれた戦い。だが、失ったのは左腕だけではない。
 箱舟、仲間、大事な人……。それを守れずに何が守護神か。
「アークの守護神は死んだ。ここにいるのは一人のリベリスタ。死霊使いを燃やす復讐の炎だ!」
 右手を突き出し叫ぶ快。その前に瀬恋が立つ。
(新田と手を組めば佐久間に勝てるか……? いや、アンデッドに圧倒される。悪いがここで倒れてもらう)
 瀬恋は冷静に状況を判断し、そう結論付ける。二人は少しずつ距離をつめ――

「はいはーい!その余興、うちも参加させてもらおか。踊るんはあんた等やけどな」
 扉を開け、椿の声が響き渡る。風斗、シィン、せおりもその後に続いて部屋に入ってきた。


「馬鹿な……! ここまでには大量のアンデッドが警護していたはず!」
「はぁ。それってこれのことでしょうか? このヨクワカラナイモノ」
 シィンが首だけになったアンデッドを佐久間のほうに投げる。自分たちがその警護を突破してきた証としては十分な品物だ。
「……っ!? あなたは!」
 佐久間の顔を見てせおりは驚いたように口元に手を当てる。かつてせおりの家族が経営する会社に勤めていた男。それがネクロマンサーとして目の前にいるのだ。
「これは水守のお嬢様。お久しぶりです。最後にお会いしたのは貴方のお父様の会社でしたか」
「こんなとこで何をしてるんですか! 兄様は一般人で、普通の優しい会社員では!」
「ええ、一般人でしたよ。革醒して会社に縛られる事をやめましたがね」
「まさか……あの日のアンデッド襲撃は……!」
 にやり、と佐久間は笑みを浮かべる。
「アークの守護神に紅椿のクミチョー、楠神のニーサン……生きてたのか」
 一方、知り合いの顔を認め瀬恋は変装を解く。神秘の力で変化させていた姿を元に戻し、黒髪の女性の姿に戻る。サングラスを直し、にやりと笑みを浮かべた。
「よぅ、クミチョー」
「……あれ、瀬恋さんやん。お久ぁ! 元気しとった?」
 いきなり歓談が始まり驚く佐久間をよそに、椿と瀬恋は会話を続ける。
「おう。元気に生きてるぜ」
「敵に寝返てたとか……まぁ、合理的で瀬恋さんらしいわ。どうやろ、一緒にセイギノミカタせえへん?」
「そうだな。そう言うわけだ、旦那。今まで世話になったな」
 言って瀬恋は佐久間に振り返り手を振った。突然のことで面食らう佐久間だが、裏切りの意図は十分に伝わったようだ。
「貴様ら……殺す! 苦しめるだけ苦しめて、アンデッドにして魂までこき使ってやる!」
「黙れ。貴様等のそういうところが気に入らないんだ」
 剣を構えて風斗が静かに吼える。殺意の篭った眼光。手にした剣は黒のオーラを纏っていた。かつての赤い光はそこには、ない。
 戦闘の雰囲気を悟り、一般人は一斉に隠れる。入れ替わるようにアンデッドが佐久間の周りに展開した。
 静寂は刹那。それを打ち破ったのはどちらだろう。
 気がつけば、死戦が始まっていた。


「闇の力だ。とくと味わうがいい……っ!」
 先陣を切ったのは風斗だ。剣に闇の力を纏わせ、刃と化す。ネクロマンサーへの恨みが生んだ闇の力。心を闇に落としてでも力を欲した黒の戦士。その力をアンデッドに向かい振りかぶった。爆ぜるように刃が拡散し、佐久間への道を開く。
 風斗が背負うのは戦神。正義は折れ、信念は砕け、赤剣の光は黒く澱み。しかしそれでも戦うことを捨てることは出来なかった。背負う戦神の姿形は風斗の求める女性の姿。それがあらゆる悪意から身を守ってくれる。
「一人で玉砕はガラじゃねぇけど、ツレがいるなら地獄で暴れまわるのも悪かねぇ」
 にぃ、と白い歯をむき出しにして瀬恋が走る。黒いガントレッドを手にして革醒者のアンデッドに迫る。技術は必要ない。必要なのは拳を握る力と、そして敵を恐れず前に出る勇気。往来を歩くように、戦場を歩いていく。
 思えば瀬恋の属する組織は全て滅んでいた。フィクサード時代の組織は壊滅し、アークはアンデッドに潰され。それでも瀬恋は歩みを止めない。絶望しない。道は自分が歩いた先にあるとばかりに拳を振るって突き進む。
「ひをつけーてもえあがーれー。やきくずーれはいになーれー」
 歌いながらシィンは二体のフィアキィを携え、僅かに宙に浮く。異世界の世界樹からフィアキィに魔力が集い、そこからシィンに流れ込んでくる。もっとも記憶を失ったシィンは異世界の存在自体を失っているのだが。
 魔力は渦となり、炎の雨となる。降り注ぐ炎の雨がアンデッドを、そして佐久間を焼いていく。激しい衝撃が室内を揺らし、隠れている一般人が悲鳴を上げる。そのことにシィンは頓着することなく、術を放っていく。
「わー!? やりすぎやりすぎ!」
 せおりは一般人を庇いながら戦っていた。魔術媒体を手にして、背筋を伸ばす。空気を吸い込み、お腹に力を込めた。心の中でリズムをとりながら肺の空気を吐き出した。喉を振るわせ、せおりの歌が響き渡る。
 水の舞、波紋の歌、献じ奉り浄めの流れをもたらしたまへ。せおりの歌は水の歌。源流より流れ、母なる海に帰る旅人の詩。決まった形を持たず、柔軟かつ純粋な水の流れ。死の国に響くその歌は、絶望を洗い流す清らかな希望となってリベリスタを癒していく。
「なんや皆好き勝手やってるなぁ」
 肩をすくめる椿。見た目は小さな少女だが、そこからあふれるオーラは見るものを圧倒する。湧き上がるオーラが風となって椿の長髪を揺らしていた。それは手にした銃に向かって流れ込み、敵を穿つ力となる。
 アンデッドの群れに踊りこみ、引き金に手をかける。真正面の相手に一発。右の相手に一発。しゃがみこんで攻撃をかわして一発。起き上がりざまに背後に一発。最後に咥え煙草を吹かし、一息ついた。どう、と倒れるアンデッド。
「……仲間。そうか、俺は今、仲間と一緒に戦っているのか」
 それまでナイフを振るい攻撃一辺倒だった快は、リベリスタの奮闘を見て口元を結んだ。アークで共に駆け抜けていた時期。そのとき自分がどう戦っていたかを体が覚えている。忘れるものか。箱舟という理想は砕けたけど、理想の欠片をまだ掴む事が出きる。
 ナイフを逆手に返し、仲間を見る。護る。そのために皆の位置を確認する。味方がどこにいて、敵がどこにいて。敵を倒すことよりも、味方を守るために快は動く。これが新田快と呼ばれる革醒者の動き。纏わりつく佐久間の霊弾を右手で払いのける。
 アンデッドは瞬く間に駆逐されていく。革醒者アンデッドも奮戦はするが実力差は明白だ。
「今、解放するからな……」
 風斗の一撃で倒れた革醒者アンデッド。アンデッド全てを失い、圧倒的な実力さを見せ付けられ、もはや佐久間にには勝ち目はない。その手からアンデッドを操るトランペットがカランと落ちた。
 それは『楽団』の死の歌を終わらせる始まりの音――


「どうやった? 今日まで楽しかったんちゃう?」
 崩れ落ちる佐久間に近づく椿。
「たまに来る上司以外何でも自分の思い通りの生活……充分楽しんだやろ?」
「う……ぐ……!」
 敗北。屈辱。そして死の恐怖。佐久間が浮かべる表情を見て椿は表情を変えることなく言葉を続けた。
「やったら……今まで人に与えた分、恐怖に怯えて泣いて命乞いしてもえぇんよ?」
「ゆ、許してくれるのか!?」
「いや、殺すけどな。惨たらしく、慈悲もなく。楽に死ねると思わんといてな?」
 ネクロマンサーを見下ろす椿の目は冷たい。一切の慈悲のない怜悧な声。
「ま……待ってくれ。俺を殺せば他のネクロマンサーに終われる派目になるぞ!」
「だろうな。そしてアンデッドを差し向けられるってか。圧倒的な死者の軍隊を前に勝ち目はない。
 そう信じてる奴らに一泡ふかせんのがサイコーに痛快なんだよ」
 瀬恋はそう言って佐久間の脅迫を笑い飛ばす。拳を握り、自分の進むべき道を示すように突き出す。
「おい、この顔に見覚えは無いか。居場所を知っていたら吐け」
 風斗は怯える佐久間に一枚の写真を見せる。何度も握っているのか所々曲がっている写真。そこには一人の女性の姿が映っていた。色あせた写真に写る女性。佐久間はそれを見て首を横に振る。
「し、知らない……だが、調べることは出来るぞ! 生かしてくれれば他のネクロマンサーに聞いて――」
「知らないのなら、死ね」
 風斗は迷うことなく佐久間に剣を振り下ろす。その返り血が、風斗の体を染めた。
「いやー。終りましたねー。キモチワルイのが全て消えて。全くどうなってるんでしょうかね、これ」
 シィンは『楽団』戦の記憶がない。そもそもラ・ルカーナやボトムチャンネルの記憶すら曖昧なのだ。何が正常で何が正常でないのかが全く判断つかない。注意されなければ隠れている一般人も巻き込みかねない雰囲気だった。
「えーと、イッパンジンを攻撃しちゃだめ? ……ふむ、それがアークのルールなんですね」
 なんとかアークに所属していたことは覚えている。記憶の拠り所がそこであることもあり、アークのルールには従うようだ。
「はい。そうなんです。え? ちょっと!? ……流石に無理か」
 幻想纏いを使って国外に逃げた政界の人に援助をともめたせおりだが、冷たく断られてに肩を落す。だがネクロマンサーを倒し続ければいずれ評価は変わるだろう。それまでつなぎを取っておくことは悪くない。交渉とは粘り強くやるものだ。
 佐久間に痛めつけられた一般人の傷を癒しながら、せおりはいずれこの国を解放すると心に誓う。それがどれだけ困難な道だとしても、必ず成し遂げると愛用の破界器を握り締めた。
「ふは……ふはははは……」
 風斗に斬られて、虫の息だった佐久間から聞こえる掠れた笑い声。
「『俺の死を察知すればホテルを爆破しろ』とアンデッドに命令してある……お前ら、皆死んでしまえ……!」
 佐久間が事切れると同時にビルが大きく揺れた。爆発音と、そして少しずつ激しくなっていく揺れ。
「皆、逃げるぞ! こっちだ!」
 快の誘導に従い、一般人とリベリスタはホテルの非常階段に走る。大丈夫、この崩壊速度ならギリギリ逃げられる。そう思った瞬間――
「天井が!?」
「うおおおおおおおおおお!」
 崩れ落ちる天井を全身で支える快。何とか人が通れる空間が出来るが、それが長く維持できないことは明白だった。慌てて近づこうとするリベリスタだが、快は声でそれを制する。
「来るな! 避難を優先しろ!」
「っ!」
「安心しろ。後で必ず行く」
「……わかった」
 快の言葉に拳を握り、一般人の避難に心血を注ぐリベリスタ。佐久間が死亡したとはいえ、逃げる先にアンデッドがいないとは限らないのだ。
 そしてホテルが完全に崩壊する。
 必死に捜索を行ったが、快の姿は最後まで見つけることは出来なかった。

 リベリスタ達は一つの町を死霊術士から救い出す。
 それは数多存在するネクロマンサーの一つを潰したに過ぎない。
 全体の数から見れば少なくとも、それは確かに死の支配を覆した一歩。この国は今だ死に包まれているが、いつかは死の闇を打ち払うだろう。
 リベリスタは個々の思いを抱き、死者の国を進んでいく。
 希望は小さく、しかし確かに存在していた。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 どくどくです。
 皆様とは交差しない世界でこんにちは。

 皆さんノリノリですなぁ、とプレイングを見ながら思いました。
 お陰でSTとしても「ああ、じゃあこうするか」と全体像がすぐに把握でき、想定よりも違った形になりました。
 そりゃアークないんだから、バラバラで突入する可能性はあったよなぁ。

 IF世界での戦いは続きます。
 そちらの世界がどうなるかは皆様の想像にお任せします。絶望の中、運命を勝ち取ることを願ってどくどくは筆を置かせてもらいます。
 
 ただいま、皆様が守った平和な三高平市。