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花宿る

●想いは友と往こう
 風が吹く。
 木々を吹き抜けて揺らされた枝の音。舞い落ちた花びらは、誰しもに平等に降りかかる。
 まるで涙のようだ。
 見上げれば流れる雲。鳥が鳴く声。いつもと変わらない。なのに少し、どこか寂しい。

 ――花には何が宿るだろう。

 変わったものを振り返る。
 空へと。土へと。還った想いもあるだろう。
 変わらぬものを抱きしめる。
 誰かを想う心。君を想う心。この落ちる涙を偽りのものにはしたくない。

 ――花には何が宿るだろう。

 この気持ちは君と共にある。
 君と共に花宿る。
 舞い散る花と共に往こう。

 ――友へ。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:BRN-D  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2015年04月23日(木)22:27
●状況
 三高平にある満開の桜の小道。
 なんとなく集まった人々が桜の下を歩いています。
 共に歩む者への想い。
 過ぎ去る者への想い。
 桜の下で、自分自身を振り返ることもあるでしょう。

 行き交う人々の列は長く、無数の顔がそこにあります。
 その中に見知った――けれど、会えない筈の人の顔も垣間見るかもしれません。
 きっと声が聞こえることはない。その手を取ることも叶わない。近づけば消える、桜が見せた幻だったとしても――

●たとえば桜の木の下で
 ・日々を振り返る。失ったものを、手にしたものを見つめる。
 ・これからを見据える。誰かと共に歩む未来を信じる。
 ・友に言葉を捧げる。もしかしたらあった未来を想像する。
 ・世界への想いを花に宿す。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・誰かとご一緒の場合は『時村沙織(nBNE000500)』と言った風にIDと名前を表記してください。
【グループ名】タグで一括でも大丈夫です(タグ表記の場合はID、フルネーム表記は必要ありません)
・NPCと絡む場合はID、フルネームは必要ありません。名前をお呼びください。

●補足
 1人でも。友や恋人とでも。仲間や団体ででも。
 想いある限り。
参加NPC
 


■メイン参加者 10人■
アンノウンアンノウン
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ハーフムーンソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
フライエンジェプロアデプト
氷雨・那雪(BNE000463)
アンノウンアンノウン
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
アウトサイドスターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
ビーストハーフスターサジタリー
アティリオ・カシミィル(BNE002555)
アウトサイドスターサジタリー
雑賀 龍治(BNE002797)
フライエンジェマグメイガス
姉小路 幽華(BNE004171)
ジーニアス覇界闘士
星川・天音(BNE005142)

●風が吹く。内へ。外へ。
「……今年も、桜の季節か」
 ひらり、ひらりと。頬を撫でていった風が桜を舞い散らす。
「散り際は美しいけれど……やっぱり、物淋しいわね……」
 はらり、はらりと。細くたおやかな指がストールを緩く広げ持つ。音もなく舞い落ちる花びらが、なびく髪へと絡んでいった。
 桜の道。終わっていく一つの時。綺麗な桜が落ちてしまうのが勿体無いと、広げたストールを捧げ持つ少女と並び、鷲祐は感慨深く桜を見上げた。
 ――また迎えられたことが不思議なくらいだ。
 全力で駆け抜けてきた。内の衝動に身をゆだね、激動の世界をそれ以上の速度で駆け抜けて……命を磨耗するほどの疾走の繰り返し。今、自分がいるならばそれは――
「……そういえば。お兄さんは、これからどうするの……?」
 傍らの少女が投げかけた言葉。桜から目を落とすと少女――那雪がまっすぐにこちらを見上げている。少しだけ目を閉じて、口の中でそうだなと呟いて。
「……戦うと思う。これからも」
「そう……お兄さんらしいわね」
 ぽつりと零れた言葉に那雪が小さく頷いた。
 風が吹く。降り注ぐ桜の花に那雪が自身のストールを確認していると、頭上から再び言葉が降ってくる。
「……俺は結局、ただ真っ直ぐに進むしかできなかった」
 聞いて欲しいという前置きの後、紡ぐのは心の吐露。愚直に貫いた日々の中で、通して理解したのは不器用だということだけ。そんな自分だ、けれど――
「こうして人が隣にいてくれる事に感謝する」

 自分を変えていくことがこれからの目標だと、そう語る鷲祐は真っ直ぐに前を見据えていて。
(その心が少し羨ましいかしら)
 鷲祐の背に、那雪の小さな手は届かない。背中を追いかけるには遠すぎる、けれど。
「耳を貸して欲しいのよ……」
「なんだ、屈めばいいのか?」
 振り返って身を屈めた鷲祐に、伸ばされた手が頭に触れる。
 ひらり、ひらりと。揺らされたストールから零れ落ちた桜の花びら。
「……思ったとおり、綺麗ね……来年も、また見にきましょう……?」
 追いかけるには遠すぎる、けれど。振り返ってくれたならその背中は、その想いは手に届く。疲れた時にはこうして話し相手になることも。
 ――桜を被るなんて、ガキの頃以来かもしれない。
 はらり、はらりと。小さく笑った鷲祐の、桜に埋もれた視界の先で柔らかく微笑む少女が映る。
「おかえりなさい、お兄さん……」
 ――今は花びらを払う気には、ならないな。
「ああ、ただいま」


 桜舞い散る中を行く。何とも言えん風情があるものだと考えて、そんな自身に目を細める。
 ……そんな感想を抱ける様になっていたか、俺は。
 言葉に出来ない感情を抱いて、龍治が視線を動かした。ひらひらと舞い落ちる桜の花びらと、それ以上に揺れ動く尻尾。
 全身で喜びを表現する彼女が、じっと見つめる龍治に気付いて顔を赤くして。
「思い返せば龍治とスッゲ長い間一緒に居るんだよな……」
 ツイと横に並んで、覗き込むように顔を見上げる。少しだけ言葉を溜めて、吸い込んだものを……時間をゆっくりと吐き出すように。
「この道を歩くみたいに、これからもずっと一緒に人生を歩んでいけたらいいなって思う」
 今更すぎるか。照れ笑いを浮かべながらその手を龍治のものと絡ませた。
 龍治は黙って見つめていた。自分の中で育ったものを確認するように。やがて、繋がれた手を握り返して。
「大きな戦いが終わった今。この賑やか過ぎる街に残る理由も見当たらなくなってきた。
 ……以前の俺であれば躊躇なく海の外に出、違う戦に塗れる道を選んだだろう。それしか、生きる道を知らなかったからな」
 ぽつりと紡がれる言葉を木蓮は静かに聞き入る。何一つ零さぬようにと、真っ直ぐにその目を見つめて。
 その彼女を見返して、龍治は息を吸い込んだ。言うべき言葉を言うために。
「だが今は、お前と共に居たい。どんな未来が待つのか……戦よりも、興味を惹かれて仕方ないのだ」
 向かい合う相手の表情の変化を満足げに捉え、龍治は言葉を続けた。
「お前が無事学業を終えたら、喧騒のない里にでも越そう。そうだな……この様な桜を、毎年見られる場所に」
 吐ききった息を小さく整える。恐らく、彼女が聞きたいその言葉を紡ぐために。
 ――ついて来てくれるか?

 その表情は目まぐるしく変わる。照れ笑いのようでいて、泣き笑いのようでいて。けれどいつだって彼女の想いはたった一つ。
「っ……た、龍治はずるいな、最高の口説き文句じゃんか……」
 未だ纏まらない言葉を必死に紡いで、けれど早く告げたい想いを抱いて。
「どんな未来が待ってるか俺様も一緒に見たい……だって夫婦だもんな!」
 破顔して告げる木蓮が、もう一方の手も龍治の手に添える。向かい合うように、自身の全てで返すように。
「俺様も、もっと立派な嫁さんになれるよう頑張るぜ――ちゃんと横で見ててくれよ、龍治!」
 その言葉に龍治は小さく、けれど確かな笑みを返して。


●君想う。繋ぎ。絡めて。
 ――2人、並んで歩いている。
 見上げれば桜の花。隣を見ればいつもの――いや、いつもとは違う。
 隣を歩くアティリオは、日頃の女装姿とは違い男物の服に身を包み。その顔も絶えず笑顔を浮かべる普段とは違い、りりしく真面目な表情で――
(これはこれでとても素敵です)
 そんなことを考え小さく微笑んだ幽華に。
「幽華さんと出会って1年経ったんですね」
 ふいに切り出された言葉に少し考えて、もうそんなにと幽華は驚きを口にする。そんな幽華に、けれどとアティリオが呟いた。
「もっと長く一緒に居た気がするでありますよ」
「ふふ、色んな出来事がありましたからね」
 時間とは不思議なもの。出会った頃と変わらぬような感覚も、ずっと傍にいたような感覚も、どちらも間違いではない。
「これまで貴女と過ごした時間を振り返って、思ったことがあります」
 そんな不思議な記憶を遡っていた幽華が現実に引き戻される。指にそっと触れた感覚。頭で理解するより先に言葉が滑り込んできた。
「聞いてもらえますか?」
 アティリオの指先が幽華の指先を伸ばす。その指に嵌められた、確かな形。
「あ、あの……これって、その」
 指輪から目が離せない。言葉が上手くまとまらない幽華が落ち着くのを待って、アティリオが息を吸い込んだ。
「幽華さん、愛してます」
 時間が止まる。赤く染まっていく顔から目を逸らさずに言葉を続けていく。
「これは婚約指輪であります」
 指輪をなぞって、柔らかな笑顔と共に最後の言葉を吐き出した。
「自分と一緒になってもらえませんか?」

 時間にしてほんのわずか。けれども長く、とても長く感じる沈黙――
 その間も少女はずっとあたふたと落ち着かず、懸命に言葉を探しているようだった。アティリオはそれを黙って見守っていた。
 やがて。音が再び流れ出す。2人の間に。
「あの、その! ……嬉しいです、とっても」
 染まりきった色はこれ以上変わらず……けれど感情をこれ以上ないほどに演出し。
「わ、私みたいなのでよければ……よ、喜んで!」
 2つの笑顔が重なった。手を取り合い、言葉を重ねて、2つの道が1つになる。
「自分はまだまだ頼りない未熟な男でありますが、幽華さんが大人になるまでに、貴女に相応しい人間になれるよう精進するでありますよ」
 そんな男の言葉に、幽華は小さく首を振る。
「私はいつもの、自然体のままのあなたが好きなんですから」
 笑って。
 ――2人、並んで歩いていく。


 桜散る。故の儚き、美しさ。
 それは自身の投影かあるいは――
 らしくないと竜一自身思う。それでも心苦しいこの感情。
「別に気に病むことは無いが」
 隣から響いた声に目を見開く。ユーヌは何を驚くと呆れるばかりだが。
「何年の付き合いだと思っている」
 竜一は頭を掻くばかり。少しだけ間を空けて、ぽつりと零す。
 あの場に挑んだ時に覚悟はしていた。全身が熱を帯び溶けていく感覚は今でも忘れない。それでも、生き残った。今も手を繋ぐ、最愛の人と。
「……とはいえ、撒きこむ形になってしまったのも」
 その先は続かない。手に込められた力を感じて。小さな手。少女の手。けれど強く意思を示す最愛の手。
「私が生き残らせたいからやったんだ」
 巻き込みたくないという我が侭に、それ以上の我が侭でもって。代わりにではなく、共にと願った、最高の我が侭でもって。
 ならばこれ以上竜一に言葉があろうか。嗚呼、見初められているなぁという想い以外に。
「代償も些事に過ぎん。力も所詮は要素の一つ、無くなろうが何一つ私に影響しない」
 そう思えるのは強さだろう。そして事実、そうなのだろう。2人は互いを足りないなどと思うことはない。
「多少の不便は竜一が補ってくれるのだろう? 脚立代わりとか」
「ありがとうございます」

「それはそれとして、これからどうしようかね」
 戦えなくなったことは、竜一の未来を大きく変えるものだ。
 戦えない以上アークには居られない。それは竜一にとって譲れぬ、自分というものを象る1つ。
「まともに人生プランの1つや2つ練りなおして欲しいところだが」
 辛辣だ。
「うう……いまから就活して間に合うかなあ」
 年上の甲斐性など(初めから)まるでなく頭を抱える竜一。目を細めてそれを眺めていたユーヌだったが。
「ユーヌたんはこれから何したい?」
 話題を振られ瞑目する。
「やりたいこと、か」
 ふむと一言。
「今は神秘技術なんて遊べるものが有るのだから研究職でも進むかな。一先ずは大学だが」
 すらすらと並べながらも、どこかおまけのように感じる。
 竜一とて長い付き合いだ。少ない表情の変化も読み取れる。
「ま! とりあえずは、ユーヌたんとの結婚かな!」
 だから。彼らしい態度で笑みを見せ。
「ああ、確かに先に結婚だな。丁度パンフレットが有るんだが、今からならジューンブライドに間に合うかな?」
 2つの頭が覗き込む。未来の予想図を覗き込む。
 未来の話をしよう。不確かで不鮮明。だけど変わらないものがある。
 ――誰よりも愛してる。
 ――この世の何よりも愛してる。


●手を伸ばす。空へ。彼方へ。
「君、星川、天音さん……だろ? 天乃の、妹の」
 何かに背を叩かれた気がした。振り返った時に、一目見た時に、それがなんなのかわかった気がした。
 桜の下に彼女はいた。散り行く花びらが彼女の姿を幻想的に包み隠す。だから、かもしれない。
 思わず手を伸ばした。その懐かしい気配に。届かない彼方に、手を伸ばした。
 少女が自分に気付く。わずかな動作、その表情に違いを感じて。そうしたものを確認してしまう、そんな自分に嫌悪すら感じて。
 目を閉じる。一呼吸。1歩踏み込んで、快は彼女に呼びかけた。

 ――初めて会ったのは任務の時。初陣だった私にはゆっくり話す時間もなく場を離れた。
 ――けれど。見た時からずっと心がざわついてたよ。
 ――だから調べた。どういう人なのかを。
 ――そして、姉との関係も。
「先日はどうも。お姉ちゃ……姉がお世話になったみたいで」
 眼前の男の硬い表情。恐らく自分もそうなのだろう。自嘲の笑みを押し殺して天音が口を開く。
 そんな天音の表情を読み取ったように、快は自分の顔を揉み解す。それから、少しだけ笑って話しかけた。
「君にさ、天乃からの伝言があるんだ」
 ……伝言? 訝しげな顔を見せる天音に頷く。
 遺言、だったら引き受けるつもりはなかった。けれど。
 向こうで元気にやっているなら。これは遺言じゃなくて、伝言になるから。
 ますます顔をしかめる天音に、天乃の顔を思い浮かべながら言葉を紡ぐ。頭の中で、天乃の声が響いてた。
「死ぬな、と。自分は子を成し次代を育てる事が出来ないから、その分生きろってさ……それと、思うようにやれ、ってね」

 一際強い風が木々を揺らし桜を舞わせた。
 音がする。花の音。風が鳴らした花の音。
 嗚呼、確かに姉の言葉。姉が宿った花の言葉。
「……お見通しってことか」
 天音が浮かべた、自嘲とは違う笑み。その正体は自分でもわからない。
 普通に憧れる私。戦いを求めてしまう私。……その間で揺れる私。
 だけどそれは星川の流儀そのもの。強さに至る道は一つではない……そんな家の言葉を思い出した。
「確かに伝えたから」
 顔を上げれば真面目な男の顔。その顔を見て、唐突に悟った。
 異世界といえど存命の姉、その力を私がなぜ継いだのか。
「……私からも、一つだけ」
 だから。目線を外さずに一つだけ。意趣返しといこう。
「二人でお幸せに……それと、機会があれば会いに行ってあげて」
 快の表情の変化に満足げに微笑んで。天音が桜の元を去る。
 ――使い走りの腹いせ、未練がましい姉はどんな顔をしてくれるだろうか……

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
このような顛末と相成りました。

遅くなりまして申し訳ございません。

皆様の歩む未来の、1枚のページとなったなら幸いです。

ご参加ありがとうございました。