●赤い月が輝く時 ディーテリヒ・ハインツ・フォン・ティーレマン、堕つ―― 三ッ池公園を占拠したバロックナイツ軍はその事実に困惑する。『閉じない穴』を占拠するアシュレイ・ヘーゼル・ブラックモア。彼女の目的は『世界の破滅』。その手段として『穴』から破滅を呼ぶミラーミスを召喚しようとしていた。 数百を生きるアシュレイであっても、その召喚術は容易ではない。だが彼女にはペリーシュから掠め取ったいくつかのアーティファクトとディーテリヒから与えられた『ヴァルハラ』があった。これにより、彼女は召喚に足る分の魔力を有する事になる。 この世界を跡形もなく破壊するミラーミスを召喚する術――『魔王の座』と呼ばれる儀式。それにより呼び出されるのは『Case-D』と命名されたミラーミス。 召喚されれば世界が終わる。ならば召喚される前に叩くべし―― ●あるフィクサードの失策 盟主崩御の報を聞き、クレト・カンデラリアは下らぬ冗句と笑い飛ばした。だがそれが嘘ではないとわかると、怒りで立ち上がる。 カンデラリアもディーテリヒの目的は知っている。そしてアシュレイに抵抗なく討たれたという事は、それもディーテリヒの意向だということも理解している。 だが、許せない。終末のラッパを吹くのはあくまで我が盟主の役目。裏切りの魔女ごときに許される事ではないのだ。 三ッ池公園防衛のために設置していたゴーレムを反転させ、アシュレイを殺すべく進軍するカンデラリア。実力ではアシュレイに叶わないが、混乱に乗じて多数の軍勢を送り込めば隙は生まれる。その隙をつけば―― 彼は確かにこのときミスを犯した。真にアシュレイを討つ事だけを考えれば、一旦引いて『穴』奪還をもくろむアークと合流する方が合理的なのだ。怒りが彼の判断を狂わせた。 そしてそれは彼が戦いで犯した唯一の、そして最大のミスであった。 ●Ride of the Valkyrie ゲルヒルデ。 『ニーベルングの指輪』にも登場する九人の戦乙女の一人。その意味は『戦いの槍を持つ乙女』。その槍は悉くゴーレムを砕き、灰燼と化す。 ゲルヒルデに率いられる勇者の魂(エインヘルヤル)。死して尚戦いを求める勇猛な戦士に軍勢を止められ、戦乙女の槍で胸を貫かれるカンデラリア。膝を突き、死にゆく体でゴーレムに最後の命令を下す。 「裏切りの魔女の手下を……殺せ!」 主の死を理解せぬ心なき騎兵。彼らは無謀にも戦乙女に戦いを挑む。 『戦闘続行』 冷たく応じる戦乙女。槍が翻り、白い羽根を広げて死神が舞う。 ●アーク 『はっきり言ってバケモノだ。まともにやり合えるなんて思うなよ』 フォーチュナからリベリスタに。幻想纏いを通じて通信が入る。 この先に強力な戦闘力を持つ戦乙女が出没したという。迂回するルートもあるが、ロスは可能な限り避けたいのが実情だ。 『内部抗争かわからないが、バロックナイツ軍のゴーレムと殴りあっている。攻めるなら今だが、だからといって勝算は高くない。避難したほうが賢明だぜ』 送られてくる敵情報を鑑みても、頭を抱えたくなるほどのものだ。確かに手を出さないほうが賢明かもしれない。 だが逆に、ゴーレムを倒した後戦乙女がリベリスタ軍に向かうかもしれないことを思うと、放置するわけにも行かない。今ここで倒すことが出来ればそれがベストなのだ。 進行方向には槍を持つ戦乙女。そして戦士の霊。対するゴーレムは長くは保たないだろう。 だが今の戦力で勝てるかというと、難しい。 貴方の判断は―― ●幻想纏いの通信記録 『敵情報 ・ゲルヒルデ ヴァルキリー。槍を持つ戦乙女です。背中に白鳥の羽を生やし、鎧で武装しています。 自ら先陣を切って闘うタイプの指揮官です。アシュレイの敵を討つ為に戦います。 攻撃方法 突き 物近単 手にした槍で素早く突いてきます。[弱点][必殺] 回転 物近範 槍を回転させて、周囲を傷つけます。 投擲 物遠2貫 槍を投擲し、全てを貫きます。槍はすぐに戻ってきます。[失血][ブレイク] 突撃 物近複 白い羽根を広げ、槍を掲げて突撃してきます。全力移動後でも攻撃可能です。[ノックB] 威圧 神遠2単 鋭い眼光で威圧します。[Mアタック100][致命] 鏃雨 神遠全 ルーンを刻んだ矢を降らせ、敵を呪います。[呪い] 号令 神遠味全付 戦士に号令をかけ、士気を高めます。命中、物攻、神攻、WP上昇。 白鳥 P 戦乙女の翼は戦う為のもの。『飛行』『飛行戦闘』相当。 無双 P 並ぶもの無き槍の使い手。常に二回行動します。 戦乙女 P 我は数多の戦士を率いる戦乙女。高い指揮能力を有し、命中と物攻&神攻を上げます。 ・エインヘルヤル(×15) 戦乙女に率いられた勇者の霊です。世界の終わりを感じ取り、戦列に加わりました。 攻撃方法 豪斧 物近単 手にした斧で敵の頭を砕きます。 投斧 物遠単 手にした斧を投げつけてきます。 呪言 神遠単 一族に伝わるまじないで動きを封じます。[呪縛] 酩酊 P 酒を飲み、精神的に高揚しています。[精無] ・ルーン(×1) ゲルヒルデが刻んだルーンです。HPが存在します。Eフォースのようなものと思ってください。一切の行動を行いません。 勇猛果敢なものを祝福し。臆病者の足を止める効果を持ちます。 攻撃方法 勇者の禊 P 戦場全体に影響。このキャラクターが存在する限り、すべてのキャラクターは死亡判定時にプラス修正がつきます(死に難くなります)。 戦の足枷 P 戦場全体に影響。このキャラクターが存在する限り、撤退できません。 幸運を祈る!』 ●Let Us Cling Together 「どうやら間に合ったみたいですね」 「世界をかけた戦イ! 血が騒グ!」 「ガンダーラの戦士、馳せ参じました」 赤い月に照らされて、ガンダーラの戦士が戦列に加わる。 「アークのリベリスタには妹の事で恩があってね。手伝わせてもらうよ」 「ベレッカ叔母さんが守ろうとしたこの世界、壊させるわけには行かない」 「もはや宗教云々ではありません。この世界に住むものとして、微力ながら参戦させてもらいます」 夜の闇を裂く様に、ヴァチカンの戦士が戦列に加わる。 異なる宗教を持ちながら、箱舟の元集うリベリスタ達。組織やしがらみを捨てて、いま手を取り合った。 さぁ行こう。世界を救うのだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:VERY HARD | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年03月31日(火)22:37 |
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■メイン参加者 7人■ | |||||
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●開戦。そして激突 「ゲルヒルデ。ここは通しません」 鞘から刀を抜き放ち、真正面から挑む『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)。他のエインヘルヤルを全て無視し、ただ一直線にヴァルキリーに向かう。誰かがゲルヒルデを押さえる事は、戦略上意味のあることだ。だが、それだけではない。半神ごときに負けはせぬという心意気もあった。 空を飛ぶゲルヒルデと切り結ぶ為に飛行の加護を受け、跳躍する舞姫。刀を持つ腕をゲルヒルデのほうに向け、大上段に切りかかった。槍と刃が交差し、激しい金属音が響く。だけど一度だけでは終わらない。高速で繰り出す刃は、少しずつ戦乙女に傷を入れていく。 「先手は頂きました。如何に戦乙女といえど、鍛えられた人間に勝るわけではないようですね」 『先手を取られた事は賞賛しよう、人間。だがそれは私に勝てる事と同義ではない』 「なんで戦乙女さんに対抗意識燃やしてるのかな~、舞りゅん」 そんな舞姫を見ながら『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)が頬をかく。理由はどうあれ、やる気があるのはいい事だ。この戦いに負ければ世界がなくなってしまうのだから。終は白銀のナイフを両手に持ち、戦場を走る。戦端が開かれる前にエインヘルヤルに迫り、二本のナイフを振るう。白銀の軌跡がエインヘルヤルを襲う。 右手のナイフで敵の手首を裂いて、左手のナイフで胸を突く。二歩右に移動してまた左右別々にナイフを振るう。相手の動きが止まって見える。相手が一手動かす間に、こちらは二手動く。戦場を正しく把握し、思考のままに両手の刃を振るう。二本のナイフは時に同時に、時に交互に動き、エインヘルヤルの血肉を削っていく。 「ま、世界最後の日でも通常運転してると思えば」 「確かに。最後の日にするつもりは毛頭ないがな」 終の言葉に肩をすくめて『無銘』熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)がサングラスの位置を直す。目の前のヴァルキリーとエインヘルヤルを見て戦意を高めていく。戦乙女に率いられた戦士。終末の戦いと言ってもいいこの戦い。だが止める手段はこちらにもある。終りになどさせはしない。 白の腕輪を手にして、敵を見る。頭の中で敵に印をつけ、どういう軌跡で腕輪を放つかをイメージする。手首で腕輪を回転させ、イメージの終了と共に投擲する。狙いは前衛で槍を振るうヴァルキリーとエインヘルヤル。腕輪は伊吹のイメージどおりに飛び、戦士達の頭を穿つ。 「退けゲルヒルデ。ラグナロクにはまだ早い」 『それを決める戦いだ。私を退去させたければ実力をもって示すがいい』 「こちとら初めからそのつもりなんだよ!」 鮫のような笑みを浮かべて、紫藤 晃(BNE005143)が戦場を歩く。自分の背丈ほどあろう大業物を抜き放ち、両手で構える。先代がそうであったかのように、その跡目を継いだ晃も真正面から相手に挑む。相手が力押しで来るのなら、真正面型受けて立つ。喧嘩上等、と顔で語り、刃で示す。 特定の剣術を学んだわけではない。特別な刀を有しているわけでもない。我流の喧嘩殺法で戦場に躍り出る晃。真っ直ぐ行ってぶった切る。勘と勢いに依る特攻。しかしそれも数を重ねれば一つの『術』となる。戦いの中で研ぎ澄まされた戦法は、余分な作業をそぎ落とされた剣術となり戦乙女に傷を負わせる。 『良き太刀だ。名を聞こう』 「城山組二代目組長、紫藤晃。ただのヤクザだ」 「俺は覚えてもらわなくてもいいぜ。二度と会う事はないだろうからな」 『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)は盾とメイスを構えてゲルヒルデに言う。この戦いに負ければ世界は消えてしまい、勝てば世界の終末は消えてなくなる。二度と会う事のない相手に覚えてもらいたいのは名ではない。盾の矜持だ。戦場で多くの傷がついた盾。この傷こそ戦いの証。今日も、そして存在するなら明日も盾を構え続けるだろう。 義弘の元にエインヘルヤルが迫る。斧を手にして頭蓋を砕こうと振り下ろされた斧は、義弘の持つ盾により防がれる。激しい交差の音と力強い衝撃。それを受け止めてなお、義弘の顔は涼しげだった。成程相手は歴戦の戦士だ。この程度の一撃なら何度も受け止めてきた。アークでの経験が、盾の傷跡(けいけん)が、今ここにある。 「俺達の戦いの全てに世界が懸かっている。いつも以上に気張っていこう」 「ああ、世界を終わらせはしないぜ!」 地面を蹴って浮遊する『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)。左手で祈るように手を構え、右手で槍を持ち戦場を見渡す。この世界を終わらせはしない。人間や動物、植物などの命のために。そして今まで死んでいった命のために。命の大事さを知るフツは、そのすべてのために世界を終わらせないと決意する。 槍の穂先と指先の動き、そして言魂。その三つをもって空中で印を切る。陰陽の二極、四神への願い、八卦の法則。持ちうるすべての技法と知識を持ち、因果を震わせる。相手に凶事を与え、守の加護を打ち砕く不可視の鉄槌。派手な光でもなく、衝撃でもなく、圧力でもない。あるいはその全て。世界そのものを叩きつける陰陽術の極みの技。 「お天道様もお前たちの出番はないって言ってるぜ!」 「ええ。ここは私たちの世界。守り、癒し、支えきってみせる」 フツの言葉に『全てを赦す者』来栖・小夜香(BNE000038)が頷く。この世界を終わらせはしない。そして誰も死なせはしない。小夜香の決意は癒し手の矜持。仲間も、駆けつけた援軍も全て守り、癒し、支えきるという決意。それには主無きゴーレムも含まれていた。たとえ命無き存在であっても、支えきると。 戦乙女にも劣らない純白の羽根を広げる。ふらりと黒髪が風を受けてなびき、白い羽根が舞い散った。赤月の戦場に響き渡る小夜香の声はまるで天使の歌のよう。高く高く響き渡り、リベリスタの体を包みこむ。歌は仄かな熱でリベリスタの体を温め、傷の痛みを押さえ、そして癒していく。仲間を護る決意をのせた祈りが、仲間を癒していく。 「……一度は相対した相手とはいえ、哀れなものね」 死人に癒しは届かない。伏したゴーレムの主を見ながら、悲しげに小夜香は呟く。ディーテリヒ側のフィクサードとはいえ、人の死を見るのはけして気持ちのいいものではない。瞑目し、戦場に意識を戻す小夜香。 敵は十五人のエインヘルヤルと槍の戦乙女ゲルヒルド。そして戦乙女が生み出した戦場を照らすルーン。 相対するのはアーク七人と、ガンダーラ三人、そしてヴァチカン三人。合計十三人のリベリスタ。 数の上では不利。個人戦闘力ではゲルヒルデが最上だろう。ならば勝機は総合力。どれだけうまく連携できるか、だ。 赤い月に照らされて、リベリスタ達は地を蹴った。 ●激戦。そして猛攻 リベリスタは先ずエインヘルヤルを狙う。数の優位性を確保し、ゲルヒルデを集中砲火できる体制を得るために。 終、インドラ、シャクティ、メッザペーサの四人がエインヘルヤルの前に立ち、そこを抜けてきたものをフツと義弘、伊吹が押さえる。最後列に小夜香とサラブジットが回復役に立ち、それを護るようにトニオが盾を構える。ラザールが少し離れて魔力を練り上げていた。マンゴネルゴーレムがさらに離れたところから石を放っている。 そしてゲルヒルデには、 「紫藤さん、エインヘルヤルのほうをお願いします。ここは私が」 「すまねぇな。強いヤツに挑まずにはいられなくて」 という事で晃がエインヘルヤルを押さえに向かい、舞姫とゴーレム三体が戦いを挑む。 『戦の申し子よ。斧を掲げて戦歌を謳え』 ゲルヒルデはエインヘルヤルを鼓舞し、槍を振るう。しかしそのたびにフツが印を結び、戦場全てに札を降らしてその戦意を砕いていく。戦場全てに届く白と黒の波紋。二極の魚が戦場を泳ぎ、因果を乱していく。 「そうはさせねぇぜ! おとなしくヴァルハラに帰りな!」 槍を手にしてエインヘルヤルの一体を押さえながら、フツは術を行使していく。少女の声が聞こえる赤い槍でエインヘルヤルの斧を流し、時に受け止める。エインヘルヤルのまじないを弾きながら、フツは仲間達の動向を注視する。全体を見て動く。それがフツの戦い方。 「なるほど。確かにヴァルキリーに選ばれただけの力はある」 その隣で義弘もまた前衛を駆け抜けてきたエインヘルヤルと相対していた。斧の一撃を盾で受け止め、その実力を計る。この者もまた歴戦の戦士だったのだろう。 「だが、歴戦ならこちらもかいくぐって来た」 この極東で、世界で、異世界で。義弘もまた数多の戦いを超えてここに立っているのだ。盾の傷がその証。握ったメイスに力を込める。盾で受け止め。鈍器で殴る。遥か昔から受け継がれてきた基本的な打法。 「ルーンは狙うな。一撃加えただけで消え去るようだ」 ルーンの解析が済んだ伊吹が大声で告げる。逃亡する際には破壊しなければいけないが、そうでないならルーンの存在はプラスになる。いざとなれば破壊できる事がわかれば、優先事項はエインヘルヤルだ。 「戦士の魂を連れ帰る戦乙女か。誰一人、連れていかせはせぬぞ」 決意を口にして白の腕輪を握り締める。手に入れたのはしばらく前の三ッ池公園攻防戦時。宝貝を模して作られたそれは使い慣れた事もあり、とても手に馴染む。疾く進み、素早く頭蓋を砕いて手に戻る。伝説に書かれた攻撃が、今ここにあった。 「鬼にあっては鬼を切れ――」 オールバックにサングラス。ピシッと決まったスーツを着た晃は、戦場よりむしろ後方で指揮をしているほうが似合うように思える。だが刀を抜いた瞬間にその雰囲気は大きく変わる。刀は芸術品であると同時に、人を殺す道具。それと同じく戦闘に入った晃は、正に悪鬼。 「――修羅にあっては修羅を斬れってな」 踏み込む。派手な踏み込み音がしたわけではない。むしろその逆。無音で一歩踏み込み、同時に刀が振るわれる。冷たい風が急に吹きぬけるように冷えたかと思うと、気がつけば斬られている。晃と相対していたエインヘルヤルはそんな錯覚に襲われていた。 「戦乙女が英霊引き連れてラグナロクとか雰囲気あるけど、マジ勘弁」 赤い月を背に白鳥の羽を広げて槍を掲げるヴァルキリー。確かに終末の雰囲気だと終は苦笑した。死を切望する終だが、世界全てが終わるのは勘弁してほしかった。どうせ死ぬなら意味のある死を。人助けをするのは、自らの死に意味を持たせるため。そのためなら、死ぬ事も怖くない。 「まとまってくれてすごく助かるよ」 右手と左手。二本の手で握ったナイフが翻る。視界を広く、そして深く集中する。右手のナイフの軌跡と左手のナイフの動きを同時に思考し、動かす。飛燕の如く跳ね上がる一閃と、稲妻のような鋭い突き。二本のナイフがエインヘルヤルを襲い、そしてまだ止まらない。荒狂う刃の暴風。 「一応ゴーレムも回復は届くようね」 小夜香は命無きゴーレムにも進歩の祈りが届く事に安堵する。思えば先の戦いではゴーレム自身の魔力で自己再生していたか。僅かだが、光が見えてきた。元は敵だったが、それでもと小夜香は祈り続ける。 「慈愛よ、あれ」 戦場は目まぐるしく動く。すべてのリベリスタの傷具合を確認し、癒しの神秘を解き放つ。誰かを癒し、守り、支えるという事。それが『自分の役割』だと自覚する事。喪失を恐れ、だからこそそれに立ち向かう強い心。 「立ち塞がる者あれば、これを斬れ」 舞姫は徹底的にゲルヒルデに接近戦を挑んでいた。持ち前の素早さと回避力を生かし、自らも宙に浮き刀を振るう。エインヘルヤルのまじないを刀で切り裂いて跳ね除けながら、ただ戦乙女に戦意を向ける。翼による高速機動を封じ、仮に横を抜かれても一足で間合をつめる事が出来る舞姫は、確かにゲルヒルデを押さえるのに適していた。 「今まで戦い歩んできた戦いの歴史がここにあります。人間の歩みを、そして成長をなめるな」 舞姫の持つ一尺二寸の脇差は、ゲルヒルデの持つ槍と真正面から交差するには小さすぎる。だが小さいがゆえの軽さと速度で翻弄し、そして隙を見出し一撃を加える。ゲルヒルデの懐まで入り込み、跳ね上げるような刀の一閃。刀を振るう力が、隙を見出し繰り出す技が、何よりもそれを為す心が。それが人間なのだと語るように舞姫は刃を振るう。 ラザールが広範囲にエインヘルヤルを撃ち、インドラやシャクティがエインヘルヤルを攻める。メッザペーレが一体の動きを封じながら、糸でもう一体のエインヘルヤルを足止めしていた。小夜香とサラブジットの回復に支えられ、リベリスタは槍の戦乙女とそれに率いられる戦士を攻める。一人、また一人と崩れ落ちるエインヘルヤル。 しかしリベリスタの被害も皆無ではない。 「まだ倒れるわけにはいかない。我が身が砕け散るまで、貴様に喰らいつく」 ゲルヒルデの一撃に舞姫が運命を燃やす。 「まだ俺の盾は砕けてはいない」 「全くきっついね!」 最前衛で戦っている義弘、終もエインヘルヤルの攻撃を受けて運命を燃やしていた。 最も一番疲弊が大きいのは後衛を守っているトニオとラザールである。前衛と中衛を抜けたエインヘルヤルは、厄介な後衛の回復と高火力のラザールを狙う。 既にゴーレムは崩れ去り、残されたのはリベリスタとヴァルハラの戦士。 『勇猛果敢にして英雄豪傑。貴殿らを素晴らしき戦士達と判断しよう』 ゲルヒルデはリベリスタの戦う様を賞賛する。個々の戦闘力は今率いているエインヘルヤルよりも高い。死後、ヴァルハラに招待したいほどだと頷いた。 だがそれは逆にゲルヒルデにまだ余裕がある事を示している。 戦乙女の槍が、月光を反射して赤く光った。 ●猛撃。そして血戦 この戦いの肝心要は指揮官のゲルヒルデを倒せるか否かである。だからといって、それを護るエインヘルヤルを放置は出来ない。単純に開幕からゲルヒルデに集中砲火を行えば、指揮官を庇わせるなどの戦略で作戦が崩壊していただろう。 だがすべてのエインヘルヤルを倒す余裕はない。そのリベリスタの見解は間違っていない。それを行えば、確実に何名かは命を失っていただろう。援軍に来たリベリスタもその事を了解していた。その作戦は想定どおりに進んでいる。 勿論、余裕のある戦いではない。少しでも気を抜けば一気に逆転されてしまうだろう。 『隻腕の戦士よ。ゆるり眠れ』 ゲルヒルデの槍に叩き落され、舞姫が意識を失う。 戦場を見渡し鏃を降らそうとしたゲルヒルデの腕に切りかかる刃。見れば舞姫が跳躍し、『黒曜』を振るっていた。返す刀でゲルヒルデの胸を突く。確かな手ごたえだが、まだ戦乙女は崩れない。互いの息遣いを感じられるほどの距離で、舞姫の隻眼とゲルヒルデの怜悧な瞳が交差する。 『術式で身を起こしたか、運命に愛されし子よ』 「この身が砕けようとも、すべての運命を使い果たそうとも貴様に喰らい突く」 サラブジットの治癒術で身を起こした舞姫は、全身全霊をかけてゲルヒルデを足止めすると自らに誓う。後の事は考えない。味方が何とかしてくれると信じている。戦でおいて映える乙女。その出で立ちは、正に戦乙女の如く。 「無茶をするな、とは言わんが死ぬのは許さん」 伊吹が舞姫の覚悟を聞いて口を挟む。舞姫の覚悟と作戦上の立場は理解している。それを止める事はしない。だが、死ぬは許さない。世界に生きるすべてのために戦うのがリベリスタだ。そしてその『世界』には舞姫も含まれている。 エインヘルヤルの斧を白の腕輪で受け止める。飛ばせば頭を穿つ鈍器となり、腕に填めれば格闘の武具となる。腕輪を通じて斧の衝撃が伝わってくるが、泣き言を言ってはいられない。相手の攻撃を受け流しながら、戦場全てを俯瞰するように意識した。出来るだけ多くを打ち据えるように腕輪を投擲し、エインヘルヤルを穿つ。 「そうそう。誰も死なせやしないからね!」 叫びながら終はエインヘルヤルを地に伏したのを確認する。死にたがりの終は、死を考えるが故の命の価値をもっている。仲間を死なせはしない。それはアークのリベリスタだけではない。死なせない対象はヴァチカンやガンダーラのリベリスタも含んでいた。 目の前のエインヘルヤル。英雄と呼ばれる彼らもまた、何かを救う為に戦ったのだろう。終はそれを思いながらナイフを振るう。過去に彼らが守ったように、今自分たちが世界を護る。少なくとも、目の前の仲間は守りぬく。ナイフは戦士の胸に突き刺さり、エインヘルヤルを地に伏した。 「よし、俺は後衛に向かう。こっちは任せた」 状況を見て、義弘は後衛に向かって走る。回復役を庇っているトニオの体力は長くは持たないだろう。前衛は今いる人数でどうにかなると判断し、義弘は防御に回る。盾を名乗るだけの働きを、今占めそう。 義弘は小夜香の前に立ち、重量のあるエインヘルヤルの一撃を受け止める。ここより先に刃は通さないという気迫をもって相手を睨む。あらゆる角度から迫る脅威から仲間を護る守りは、正に難攻不落。真に『盾』たるはその硬さではなく、仲間の為に躊躇なく身を挺するその侠気か。 「ありがとう。私は私の支えを……」 仲間の絆を感じながら小夜香は静かに祈る。目の前には北欧の半神。崩界の危機を告げる赤い月が浮かぶこの戦場においてもなお、小夜香は祈り続ける。仲間の為に、世界のために。そして未来のために。この祈りが届くと信じて。 ホーリーメイガスの術式に深い信仰は必要ない。必要なのは相応の経験だ。だけど小夜香は祈り続ける。それが心を平静に保つポーズだということもある。だけど祈りの意味は『願う』事。この支えが、この回復が、仲間を勝利に導いてほしいと切に願う。その全てを乗せて、彼女は短く言葉を告げるのだ。 「軌跡よ、あれ」 「あの世で酒飲んでた連中に負けてられないってな!」 エインヘルヤルと相対しながらフツは笑みを浮かべる。紅の槍のリーチでエインヘルヤルを牽制しながら、符を展開して印を切る。一秒ごとに目まぐるしく変化していく戦場。その一手先を想像しながら、目の前の敵とも切り結ぶ。休まる瞬間などありはしない。 フツが願う衆生の救い。衆生とは生命あるもの全てをさす仏教用語。既に死んでいるエインヘルヤルが、生きる者の世界を犯すことなど許されはしない。因果を律する札は、死した英雄を穿ち、生きたるリベリスタの戦意を増す。 「賽の河原を拝ませてやるぜ。六文銭を用意しな!」 晃は大業物を手にエインヘルヤルの群で暴れていた。死んだ人間が向かうといわれる賽の河原。そこを渡る船賃の六文は渡せないが、引導なら渡せると刀を振る。大上段から振り下ろす一撃が、確かな手ごたえを伝えてくる。 エインヘルヤルの斧を受けながら、にぃと凄惨な笑みを浮かべる晃。痛くないはずはない。だが刃の動きは止まらなかった。振り下ろした刀は地面で翻り、相手の胴から肩を抜く逆袈裟の軌跡でエインヘルヤルを切り裂いた。 「さぁ、次の相手は――お?」 晃は背中で受けた衝撃に振り返る。エインヘルヤルの一人が背中に斧をつきたてたのだ。振り返ろうと足を動かした瞬間、力が抜けて倒れ伏す。意識が白く深いところに落ちていく感覚。 「すまねぇ、少しやすませてもらうぜ……」 カラン、と音を立てて転がる日本刀。 晃だけではない。後衛で守っていたトニオと、魔力の渦で戦場を攻めていたラザール、自らを削りながら戦っていたシャクティも力尽きる。 「閻魔様に呼ばれるには、まだ早いんでね!」 「まだやれる事は残っている」 中衛でエインヘルヤルを押さえていたフツと伊吹が運命を燃やす。少しずつ倒れていくリベリスタに、焦りを感じ始めていた。押し切れるか。 「これで残り五人!」 終がエインヘルヤルを倒し、リベリスタ全員に告げる。作戦で決定していた数までエインヘルヤルを減らした。後はゲルヒルデに挑むのみだ。 『人の子よ。汝らはよく戦った』 戦乙女は槍を構え、迫るリベリスタに言葉を投げかける。戦意がプレッシャーとなってリベリスタの心を震わす。 『ここで英雄として死をくれてやろう。我が槍、死出の土産とするがいい』 ●血の宴。そして―― 『眼前の戦士を倒し、敵陣を突破せよ』 ゲルヒルデはエインヘルヤルに自分を守らずに攻めるように告げた。それをフツ、終、伊吹、インドラ、メッザペーサが押さえる。エインヘルヤルの数が減れば、彼らもこちらに向かってくるだろう。 「はあああ!」 空中でセーラー服を翻し、舞姫がゲルヒルデに襲い掛かる。ゲルヒルデの鎧と体にはかなりの数の傷をつけた。だが舞姫の傷はそれ以上だ。歯を食いしばり、口元を拭う。肩で息をしながら敵の動きを見据える。限界は近い。退くべきだ。体中のいろいろな部分が危険信号を発している。だけどその全てを振り切って舞姫は刀を構えて切りかかった。 刀と槍が交差し、金属音と肉を裂く音。舞姫の意識はその音と激しい痛みの中、失われた。 『次は――』 「鴉魔、ブロック頼む!」 「はいはい!」 エインヘルヤルを片付けた終がゲルヒルデのブロックにはいる。終もエインヘルヤルとの戦いで疲弊している。震える足で立ちながら二本のナイフを構えて跳躍した。槍の一撃をかわし、隙を突いてナイフを振るう。一度目のナイフは胸甲の装甲に弾かれ、二度目のナイフはゲルヒルデの頬を裂く。 「降りてこーい! 戦いから逃げるのか!」 『己の能力を最大限生かすのが戦いというものだ』 翼を広げ、リベリスタ後衛に向かうゲルヒルデ。フツはそれを止める為に宙に浮くが、自分が相手をしていたエインヘルヤルを後衛に向かわせてしまう。そのエインヘルヤルの眼前に立つ義弘。 「来い。お前が斧の戦士なら、俺は盾の戦士だ」 メイスと盾。義弘が会得したのは遥か中世の時から受け継がれた戦いの技法。盾で攻撃を受け止め、メイスで穿つ。守りに徹するときはメイスで相手の槍を弾き飛ばす。相手の体をしっかりと見る。目線、肩の動き、体の向き。全てに意味があるのだ。それを理解し、最も危険と思われる場所に盾を動かす。激しい衝撃が盾を通じて伝わってくる。 「ありがとよ、司教! 一気に行くぜ!」 フツの赤い槍と、ゲルヒルデの槍が交差する。フツはメッザペーサにエネルギーを回復してもらい、符を展開する。メッザペーサとフツは全く異なる宗教のリベリスタだ。だがそれを気にはしない。今は世界の敵を打つために、手を取り合い戦うのだ。降り注ぐ陰陽の極みが、残ったエインヘルヤルを無に帰す。 「好きにはさせんぞ、戦乙女」 エインヘルヤルのブロックから解放された伊吹が、ゲルヒルデに足を向ける。二つの腕輪を時間差で投擲し、伊吹自身もゲルヒルデに向かい駆ける。槍で弾かれた腕輪を拾い上げて腕に填め、もう一つの腕輪がゲルヒルデに当たったと同時に拳を振るう。打撃と射撃、その両方を組み合わせるがクリミナルスタア。 「後もう少し……慈愛よ、あれ」 激化する戦いを見て、小夜香が癒しの神秘を行使する。仲間の傷はもう限界まで近づいている。回復に回復を重ね、ここまでたどり着いた。あと少し。小夜香はその役割上、入念に守られている。自分を守るために傷つく仲間を見て、だからこそ自分の役割を果たさなければと、祈る手に力を込めた。 リベリスタはゲルヒルデに挑む。世界を守る為に。 ゲルヒルデはリベリスタに挑む。世界を消す為に。 近づくものを槍で払い、視線で気力を奪う戦乙女。矢を降らせて呪いを与え、翼を広げて突撃する。 勇猛果敢に挑むリベリスタ。そこに油断があったわけではない。最善を尽くし挑んだ事は間違いない。 だが、届かない。ゲルヒルデの猛攻の前に押されつつあるリベリスタ。 「すまねぇ……足、引っ張っちまったな……」 悔しそうに伏したままの晃が、蒼白い顔で口を開く。足並みがそろわなかったのは自分のせいだという自覚があるのか、悔しそうに言葉を紡ぐ。 「あ、これやばい傷……!」 「ここまでか……」 荒狂う槍の猛攻の前に、終と義弘がゲルヒルデの攻撃を前に力尽きる。インドラとメッザペーサも倒れ、槍の投擲でサラブジットも地に伏した。 立っているのはフツ、伊吹、そして小夜香。だがフツと伊吹は既に運命を燃やしており、小夜香には攻撃手段がない。 『よく戦った、戦士達よ。汝らは英雄と呼ぶに相応しい。その魂、新たなエインヘルヤルとして迎えよう』 リベリスタの戦いを称えるゲルヒルデ。その体は傷だらけだ。だがまだ倒れそうにない。今立っているものが全力で挑んでも、勝ち目はないだろう。 全員を抱えて逃げるには人数が足りない。逃亡する為にはルーンを破壊しなければいけないが、ルーンを壊している間に攻撃されるかあるいは伏しているものにトドメを刺されるか。 そのような事が許されるものか。 伊吹は必死に思考する。何か策はないか。案はないか。この状況を打開する何かは。死ぬ事は怖くない。だが、誰かが死ぬ事だけは許されない。世界ごと皆滅びてしまうかもしれない状況だが、それでも仲間の手を振りほどきたくはない。 気がつけば―― 伊吹は槍を構えるゲルヒルデの前に立っていた。 サングラスの奥から、槍の戦乙女を睨み、静かに口を開く。 ●『槍に抗う者(アゲンスト・ザ・スピア)』 「待て、戦乙女。貴様は勇敢な戦士の魂を欲すると聞いているが」 『肯定だ。主神の命により我等が宮殿に迎え入れる為の王侯や勇士を選別し、招くが我が努め』 ゲルヒルデの槍は真っ直ぐに伊吹のほうを向き、その穂先は心臓の上で止まっている。その気になれば、ゲルヒルデは一瞬でその心臓を貫くことが出来るだろう。この距離で避ける事は叶わない。 だが臆することなく伊吹は言葉を続けた。 「入用なら俺の命を持って行け」 『ほう』 槍の先を動かすことなく、ゲルヒルデが興味を示したような声を出す。仲間のために自分を差し出す手合いは何人も見てきた。普段なら一蹴しただろう。ここに集まったのは正に歴戦の勇士。その全てを見逃し、一人だけを? 取引にもならない。槍をそのまま突き刺そうとし――口を開く。 『二つ問おう、戦士よ。 一つ。何ゆえ一人で身を投げ出す? 共に戦ったもの同士、宮殿でもてなすことを約束するが』 「俺はこの世界に執着がある。まだ為さねばならない事がある。愛しい、もう決して離したくない者もいる」 『その世界が滅びるとしてもか?』 「世界は滅びない。滅ぼさせはしない」 迷うことなく告げる伊吹。会話の合間は心臓一鼓動程度。 それはゲルヒルデも理解していた。かの者たちは世界を守るために戦っているのだと。主の命はかの者の足止めと殲滅だが、その内に秘めた魂は敵ながら見事と賞賛できる。 だが、それだけでは見過ごすわけにはいかない。否、だからこそ価値ある勇士として新たなエインヘルヤルとして迎え入れたくなる。 『二つ――』 ゲルヒルデは槍を伊吹の胸の前から動かすことなく、静かに問いかける。 『まだ、私を倒すことを諦めていないな?』 伊吹の瞳と手にした腕輪。それが示す戦意。隙あらばゲルヒルデを討とうとするその構え。 心臓が一度、静かに鼓動する。 「当然だ」 二度目も迷うことなく――動揺も誤魔化しもなく応えた。 そして長い沈黙が生まれる。だが実際のところは呼吸一度分ぐらいの時間だったのだろう。ゲルヒルデは伊吹の胸で止まっている槍に力を込め――彼の胸に穂先でルーンを刻んだ。 『そのルーンは契約だ。死後、その魂は我が元に。 そして汝の願いを聞き届けよう。この槍に誓い、汝らを追撃せぬと』 言葉と同時に、ゲルヒルデの傍らにあるルーンが消失する。逃亡を許さぬ戦士のルーンはなく、ゲルヒルデは構えを解いている。撤退するなら今か。 極度の緊張と相手の圧力の解放から、脱力する伊吹。 二度目の質問。動揺すれば、卑劣者として討たれていただろう。誤魔化せば、臆病者として貫かれていただろう。破れかぶれで吶喊すれば、返り討ちにあっていただろう。返答が早すぎるか遅すぎれば、ゲルヒルデの気が変わっていたかもしれない。 伊吹が行使したのは、己の覚悟を示しただけ。 派手な光で相手を圧倒するでもない。死者を蘇らせるでもない。時を止めるでもない。ただ戦乙女(ぜつぼう)の前に立ち、己を示す。たったそれだけの、多くの命を救った――歪曲運命黙示録(かくご)。 その名前は『槍に抗う者(アゲンスト・ザ・スピア)』。死を告げる槍に抗う勇気が生んだ奇跡 『戦いの槍を持つ乙女』……主神のために先陣を駆けるゲルヒルデが戦いの最中に槍を納めたのは、これが最初で最後となる。 ●『追わない』という誓いをこの槍にかけて果たそう リベリスタ達は怪我人を抱えて何とかその場を離脱する。 ゲルヒルデ撃破はならなかったが、その脅威は幻想纏いを通じて他のリベリスタに通達される。戦いの間監視を続け、警戒態勢を敷くことになった。 だが戦い終わるそのときまで、ゲルヒルデは槍を構えたままその場を動く事はなかったという。その為、ゲルヒルデを避けて通ることで被害はゼロに収まった。 何ゆえゲルヒルデが動かないのか、その理由はわからない。だが監視をするリベリスタから、槍を立てて膝を突き、伏すようなポーズを取っているという報告があがってきた。 ――まるで、誓いを果たすような姿で。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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