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<Baroque Night Eclipse>2人だけの世界を築く為に

●アシュレイの目的
 バロックナイツ本隊の攻勢で重要拠点三ツ池公園を失ったアーク。
 彼等が時同じくして動き出した黄泉ヶ辻京介の動きにも対応を強いられる中、魔境化した三ツ池公園では状況を更に混沌とさせる大事件が勃発していた。世界最高のフィクサードであり、バロックナイツの盟主であり、アークの最後の敵であろうと目されていたディーテリヒがアシュレイの手に掛かったのである。アークは細かい情勢を知り得なかったが、崩界の臨界点を迎えようとしていた『閉じない穴』は盟主とアシュレイの技術により、『黙示録的状況』を作らんとしていたのは確かだったのだが……。
『閉じない穴』と盟主の用意した迎撃態勢を利用するアシュレイは、まさに世界を滅ぼさんとするその凶行を止めんとするアークを全力で迎え撃つ構えを取る。一方のアークも己が危惧した通り、急激に悪化する情勢に決着をつけるべく、総力をもってアシュレイを撃破する作戦を用意した。
 いざ決戦に向かうアークを阻む者はいない。
 フィクサードである国内主流七派も、アーク支援の動きに出ていたからだ。
 理由は一つ。状況から考えてアシュレイの目的とは『この世界の全てを破壊し、滅ぼす事』に他ならなかったからだった。

●最終決戦の幕開け
 アーク内は慌ただしい。先の戦いで失陥した三ツ池公園に大きな動きがあったからだ。
「把握している人もいるかもしれないけれど、確認だと思って聞いてほしい」
 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は淡々と語る。リベリスタ達は神妙な面持ちでそれを聞く。
 一つ目は悪いニュースだ。
 三ツ池公園を制圧したバロックナイツ本隊はこの世界に黄昏を告げる黙示録的破滅を呼び込む算段を立て終わったらしい。これはある意味想定内だが、非常に由々しき事態である。
 二つ目はどう受け取るべきか悩ましいニュースだ。
 最強無敵とも思われたバロックナイツ盟主ディーテリヒがアシュレイの手に掛かったらしいのだ。二人は行動を共にしていたとはいえ、アシュレイが裏切りに関してはほぼ確実な情勢だった。
 しかし、これまでの経緯からその成功率は極めて低いと目されていた。どんな手品を使ったのかは分からないが、アーク最大の障壁となる可能性の高かったディーテリヒ、そして彼に付き従う両騎士が盤上から消えた。
 また、欧州に行っていたリベリスタ達の報告によれば……。
「『塔の魔女』アシュレイの目的は単純。彼女はこの世界全ての破滅を望んでいる」
 イヴは言葉を溜めることすらなく、リベリスタ達へと告げた。
 フィクサードは己の為に世界を侵せる者であると定義されるが、彼女の場合は究極だ。極個人的事情からこの世界の存続、この世界の存在自体が許せなくなった彼女は『閉じない穴』を利用して『魔王の座』と呼ばれる究極の召喚陣を生み出す心算らしい。
 馬鹿げた程の魔力(キャパシティ)を要求する召喚陣は彼女と言わず、人間には通常到底制御出来る代物ではないのだが、そこに彼女がアークと結んでいた理由があった。バロックナイツの持つ神器級アーティファクトを蒐集した彼女の目的は、ウィルモフ・ペリーシュの持っていた魔力抽出技術を利用して召喚陣の燃料を得る事だったのだ。
 つまり、彼女のバロックナイツ打倒の理由は『邪魔者を消す事』、『神器を奪う事』、『ペリーシュの技術を掠め取る事』の三つがあったと言える。アークは幾つかの神器の奪取を阻止したが、それは召喚陣稼働の時間を遅らせる事までにしか作用していない。どういう事情かディーテリヒがアシュレイに与えたと見られる魔力で彼女の必要数値は確保されてしまったからだ。
 そこで、リベリスタから質問が上がる。そもそも、『魔王の座』とは何なのか、と。
「異界のミラーミスをこの世界に引き込む儀式。ただ、その呼び出された存在が問題」
 この世界を『無かった事』にするレベルで消し飛ばそうとしている魔女。周到な準備で臨んでいるのは、あの『R-type』をも超える最悪の破壊的現象であると見られている。
「アークが『Case-D』と称したその存在がこの世界に顕現した場合。全てが消し飛んでしまう」
 イヴの言葉に、リベリスタ達は青ざめる。イヴがこれだけ淡々と語っているのは、この光景を万華鏡で目の当たりにしたからに違いない。出現が消滅と等しいというならば、止めなければ待つのは文字通り全ての終わり、ゲームオーバー以外の何物でもない。
 全てを投げ打って用意したと思われるアシュレイの戦力は、盟主と本人が用意した魔術的仕掛けやエリューション、召喚した魔獣の類、フィクサードがメインだ。
 傭兵達は彼女の目的を理解しているかどうかは知れないが、ディーテリヒの戦乙女(ヴァルキリー)は現在彼女を守護している。
 ここで、イヴが気になることがあると話す。
「非常に不確定要素の大きい情報ではあるけれど。……戦乙女の一人がアーク本部に捩れた白い槍を届けた」
 本物の『ロンギヌスの槍』と見られるこの物品はディーテリヒの持ち物だったと推測されるのだが……。
 研究開発室の分析結果では、総ゆる神性と神秘を殺す因果律の槍はこの世界の末期病巣――つまり、『閉じない穴』を殺す性能を秘めている可能性が高い、という話だった。
「アシュレイの計画を阻止し、『閉じない穴』を奪還すれば破滅に楔を打てるチャンスは必ずある」
 大規模な作戦となる。気を引き締めてほしいと彼女は一旦、話を止めた。

●2人が作る世界
 忙しいイヴは別の依頼の話を始めていたが、そんな中で『ラ・ル・カーナより流れる風』フェスターレ・アルウォン(nBNE000258)が代理となって話を始める。
「私、フォーチュナであったなら、皆様の手助けができたのにと少し歯痒く思いますわ」
 せめて、参戦することで力になれたらと、フェスターレは言う。リベリスタ達はそんな彼女へと手を差し伸べた。
「……嬉しいですわ」
 にっこりと微笑むフェスターレ。彼女はそのまま、戦場の説明を行う。
「皆様には、三ツ池公園の冒険の森に潜むフィクサードのとE・ビーストの相手をお願いしますわ」
 前回と同じく、西森・類、東山・友美ペアがランク3のE・ビースト1体を率いて潜んでいる。E・ビーストはフェーズ3の個体が1体。アシュレイから貸し与えられたエリューションのようだ。全長5mのそいつは沢山の腕を持ち、手にはいくつもの武器を握っている。俗称ヘカントケイルと呼ばれる魔物と化した、哀れな獣のなれの果てだ。こいつは手にする武器を滅茶苦茶に振り回し、幾度も攻撃を行う。
「このE・ビーストを倒すことは絶対ですわね。フィクサードのお2人も、今回は戦うおつもりのようですわ」
 この2人は、傭兵家業に身をやつしたフィクサードで、闇稼業を営んで生計を立ててきた者達だ。彼女達は生活に困窮しかけているという。おそらく、報酬を盾にして、アシュレイの口車にうまく丸め込まれているのだろう。
 彼女達の能力については資料を見てもらうとして、特出すべきは彼女達の事情、そして、彼女達が持つアーティファクトである。
「西森・類様……この方は、ご家族が不幸にもノーフェイスとなられ、リベリスタによって倒された過去をお持ちです」
 その為、彼女はアークに対して敵意を抱いている。
 一方、東山・友美は、E・ビーストに家族を殺されている。その為、E・ビーストを使っての作戦にかなり抵抗があるようだ。
「友美様は前回の作戦で、リベリスタの皆様の説得に耳を傾けておられます。ただ、類様を大事に思っておられるようで……」
 友美は板挟みになって煩悶している。うまく説得できれば、無駄な戦いをすることがなくなるかもしれないが……。
「もう1つ、お2人が持つアーティファクトですけれど」
 2人が持っているのは、『完結する世界』と呼ばれるイヤリングだ。
 1対のイヤリングだが、2人で使うことで最大限の効果を発揮する。2人がそれぞれ右耳と左耳につけて手を取り合って祈ると、2人だけを包む結界が2人を邪魔する物全てを遮ってしまうのだ。
「この状態になると、一切の攻撃が通用しなくなりますわ」
 こうなってしまうと何もできない。祈りに集中できない状況ならば説得だけはできそうだが、2人が結界を解かないと最悪、膠着状態になることも予想される。
「ただ、放置も危険ですわ。とりわけ、類様はアークに敵意を抱いておられますから……」
 2人の説得を諦めて森を離れようとすれば、類がぶすりとリベリスタを背中から刺す……そんな状況も考えられる。最悪、説得を考えずに2人を倒してしまうのも、手なのかもしれない。
「難しい状況ですが、皆様とならば、きっといい結末を迎えられると私は信じていますわ」
 フェスターレはリベリスタ達に満面の笑みを向けた。危険は承知。メンバー達は三ッ池公園に向け、出発する……。

●2人だけで暮らしていく為に
 三ツ池公園、冒険の森。
 類、友美の2人は後ろに無数の腕を持つ化け物を従え、リベリスタの接近を待つ。
「今度こそ、任務を果たさないと……」
 類は長剣を握りしめる。前回は託されたE・ビーストを全てリベリスタに倒されてしまった。リベリスタの足止めこそ成功したものの、被害も大きかったということで十分な働きを認められず、礼金はこの依頼の後で纏めて支払うと言われていたのだ。
「あの人、本当に礼金を渡すつもりがあるのかしら……」
 友美は寒気にも似た予感を感じていた。この2人は、アシュレイの目的を知らない。また、アシュレイが彼女達を利用しているだけだということも。
 後ろにいる気味の悪い生物。何本生えているのかも数える気にならない腕がもぞもぞとうごめく姿に、友美は更なる悪寒を覚えざるを得ない。こんな化け物を従えてまで、金の為に仕事をせねばならないのか――。
 ふと、友美は先の戦いでリベリスタに掛けられた声を思い返す。生活の為にアークに組するのも悪くはないとすら、友美は考えている。
 ただ、アークに対して類はこれ以上ない敵意を持っている。パートナーとして、愛人として、大切な彼女を放っておくわけにもいかない。どうしたら……友美は戸惑う。
「トモ、来たわよ」
「……うん」
 聞こえる足音。リベリスタ達がやってきたのだ。
 彼女達は、今度は正面からリベリスタを迎え撃つべく武器を構えるのである。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:なちゅい  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2015年03月31日(火)22:23
 なちゅいです。今回は前置き抜きでの挨拶、失礼します。
 ついに、ファイナルです。皆様の手でこの世界を守りきってください!

●敵
・フィクサード……2人だけで傭兵家業を行う流れのフィクサードです。前回に引き続き、雇われ傭兵として参加しています。

 西森・類(にしもり・るい)……長い黒髪の美女。見た目に反して姉御肌。友美のことをトモと呼びます。
 ノワールオルール×ダークナイト。黒い長剣を持っています。
 剣戦闘マスタリー、不惑鉄心、攻勢技巧派を活性化。
 アークに対してはよからぬ感情を抱いている様子です。戦いではアークに対する嫌悪感をぶつけてくることでしょう。

 東山・友美(ひがしやま・ともみ)……栗色、セミロングの髪の女性。類のことをそのままルイと呼びます。
 ハイジーニアス×クリスタルスタア。黒と銀、2本のガンナイフを巧みに操ります。
 闘神、剣魔弐天、絶対者を活性化。
 類の友人であり、相棒であり、愛人でもあります。類の力になりたい反面、リベリスタと戦いたくないという考えを持っていますが、戦闘となればまさに闘神のごとく攻めたててくるでしょう。

 2人はそれぞれランク3、4のスキルを活性化させています。

・アーティファクト……『完結する世界』
 1対の水色の雫型イヤリング。2人で1つずつつけて祈ることで外部からの干渉を全て防いでしまいますが、程度は祈りの強さによります。祈りが弱ければ、説得など、簡単な干渉が可能になります。類、友美の2人はそれぞれ右耳、左耳につけています。
 また、1人で両耳つけることは可能ですが、2人でつけるときに比べて効果は半減してしまいます。

・E・ビースト……通称、ヘカトンケイルと呼ばれる、全長5m、無数の腕を持つ化け物。フェーズ3。
 以下の攻撃を使用。その全ての攻撃において確定で2回行動を行います。
 めった斬り……物遠ラ・[失血][必殺]
 ボコ殴り……物遠ラ・[無力][必殺]
 暴れる……物近範・[崩壊][ノックB]
 オーラクラッシュ……神遠範・[神防無][虚脱]
 また、態勢無効IIのスキルを所持しています。

●状況
 フィクサード、及びエリューションは三ッ池公園、冒険の森でリベリスタの来訪を待ち構えています。
 今回は正々堂々とリベリスタへと戦いを挑んでくるようです。
 森は前回の戦いで木々が伐採されており、ある程度視界が開けています。

●NPC
 フェスターレが参戦します。何か指示がありましたら、相談卓にて申しつけくださいませ。戦闘ではホーリーメイガスのスキルで皆様を援護いたします。

●重要な備考
 <Baroque Night Eclipse>の冠を持つシナリオの成功数は、同決戦シナリオの成功率を引き上げます。
 失敗は成功率を引き下げませんが、成功する事で決戦シナリオの実質難易度が低下します。 

●Danger!
 このシナリオはフェイト残量によらない死亡判定の可能性があります。
 予め御了承下さい。

 それでは、今回も楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします!
参加NPC
フェスターレ・アルウォン (nBNE000258)
 


■メイン参加者 5人■
ハイジーニアスソードミラージュ
須賀 義衛郎(BNE000465)
ノワールオルールクリミナルスタア
遠野 結唯(BNE003604)
★MVP
ハイジーニアスホーリーメイガス
文珠四郎 寿々貴(BNE003936)
ハイジーニアスプロアデプト
一条 佐里(BNE004113)
ジーニアスマグメイガス
柴崎 遥平(BNE005033)
   

●世界の命運を分ける戦いの中で
 森を進むリベリスタ達。
 踏破を使って足場をしっかりと踏みしめる、『ファントムアップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)。彼は腰のベレヌスを点灯させ、薄暗い森の中での視界を確保していた。その上で、彼は猟犬の如き嗅覚で敵の位置を確認する。
 森の外、三ツ池公園内では最後となるであろう、世界の命運を分ける戦いが繰り広げられている。リベリスタが世界を守るか、あるいは、魔女が世界を滅ぼすか――。
 この森では、その戦いに身を投じ、自身の運命をも変えてしまったフィクサードがリベリスタ達を待つ。
「悪党をやるなら、せめて時流くらいは読めってんだよ」
 『ウワサの刑事』柴崎 遥平(BNE005033)は悪態をつく。こんな戦いの中でわざわざ……彼の愚痴も理解できようというものだ。
「打ち解ければ楽しそうなふたりなんだけどね……」
「ええ。まずはEビーストの撃破を目標に、そして、フィクサード2名の説得を目指しましょう」
「了解ですわ」
 『息抜きの合間に人生を』文珠四郎 寿々貴(BNE003936)も竜眼で視界を確保し、ハイバランサーで足場の悪さをうまく突っ切っていく。寿々貴の意見に、『銀の腕』一条 佐里(BNE004113)も『ラ・ル・カーナより流れる風』フェスターレ・アルウォン(nBNE000258)も賛同する。
(……今回の事、何も聞かされていないのだろうな)
 『神堕とし』遠野 結唯(BNE003604)は口を開かずにただ冷静に、敵の状況を分析していた。そこまでは他のメンバーと考えが一緒なのだが。
(この2人もさっさと倒せば楽なんだが、そうはいかんだろうな。厄介な代物を持っているようだし)
 アーティファクト、『完結する世界』。2人の持つイヤリングは何物も寄せ付けない防壁を成す。これを使われると、2人へ働きかける手立てすら失われかねない。厄介なアイテムを持つ敵を相手に、結唯はどうすべきと考える。
(それに西森はともかく、東山まで殺す理由が見当たらん。面倒だが言葉は力だ。説得するとしよう)
 考える経緯はともかく、結果的に結唯は仲間と同じ結論に至ったようだ。

 歩みを進めるリベリスタ達の視界が急に開ける。
 そこは、前回この森で戦いのあった場所だ。そこで、2人のフィクサードの女性が蠢く無数の手を持つE・ビーストを率いて待ち構えている。
 それに感づいたフィクサード、西森・類と、東山・友美。
「トモ、来たわよ」
「……うん」
 武器を構える2人。その後ろからE・ビースト、ヘカトンケイルが気味の悪い呻き声を上げていた。

●開戦、異形の討伐を
 木々が切り開かれた空間で待ち受けていたフィクサードは武器を構え、リベリスタ達へと告げる。
「アーク……覚悟するのだな」
 類が持つ黒い長剣の切っ先が日の光で輝く。隣にいた友美は銃を手にしながらも躊躇いの表情を浮かべたままだ。
「トモ」
「……うん」
 ようやくスイッチが入った友美は前方に向かって跳躍する。表情を固まらせた彼女は黒いオーラをまるで八頭の竜のように伸ばす。クリミナルスタアとしての力量は本物だ。
 類もまた、漆黒の光を放ち、リベリスタを攻めたてる。怨嗟の音は彼女の心境を反映してのものだろうか。
 義衛郎はそれを受けながらも、2人をやり過ごし、遥平と共に後方のヘカトンケイルへと攻め入る。
「……!」
 類は軽くあしらわれたと感じ、顔をこわばらせた。
 義衛郎は彼女達に構わずにゆらゆらと動く腕の塊に気糸を伸ばし、腕が集まるE・ビーストの胴体を狙い撃つ。
 しかし、それは無数の腕に弾かれてしまう。彼はもう一度と気糸を伸ばすと、今度はE・ビーストの胴体に傷を与える。そいつはギロリと瞳を真っ赤にして義衛郎を睨み付けた。
「好き勝手暴れ回られちゃ堪らんからな」
 そして、遥平はE・ゴーレムの正面に立ちはだかり、自身の周囲に魔力のシールドを展開する。
 ヘカトンケイルは無数手が握る武器を滅茶苦茶に振り回し、近距離にいる2人に多方面からの攻撃を浴びせかけようとする。
 その直後に佐里も踏み込み、前に立つ男性2人のブロックのアシストを行い始める。彼女はE・ビーストの能力を分析し、無数の腕を捌きつつ緋色の刀剣を本体へと叩き込んでいった。
 一方で後衛メンバーは敵の範囲攻撃を警戒して散開する。
(説得する以上、傭兵2人への攻撃は御法度だろう)
 結唯は前衛メンバーを襲うフィクサードを見やるが、彼女はすぐに視線を後方のヘカトンケイルへ移す。
(説得といっても、基本私は荒事専門だが、な)
 彼女は手に装着した格闘銃器を敵陣に差し向け、フィクサードに当たらぬよう配慮しつつ神速の連射を行う。銃弾はヘカトンケイルの腕複数本を撃ち貫く。
 結唯から距離をとる寿々貴は、E・ビーストの能力を解析する。その情報を、寿々貴はすぐさま仲間全員へと共有した。
「やはり、ヘカトンケイル自体にはブレイク能力を持つ技は無いのだな」
 その情報を受け取った遥平は、細かい敵のデータを確認しつつ告げた。
「なら、いくらでも殴ってこいってんだよ。腕の化け物が!」
 遥平はE・ゴーレムを挑発して見せる。一般的に耐久力や防御に劣るマグメイガスである彼だが、彼は的確に敵の能力を分析し、壁役を買って出ていたのだ。
 無数の腕を振り回す敵の攻撃を受け止めるメンバーを見て、後ろからフェスターレが叫ぶ。
「全力で皆さまの援護をいたしますわ」
 彼女も少しでも敵にダメージをと、聖なる魔力の矢を放つ。その矢は蠢く手の平を穿つも、ヘカトンケイルはさほどダメージを受けた様子もなく、平然と武器を振り回すのである。

●説得しながらの戦い
 E・ビーストを攻めるリベリスタは将軍級相手ということもあり、苦戦を強いられる。
 遥平の前方へと展開される魔法陣。彼が引き金を引くと一斉に銀の弾丸が飛び交う。
 さらに、佐里が左手に握る緋色の刀剣を振るう。沢山の腕から流れ出る血。佐里はそれでも躊躇うことなく連続攻撃を浴びせかけた。
 血を飛び散らせながら、E・ビーストは滅茶苦茶に暴れまくる。あまりの勢いに吹き飛ばされそうになるのを、義衛郎は剣を地面に突き刺して堪らえた。
 彼はすぐに自らの幻影とで敵に躍りかかり、蠢く腕の一本切り落とす。どしりと森に落ちる腕。ただ、腕を落とされようが、ヘカトンケイルは奇妙な呻き声を上げるだけで、痛みを感じているのかすらも分からない。
 そこへ、フィクサード達も戦いに介入してきた。
「リベリスタ……この手で、絶対……」
「ルイ……」
 後方で敵意を燃やす類を気遣い、友美は心配そうに後ろを振り返った。
「いくよ」
 類の合図で、2人は再び動き出す。
 リベリスタは、類、友美から攻撃を受けども、反撃しようとしない。この為、彼女達は個別にリベリスタを倒すことに決め、まずは後方のフェスターレへと狙いを定めた。
「……っ!」
 友美が正面から斬り込んでガンナイフから神速の連射を放ち、さらに類が漆黒のオーラによるイリュージョンアタックを仕掛ける。
 その攻撃を読んでいた寿々貴が立ち塞がり、フェスターレを庇う。
「助かりましたわ」
 寿々貴は軽く手を振って応える。傷を負いながらも彼女はフィクサードへと向き直って言葉を投げかけた。
「カレイドっていやらしくてね、事情とか聞けちゃうのさ」
 カレイド・システム……万華鏡のことは、フィクサード2人の知るところでもあり、その言葉に納得する。
 寿々貴に合わせ、結唯も友美へと話を切り出した。
「東山友美、と言ったか。お前はどうしたいんだ。この戦闘、お前は納得してないんだろう?」
「トモを惑わすな!」
「お前は黙っていろ、西森類」
 漆黒のオーラで威嚇する類。しかし、結唯は一喝してそれを制した。
 その類には、寿々貴がさらに話を試みる。
「大切な家族を殺し『世界のため、仕方ない』と正当化する者達を許せない……」
 類はまるで惑う様子を見せない。オーラは殺気となり、リベリスタを襲う武器となる。
「当事者かどうかなど関係なく、そう在る者全てが憎い。そうだね?」
「黙れ!」
 聞く耳持たぬと類は漆黒の光を飛ばし、怨嗟の音を奏でながらもなお、寿々貴の体を苛むのである。

●リベリスタの声は届くか?
 E・ビーストにフィクサード2人を相手にするリベリスタの消耗は、激しいものとなっていた。
 佐里は説得を行うメンバーに合わせて声を掛けたいという気持ちが働くが、ヘカトンケイルがそれを許さない。数々の刃物が佐里の体を深々と貫く。口からこぼれる血。体からも血が流れ出て、滴り落ちる。
(言葉を届けないと……!)
 ここで倒れるわけにはいかないと、佐里は運命の力に縋る。
 怒りが解けたかと、義衛郎は少し苦々しい顔をしながらも、再度腕の集まる中心目がけて気糸を撃ち出した。
 同じく、前衛で魔力の盾を展開しながら戦う遥平は、物理攻撃ばかりのE・ビーストに善戦していた。
「物理攻撃を無効化できるなら、このロートルにも前衛は務まるのさ」
 そこで、E・ビーストの体がオーラに包まれる。まるで爆発するようなオーラが前衛メンバーへと叩き付けられる!
 遥平は傷を負いつつ起き上がるが、後方からフェスターレが回復を図ってくれている。味方の援護に安心した彼は、心置きなく高位の魔術師へ呼びかけを始める。
 どこからともなく響き渡るのは呪葬の歌がE・ビーストの体を苦痛で満たしていく。漏れ出す呻きは徐々に弱々しくなってきていた。
 一方、フィクサードの攻撃は後方の寿々貴へと集まる。リベリスタ達のフィクサードへの対策がやや疎かになっていたのだ。
 類の放った漆黒の光を受けた寿々貴。身を呈して守ってくれる彼女へ、フェスターレは力の限り天の使いの息吹を吹きかける。
 フィクサードの攻撃は続く。現状、2人は『完結する世界』を使う気配はない。彼女達は自分達の優位を疑っていないのだ。
 だからこそ、リベリスタ達は言葉を伝えられると考える。
「……でも、本当に、本気で、全リベリスタが仕方ないと割り切ってると、信じてる?」
 寿々貴は類へと呼びかけを再開する。 
 しかし、類は表情をこわばらせたままで悪意を抱きながら長剣を薙ぎ払い、直後に友美がB-SNRを撃ち放つ。見事な連携攻撃に、寿々貴は倒れてしまう。
 それでも、彼女は運命を糧とし、消えゆく意識を繋ぎ止める。
「もしそうなら、仕方なかったと思っているのは、誰よりキミ自身だ」
 類は何も語らない。リベリスタの主張が気になっていたのだ。
(……身勝手なことをベラベラと)
 類は手にする長剣を握る手を強める。
「違うなら、世界とか関係なく、ただ家族を喪った事が悲しいのであれば」
 ゆっくりと立ち上がる寿々貴は、全く敵意を持たぬ眼差しで類を見つめた。
「すずきさんは、キミ達の力になりたい。その悲しみは、消されていいものじゃないから。リベリスタにも、忘れさせるべきじゃないから」
 類はその言葉にも、全く動揺する素振りを見せようとはしない。
 逆に、それを聞いていた友美が激しく動揺を見せる。
「迷いがあるなら、戦闘に出てくるな。邪魔だ」
 結唯は辛辣な言葉を友美へとぶつけた。それが逆に友美の闘争心に火をつけた。
 鋭い視線で友美は結唯の体を射抜いた。思いもよらぬ威力に彼女は倒れかけてしまうが、彼女は運命の力で踏み止まる。説得失敗と判断した結唯は友美に向けて指先から銃弾を放った。
 前衛メンバーは説得の間も盾となり、E・ビーストの相手を続ける。
 よろける佐里が幾度目かの連続攻撃を叩き込むと、ヘカトンケイルの呻きが一段と大きくなった。先ほど寿々貴が伝達してくれた情報によるなら。トドメは近い。
 佐里の連続攻撃は、腕の一本を大きく切り裂く。残る腕はすでに数えられるほどにまで減っていた。
 幻影の動きで敵を翻弄する義衛郎。彼もまた、自身と幻影とで腕一本を断ってしまう。
 そこに再度響く歌。ヘカトンケイルは一際大きな叫び声を上げ、もだえ苦しむ。ついに気力も体力も尽きたのか、気味の悪い体躯を投げ出すようにしてその生を終えたのだった。

●大切な者の為に
 時折躊躇しながらも攻撃を行う友美。そして、敵意を持ってリベリスタを殲滅せんとする類。
 戦い続けるフィクサード2人に対し、リベリスタ達は総意が纏まっていないこともあってか、戦う者、戦いを躊躇う者と、ここにきて足並みが乱れてしまっている。
 フィクサードが未だアーティファクトを使う気配はないが、いつその効力を発揮させるか分からない。
(声を、想いを届けたいんです)
 佐里は自分達の言葉をぶつける為に。友美の左耳についたイヤリングを狙う。狙いを定めたその一発は、イヤリングをかすめた。
「トモ!」
 その一撃はイヤリングの破壊に至らなかったものの、かすかにヒビを入れる。これで『完結する世界』が完全に展開されることはなくなった。
 一層憤る類。友美も身の危険を察して、さらに攻勢を強めようとしたその時だ。
「間尺に合わない真似をしてると、どうして気づけない!」
 戦意むき出しの2人へ、遥平が叫びかける。リベリスタ達は一縷の望みをかけて、彼女達の説得に乗り出す。
「お前らの雇い主は、死んだ。この場で証明は難しいがな」
 遥平はその映像が見せられればとも考えたが、残念ながらこの森でそれを見せるのは難しい。AFで見せるにしても、2人が近づいてくれないとそれも叶わないのだ。
「今の雇い主の魔女の目的は、この世界を滅ぼすことだ。お前らこのままだと、報酬どころか、明日の朝日も拝めないぜ」
 遥平は淡々と2人へ状況の説明を行う。警戒したままではあったが、2人は戦いの手を止めてはいた。
「無理にアークに来いとは言わねぇさ。上海の三尋木辺りなら、話しくらいは通しておいてやる。そういう伝手を使って、身の振り方を考えな」
 このまま戦っても無駄だと彼は告げる。少なくとも、友美には戦う理由はなくなったはずだ。
「ねぇ、東山さん」
 肩を落とす友美へ、傷だらけの佐里がさらに話しかける。
「友達以上に大切な人のために、あなたはどうするんです?」
「トモ!」
「ルイ、待って」
 再びリベリスタの言葉を遮ろうとする類を、友美が制した。
「迷っているなら、手を貸してください。言葉を投げてください。心を伝えてください」
 傷口から血を滴らせる佐里は、足をふらつかせていた。フェスターレが心配そうに彼女を支える。
「流さなくていい血なら、流さない方がいいんです」
 ぽたりと落ちる血が木の根へと落ち、染み込んでいく。
「私たちだって、戦いたいわけではありません。話をして矛を収められるなら、それが良いです。決してわからずやでは無いつもりです」
 でも、ですよ。薄れそうな意識をギリギリで保ちながら、彼女は言葉を続ける。
「好きな人のわがままに付き合うのも、また愛情ですよ。それが命がけのわがままなら、それでもいいじゃないですか。一度きりの人生ですから、だからこそ、それでもいいじゃないですか」
 友美も、類も、黙って言葉を聞いていた。
「もちろん、物事は2択じゃないと思います。けど、今は聞かせてください」
 彼女は静かに、2人へ問う。このまま戦うか、それとも。
 火花すら散っていたこの森は、すでに静けさを取り戻している。結唯は1つ溜息をつき、類へと呼びかけた。
「お前の大切な存在を死なせたくないだろう。その為にそいつを止める覚悟も必要だがな」
「東山さん、自分の本心を押し殺して尽くすのが、パートナーの為にならない事もあるよ」
 義衛郎も武器を収め、まず友美へと告げる。もはや、友美に戦意はなかった。
 さらに、彼は類にも語りかけた。
「西森さん、東山さんは君にとって大切な人なんだろう。其れなら彼女の苦悩に目を向け、耳を傾けようとしたか?」
 自身の私怨に心を見たし、愛する者の言葉に耳を傾けていなかった。類はそれに気づく。
「オレ達を嫌悪しようが構わない。だがボトム消滅の危機に瀕した今、何が二人にとっての最善の選択か、二人で考えてほしいと、オレは思うよ」
 義衛郎が改めて、2人へと選択を促す。戦いを続けるか、それとも、この場から引くか。
「生活キツけりゃ、うちの店にタダメシ食べに来るといいよ。食うほどアークの損害になるぜ」
 寿々貴は普段のゆるい雰囲気で誘いかけた。彼女は前回もこんなふうに誘ってくれたことを友美は思い出す。
「ルイ、もう……」
 友美が悲壮な表情で武器を収め、これ以上戦いたくないと類へ訴えた。
 ふうと深く息をついた類は、長剣を一度振り払ってから鞘へと収める。
「あなた達の主張は分かったわ」
 類はそう告げ、リベリスタ達から背を向けた。
「でも、トモを傷つけた事を許すわけにはいかない」
 傷つく友美。そして、その耳のイヤリングにはヒビが入っている。
「トモ、行くわよ」
「…………」
 歩き出す類。友美はリベリスタを振り返りながら類の後を追っていった。
「これで鎮圧出来たか。時間が惜しい。急ぐぞ」
 結唯が皆を促す。公園での戦いはまだこれから。更なる戦いに向かうメンバー達は、三ッ池公園中央にある、『閉じない穴』を目指す……。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
STのなちゅいです。リプレイを公開いたします。

限られた人数の中での戦いとなりまして、
うまくいかない部分も多かったと思います。
残念ながら、最良の形とはなりませんでしたが、
無事、フィクサード2人を止めることはできました。

MVPは悩みましたが、
戦略、説得と幅広く
活躍してくれたあなたへ。

今後の彼女達がどう生きているのか
不安なところはありますが……。
ともあれお疲れ様でした。

この度は参加していただき、
誠にありがとうございました!