● 「ヤッホー!リベリスタちゃん達、エブリバディ!」 ブリーフィングルームで流れたビデオレターからはその送り主が誰であるかなど愚問に等しくなるる程の陽気な声が響き渡ると同時に召集されたリベリスタの口角が引きつり上がった。ある意味才能、この映像に何度苦虫を噛み潰したような思いをさせられたことか。 「毎日が日曜日、ハッピー、ラッキー、ヨミガツジー。京ちゃんゲイムはっじまるよー!」 七派『黄泉ヶ辻』首領、黄泉ヶ辻京介。 凶行とも言うべき彼の『ゲイム』にアークのリベリスタ達は散々付き合わされた。 「強い強いアーク御一行様じゃ、ただ暴れてもつまんないよねぇ? だから俺様ちゃん、色々考えました」 リベリスタは時に辛酸を舐め、自らの正義に問い、犠牲を払いながらも京介と戦い続けた その積み重ねた研鑽の結果、彼の口から『強い強いアーク御一行様』という言葉を引き出す。それはお互いの決着が近いことを暗に示している。 「守りたい一般ピーポーが俺様ちゃんみたいになったら、義務と嫌悪、果たしてどっちが勝つのかなーって……」 相も変わらずの陽気さから不吉な言葉が並べられる、京介の言葉は、それが意識してかしないでかはともかく性格と相まって会話の中でも的を絞りづらい。 その言葉の断片断片に聞き流してはいけない重要な言葉があるのに『狂介』の合いの手がさらに苛立ちを加速させる為にうまく頭に入らない。 「みんなお祭りってスキだよNE! 俺様ちゃんも大スキ! でもゴメン、俺様ちゃん忙しくってさ! かわりに黄泉ヶ辻(うち)の活きのいいヤツ送ったからさ! まぁ、説明が面倒だから細かい話は同封の資料を見てNE!週間黄泉ヶ辻、創刊号は三百八十円! 書店にて!」 プツン―― ● 「はあ……っ」 『駆ける黒猫』将門・伸暁(nBNE000006)は深く溜息を吐くとメインモニターから視線を移しビデオレターと同封された資料を招集した面々と共にデスクの上に広げる。 本当に雑誌のようにつくられた資料によくやるな、と思うが『黄泉の狂介』は己の『ゲイム』に対してはどこまでも本気だ。 そして―― 「……なんてこった」 内容を読んで絶句する。 準備は組織的行動で『黒い太陽』の仕事を請けた時から始まっていた。京介が趣味でもない傭兵仕事をしたという事実は、やはり最悪の凶事で、あのウィルモフ・ペリーシュとの契約によりアーティファクト『悪徳の栄え』と『美徳の不幸』を入手していたということ。 今回の『ゲイム』の内容はこうだ。 『悪徳の栄え』、その効果は使用者の狂気を他者へと拡散させるウイルスを作ること、京介はそれを東京都心で暴発させるということ。 対となる『美徳の不幸』はウイルスのワクチンを作り出せること、そのワクチンは黄泉ヶ辻のフィクサードに持たされたということ。 ワクチンを入手し、ウイルスの拡散を防ぐこと、それが今回の『ゲイム』。 人口密集地域で起こる凶事、神秘的パンデミックとも呼べるそれが生じれば日本は『黄泉ヶ辻京介の予備軍』に埋め尽くされかねない。そして。 「神輿レース?」 緊迫した事態とあまりにもかけ離れた単語に素っ頓狂な声が上がる。後ろから京介の笑い声が鍛えたような気がした。指定場所は浅草雷門、といえば三社祭! という時期でもない催し物、つまりは勝手に始める予定のテロップがでかでかと目に映る場所に添えられるように記載されている。 ルールは単純! アークちゃんと黄泉ヶ辻(うち)が神輿にのって競争、先に浅草寺につけば勝利、勝てばワクチン進呈負ければドーン! 妨害策略なんでもござれ! 神輿の担ぎは俺様ちゃんの『友達』が手伝ってくれるよ、みんなお祭り好きだしね! 暴れられるよりはアークちゃんにとってもいいんじゃない? 「ふざけやがって」 『黄泉ヶ辻京介の予備軍』になってしまっても元は一般人。 義務と嫌悪、どちらを選択するのか。京介はいつだってその選択をアークに委ねることを、その実力によって強いてきた。今回事態が最悪とまで呼べないのはアークを『ゲイム』のプレイヤーに上げる為に彼なりの譲歩をしてきたところだろう。 しかし、いつだってそうだった筈だ。 京介の『ゲイム』はいつだって希望と絶望がマーブルのように溶け合って、甘味も苦味も嫌と言うほどに際立って。 いつだってそうだった筈だ。 京介の『ゲイム』には必ずルールがあり、それは絶対であった。狂気の天才は唯の異常者ではない。たとえそれが常人で測れないものだとしても京介は自分の作った枠組みを遵守してきた。 いつだって、忘れたことなどない。 その凶行によって犠牲になった多くの仲間を、その結実が今ここにいる自分達なのだと。 今度こそ、の思いを胸にリベリスタは顔を上げた。 「よし、いい面だ。確認する、場所は東京都墨田区、浅草雷門。不服な事この上ないが今回もヤツの『ゲイム』に乗らなくちゃならない。頼んだぜ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:久遠 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年03月21日(土)22:35 |
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■メイン参加者 4人■ | |||||
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●正気の狂気 「日本に来てから結構経つけどオミコシ見るのは初めてだわ」 いつも間にやら買ってきた法被を羽織って綿飴に口をつける『フレアドライブ』ミリー・ゴールド(BNE003737)はお揃いの法被を満面の笑みで広げた。 黄泉ヶ辻京介より届いた『ゲイム』の招待、普段以上に張りつめた空気の中、ミリーの明るさは心の重みを幾らか楽にしてくれる。 そうして到着する一行を迎えるは巨大な門と名前が書かれた提灯。 「……」 その光景を『ファントムアップリカート』須賀・義衛郎(BNE000465)はどう形容していいのか迷う。 「はいはーい、皆さん、ちゃんと整列してスタート待ちましょうね」 「うっしゃぁ! 気合入れていくぜぇ!」 「ひゃーっ! 祭りだ祭だぁ!」 時期も風情も関係ないに開催された祭り、狂気の感染者達はその枠内で正しく楽しむ姿勢を持っている。 「なに、これ」 『非消滅系マーメイド』水守せおり(BNE004984)もこれには思わず閉口。 「お、どうやらご到着のようじゃな」 「リベリスタの諸君、ようこそ」 「ようこそ! 楽しい『ゲイム』へ!」 リベリスタをその目に留めると黄泉ヶ辻のフィクサード、新発田・甲斐、久我原・理人、吾妻・菖蒲の3人は拍手で迎え入れ続いて辺りからはどっと歓声が聞こえる。 さあ、『ゲイム』スタート。 ●START! あそーれ、わっしょい! わっしょい! 狂おしいほどの熱気の中、喧噪に掻き消されてしまいそうな号砲と共に勢いよく飛び出したのは義衛郎と菖蒲。素早く動く二つの影はバランスの悪い神輿上を所狭しと駆け巡り影と影が交差し刃と刃が火花を散らす。 「ミリーもいくよ!」 「俺の相手は君か、可愛らしいお嬢さん」 続いてミリーと理人が跳ぶ、リベリスタ達の作戦はなるべく敵を多くまとめて神輿、担ぎ手に被害が及ばぬうちに勝負を決める事。 本来ならばスピードタイプである菖蒲と理人はこの場を縦横無人に駆け回るため難しく思えた。 しかし、この作戦の鍵は意外な一言によって開かれる。 「こっちに、来て? 貴方の狂った熱を、受け止めたい……の」 「うおおおおおおっ! マジか!?」 「そんなに俺を求めるなんて、わかっているじゃないか! 君は!」 『トライアル・ウィッチ』シエナ・ローリエ(BNE004839)に意図したところがわけではない。だがこの一言は非常に効果的だった。狂気に感染した担ぎ手達は何を勘違いしたのか、目の色が変わり律儀にわっしょいしながらシエナに向かって突進する。あろうことかミリーと交戦していた理人やフィクサードまで引き連れコースの逸脱など構わずに。 レースに勝つのであればどこかで必ずリードをとる必要がある。相手がコースアウトしかけた今この好機を逃さず行動に移したのはせおり。 「いい!? アークのお神輿担いでる人達! ここで踏ん張ってレースに勝てばステキでハッピーな未来が待ってるんだからね!」 「ハッピー!? おお! ハッピー! ラッキー! ヨミガツジ―!」 リベリスタ側の担ぎ手はせおりの言葉に狂気乱舞しスピードを上げる。若干意思の疎通が取れていないようなところがあり少々複雑な気分だったが、こちらも実際リベリスタ達に大きく有利に作用した。 「ええい、こうなれば! 我が居合、受けてみよ!」 「干渉領域、因子算定――calculation」 シエナの指より前方の空間に力を込めた因子による数式が展開し完成された障壁は甲斐の居合いの衝撃を完全に無効化する。 「弾かれただと!? ぬう、なんと面妖な! 風間!」 「させないよ!」 風間と呼ばれたデュランダルがシエナの障壁を破壊する為に接近するもそれは既に織り込み済み、せおりのアクセルバスターによる衝撃は間合いを稼ぎそれを許さない。 「やりますね、ならばこちらも本気で、あっ!」 神輿上で繰り広げられるハイ・スピードバトル。義衛郎と菖蒲は互角の攻防を繰り広げていたが、その均衡を崩したのは菖蒲。 攻撃に移った際に着地した部分にたまたま置いた担ぎ手の手拭い。菖蒲はそれに足を取られ滑るように神輿から落下してしまう。構えたナイフが明後日の方向を向いたまま踏み込んだ勢いそのままに無造作に振り下ろされた。 「っ!」 赤い花が咲く。 「大丈夫か」 「ひぃっ」 ぶしゅっ、と義衛郎の腕から鮮血が迸る。落下位置にいた担ぎ手を寸での処で庇いたてた。義衛郎は小さくなったとはいえ戦場をよく把握していた、黄泉ヶ辻の『ゲイム』が一筋縄ではいかない事も、研ぎ澄まされた聴覚によって各々の場所を把握する事も、いつ何があっても何が起きてもいいようにと。 本来ならば菖蒲の攻撃は完全なる失敗なのだが、結果的に義衛郎は傷を負い相手を助けることになる、そう理解していても。 「『意図して危害は加えない』って事は『意図せず危害を加えてしまう可能性はある』って事だもんな。期待通りの行動をどうも」 そんな言葉が届いているのかそうでないのか、少年は俯きブツブツと何か呟く。その声は徐々に狂気を孕んで負のオーラが目に見えるまでに膨らむ。 「ああ……またヤっちゃった、ルール破っちゃうトコだった、京介さんになんて言おう。僕ってばホンとウンがワルイ!アハハハハハ!大丈夫、きっとキョウスケさんなら許してクレルヨォ!」 この不吉の名を冠する少年の後で、『黄泉の狂介』が笑った気がした。 「全く、ほんと期待通りだな」 戦場である神輿は一つに固定され菖蒲以外のフィクサードはシエナを狙い地面に固定、この状況であれば神輿の耐久も一般人もほぼ気にせず戦闘を行える。 これが『ゲイム』であるならば、リベリスタは見事に自分達の有利に事が運ぶパターンを構築したといえよう。そして、『ゲイム』というものは往々にして、如何にその状況を作り出せるかが勝敗を分ける鍵となる。 しかし黄泉ヶ辻の『ゲイム』はこれだけで終わらない。何故ならここまで事が進んでようやく問題が改善されただけ、ここからは完全な自力勝負。 それは、リベリスタ達としても上々の展開。 「ぐ、あああっ!」 最初にホーリーメイガスが、続いてデュランダルが倒れる。 障壁が破れないのであればまさしく鉄壁を誇るシエナ。相手の心理を揺さぶり自身を的にすることで相手の目標を縛る。せおりの攻撃による衝撃は常に相手を神輿に近づけさせない。 固まった相手にミリーの炎は容赦なく義衛郎は菖蒲を抱えながらも倒すべき敵の順番を間違うことはない。 残るは三人、レースは中盤に差し掛かる前に構築された現状は見事という他なかった。 ●勝負 既に黄泉ヶ辻がレース自体を挽回するには難しい。勝利する為の条件はリベリスタの全滅。 中でも神輿上の菖蒲は完全に義衛郎を圧倒している。 理由は単純、菖蒲の繰り出す斬撃は異常なほどに鋭いか、完全なる失敗による味方さえ傷つける無差別攻撃。そのどちらもが義衛郎の体で受け止めざるを得ないことを強要する為。 「たいしたことないじゃないですかぁ! もっと楽しもうぜぇ!」 相手がどれだけ調子に乗ってもそれに付き合う義理はない。たとえ運命を燃やすことになっても瞳の奥に宿る光を失われることはない、なぜなら。 「母なる海の愛、癒しの旋律、謳うよ、祝福の凱歌!」 言葉を発さなくてもせおりは義衛郎の、パーティの安否を把握している。癒しの力は生命力だけでなく見えない手で背中を支えてくれる。 この『ゲイム』、極論を言えば自分達が傷つけば大切なものを守ることが出来る。 リベリスタにとってそれは本望以外の何物でもないのだ。 「お神輿……足並みが乱れると、大変?」 「大変にきまっているだろうが!」 最初の優男っぷりはどこへやら、とてもアッパーユアハートだけの効果とは思えないほどに怒り狂った理人は執拗にシエナを狙い続ける。 それは盲目的と言っていい程で自分たちの味方が一人、また一人と倒れていくことにも気づかない。判断すらできないというのは戦場に身を置くものとしては致命的。 「ぐ、あっ……ばか、な」 なればこの結果は必然。 シエナしか目に入っていなかった理人に対して、全てが見渡せる神輿上の義衛郎からその姿は完全に隙だらけであり攻撃してくれと言わんばかりであった。 無論逃すことなく、最速、最大の一撃を以て戦闘不能に追い込む。 「さて、反撃開始といこうか」 再び神輿上の菖蒲に鋭い視線を向け、跳んだ。 「終わりだよ!」 「ぬう!」 せおりの必殺の一撃が唸る。残ったもう一人、甲斐もその体の通りにタフであったがさすがにミリーとせおりの二人を相手にしては奮戦するも力は及ばない。 ところが―― 「新発田さーん!」 「ぬおおおおおおっ! まだじゃ! まだ儂は倒れぬ! 七転八起の名にかけて!」 ぐらり、と巨体を揺るがし倒れるかに見えた甲斐は菖蒲の声によって気合で踏みとどまると体勢を立て直す勢いそのままに起死回生の居合斬り、袈裟に斬られた傷口がぱっくりと割れ大量の血が飛び散る、手ごたえ有りと笑みを浮かべる甲斐。 「ヘイヘイ、ミリーの火はそんな程度じゃ消えやしないわよ」 甲斐の表情が凍り付く。かなりの出血にも関わらずミリーの表情は大胆にして不敵、今の彼女を支配するのは『超楽しい』という燃え盛る火焔。深手にしか見えない傷から流れる血の熱さも彼女自身の焔をかき消すには至らず、構えた両の腕から迸る紅蓮の焔はなおも強く立ち昇る。 その焔は、己の運命を燃料にした命の輝き。 「七転八倒って言うんなら、ミリーだって八転十倒ぐらいしてやるのだわ!」 素早く甲斐の懐に入ると反撃の隙間なく業炎撃から火竜へ繋ぐ、竜が噛みつき鎧武者は炎に包まれた。 「ぐおうっ! い、いかん、これは!」 倒れても尚起き上がろうとする甲斐、しかしその行為は無情にもミリーの焔の強さを証明するだけだった。消えることなく巨体に絡みつき蝕み続ける炎、その中では寧ろ倒れることが出来るならと思わずにはいられない。 煌々と立ち上る炎の蛇は、やがて鎧武者の巨体を飲み込んでいった。 「なぁんだ、結局みんなやられちゃったのかぁ、フフフ……仕方ねえヤツラだなぁ!」 立ち昇る火柱を横目に遂には不幸だけでなく不吉を身にまとった菖蒲を禍々しく輝くアーティファクトの光が包み込む。 意識はさらにクリアに、気分は更にハイに、感覚は絶頂に。 しかしその感覚は諸刃の剣。常に致命の一撃を狙うということは、その一撃以外の全てを排除するということ。最上の成功と最悪の失敗はすでに紙一重まで迫っている。 先程まで、セッティングされた状況が菖蒲の持つマイナス要素ごと有効に働いていた。 限定的な強さは、あくまで限定的。解除された今、その力は存外に脆い。 「ぐ、はっ……えっ? うわぁっ!」 義衛郎の剣を皮一枚でやり過ごしカウンターを、そう考えたまではよかったが皮一枚を見誤った。 「がっ!」 体の捻りが足りず攻撃をもろに受けた挙句後ろに下がろうと踏みとどまった足には感覚が、ない。 刹那―― ガンッ! ゴン! と容赦のない音が響き菖蒲の体は神輿によってかち上げ、打ち付けられ地面に背中から落下。当然、状況の把握が、判断が一瞬遅れる。 「お兄ちゃん! いくよ! デスティニー!」 その一瞬が勝負の分かれ目、態勢を立て直せない菖蒲に背程もある太刀を構え猛然と突進するせおり、ハイスピードで菖蒲の背後に回り込む義衛郎、判断の遅れが混乱を招きクリアな意識は残酷な結果だけを映し出す。抗う為に思考できるのは人はそれを走馬灯と呼ぶからだ。 どちらも躱さなければ。どちらを躱そう、どちらも躱せない。 どちらも、どちらを、どちらも。 交差する斬撃が不幸と不吉と打ち砕きゲームオーバーを告げた。 ●後夜祭 「ワッショーイ!」 覚めやらぬ興奮、終わらない祭。ワクチンは散布された筈なのだが周囲に全く変化は見られない、どころか今度はミリーまでもが一緒になって神輿を担いではしゃいでいる。 「ほんとに治ってるのか、あれ」 「うむ、回復しているはず、じゃが」 状況に何も変化が起きない以上それを訝しむのは当然、戦いは終わり黄泉ヶ辻も手を出す様子もなく一般人も祭りを楽しむだけで暴徒と化す様子もない、義衛郎にとってはそれだけが頼りなのだが。 「大丈夫……だよ」 シエナとせおりが怪我人の手当てを終えて帰ってくる。フィクサードも死に至ってはいない、出立前にミリーが『殺し合いをしに行くんじゃない』と言った賜物。幸いにも被害と呼べるものがあるとすれば季節外れに祭りを開催された神様程度のもの。 「さっきまでとは、熱が違う……よ」 祭りがもたらした狂気と盲信、そのどちらも知らないシエナだからこそ理解できることがある。先程までとはその熱の『形』が違う。 熱気と歓喜、渦巻き燃え上がるその熱は先程のものよりなお興味深い。 「いやぁ、参りました。今回の『ゲイム』は僕たちの負けです。京介さんになんて言おう」 「あなたたちのうのうと帰れると思ったの? こんなに世間様に迷惑かけて!」 既にお縄を頂戴している黄泉ヶ辻の面々は収容されるのを待つだけ。 リベリスタ達は本部の応援を待つだけ。 「その前に、お兄ちゃん、シエナちゃん。少しだけ」 遠目にも超がつく程祭りを楽しんでいるミリーはよく目立つ。 少しだけ、その意味するところを皆は知っている。 きっと直ぐに次の戦いが始まる。 だからこそ、少しだけ。 いつ終わるのか知れない祭りに興じる人々の笑顔は勲章、『黄泉の狂介』の持ちかけた『ゲイム』に勝ったことは誇っていい。 「ああ。少しだけ、な」 法被を纏った少女はその言葉と共に駆け出した―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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