●FROM KYOUSUKE_YOMIGATUZI 『ヤッホー! リベリスタちゃん達、エブリバデイ! 毎日が日曜日、ハッピー、ラッキー、ヨミガツジー。京ちゃんゲイムはっじまるよー! 強い強いアーク御一行様じゃ、ただ暴れてもつまんないよねぇ? だから俺様ちゃん、色々考えました。 考えて、考えて、考えて、考えて……あれ、何回考えたっけ。兎に角考えましたYO! つまり、アークちゃん達は俺様ちゃんが大嫌い。アークちゃん達は一般ピーポーの皆を守りたい。 守りたい一般ピーポーが俺様ちゃんみたいになったら、義務と嫌悪、果たしてどっちが勝つのかなーって……ああもう! 狂ちゃん、うっさいYO! 今盛り上がってるから黙ってて! ……まぁ、説明が面倒だから細かい話は同封の資料を見てNE! 週間黄泉ヶ辻、創刊号は三百八十円! 書店にて!』 ●アーク 「マルロクヨンゴ。ブリーフィングを開始します」 録音機にスイッチを入れて、資料を開く。『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は集まったリベリスタたちの顔を見ながらこれから起こるであろう神秘の説明を始めた。 そしてその背後では、黄泉ヶ辻京介から送られてきたメッセージが流れてきた。頭が痛くなる内容だが、無視ができない内容がいくつか含まれていた。 「黄泉ヶ辻京介が動きます」 和泉の言葉に集まったリベリスタが身を硬くする。黄泉ヶ辻。日本のフィクサード組織の中で最も狂っているといわれる組織。暴力的でもなく、奸智に優れているわけでもなく、構成員が組織立っているわけでもない。だが、その狂気は常人では予測できないと言う意味で恐怖である。 「同封の資料から以下の事が判明しています。 一、黄泉ヶ辻はウィルモア・ペリーシュからアーティファクトをもらったという事」 ウィルモア・ペリーシュ。その人物名にリベリスタ達は渋い顔をした。アーティファクト作製者として名高い彼は、その作品の性格の悪さでも有名だ。詳細は避けるが、基本的に破滅しか呼ばないものばかりだ。 「そのアーティファクトを東京都心で爆発させるつもりのようです。アーティファクト名は『悪徳の栄え』……マルキ・ド・サドが著した本の原典といわれています」 『悪徳の栄え』……神や道徳や愛等に対して攻撃的な思惑が書かれた小説。これを書いた事により作者はナポレオンより精神病院に送られ、そのまま獄死したと言う。 「『悪徳の栄え』は使用者の狂気を他者に伝染します。他の人が持てばさほど脅威ではありませんが、あの黄泉ヶ辻京介が使用すれば――」 リベリスタ達は『京介の狂気が感染した人々』を想像して背筋を震わせる。これは否が応でも止めなくては。 「二、黄泉ヶ辻京介はこれを『京介ゲイム』と称しています。つまり、防ぐ方法を明示していることです。 黄泉ヶ辻京介の狂気……仮に『京介ウイルス』と呼びますが、それに対するワクチンを持つフィクサードを倒し、奪い取る事で感染を防ぐことが出来ます」 「成程。分かり易いな」 リベリスタは和泉の説明に安堵する。相手は用意周到なバイオテロではない。リベリスタを困らせて楽しみたい愉快犯なのだ。だからと言って安心できる相手でもないのだが。 「『京介ウィルス』にたいするワクチンを所持しているフィクサードの名前は真崎葵。近接戦闘型のダークナイトです。以下、様々な黄泉ヶ辻フィクサードと……京介ウィルスに感染した一般人が待ち構えているようです」 一瞬言いよどんだ和泉だが、迷いを振り切り冷徹に続きを告げる。性格に情報を伝えることがオペレーターの義務だとばかりに心を静めて。 「……それは」 面倒な事になるな、とリベリスタ達は頭を悩ませた。目的の為には仕方ないが、可能な限り神秘事件に一般人を巻き込みたくない。悪辣な手を使う黄泉ヶ辻フィクサードに怒りを感じながら、リベリスタはその惨状をモニターで見―― 『働きたくねー! 楽してお金稼ぐために一生懸命がんばるぜー!』 『KO・RO・SE! U・BA・E! HA・KA・I!』 『褐色ジェイケイに支配されるなんてご褒美です!』 「黄泉ヶ辻フィクサードは二十代から三十代の独身男性を中心にウィルス感染させたようです。日ごろの鬱憤が爆発したように狂気が広がったと予測しています」 「……むぅ」 リベリスタは狂気感染した五十人の男性の『惨状』を見ながら呆れていた。常日頃受けている社会のストレスから解放されたのだろう。睡眠欲、破壊欲、そしておんにゃの子欲が満載であった。 どうあれその一般人が敵に回る事は確かだ。歯止めが利かないという点を考慮すれば、考えようによってはフィクサードよりも厄介かもしれない。 「目的はワクチン奪取と町への被害減少です」 それは最悪、一般人にけが人が出ても仕方ないと言う意味だ。和泉の言葉に身を引き締めるリベリスタ達。 場所は東京江戸川区。黄泉ヶ辻フィクサードはそこで待っている。 ●闇を撒くもの 「悲しいこと、辛いこと、全部全部目を閉じなさい。全て闇が覆い隠す。母の胎盤の安らぎで世界を包みましょう。 これは救済。死は全てに平等に訪れ、滅びは約定された事項。その現実から逃れられないなら、闇で全てを包み込む」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年03月19日(木)23:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● Q1.狂気とは何か? A1.常軌を逸した精神状態である。 ● 狂気を想起するウィルスに犯された五十名の成人男性。彼らは普段抑圧している感情を表に出し、町を破壊せんと憤っていた。 「……ううん、人間悪い所もあって当たり前」 惨状を見て唖然とし、そして首を振って受け入れる『深蒼』阿倉・璃莉(BNE005131)。人間が綺麗な事ばかりとは限らない。善だけの人間もなく、悪だけの人間もいない。ただ今は悪いほうが表に出ているだけなのだ。 「皆其々大なり小なり狂気を抱えてんだよ」 巨大な散弾銃を抱えて『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)が肩をすくめる。心の中にある排除できない心の闇。それを抱えて生きていくことが、クールな生き様だと喜平は思っている。 「感染する狂気ですか」 『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)はその言葉に恐怖し、身震いする。黄泉ヶ辻が計画立ててバイオテロを行えば、一気に感染は広がっていただろう。即座に相手を押さえてワクチンを奪取しなければ。頷き手袋を填める。 「……」 滅ぼしてやる、と殺意を燃やす『神堕とし』遠野 結唯(BNE003604)。常人と異なるのが狂人。ならば説得に意味はない。交差するなら殺すのみだ。破界器をてに装着し、戦場を見る。殺意の篭った冷たい視線。 「さて、上手くいくといいのだがなぁ」 頭巾で隠した頭をかきながら『足らずの』晦 烏(BNE002858)が呟く。狂気感染した一般人と、黄泉ヶ辻のフィクサード。けして手の抜ける相手ではない。『万華鏡』による情報の優位性はあるが、それでも上手く勝てるかどうかはわからないのだ。 「若い娘がはしたないな」 敵フィクサードの格好を見て『無銘』熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)がため息をついた。露出部分の多い制服と、そこから覗く禍々しい紋様。扇情的といえなくもないが、その紋様の意味を知っていることもあり、緊張は高まるばかりだ。 「まあ、こんなかわいい子に支配されるのがご褒美ってのはわからんでもないけど」 年齢的には後輩といえなくもない真崎を見て、腕を組んでうなずく『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)。ふざけている様に見えて、その視線は戦場全てを把握すべく研ぎ澄まされていた。 「誠に遺憾ながら論理構造だけはまともなのよね」 『レーテイア』彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)はストレートの神を手櫛でかきあげながら、相手の言葉を反芻していた。狂気の黄泉ヶ辻とはいうが、だからといってそこにいるフィクサード全てが狂っているわけではない。狂気の中だからこそ生まれる思想もある。 「ワクチンは――便宜上そう言ってるけど、要は『悪徳の栄え』の対になるアーティファクトはここ」 リーダーの真崎は制服の内ポケットを指差す。戦闘中に掏り取るには難しいだろう。倒すしかない、ということか。 「それじゃ、始めようか――」 真崎の言葉に無言で破界器を構える黄泉ヶ辻フィクサードと、 「ねむいぜー! よく寝る為に少し暴れるぜー」 「釘・バッ・ド! バ・ア・ル!」 「そこの褐色の少年、キミとはいいお茶が飲めそうだよ」 好き勝手騒ぎ始める一般人。それを様々な思いで見ているリベリスタ。 「……どうでもいいけどこれ、ウィルス劣化してない?」 問いかける彩歌の言葉に、真崎は肩をすくめて首を横に振った。 ● Q2.常軌とは何か? A2.その世界において、普通のやり方や考え方である。 ● 「お前ら、そんな姿みたらかーちゃん泣くぞ! 言っとくけど犯罪だからな! 破壊行為は!」 夏栖斗は戦闘開始と同時に、暴徒と化した一般人に声を投げかける。言葉に神秘を乗せて、心に響かせるようにして。ウィルスで一部の神秘に耐性がついたとはいえ、力なきものが神秘の声に抗う事は難しい。暴徒は夏栖斗の方に向かう。 おそらく人を殴った経験など一度か二度ぐらいだろう彼らの攻撃は、歴戦のリベリスタである夏栖斗には意味を成さない。適度に受け流す夏栖斗。そのままフィクサードの攻撃範囲外に移動しながら真崎に声をかけた。 「お姉さんのほうは短期決戦を想定してたみたいだけど、妹ちゃんのほうは長期戦想定か。面倒っちゃ、面倒だけど」 「朱音姉さんの時は攻める戦いで、今はアイテム防衛戦。趣旨が異なれば構成も変えるわ」 「死を望む思考の割には、作戦はしっかり練るんだなぁ」 烏は真崎の言葉を効きながら、そんな事を呟いていた。破れかぶれで突っ込んでくるわけではない。かといってこちらの言葉を無視するわけではない。姉妹共々似たところがあった。狂人と侮れば、手痛い反撃を受けるだろう。 烏は銃口を夏栖斗に集まった一般人の方に向ける。弾丸に神秘の力を込めて、引き金を引いた。弾丸は狙い通りに一般人の集まる場所に進み、強烈な閃光と音を撒き散らす。相手を傷つけることなく無力化する閃光弾。 「どちらかといえば、少しずつ拘束していくほうが効率がいいか?」 「そのほうがいいな。偶然だろうが神秘の力に耐えうる者もいるようだし」 烏の結果を見て、伊吹はため息混じりに頷いた。五十人いれば、偶々神秘の力に絶えるものもいる。ならば確実に動きを止めていこう。派手な銃声と弾丸が地面を穿つ音。伊吹が持ってきた銃が火を噴いた。 恫喝で一般人がある程度腰をぬかしたのを見て、伊吹は真崎のほうに向かう。誓いを胸に秘めて意志の力を高め、不屈の肉体と精神を得る。ダークナイトの呪いなど通じはしない。白い腕輪を填め、真崎を挑発するように手を動かす。それに応じるように交差する真崎の歪んだナイフと伊吹の腕輪。 「姉は現実逃避だったが、こちらもそうかな」 「そうね。もし世界が滅ぼせるなら、それに乗っかるかもしれないわ」 「そいつはまぁ、厄介だな」 真崎の言葉を聞いて喜平が素直な感想を告げた。例えが世界滅亡と壮大とはいえ、根底にあるのは生きる事の拒絶だ。――まさかこの後に本当に世界の存亡を賭けた戦いが待っていようとは、誰も予想がつかなかったが。 喜平は肩に担いだ散弾銃を目の前のフィクサードに叩きつける。銃にもなり、鈍器にもなる。手にした銃に呪いの力を込めて、挨拶代わりに叩きつけた。敵と味方。和解の余地がないのなら、もはや選択肢は一つしかない。自分の最高の技を叩き込むのだ。 「狂気に引き摺られるだけの無様な御前等が、必死に生きてる連中に茶々を入れるの……やめて貰える?」 「ごめんなさいね。狂気に引きずられてる無様な死にたがりで。でも必死で生きてるの」 「……なんとなくわかる。その気落ち」 矛盾しているような真崎の言葉にうなずいたのは璃莉。何かに傷つき、光を恐れて闇に篭る気持ちは理解できなくもない。悪意に怯え、震える恐怖。そこから傷つかないことの安寧。それでもギリギリのラインで死を選べない生きたいという精神。 それでも、と璃莉は前を見る。それは周りを巻き込んでいい理由にはならない。神秘の盾を生み出して前に進む。踏み出した足から広がる炎がフィクサードたちを囲み、燃やしていく。業を燃やす審判の炎。罪を問う炎が光を産む。 「虐められてた頃とか、光が怖かったもん。貴女も何か傷ついて、そんな風に思っちゃたの?」 「……? 傷がどうしたの? 力がない人が虐められるのは仕方ないじゃない」 「フィクサードらしい思考だな」 弱肉強食。弱きが苦しむのが当然という思考に、結唯が呟く。異常が常識の黄泉ヶ辻でも、力の法則は変わらないようだ。所詮彼らは異常者。理解しあうことなど一生ない。言葉なく断じて、銃を構える。 黒く塗られた格闘銃器。ずっしりとした重さが、逆に結唯の手に馴染む。意識すろと同時に銃口をフィクサードのホーリーメイガスに向け、撃つという意識と同時に既に引き金は引かれていた。乾いた発射音と同時に、のけぞるフィクサード。 「ならお前たちが倒れるのも道理だ」 「そうだね。力ないから仕方ないよね」 「これは……?」 捨て鉢ともいえる真崎の言葉に凛子は眉を顰める。紛争地で軍医として従事していたころによく見た症状。思考を極端まで削られ、精神的に追い込まれた兵士の症状。ただ命令に従うだけの精神的に欠落した人間。 思考を戦闘に戻して、呼吸を整える凜子。フィクサードにより傷つき、毒を与えられた味方を見ながら神秘の力を解放する。白く暖かい光がリベリスタを包み、暗黒のオーラにより傷つけられた体を癒し、毒を打ち消す。仲間を支える癒しの力。それが凜子の役割。 「おそらく彼らは精神的に磨耗しています」 「……そうね。多分彼女たちは『狂い切れなかった』んでしょうね」 サングラスの奥からフィクサードを見ながら、彩歌が傷口を押さえながら口を開く。彼女は慣れない前衛に立っているため、フィクサードの刃で傷だらけになっていた。半ば同情するような視線をサングラスの奥に隠し、戦意をあげる。 破界器の演算能力で戦場をスキャンし、その情報を神経を通じて彩歌の脳に伝わってくる。戦場にいるフィクサードの脳の位置を把握し、そこを揺さぶるように衝撃波を放った。最小限の衝撃で、フィクサードの脳が揺れる。 「狂気の黄泉ヶ辻の中で正常でいる事は、それだけで精神が削られる。 狂人でなければ生きられない黄泉ヶ辻の狂気が残したのは、より強い狂気かただの現実逃避者、ね」 「あはははははは。力がない人が虐められるのは仕方ないじゃない」 真崎は笑い、先と同じ言葉を返す。力なきものが虐げられるのは当然と。 狂気が常識の黄泉ヶ辻という世界で、非常識に正常を保った少数派。黄泉ヶ辻の中で狂気(ちから)なき者は虐げられて当然。そんな世界の中で生きていくには、目を塞ぐしかなかったのだろうか? 葛藤がリベリスタを襲うが、今は暴徒を抑えるほうが先だ。『京介ウィルス』が他の一般人に広まらないとは限らないのだ。真崎の持つ『ワクチン』を手に入れなくてはならない。 闇の力を振るうフィクサード。彼らの攻撃はけして手加減できるものではなかった。 ● Q3.普通とは何か? A3.(白紙。解答用紙には何度も消しゴムで消した跡が残っていた) ● 戦場の構図はリベリスタとフィクサード、そして町を攻撃するウィルス感染した一般人。 フィクサードは一般人を暴れるままにしており、リベリスタは可能な限り救いたいと思っている。だが、一般人対応にかまけている間、当然だがフィクサードに対応する人数は減っていた。 彩歌、喜平、伊吹、璃莉が前に出て敵前衛を押さえ、後衛に凜子、結唯が。そして一般人対応に夏栖斗と烏が回っていた。彩歌はダークナイトの与える毒や呪いの攻撃が通用せず、伊吹も神秘の加護によりそれらを跳ね除ける事が出来る。 最も打撃自体はどうしようもない。元々前衛よりではない彩歌と、フィクサード中最も手練な真崎を相手している伊吹は激しく体力を奪われる。凜子の回復や、後衛に控えていた結唯が前に出るなどで戦線崩壊を防いではいるが、総合火力はフィクサード側に分配が上がっていた。 「きっついなぁ、もう!」 ホーリーメイガスを挑発し、自身に攻撃を集中していた夏栖斗が運命を燃やす。だがそれはフィクサード側の回復を押さえている事を意味している。 夏栖斗と烏が一般人対応に回っている間は、手数の面も含めてフィクサードに押されてしまう。つまりどれだけ早く一般人を無力化するかが勝負だ。破界器で一掃すれば早いが、彼らはそれを選ばなかった。 押されつつある戦線を打破しようと、璃莉が口を開く。 「なんと! 私、今日は履いてません!」 「なにぃぃぃぃ!?」 一斉にウィルス感染した一般人は叫び、 「あー……キミにはまだその道は早い。やめたまえ」 「コンビニかスーパーで買ってきたまえ。お金ならあげるから」 赤面しながら紳士的に対応されて、逆に戸惑うリベリスタ。あれ、どういうこと? 「衝動の一部を発露させているだけだから、非常識になっているわけじゃないのよ。 彼らは普通に会話できて、普通に生活できる。だけどある一部分だけが常識から外れているだけ。朝慎ましく談笑している家族が、まるで当然のように人を殺す。それが狂気。暴れまわる殺人鬼が裏野部なら、隣人の殺人鬼が黄泉ヶ辻」 真崎の説明にリベリスタ達は身を震わせる。仮にこのウィルスが広く拡散したら、どこの誰がどう狂っているかなどわからない。ウィルス感染者は普通に生活しているのだから。 「全く、楽じゃないね」 「まだ負けません!」 「流石に簡単にはいかないか」 リベリスタに刃を振るう真崎やダークナイトの攻撃で、喜平と璃莉と伊吹が運命を削る。 「……!」 「流石に下がっても見逃してはくれないか」 ローテーションで下がったところを狙われて、結唯と彩歌も運命を燃やす。 フィクサード達は味方を巻き込んで広域攻撃や貫通攻撃を仕掛けている。それゆえか敵味方の両方に被害が広がっていた。凜子の回復こそあるが、リベリスタのダメージは浅くはない。 だが、 「しばらくおとなしくしてろ!」 「これで最後か。そろそろおじさんも参加するよ」 一般人対応を終えた夏栖斗と烏が戦線に加われば、戦局は逆転する。烏がフィクサードたちに弾丸を叩き込み、トンファーを振るい一直線にフィクサードを傷つけていく夏栖斗。 「そんなに安寧が欲しければ、やるよ。鉛の様に重い眠りをな」 「……まだ、よ」 喜平の攻撃で深く傷つくも、運命を燃やして耐える真崎。 だが、趨勢はほぼ決した。彼らの戦術は石化などの呪いを与える事。それが十分に機能しない時点で勝率は薄いのだ。前衛の体力と凜子の回復を突破できるだけの火力は、彼らにはない。 「確かに滅びは約定された事項だろう。だが、だからこそ生きるという意味がある」 烏は銃に弾丸を込めながら頭巾の奥から真崎に語りかける。生きる事はけして楽な事ばかりじゃない。だからといって生きる事が無駄ではない。苦しい中にも意味がある。死は避けれぬとも、生が無駄ではないのだ。 「その意味を見つけ出すのが人生って奴さな。ま、今は寝てな」 烏の放った弾丸が雨あられと降り注ぐ。鉛の雨が止み、崩れ落ちるように真崎が倒れ伏した。 ● Q4.貴方は狂っていますか? 狂っていませんか? A4.(空白。消しゴムの跡すらなく、回答自体を拒否した模様) ● 「これだ」 伊吹は真崎の懐から『ワクチン』を取り出し、後衛に放り投げる。 リベリスタからワクチンを奪取すべく攻めて来ると思ったが、黄泉ヶ辻フィクサードにその動きは見られなかった。彼ら曰く、 「これは首魁の『ゲイム』だ。取られれば俺たちの負け」 「全く子供じみたヤツだな」 喜平が呆れたように肩をすくめる。そもそもウィルスを本気で広めようとするならば、もっと用意周到にするはずだ。あくまでこれは『ゲイム』ということか。 「薬の扱いなら任せてください」 凜子が『ワクチン』を持って一般人の方に向かう。一般の薬品とは違い若干勝手は違うが、取り扱い方はそう難しくない。アークスタッフと連携し、てきぱきとワクチンを投与していく。 「あれ……生きてる?」 仰向けの状態で真崎が口を開く。体を起こすのも難しいが、生きているらしい。トドメをさされたと思っていたが、リベリスタに戦意はなかった。 「もう戦う理由はないからな。そっちもないんだろう」 「……そう、ね」 真崎のアーティファクトを回収した夏栖斗の言葉に、力なく答える真崎。リベリスタの目的は『ウィルスに犯された暴徒鎮圧』であり、フィクサードの目的は『ゲイムを盛り上げる』事である。ワクチンが奪われた以上、戦う理由はない。 「死にたかったのか?」 「死んでもよかった、とは思ってる」 仲間のフィクサードに抱えられたまま、真崎は結唯の問いに答える。そうか、と短く答えて銃をホルスターに納める結唯。必要以上の殺しはしない主義だ。 「辛い事から逃げ続けたいのは分かるし、私も人の事強く言えないんだけど。……それでも、私は生きたいと願うよ」 彩歌の言葉に真崎は同調しようとに口を開き……首を振って言葉を止めた。自分に生を謳う資格はないと諦めるように。 「闇に篭る事が正常を保つ術だとはなんとも不幸な。道を照らす出会いが無かったのが悔やまれる限りだな」 烏は黄泉ヶ辻に戻る真崎たちを見ながら煙草をふかす。無理やり引き止める事も出来るが、それをすれば戦闘再開の可能性もある。黄泉ヶ辻は狂った組織だが、そんな場所でも待っている仲間がいるかもしれないのだ。 「ううん……きっと何か届いたはず」 璃莉は烏の言葉に首を振り、否定する。この出会いがもしかしたら、彼らの道を照らす出会いだったのかもしれない。そう信じたいのは、昔の自分と真崎を重ねているからだろうか? 江戸川区を騒がした神秘騒動は、大きな問題になる前に沈静化した。 だが黄泉ヶ辻京介の『ゲイム』はまだ終わっていない―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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