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手紙

●伝え残す言葉
「――手紙?」
 問いかけにイエスと言葉が返る。色とりどりのペンを弄び、『廃テンション↑↑Girl』ロイヤー・東谷山(nBNE000227)の指が示す先で便箋が狭しと広げられた。
「身近な人にお手紙を書きまショー。理由なんてなんだっていーんデス。口実でもなけリャーなかなか届かない言葉だってあるでショ」
 そう笑うロイヤーの声音にはどこか懐かしさや感傷のようなものが含まれて。
「手紙のやり取りは古来より繰り返されてきマシた。長く、重く、思って、考えて。口にするよりずっと相手を想った『言葉』が紡がれて――嘘のない、素直な気持ちが届くんデス」
「……似合わなさ過ぎて不安になるな」
 向けられた半眼を、日頃不真面目なフォーチュナは柔らかく笑って受け入れた。
「その結果、武で天下を制さんと革新を推し進めた日本史上初の中二病患者もとい魔王と恐れられた英傑が裏で部下の奥さんに旦那の浮気癖について慰めるお手紙出してたり、
 高すぎる野心を手に傲岸不遜に世を荒らしまわった奥州の暴れん坊が補佐役に『ちょっとやりすぎたかなぁ。ぼく皆に嫌われてないかなぁ。あ、誰かに見られると恥ずかしいから読み終わったら燃やしてね!』と手紙で相談しててなおかつそれを後世まで保存されたり、
 戦国最強と謳われた軍勢を指揮し天下に王道を示さんと京を目指した王虎が、可愛がってた部下(同性)に浮気(当然同性)を疑われて平身低頭謝りまくる手紙が後世に残ってたりするあたり胸熱すぎて最高デースよね」
「よしそれでこそお前だ」
 サムズアップに返すサムズアップ。だから、まぁ。何がだからなのかはわからないがそう口にして。
「いつだって後悔のないように。自分自身を一度振り返って、言葉を紡ぎ残すのもいいんじゃないでショーか」
 そう笑って静かに便箋を差し出した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:BRN-D  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2015年03月15日(日)22:27
 手紙にまつわる物語を刻みましょう。手紙という形式にこだわる必要はありません。メールもまた現代の手紙です。大切なのは、自身の心を添えること。自分の意思で。自分の言葉で。

●たとえば
・手紙を贈る
 身近な誰かに、あるいは遠い誰かに。近すぎてなかなか伝わらない、伝えられない言葉をあらためて文字にしてみたり。今は遠い誰かに、もう会えない誰かに、手紙をしたためて贈ってみたり。それは届かなくても、きっと意味のあること。

・手紙を受け取る
 ここで受け取ることもあれば、故郷から届く手紙もあるでしょう。いつか手にして、受け取ることの出来なかった想いも――今なら。

・過去のあなたへ、未来の君へ
 自分自身を振り返って。どうなっているかはわからない遥か先へ。今の自分はどうですか。伝えたい言葉はありますか。


●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・誰かとご一緒の場合は『時村沙織(nBNE000500)』と言った風にIDと名前を表記してください。
【グループ名】タグで一括でも大丈夫です(タグ表記の場合はID、フルネーム表記は必要ありません)
・NPCと絡む場合はID、フルネームは必要ありません。名前をお呼びください。


●補足
 しんみり推奨?
 いやそんなことはない。フリーダム。

 未参加の方の名前はぼかすことがございます。ご了承ください。

 それでは皆様のご参加をお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 5人■
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
アークエンジェインヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ハイジーニアスクリミナルスタア
曳馬野・涼子(BNE003471)

喜多川・旭(BNE004015)
ナイトバロンソードミラージュ
蜂須賀 朔(BNE004313)
   

●背景
 笑顔で差し出された便箋を受け取って、自身もまたそれを差し出す。ちっぽけな一枚の便箋に、込められたものと同じ想いを添えて。
 自分の想いを渡して、自分へと向けられた想いを受け取る。相手を想って綴った言葉が、ただの紙を温かなものへと変えていた。
「ここで読んでいく?」
 投げかけられた竜一の言葉はアークの談話室を指す。窓の外の寒風と隔絶された暖かな空間には、数人の職員の姿が見受けられるだけだ。誰にも気を使わず読むことが出来ようが……
「いや……帰って家で読もう」
 そう答えるユーヌの表情はさほど動かない。けれど、胸の前で便箋をぎゅっと握る手が表情以上にその感情を主張していた。
 ここで読むのは勿体無い。手紙を開けてしまえば何かが抜け出てしまう、そんな気すら感じていた。込められた想いを何一つ零さず持ち帰りたいと。
 目を細めてそれを見やれば竜一はもう一度笑いかけ、ゆっくりと手を差し出した。
「じゃ、行こうユーヌたん」
 差し出された手を一瞥し、それから竜一の顔を見上げて。
「……ああ」
 そうしようと手に手を絡める。真冬並みと言われる今日この日、手を絡ませるのは当たり前だ。
 ……恋人同士、この温もりが続くのは当たり前だ。


 談話室を出て行った2人の姿を目の端に捉えていると、今度はその逆側の端で動きあり。うーうーと悶えていた旭が頭を抱えてテーブルに突っ伏したところだった。
「……どうしたのさ」
 さほど広いわけではない談話室。同じテーブルで便箋に文字を書き連ねていた涼子が顔を上げて尋ねてみた。
「うー……わかんないの」
 小さく息を吐いてペンを置く。お手紙あるあるではあるが、少し話に付き合ってみることにする。
「何を書けばいいのか?」
「ううん、誰に書けばいいのか」
 眉根を寄せて半眼を向けた涼子に、冗談言ってるんじゃないもんと唇を尖らせる。
『伝える』
 初めにそう考えた。伝えたいことは沢山ある。この場所で育み膨らんでいった、表したい『自分』が確かにある。
 けれど、それは誰に伝えるべきものだろう。愛してくれる家族? 想ってくれるあの人? それともわたし……あるいは、私。
「……まぁ、いっぱい悩むといいよ」
 悩むことは悪いことではない。言葉を考えていたら、送りたい相手も自然と見つかるものかもしれない。
 そう告げると、「そうするー」とテーブルに突っ伏したまま言葉が返る。その様子を見送って涼子も止まっていた手を動かし始めた。
 ふと視線を向けた先、書き損じてテーブルに転がったままの旭の手紙。内容までを見る気はないが、その愛らしい文字が目に入る。
 自分の便箋へと目を落とす。堅くてたどたどしい文字面だ。思わず苦笑が零れ出る。
(もっと、漢字の勉強とか文字書く練習とかしとけばよかったかな)
 でも、これが今の自分。取り繕うことはないさとため息混じりに手を動かした。


●盃傾
 書き上げた文面を順に目で追う。その内容を頭で繰り返すたび、自然に笑みが浮かび出た。
 もっとも、それは見る者に漠然と不安を与えるようなものであったのだが。
「さて、仕上げといこうか」
 満足げに便箋を閉じた朔はそう零すと、やおら口紅を塗り直す。
 突然の行動に周囲に『?』が浮かび上がるが、その後の行動に周囲のそれが『!』に切り替わる。
 朔はその形の良い唇を便箋の封にゆっくりと押し当てたのだ。
 しっかりと刻まれたキスマーク。見る者をどぎまぎさせる質感が十分に残った、一種の芸術を思わせる出来に満足して、朔は表にペンを走らせた。
『瀬戸家継様』
 これでよし。
 宛名に刻んだその名は、かつて朔が関わった神秘事件の案件、その中心となった元フィクサードの男の名である。強者であるその男と刃を交えたことも、その後のハンバーガー事変(若干鬼畜仕様)のことも朔の記憶の中で色あせてはいない。
 真面目で不器用な家継。妻である瑠香を心より愛す、家族想いの家継。そんな彼を思うと浮かび上がってくるこの感情、それは――

『お元気でしょうか。
 早いものであれからもう二年近くも経っております。
 お子様は元気でしょうか。
 あの時からずいぶんと成長されたと思います。
 強くなりそうな良い目をしていました。
 貴方と奥様にとても良く似た面立ちでしたね。

 貴方との子供もずいぶん大きくなりました。
 奥様を大事にする貴方に私のところに来てくださいとはいえませんでした。
 いつか顔を見てやってください』

 手にした便箋の内容を再び思い返し、キスマークをなぞって朔の唇がにやりと歪んだ。
「こうしておけば瑠香君も気になって中を見るだろう。それからどうなるかと思うと楽しみで仕方がない」
 まぁちょっとしたいたずらだと嘯く朔。
 彼を思うと浮かび上がってくるこの感情、それは――からかい、おちょくり、おせっかい。あるいは嗜虐心、サディスティック、猟奇的――好きに呼べ。
 事実関係? 知らね。


『えーと、元気? それか、死ぬまで元気だった?
 どっちにしても、さいごまで、ひとを守って戦うことはうたがってない。
 昔も今も、ひどい話ばかりだけど、今日世界がほろぶとしても、お互い、気にくわないものと戦っているんだろうって。
 ――じゃ、生きてるにしても死んでるにしても、地獄ででも、また会おう』

 文字にするとこんなものかな。長く息を吐き出して、涼子が席を立つ。
 手紙の相手は昔に――いや、昔で会った刑事たち。重なるはずのない道で、確かに交差した命たち。
 今、生きてるのか。生きてるとしてどうしてるのかも知らない彼ら。そんな彼らに綴った、届くかも分からない言葉。
 もっと書くことはあったのかもしれない。けれど、拙かろうと、これが自分。自分の言葉。
 ふと、何故彼らに手紙を送ろうとしたのか考える。送った方がいい相手は他にもいるのかもしれない、けど。
「いいよね。そういう気分の時に送れば」
 手紙を書くと決めた時、彼らの顔が浮かんだのだ。それで十分。機会はいくらだってあるだろう。
 まだ頭を悩ませている旭を一瞥してからフォーチュナの元へと向かう。企画者であるロイヤーが笑顔で便箋を受け取った。
「これ、宛先とかわからないけどどうするのさ」
「探しマス。ゆっくりのんびりとネ」
 届くかどうかもわからない。必死に探すこともしない。それでいい。答えを求めるより、感情を手紙にしたためる事に意味があったのだろう。なんとなく、そう思った。
「ん、わかった。頼むよ」
 涼子が背中を向ける。まだ時間は早い、今日はどうするかなと考えて――
「あ、Miss.涼子。これお届け物デースよ」
 引き止められて振り返る。差し出されたのは一通の封筒。
 古ぼけて、色あせた。けれど中の感情を守り抜いた封筒。
「これ……」
「縁は異なもの……ってやつでショーかね。不思議なものだから神秘ってユーのかもネ」
 どうやって辿りついたのか。それこそ、考えるだけ意味のないことだろう。時を渡った小さな奇跡。記載された名前を見て、涼子はわずかに表情を動かした。
 どんな顔だったかなど、自分自身にだってわかりはしない。ただ、今日今からの予定が決まっただけ。


●拝啓
「おめでとう、ユーは鬼畜から鬼畜生へとランクアップしマーシた」
「ありがとう、家庭を崩壊させたい訳ではないのでフォローの手紙は出しておくとしよう」
「……あの2人、なんだか悪い顔してる……」
 旭の突っ込みを聞き流し、ロイヤーと朔が互いにサムズアップを向け合っている頃。

「まだまだ寒い、な」
 ユーヌが空を見上げて呟いた。街路樹に咲く花も、寒さに揺れ動いている。ふと手に息を吹きかけたくなるが、それをする必要はないと気付く。
 ――竜一に握り締められた手は十分に暖かい。
 見上げた先で、竜一は笑顔で絶え間なく喋り続けていた。いつも通りの他愛ない会話。特別なことのない日常の言葉。
 すでに書き上げた想いを繰り返す必要はない。焦ることもない。全部分かっているのだから。
 軽く相槌を打ちながら、ユーヌが前を見る。道が続いている。ずっと先へ。遥か先へ。
 わかっているのだ。全部。この先も続く道を、2人で歩いていくのだと。
 ふと、竜一もそうしていることに気付いた。見合って小さく零れた笑みが、同じことを考えていたのかもしれないと思わせた。
 帰って手紙を読もう。同じものを見てきた2人だから、わかっていても確認しよう。そうして言葉を交わすのだ。
 早朝小雨が降ったらしい。濡れた道を花びらが埋める。その上を、2人並んで歩いていく――


『拝啓

 冬の寒さも終わりに近づき、春の陽気が感じられる昨今。
 ユーヌたんに於かれましてはますますご清栄の事と存じ上げます。

 この度お手紙を差し上げた理由は日ごろの感謝をこめての事です。
 自由に好き勝手に生きている俺のような男を、見捨てることなく今までずっと一緒にいてくれて有難う。
 今まで最後の一線を越えず生き残れたのは貴女のおかげです。
 貴女が居たからここまで来れました。

 もし最後の戦いで俺が生き残れたら、その時は一緒になりましょう。
 あいつら相手に生き残れるならこの先死ぬ気しないし。

 ユーヌたんもご自愛するようにお願いします。
 そして誰よりも愛してます。

 敬具』


『拝啓

 偶には内心の吐露しようと一筆。
 未だに竜一との関係が続いてることに驚きを禁じ得ない私がいます。
 物事に執着しないつもりでしたが、竜一への執着は途切れず続いています。
 執着するが故に順位が生じ、平等に価値のないモノとしてみていた物事に意味が生まれていきました。
 私の世界に色を付けていったのも、人の心を判るようにしていったのも竜一です。
 私の構成要素として、もはや不可分なのが竜一の存在でしょう。

 さて、死ぬ気も死なせる気もありませんので
 責任を取ってもらう意味も込め、落ち着いたら結婚しましょう。
 ヤンデレよりも固い愛を用意しております。

 この世の何よりも愛しています。

 敬具』

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
このような物語となりました。

手紙。

想いをしたためること。

便利な世の中で、色あせさせたくないものです。

ご参加ありがとうございました。