●この世に悪は栄えない 日が傾き、人々が帰路に着いていく。 黄昏時とも言えるこの時間に、何者かが殴打する音が聞こえた。 「お前、いくら持ってんだ? 慰謝料だよ慰謝料」 「ももも、持ってきてないから放して……」 金髪の不良がメガネ少年をつかみ、もう片腕でポケットを執拗に叩く。 はたから金銭目当てで当たってきたが、この少年は関わるまいと無視を決め込んでいた。 しかし、それがかえって不良の逆鱗に触れた為、こうして空き地に追い込まれていた。 「いいから出せよ、俺が傷ついたんだから出せよ!」 このままではお小遣いが奪われてしまう。 誰か、この未曽有の危機を助けてくれないだろうか…… そう少年が思った、その瞬間であった。 『待て!』 高らかで、かつ堂々とした声がどこからか響く。 「な、なんだぁ?」 それに思わず不良が振り向けば、そこには4人の男女の姿があった。 「クライシス・レッド!」 「クライシス・ブルー」 「クライシス・イエロー!」 「クライシス・ピンク」 『秘密結社クライシス・ファイブが、悪しき者に制裁を与えん!!』 それぞれ名乗りを上げ――5人の覆面は容赦なしに不良少年に襲いかかる。 「な、なんだ――ひぃっ!?」 それぞれの手には武器が握られ、その一撃は不良の片腕を容易く切り飛ばし、胸元を大きく掻き切る。 不良少年は何が起こったのかすら判らず、ただ胸部から噴き出る血しぶきを眺めるしかない。 自分が死ぬという事すら判らない、まさに呆然という表現がふさわしい。 「弱き者に救いを、さぁ逃げるんだ」 クライシス・レッドと名乗った男が少年に声をかける。 彼の後ろでは耳に残るほど凄惨な不協和音が耳を介し、脳裏に刻み込まれる。 このままでは、自分も殺される。 「あああありがとうございます!!」 這々の体で逃げ出した少年は、不良の安否を気にすることもなく必死にその場から逃げ出す。 そして、彼の後を追う者は誰一人としていない。 ――そして。 「レッド、悪は息絶えた様だ」 ブルーが物言わぬ焼死体の頭を踏み砕き、念入りに踏み躙る。 「これでまた一つ悪が消えたね! もうちょっと苦しんで欲しかったけど」 ピンクはその様子を看過することもなく、血を払いながら悪が消えた事に喜び―― 「俺は悪より腹の方が減ってるのだが」 イエローは呟きつつ、所々生焼けになっている部位を見つめ―― 「後で俺がいくらでもおごってやる。今は勝利の歓喜を! 人々を守れたことを喜ぼうじゃないか!」 そして、レッドはそれすらも許容するかのように、高らかに勝利を宣言した。 かくして悪は滅びた。 しかし、それは本当に悪だったのだろうか? それを知る者はもはや居ず、4人の勝ち鬨が響くだけであった。 ●果たして、それは正義なのか? 「冗談じゃない、こんな奴らが正義なわけがない!」 「いや、そもそも正義も悪もないですから。強いて言えばフィクサードの詭弁でしょう」 これから起こるだろう事象を聞き、憤怒の表情を顕にする『ブレイズ・オブ・ジャスティス』焔藤 鉄平(nBNE000010)に対し、やや呆れた様子で『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)がさらなる詳細を告げる。 「このように、彼らは悪事をしている一般市民に対して独自に制裁することで団結を図っています。 「殺された不良も、視えなければ彼らの生贄になっていたでしょうね」 私刑。社会的制裁を受けても懲りない者に対し、自身の力で制裁を加える行為は感情論では認められていても司法上は禁じられている。 ましてやフィクサードが関わっているともなれば、アーク自ら対処せざるをえない。 「彼らは4人、それぞれが別々の役割や技を持っているので注意してかかってください」 レッドはクロスイージス。 歯向かう悪を容赦なく無力化し、市民を守る事に至上の興奮を覚える極悪隊長(バッドリーダー) ブルーはスターサジタリー。 悪とする者を射抜き、その死体にさえ憎悪を感じる処刑人(エクスキューソナー) イエローは覇界闘士。 空腹であればあるほど勢いが増す人肉嗜食者(カニバリズム) ピンクはマグメイガス。 悪が苦しみ、許しを乞うても醒めぬ虐待者(サディスト) そして、これら4人は、総てフェイトを得たにも拘らず凶行を繰り広げるフィサード。 正義の仮面の下、この者の凶行を止められるのはリベリスタである君たちの他にない。 「では、健闘を祈ります」 そういい、彼女は送り出す。 「向こうがその気ならこっちも負けてられないな。 俺達の正義、フィクサードに見せてやろうぜ!」 一際燃えに燃えている鉄平を含め、彼らは向かう。 真の正義がいかなる物かを示す為に。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:カッツェ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年10月09日(日)22:25 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●本番入ります 『閃く正義の黄色い雷光』石 瑛(BNE002528)は正義の意味について携帯電話で調べていた。 「犯罪に大小なしというけど、カツアゲ少年を惨殺するのが正しい事ではないですね」 せいぎ【正義】 (1)正しい道義。人が従うべき正しい道理。 その結果を見、彼女は改めて彼らの行いを内で否定するのであった。 「く、来るな!」 「レッド、解っているな」 「あぁ」 不良少年が怯える中、レッドが処刑の意を示す。 『万華鏡』の視せる運命通りなら、この不良少年は見るも無残な姿に変わる事となる。 彼を囲むフィクサードは武器を構え、今か今かと待ちわびるばかり―― 「た、助けてくれ。もう二度としないからさ」 「駄目だ、クライシス――」 「そこまでだッ!」 重く、通った声が河川敷に響く。 一点に気を取られていた面々は不意な言葉に身構え、声の元を振り返る。 「正義を語り、己の欲望を満たす為に殺人を繰り返す。お前達に、正義を語る資格は無いっ!」 土手に立つのは6人の戦士。 「誰だ!」 レッドが問うと同時に、河川敷に風が走った。 「悪を払う運命の業火! リベレッド!」 赤いボディにメリハリのあるポーズがヒーローらしさを示し―― 「悪を飲み込む浄化の大海! リベブルー!」 高い場所に陣取ったツァイン・ウォーレス(BNE001520)が掛け声一つ上げ、合流する。 「悪塗りつぶす猛き漆黒! リベッ、ブラァック!」 ポーズと共に、手袋がギチギチと軋み―― 「閃く正義の黄色い雷光! リベイエロー!」 この舞台にと意気だったか、猫耳と尻尾がピンと立つ。 「さ、ささ、咲きほこる幸いの花! リベピンク!」 慌て調子に髪に結んだピンクのリボンが揺れ―― 「悪染め上げる聖なる白銀! リベシルバー!」 見よう見まねで最後を決める! 「正しき運命を胸にして、世界の歪みを打ち砕く!」 「我ら!」 『覚醒戦隊、リベリスターッ!!』 その言葉と共に、背景に巨大な十字架が浮かび上がる! ●メイキング ここまで長く、そして惑う日々であった。 「OK鉄平兄さん、手ぇ貸すぜ!」 「サンキュー、よーし燃えてきたぜ!」 熱い心に惹かれ、『ブレイズ・オブ・ジャスティス』焔藤 鉄平(nBNE000010)と共に戦い、力を入れてきた者も居た。 「の、ノリノリだとかそういうことは一切無いからな?!」 「羞恥心は現場に着くまでに捨てておく、捨てておくのだ……」 恥ずかし(?)ながらも共にする『赤光の暴風』楠神 風斗(BNE001434)や『錆びた銃』雑賀 龍治(BNE002797)のような者も居た。 「俺に、それを語る資格はない」 そして、『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)のように語らぬ者も居れば、別の正義を貫くものも居た。 11人の戦士を取り巻く運命は結末に向かい収斂し、この場に集う。 必然とはいえ、そこに至る正義への想いはこうも違うものか――。 「ぞろぞろと、どうするレッド」 「正義に仇なす者もまた悪。俺達の正義を示す時だ!」 矛先がリベリスタへと向かう中、逃げる不良を文は安堵の表情で見届ける。 「俺達の正義を見せる時だ。皆行くぞ!」 鉄平の号令の下、装備を展開するリベリスタ達。 吹いていた風が止まり、それを合図に双方が一斉に動き出す! ●正義のスクランブル 「真のピンクはどっちか、見せてあげるっ!」 噛んだ過去は振り返らず、『リベピンク』金原・文(BNE000833)はピンクに迫る。しかし―― 「かわいいー! ねぇ戦いなんて止めて私のペットにならない?」 「ええっ、そそそんな事いきなり言われても無理!」 「えー、だって私可愛いのって好きだしー」 戦いながらも文に言葉を交わし、目を輝かせるピンク。 それを断りながらも、文は戦いを続ける。 「それにほんとの正義の味方はね! 悪人だって助けて改心させるものなんだよ! だから、ほんとの正義の味方になろうよ!」 言葉と共に一本の気糸がピンクを捉え、束縛する。 「……臆病そうな癖して正義ぶって。黙って言う事聞いてればいいのよ!」 「えっ」 それを確認し、文が仕掛けようとしたその時だった。 なんと麻痺が解け、その怒りを爆発させるかのように周囲が火の海へと変じた! 「ふざけた女だ」 「いっけなーい☆ キャー!」 この二面性こそ、彼女がフィクサードたる所以。振りかかる銃弾と閃光に大げさに慌てふためく。 「てか、私だけ人数多すぎ! たすけてー!」 「選り取りみど……ちょっと待ってピンク!」 ツァインと肉薄していたイエローが神気閃光を受けて尻餅をつく。 「どいつもこいつも……焼き払ってあげる」 思い通りに行かぬ憤りを顕にし、再び大火を放つ。 「響け、福音の歌」 翼を広げ、空から響かせる歌声は戦士の傷を癒していく。 後光を纏うその姿は、まさに天使というべきか。 「もう、さっきから!」 「これも悪を正す為、彼らに助太刀します」 来栖・小夜香(BNE000038)は地に降り、自らを通りすがりの天使と称して彼らの後押しをする。 2人共抑えられ、イエローもこの調子。着実に傷を負わせるも人数差を覆すほどの力をピンクは無く、次第に追い込まれていく。 「どいつもこいつも! ――って、ちょっと」 そこに巻き付いた文の気糸は、しっかりとピンクの身体に食い込む。 「ちょっと、あたし泣いちゃうよ? かわいそうじゃ――」 「くらえ、ダークピンクフラワー!」 「いやーっ!?」 言葉と共に放った黒い影は問答無用でピンクの頭を直撃し、沈黙させるに至る。 「あぁ、ピンクがやられた!」 「お前の相手は俺だ!」 「鎧はまずいんだなぁ……」 よろめきながらも、口を大きく開いてツァインにかぶりつくイエロー。 何でも食すとは聞いたが、次第に防具も噛み砕かれていく以上長々と戦う訳にはいかない。 「魔弾よ、撃ち抜け」 「あいたた遠くからはちょっと、やめて」 「必殺! フローリッシュピンクエクスプロージョン!」 「ほぎー!」 魔力の矢が、気糸が飛び、爆弾が炸裂し、逆に食いつく。 延々と続くかと思われた戦いだったが、それでも最後は数が物を言った。 「もう無理だぁ……」 哀れ徹底的にのされたイエローは、小夜香の発した閃光に包まれて気絶するのであった。 その後、必殺技まで叫ばなくていいのに気づいた文が、酷く赤面することになったのは彼女の名誉のために軽く触れておくことにする。 ● 一方、ブルーと相対するのは拓真だった。 「お前は正義の味方ごっこをしないのか」 「あぁ、もう二度と得る事はないだろうからな」 「なら何故戦う、好き勝手すればいいじゃないか」 『フィクサード(こっち)になればいい』 それは甘く、そして酷く無粋な言葉。 しかし、拓真は揺るがない。 「それでも、いや、だからこそ戦い続けなければならない これまで切り捨てた多くの命と願い。それを一生忘れない為に――」 「……名前ぐらいは覚えておこう」 「名乗る名は、ない!」 同時に獲物を抜き、剣と銃が激しくぶつかり合う。 「何故正義を語りながら戦う、それにグリーンはどうした!」 オーラを纏い、重ねた連撃がブルーを切り裂く。 「グリーンは足手纏いだから殺した、それだけだ」 呪いの銃弾が零距離から拓真の臓腑に食らいつく。 数合に渡って激しい応酬を繰り広げ、間が開く。 「面倒だ、食らえ!」 ブルーが手をかざすと破壊の光条(キリング・ブラスター)が周囲を灼き、拓真に深い傷を負わせていく。 「まだだ!」 「チッ、もう一発――」 再び手をかざすブルー。 それを妨げるように四本の光が破壊光線と絡み合う! 「なんだ……ぐあっ!?」 炸裂と共に余剰エネルギーがブルーに傷を負わせる。 土煙が晴れ、ブルーが見た者は白仮面と貴族衣装を纏う美麗なる姿だった。 「力を得た者は己の力に責務を負う。そして、牙剥く者に相応の報いを課す」 「何人増えても一緒だ!」 更に一撃。しかし彼女は意ともせず、漆黒のマントを翻して告げる。 「災禍を祓う銀の月、デア・ズィルバーン・モーント。さあ、踊りましょう」 悪もまた、道を知り正義に転じることもある。 『銀の月』アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)はそれを誇りながら、ブルーと相克する。 ●リベレッド、絶体絶命! 「ぐ、あぁぁ」 「こんなものかリベレッド!」 レッド同士の達の戦いは劣勢を極めていた。 「なんて硬さだ……」 身の硬さは攻撃を易々と通さず、3人で釘付けにするのが限界と言ったところだ。 「オレは、お前達の正義を全て否定するっ!」 オーラを爆発させ、再度打ち込む風斗。彼らに対する怒りが力となって、何度でもレッドに叩き込む。 「その言葉、そっくり返してやる」 輝きを纏った剣は激しく瞬き、上段からの一撃が風斗を叩き割る! 「リーガルブレード!」 「うわああぁ!?」 その一撃は纏ったオーラを切り裂き、強烈な一撃はショックすら与える。 「トドメだ」 その輝きを失わぬまま貫く一撃。それを鉄平が身を呈して受け止める! 「俺は、まだ大丈夫だ」 リーダーとして、正義として、フェイトを擦り減らしてでも守りぬく。 強くなくては護れない、風斗はこのまま護れず倒れるか。 「この程度では倒れん。オレの信じる正義は、お前達のほどやわではない!」 彼もまた、フェイトを削って立ち向かう。 どのような相手だろうと更生の余地があれば生かして罪を償わせる。それが、彼の正義。 「既にボロボロで何を!」 「いいえ、まだです」 その言葉と共に、レッドの胸に死の刻印が刻まれる。 「な、何!?」 まさに一瞬、その間に現れたのは『タウリン3000mg配合』犬束・うさぎ(BNE000189)もとい――。 「悪照らし出す眩き黄金! リベゴールド! そのドス汚れた正義、とても日の光に胸を張れる様な物では無い!」 背景に爆発でもつかん限りに大見得を切り、鉄平の代わりに前に出る。 新たな増援に戦況が傾きだしたその時―― 「伏せろリベレッド!」 龍治の言葉に間一髪で光から身を庇う鉄平。 なんと、頭上より光の柱が降下し、大爆発を起こしはじめたのだ! 「こいつは向こうからだ!」 龍治が目を向けたのはブルーの方だった。 銃から放たれるのは無数の光、それを放つのは満身創痍のブルー。 インドラの矢とでもいうべきか、その威力は想像を遙かに超えていた。 「まだ倒れん。まだ、利用価値があるんだ!」 幾度も狂乱状態で矢を放つブルー。 瑛はその中を、守護結界を維持しながら治癒に当たる。 「ブルーはグリーンを殺したって言うし、一体何があったのですか?」 身に降りかかる矢から身を伏せながら瑛はレッドに問いかける。 「……聞いたって為にもならないぞ」 天を仰ぎながら少しずつレッドは話を始める。 それは、自嘲のこもった後悔の言葉でもあった。 ●追憶 グリーンを殺した時の事は今でもよく覚えている。 力も弱く臆病で戦力にならない奴だったが、正義感だけは強かった。 あの時も「もうこんな事は止めよう」と俺達を止めていた…… だが、それを仲間が許しはしなかったし俺も面子を優先してしまった。 だからこそ、俺はグリーンに『ヒーロー失格だ』と吐き捨てた。 それがグリーンの最後とは思わなかったけどな。 ――あの時チーム名を変えずに居たのは、心の迷いだったのか。 それをもう悔み、悩む余裕なんて欠片も残っていなかった。 もはや彼らを止められない。もう止めることなど、出来るものか。 ●決着、正義のコンビネーション! 「弱いっていうのは碌でもないな! しかもそんな奴らほど粋がる、生きていたってしょうがないよなそういう連中は!」 もはや悪人でなくてもいい、殺すことが出来ればそれでいい。 窮地に追い込まれたブルーの攻撃が、リベリスタ達を追い込んでいく。 「まだ、諦めるわけには――」 ピンクの火炎を超える一撃に、気力もフェイトも磨耗していく。 このまま倒れてしまうのか、不安の影が皆を覆いつくさんとしていた。 その時だった。 「これ以上好き勝手にはさせん!」 「邪魔をするな!」 光の矢が声の主ごと周辺を灼き払う寸前、主は跳躍と共に一撃を回避する。 炸裂する後方を背に、見事に着地したその勇姿は―― 「渦巻く緑風、リベグリーン!」 『渦巻く緑風』祭雅・疾風(BNE001656)の姿はテレビでもよく見る敢然たるヒーローの姿。彼もまた、熱き魂を持ち共に戦う者。 その魂を体現した一撃がブルーの胸部にめり込み、燃え上がる! 「其の闇を抱き、業を改めなさい」 疾風の一撃に続き、アーデルハイトの四重の光が炸裂! 「もう一つ、呪力開放コオリアメ!」 ダメ押しと瑛の繰りだす氷雨はブルーの膝を崩し、その身を地に投げ打つ。 「正義の味方ごっこなんて、懲り懲りだ」 決定打を防がれ、体力を使い果たしたブルーはそのまま意識を手放した。 「……真の正義とやら、見せつけるのではなかったのか」 「あぁ、まだ最後が残っている!」 「もう連携もありませんよ」 3人を倒した事で、ここに11人のリベリスタが一同に介す。 「いいだろう、たとえ1人でも正義を示す!」 11対1、それは巨悪も逃げ出す圧倒的戦力。 それでも逃げないのは己の正義の為か、それとも―― 「護符展開、これ以上傷つけさせません」 「させん!」 瑛の結界を妨げるかのように叩きこむ十字の光。 「ここで運命を掴み取る!」 「行くぞ、クライシス・レッド!」 その隙を突くように風斗の愛剣『デュランダル』と拓真の二刀が交錯し、激しく音を立てて吹き飛ばされる。 「まだだ、この程度で――」 「閃光(ひかり)よ」「四重奏(ひかり)よ」『あれ』 四重の光に聖なる閃光が重なり、彼の心を打ち砕く一撃となる。 「ほんとの正義の味方はね! 悪人だって助けて、改心させるものなんだよ!」 「黙れ!」 心に秘めた事を蒸し返され、激昂のまま絡む気糸を千切る。 「……指摘してくれた人、居たじゃないですか」 「黙れ、黙れ黙れぇ!」 「正義の味方だから正しい訳ではない、正義そのものでもない。 クライシス・レッド、自分の弱さに打ち克つのだ!」 身体は屈強。されど心は満身創痍。 すかさず恐怖をふり払い、態勢を整えなおす。 「俺は、正義は絶対だ。絶対……」 「絶対なんて、そう無いものだぜ」 龍治の放つ銃弾はレッドのガードごと貫通し、態勢を砕く。 「燃えている様だからな。締めは華々しく頑張って貰うとしよう」 火縄を揉み消し、見据えるは2人の姿。 「俺達の力は、力無い人をいたぶる為ではない!」 「この力を奮うのは、力無い人を護る為にあるのだ!」 「……!」 その熱く、重いプレッシャーに、レッドは一歩退く。 剣を収め、拳を握る。 全身の力は一点に絞り込まれ、張りつめた2つの力が今、1つとなる! 「いくぜ、リベレッド!」 「決めるぜ、リベブルー!」 2人は翔けた、1人はおじけついた。 レッドの脳裏に浮かんだのは、在りし日のグリーンの姿だった。 『ダブルリベリスター、スマーーッシュ!!』 その一撃こそ思いの集大成、正義の体現。 クライシス・レッドはそれを胸に、その身を河へと沈めた。 『ジャスティス!』 ●勇気、目覚める時 致命的な一撃とはいえ、まだ戦う気があるのなら彼らはいくらでも向かってくる。 ――にも関わらず、鉄平はレッドを救うために川へと飛び込んだ。 「しっかりしろ!」 「リベレッド!?」 慌てて共に飛び込んだリベリスタ達に引き上げられ、うなだれるクライシス・レッド。 まだ息はあるようだが、その顔には諦めの表情が浮かんでいた。 「グリーン? ……殺したよ」 リベリスタ達を見る度に亡きグリーンが過ぎり、プライドが砕けていく。 悪とは須く滅びるもの。そう信じて戦ってきたが、このような形で救われるとは思っても居なかった。 それが彼の心に響いたか。捕縛されたレッドは聞かれるまま質問に答え、それを見て龍治は警戒を解く。 「罪償ったらさ、もう一回ヒーローについて考え直してみねぇ? そんときゃきっと、アークが受け入れてくれるぜ?」 「わたし達も、これ以上罪を重ねるのであれば容赦はしません。 間違った道理も正すことが出来る、あなたにはそれだけの余地があると思います」 瑛達の言葉を受けて無言を貫いていたレッドだったが、ようやく一言口にする。 「……判った」 それだけで、リベリスタたちは十分だった。 要請を受け、アークから数台の車両が到着する河川敷。 まだ起きぬメンバーと、クライシス・レッドであった青年は車両へと運び込まれ、しかるべき場所へと送られるだろう。 「あいつらは説得してみせる。それが俺なりの償いだと思うから」 そのレッドの眼は、多少ながらも光が見えた気がした。 フィクサード達を載せた車両が旅立ち、それをリベリスタ達は見送る。 頑張れよ、レッド。 戦いを終えた河川敷に、彼らを見送る声が響いた。 こうして、1人のフィクサードは正しき道へと歩み始めた。 彼の誓いが果たせるかは判らない。 しかし、その勇気は多くの傷とフェイトを以てして捕縛に努めなければ、目覚める事すら叶わなかっただろう。 世界を覆う巨大な歪み、日夜暗躍する変革を目論む者『フィクサード』 それに立ちはだかる、命知らずな戦士達が居た。 己の運命に正義を誓った彼らは、今日も命がけで戦う。 その名は、覚醒戦隊リベリスター! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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