●急にお酒がきたので 『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000202)の自宅に届いたのは、某大御所のチョコレートメーカーのチョコレートリキュールだった。差出人不明。宛名が何故か判子で記入されている為筆跡鑑定も不可。明らかに、誰かが悪戯目的で送ってきたのではないか……などと思えなくもなかった。 だが、彼は(こう見えて)若干の義理や人情に少なからず敏感な体質であり、また、他人からの思慕に鈍感だった。鈍感だったからこそのトラブルを少なからず抱えた経歴があるのだが、ここでは関係のない話なので割愛する。 自分一人でそれを抱えていていいものか……と、彼は暫く考えた。楽しみというのは、分けあって初めて輝きを増すのではないだろうか、などと考えたのは責められまい。 送り主にとって不幸だったのは。 配送会社の手違いで、リキュールの到着日が2月13日であったことである。 ●若干懐を痛めるまでがお仕事 翌日、バレンタインデー。週末の三高平学園に集まる生徒など然程多くはないが、それでも一枚のポスターは目についた。 ついでにいうと、ポスターが貼り出された場所は市内某所のアイスクリームパーラーの店先も同様であり、一日限定のキャンペーンということ、なのだそうだが。 『カクテルアイスクリームDay♪ ノンアルコールもあります』 ……要は、アイスクリーム食べ放題の日ということらしいが、普段はちょっとお高い印象のあるその店舗で大盤振る舞いにも程がある企画が催される事となったきっかけについては、店主は奥ゆかしく何も語らないのだった。 付け加えるところがあるとすれば。 「ソフトクリームにリキュールをかけて食べる」タイプの食べ放題であること。 未成年に対しては、フルーツシロップ類を供するか、テーブルオーダー型の食べ放題になるということらしかった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:風見鶏 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年02月22日(日)22:45 |
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■メイン参加者 16人■ | |||||
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●恋人たちとそうでない人たちの宴 その日のアイスクリームパーラーは、恋の炎に包まれた。 ……ではなく、【恋ばな】の炎とかそういうものに包まれたらしい。こたつ席は少なくはないが、彼らが居る時間帯はほぼ全席埋める勢いだったので恋の趣とは何時の世も大いに盛り上がるものらしい。 「アークの英雄とニートの害獣に一体どんな接点があったというのか?」 テレビ番組ならヒキを2回は挟まないと話してくれなさそうな事実を、顔の前で思わせぶりに手を組んで肘をついたのは「ニートの害獣」ことウーニャである。なんか開幕不穏当ぶっぱしてる気がするけどなんだろうこの、なんだ。 「単に任務の同行回数とか日常のかかわり合いが多いだけだよね!? あんまり無駄な広げ方しないで!」 ここにツッコミを差し挟むのは「アークの英雄」こと夏栖斗の側である。英雄という呼び名が適切かどうかはさておき、彼を指す単語として機能しているのでそうしておく。 「……まさか、炬燵で恋ばなとは……」 冬の所為にすれば恋愛関係は大体何やっても許されるって世の歌唱シーンでは言ってるので、こたつと恋ばなの相性は抜群なんです。って先の二人も貴方を誘ったシュスタイナさんも仰ってるので、聖さんも惚気けるといいと思う。恋「ばな」(話と花のダブルミーニング)を咲かせろってな! 50代か! 「皆どんどん語るといいわよ。聞くの好きだし。御厨さんとこも楠神さんとこも彼女さんの方がリードしてるイメージよねぇ」 こちらも、表向き彼女側が圧倒的リードを見せている聖さんとこのシュスタイナさんです。今回は聞き役メインで立ち回ることを公言してますが果たして。 「それで、狩るの?」 「狩らないよ! ここで恋ばなしよう!? うーにゃん、ウィリアムの好みのタイプってどんなよ?」 「うん? 初恋で良いんなら、話すが」 何を狩るのかは今更だとして、いきなりの大暴投をぶちかますウーニャを止め、夏栖斗がバニラアイスを注文したウィリアムに話を振る。因みに、ウィリアムは成人なのでバニラアイスにも薄くリキュールをねりこんであります。 ウィリアムについては、いまさら隠すことでもないと話すことには肯定的。イカす若者の典型例である。 「ウチの一派は外に出れる奴が『ウィリアム』を名乗るっつう所でな。外のが死ねば代替わりするんだが…今思えば、オレの初恋は先代だったんだろうよ」 これに対し、驚く者と首肯する者とがどの程度の比率で居たのか不明だが、概ね黙って聞いているようだった。ウィリアムは続ける。 年齢差があっても、一緒に居た時間を思い出せる程度には印象的な相手であったこと。訃報に対し、胸に穴が開く感覚を味わう程度には衝撃を受けたということ。衝撃の意味も空いた穴の感触も分からないが為、今更ながらその感情を説明できるようになった、という経緯を。 「だからオレもこうしてからかうように笑うのさ。先代が格好良かったからよ。カカッ!」 「こういう機会じゃないと聞けないモンだな、そんな話は」 ソフトクリームにクランベリーシロップを垂らしながらカルラが応じる。彼は彼で複雑なものがあるのだが、確かに年月を経た感情というのは重みを感じるものである。 「……ってのだった、って言うと信じるかい?」 「――アイスおかわり、っと」 オチを知っていたかのようなタイミングで、シュスタイナがメニュー表片手にウェイトレスを呼んでいた。 「ところで、うーにゃはどんなのがタイプなん? ビンディが3つとか4つある人?」 ファッション的な意味合いが強いとはいえ、男性がビンディを、しかも複数付けていたらヒンドゥの皆さんから袋叩きに遭うのでせめてティラカにしてほしいものであるがどうだろう。 「うーにゃんのタイプ? お金持ちでイケメンなら贅沢は言わないわ」 それを贅沢と言うんだが、誰も反論が無いのでここは盛大にスルー。当然、聞かれた側のウーニャも夏栖斗に水を向ける。 「彼女のこと惚気るの? オーケー、まかせとけ。和風美人で気立てもよくてスタイルもよくて可愛くてクールで大人っぽくみえて意外とさみしがりだったりスキンシップが好きだったり、何よりもさ、僕のことを好きでいてくれているってとこが、嬉しいっていうか可愛いところっていうか、いやー、紫月かわいいだろ?」 「ふう、ごちそうさま。あところす」 (カズトの相手って、ぁー、へぇ。そうなんか) (あれで大分持ち直したようだけど、ちょっと無理してるかもね。あれだけ語れるなら大分マシよ) 盛大に惚気けてくれた夏栖斗へウーニャが恨みがましい視線を向けたが、どうやらその裏はまた違うようである。一応、歳を重ねている分懸念はあったらしい。 カルラが感嘆したように呟いたのにフォローを入れる程度には、気がかりだったと見えた。 「俺の前で俺を相手に惚気勝負を挑むとは、いい度胸だ」 そこまで、聞き役に徹していた風斗がラッピングされたチョコを取り出す。夏栖斗のテンションに、長らく付き合いのある彼は勝負か何かと勘違いしたらしい。概ね間違っていない。 「本命チョコだ。俺の彼女、アンナからのな」 つい先日、というほど前でもないがその趨勢を決めた彼に正式な春が訪れたのはアーク所属の恋華やかな若者たちの中では周知である。後ろにいる包帯は知らなかったらしい。 「危険な戦いに出発する直前に投げてよこしてな、片付いたらあらためて手作りのをやる、って言うんだよ。どういうことだと思う? なあ、どういうことだと思う? わかる? 無事に生きて帰れっていうメッセージだよ恥ずかしがってきちんと言えないからそんな遠まわしでな!」 (周りに何人も居る印象があったけど、一応なんとかなってんだな。っていうか) 「あいつってば、事前に計画立ててるとガンガン押してくるくせに、突発的な状況変化にはてんで弱くてな? 俺を誘惑しようとしたときなんかはもう「それはダメだろ!」ってくらい恥ずかしいことしてくるくせに、いざこっちがデートに誘うと顔真っ赤にして固まってな? だから俺はア――」 この後めちゃくちゃ惚気けたワケだが、これに負けじと夏栖斗が応じたのでグダグダになりかけたのは言うまでもない。 (好きだという部分を臆面も無く、堂々と言い切ってしまうのは若さ故……なんでしょうか) 本人に言えばいいのに、と聖は思ったかもしれないが、この辺りの面子はそれで足りていないほどには告げているようなので、問題ないと思いますまる。 「カルラも最近気になる子いるんだろ? 惚気れ」 「今、誰よりも俺の傍にいる相手だよ」 そんな惚気合戦から一息ついた夏栖斗から話題を振られたカルラは、呼吸を整えて言葉を吐き出した。 「男女どっちかわからんかったけど、気にせず楽しくやってた。どっちでもいいさって、思ってたんだが……分かって変わったんだろうな。殺し合うばかりの側へ行かないで、って泣かれた時 突き放せなかった。そうあろうとして生きてきたはずなのに……離れたくないんだな、って気づいたよ」 「カルラさんは……。私は微笑ましく見守るわよ?あの子の笑顔、ずっと見ていたいわ」 シュスタイナのエールと取れる言葉には、そちらを見ることなく首肯する。長らく、その性別が判然としなかった相手。それが彼らの関係に如何様な影響を及ぼすとて、結局はそう深くは変わらないのだ。 共に歩むという行為の帰趨を決するのは、余分な意思が介在しない純粋な思い故である。 「で、シュスカは聖のどこが好きなの?」 「え。私? ……は。特に語るような事はないわよ? ……うん」 おおっとシュスタイナさん好意放棄だ。 「何も言って貰えないのは寂しいですが……私からすれば、他の誰よりも、シュスカさんが一番可愛いと思っていますよ。それ以上、他に何か言う必要も無いでしょう」 すかさず聖のフォローだ。何処と無く赤みが差しているシュスタイナだが、彼のフォローに傾聴する姿勢を見せたリベリスタ達は彼女の細かな機微には気づかない。ナイスフォローだ。 (てか、横に本人がいて何をしゃべれと言うの。言える訳ないでしょ!) と、がちがちに硬直している辺りの微笑ましさとかそういうね。 「いやー、若いっていいねえ……次に夜倉さんは『新田君も十分若いでしょうに』と言う」 「全くですよ。新田君も十分若いでしょうに……あっ」 カウンターの方では、一人様子を見に来た夜倉の横で、快がリキュールを並べ神妙な面持ちを浮かべていた。彼は彼で、背後のやりとりに耳を傾けていたらしいが。 「俺の個人的な感想に過ぎないけど……薬草系や、ナッツ系のリキュールやハードリカーが良く合うと思うんだよね」 「アイスとリキュールの組み合わせに何を求めるかにもよりますけどね。甘みだけに酔いたいのか、味のコントラストを重視するのかで変わるでしょう」 「アブサンなんかはニガヨモギ特有の風味とアイスの甘さが冷たさに引き締められて、大人のアイスって感じになる。ナッツ系だとスペインのベジョータ、どんぐりのリキュールが思いの外香り高くて、素朴なアーモンドみたいで美味しいんだよね」 「目一杯楽しめる様で何よりですよ。彼女さんが成人したら是非誘ってあげればいいです」 せめて、そんな日を迎えるまでは導いてあげたいと思うことは罪ではあるまい。そんな言葉は、流石に口にしなかったが。 ●来訪者達の文明交流 「寒い日に暖かくして冷たい物を食べる……なんとも」 「また贅沢なことですねぇ」 「寒いときに暖かくして冷たいアイスの三層構造が幸せの勝利の鍵って聞いたしっ」 シーヴの述べる幸せの勝利とはまた大仰な表現だが、強ち間違っていないようにも思われる。適温よりやや上に固定された空調と、少女らの足元を温めるこたつの熱は、寒さを忘れさせるには十分以上であったし、これから運ばれてくるであろうアイスクリームの味を際立たせるには非常に有効に働くであろうことは明らかだった。 当然、アイスクリームだって季節の別だってフュリエ達は楽しんできたが、敢えて寒い季節に、となるとシィンやヘンリエッタの感慨通り、贅を尽くしたものの一つではある。 「折角なので、色々な種類のものを食べたいと思いますの。『しぇあ』という行事?だそうですわ」 「……ふふ。分け合って食べる幸せはどの世界でも共通なのだろうね」 アガーテが覚えたての言葉を紡ぐのを、ヘンリエッタは満足気に頭をなでて肯定する。文化への定着度や吸収速度の度合いは違うが、覚えのよい部類の彼女とて実際の行為から得られる多幸感はまた違う。 同じ世界で、同じものを共有できていた日々も幸せだっただろうが。個性から感じるものの見方の違いを、現物を前にして語らう行為はまた大きな前進を及ぼすのは間違いない。 「あ、私メニューの右上から全部ーっ」 「皆で食べるから、少量ずつ頼みましょう。最期には全部食べられるでしょうし」 「おねえちゃん達と分け合う前に溶けてしまっては元も子もないからね。オレ達はお酒が飲めない分、楽しまないと」 年上キャラである(はずの)シーヴの提案に、すかさずシィンとヘンリエッタがストップを掛ける。各々なりの善意なのだが、エンジンが掛かったのを止められたようでやや出端を挫かれたような格好であった。 「……よくわからず注文したけどぉ……炬燵って快適だねぇ~……こう、ついついうとうとってぇ……」 「リリスお姉ちゃんも寝ちゃう前に、色々な味を楽しんでほしいな」 「……り、リリス寝て無いよぉ……?」 「そうですね、食べるまで起きていて下さると嬉しいです」 何とか意識を繋ごうとリリィの服を掴んで顔を上げたリリスは、ゆっくりと運ばれてくるアイスに呆けた目を向けながら姉妹に笑顔を向ける。運んできたウェイトレス(どこかで見覚えのある顔だが気のせいだろう)が、リリス用の抹茶アイスはリキュール用に甘味を控えめにしてあることを伝えて足早にキッチンへと戻っていくのが見える。 「ふにゃ、お酒入りなの?」 「全部じゃないけどね」 「色々な味を楽しめるようにしてるから。ボクはチョコ味が好き。ストロベリーも美味しいね」 「美味しいから大丈夫」とは誰が言ったものか分からないが、ひとくち食べて若干目がとろんとしたシーヴに、ノンアルコール版を頼んだリリィと未成年組が深くうなづく。 「あいふ……おいし…………Zzz」 「……あーんして下さいますか?」 「あいふ……あ~……」 (反応があるということは、起きていらっしゃるのでしょうか?) 他方、ゆったりとアイスを食べながら、急降下ラインを描くリリスの意識レベルに挟まれたのはアガーテのスプーン。優しげに傾けられた彼女の視線に、伏し目がち(っていうか完璧つぶっている)のリリスの表情が映り込む。多幸感を感じるやりとりは、確かに彼女たちが『姉妹』であることを十分意識させるものだったといえるだろう。 ところで、アガーテのスプーンが引いたと思ったら次のスプーンが前に出てくるのは何事なのか……と思えば、何故かシィン、ヘンリエッタ、リリィ辺りが待機していてなんだこの、なんだ。リリィおねえちゃんは愛護対象か。そうか。 「あ、ちょうだいちょうだーいっ」 すかさずそこにインタラプトをかけるシーヴは、言葉を返す間も与えずリリィにスプーンを差し出している。リキュールが垂らされたものだったからか、ある程度楽しみながら分別がついているようだった。 「アイスばかり食べているとお腹が冷えてしまいますね。お冷やコーヒーを……」 「どうぞ、ご希望があればオプションで薄味のスープ類もありますよ」 その会話を聞いてか聞かずかウェイトレスが人数分のコーヒーを持ってきて、ついでにメニュー表(グランドメニューはしまっていたらしい)を置いていく。混み合っているにしては行き届いたサービスもあったものである。 「ふふふー、眠たい子はキャッチして膝枕に封印しちゃうのです」 シーヴのほうに崩れるようによりかかったリリスの肩に上着をかけつつ、シィンはリリィの持ち上げたスプーンからアイスクリームを一口。喉に滑りこむカカオの風味が、先に口内に流し込まれたコーヒーと相まって大人びた味覚を感じさせる。返すように差し出したコーヒーカップには、ありがとうとリリィは返し。笑顔のまま、アガーテに自らの膝を叩いてみせた。 「炬燵って眠たくなりませんこと? 心地よくて瞼が……」 「……ね、寝て無いよぉ~?」 ふらふらと膝枕に預かるアガーテは、リリスの声にびくりと肩を震わせた。だが、口の端に緑色の筋をわずかに残してすうすうと寝息を立てた彼女を見るに、それが寝言だったことを理解し、安心して吐息を漏らす。 「今っ私のお膝は4つに増えちゃってるしっ二倍の膝枕で二倍のおねーさん力なのですっ」 (お酒を飲んだら気が緩むのかな……) 気どころか色々な点で緩んでいる気がするが、大抵酔ったらシラフの相手と精神年齢の序列が逆になるのでこんなもの。 何かと大変そうだが、これはこれで。 店も店で無碍に追い返すタイプではないので、問題ないようである。 ●進路調査・2015冬 「お兄ちゃんどうしよう、もうすぐ受験生だよ受験生!」 「懐かしい。もう干支が一回りした位、昔の話だ」 ローズシロップをかけてアイスを食べているせおりは、しきりに受験への不安を義衛郎に語っていた。受験、と言われても昔の話に実感を失っているのは確かな訳で、学力的に大丈夫か、というよりは最期にものをいうのは気合だ、というのが正確なのかもしれないが。 そんな彼の脇に置かれたグラスに入っているのは、チョコレートリキュール。それなりに値段の張るものなので、メニューに組み込まれているのは珍しい。 一匙ずつゆっくりと口に運びながら、進路に向けて言葉を重ねる相手を眺めていた。 具体的な進路を見つけたこと。大学進学のために内申が必要なので、今は真面目に頑張っていること。 「まあまだ猶予があるんだし、先ずは一年、必死になってみると良いよ」 「お姉ちゃんくらい頭が良ければよかったけど、最近お姉ちゃんの記憶がウンともスンとも降りてこないんだよねー」 姉に似ず理系がさっぱりであることを公言した彼女を悩ませるのは、専らその『姉』に関することなわけだが。 「大方、彼岸から気を回す必要が無くなったとか、そんなところじゃない?」 何時迄も現世に手を回していられるほど、彼岸は優しく余裕のあるところかは、当面向かう予定のない義衛郎には分からない。只、安らかであればそれでいいとも、思いはする。 「あ! 月ヶ瀬先生! 私、二学期終わりからは心を入れ替えたんですからね!」 「新田君じゃありませんが、『板書』と『居眠りの回避』がそれに当たるならもうちょっと頑張ったほうがいいですよ、せおり君は」 「せおり、三高平大学の希望の学部に進学できると思います?」 「……長期休暇に集中講義に欠かさず出る程度の覚悟があればワンチャンス、でしょうかねぇ……」 流石に内申書などないが。 がっくりと肩をおとすせおりを前に、全くゼロとも言い切れない現状だったりするのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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