「いやな、いっそ泳げたらなーと思わないでも無かったんだ。チョコフォンデュとかあるだろ? チョコレート風呂ってのもあるだろう? その中に飛び込んだら楽しいだろうなーと思って、大体どのくらいの量があれば泳げるだろうなーとも思って……ほら、去年蘭子嬢がチョコ風呂に入ってるのを目撃したって話も聞いたし。それで、ええと、何だ。折角バレンタインでチョコシーズンだし、どのくらいの金があったらたっぷりどっぷり泳げるだろうなとネットショップで調べてたら、うん、その………………押しちゃった。間違えて、ぽちっと」 以上、あるフォーチュナの言い訳。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:猫弥七 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年02月23日(月)22:34 |
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■メイン参加者 17人■ | |||||
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● 「わたくしはっ! 無関係です!」 「監督不行届って言葉があるだろう? 仕方ない仕方ない、お前が見ていなかった」 「どうしてその責をわたくしに負わせ……五月女、それは?」 「水着。お前持ってなかったよな。さー今日もお仕事頑張るぞー、えいえいおー」 「わっわわわたくしがそのようなものきゃー!? どこを触ってー!!」 そんな口論を響かせて、陽光の差し込むプールには温かな空気が漂っていた。 肌寒さを感じにくい程度の室温と――濃厚なチョコレートの香りが。 ● 「ライフセーバー?」 「溺れる人が出たりしたら、シャレにならないしね」 プールサイドで膝に乗せたピンクのつぎはぎテディベアもどきをもふもふしながら快は頷く。比較的大人しく捕まっているのは、もし流されたら自分が捕まる事になるかも知れないと知っているからか。 快の言葉に彼と茶色いプールを見比べて、くまくま盗賊団のトップを名乗るアザーバイドは首を捻った。 「溺れても見えないだろうし、気付かない振りで良いんじゃねーか?」 「そういう訳にもいかないよ、流石に。……確かに見える気はしないけど」 さらりと言ってのけるテディベアもどきに苦笑して、団長の頭に乗せていた手を下ろす。 「それに、中に入るのは食べ物で遊んでるような気がしてちょっと罪悪感あるんだよな。そこんとこ、くまくま盗賊団的にはどうなのさ」 コイツ、チョコレート風呂に入れてみたらどうなるかな。 そんな思いで見下ろすと、くま団長が丁度茶色く染めた片手を咥えた所だった。僅かな沈黙を挟み、もにゅ、とピンクの口が動く。もぐもぐ。ごきゅん。 「……美味けりゃ良いんじゃねーか?」 「……そうかもな」 実に無難な意見の決着だった。 『約束された楽園、チョコレート風呂! ちょこっとチョコ色な褐色アイドル明奈ちゃんが水着姿でダイブすれば、チョコの衣を纏ってみんなのハートに突撃バレンタイン! 「ワタシを食べて!」 プレゼント・フォー・全国の青少年男子諸君! セクシーでキュートな白石さんの愛と甘い香り、画面越しに届け!』 「――はいカットー」 役目を終えた三脚とビデオカメラを、明奈一人でそそくさと片付ける。設置も自分で行った。今はまだただの映像に過ぎないが、テロップと華やかな音楽で彩られた完成系が目の前に見えるようだ。ファンサービスの為ならば、この位は努力の内に入らない。 ファンサービス。無論ファンへのビデオレターだ。花も恥じらう乙女なアイドルの、素敵なバレンタインプレゼント。 「ところでこのチョコ風呂……食べは、しないよね?」 褐色肌が魅力のアイドルはそっとプールを覗き込み、昨年の悪夢を思い出して思わず口を覆ったのだった。 サムズアップでとある二人の水着姿を褒め称えた結果、一方にはサムズアップを返され一方には短い悲鳴と共に隠れられた。その報酬が何かと言えば、ダークブラウンのプールに仰向けで流されていた緑色のテディベアもどきを発見出来た事かもしれない。粘度の高いチョコレートのお陰で、沈んで行方不明という結末にならなかっただけ幸いだ。 「思っていた以上にこれは酷い」 緑色のくまくま盗賊団団員をプールの水でゆすいで、出来るだけチョコレート色を取り除く。アザーバイドを丸洗い出来るかどうかの疑問はこれで解消された訳だが、仕上げに丁寧に絞りながら烏はチョコ風呂の方を見た。 「思いつきで実施するというのは実におっかねぇなぁこれ、ベタベタよな」 「べたべた?」 「沼みたいですよねーがぼぼぼ」 「おっと」 怖いもの見たさの結果目撃した光景にしみじみとした感想を呟くと、ぐいーっと絞られて少し潰れた緑色が繰り返した。水面に浮かんで言い返す水色が徐々に沈んでいき、慌てて掬い上げてやる。特に溺れている様子が見えないのが偶然なのか必然なのか分からないが、いずれにしても吸水性は良過ぎるようだ。 チョコ塗れのくまくま団はさぞ悲惨だろうという心配の通り、透明な水のプールへと誘導する前に、青や緑色のテディベアもどき達は所々が茶色に染まっていた。スイムスーツをよじ登り、いつもの覆面にしがみ付く緑色が落ちないように支えてやる。 「しかし、チョコフォンデュとかだと私を食べてとかやる相手がいなアイタッ」 殴打の一撃がどこから来たのかは分からない。今し方ビデオレターを撮り終えたアイドルが、すぐ近くに居ただけだ。……何が逆鱗に触れたのか。 「……チョコまみれになってきましょーか? わたしをたべてーって」 「気持ちだけ貰っとこう、洗うのが大変だ」 どこで覚えたのかセクシーポーズで尋ねた青色に首を振り、不意の攻撃に驚き転がり落ちてきた緑色を捕まえたのだった。 片腕でサムズアップしながら、徐々にダークブラウンのプールに沈んでいく。かの有名なロボット映画の一コマだ。 そのまま水中、改めチョコレートの中を静かに泳ぎ、一気に水上に上がってチョコレートを噴いた。 「なぎ払え!」 「な、何だぁ!? わっぷ!」 凛とした声が響き渡り、慌てて振り向いた五月女がチョコレートの襲撃を顔面に受けてたたらを踏んだ。 アイルビーバックスタイルからの襲撃に成功した寿々貴が、その場でぐしゃあ、と崩れ落ちる。 「早すぎたんだ……腐ってやがる」 「どうした! それでも世界で最も邪あ」 「いいからキミも入りなさい」 「せめて最後まで言わせてくれ! 良いけどな!」 くいっとプールを指差す寿々貴に泣き付きながら、五月女がプールに飛び込む。 そんな事態の原因であるフォーチュナに、腕を組んだ寿々貴がチョコレート一色のプールを見回した。 「普段食べ物で遊ぶなって言うじゃない? けど、ここまで用意されてて遊ばないのはもっとよろしくないよなと思うの」 多分、後でおいしくいただきましたは無理だろうけど。そう付け足す寿々貴へと、五月女は目を輝かせる。 「おや、良く分かってるじゃないか。それじゃあまずは」 言葉を切り、見詰め合うこと暫し。 「巨神へ――」 「待った固有名詞はまずい!」 バシャバシャと、派手にチョコレートが跳ね上がった。 「日本のバレンタイン……チョコのお風呂が、主流なんだ……ね」 借出された競泳水着に身体を包み、肩まで温かなチョコレートに全身を浸りながらシエナが小首を傾げる。 「顔なじみのアークの職員さんに聞いたら、すごく嬉しそうに教えてくれた……の。年頃の女の子は、チョコ風呂がマストなんだよって」 「そ、そうなのでしょうか……」 首を捻る雲居を見て、シエナも少し首を傾げる。寛ぐ内に、何となく隣り合わせになった二人だ。 「違う……の?」 「……どうなのでしょう?」 顔を合わせてそれぞれ疑問ありげな顔にはなったが、知らない者同士が集まって答えが出る訳でもない。 追加のチョコレートソースに手を伸ばして味見をしたシエナが、はにかむようにほんのりと淡く微笑んだ。 「ん、ちゃんと甘い……ね」 「あら、……本当」 表情を綻ばせる少女を真似て同じようにソースを一舐めし、雲居も口角を持ち上げた。 ● 「チョコとか美容にいいとは聞くよな。真相は知らんけど!」 「確かにそう聞くが、四方山話だろう。よし、せーの――えいっ」 手を繋いだままタイミングを合わせ、竜一とユーヌは一緒にチョコレートの海へと飛び込んだ。身長差と体重差、と言えるのだろう。逸早くプールの底を踏んだ竜一は、婚約者の小柄な身体が沈み切る前に抱き留めてすぐに擦り寄る。そんな恋人の背に腕を軽く回しながら、ユーヌはチョコレートの絡み付いた片手を持ち上げた。 「チョコフォンデュみたいだな? ほら、チョコにくるまれて……ふむ、リボンも持ってきたほうがよかったか」 「リボン? 何に使うんだ?」 チョコレートを肌にくまなく塗り付けられ、こげ茶色に染まった肩や腕をペロペロとじゃれ付くように舐められながら、ユーヌは甘い香りの湯を一掬いした。 「バレンタインチョコにちょうどいいだろう? まぁ、見た目があまり綺麗ではないが」 「ユーヌたんチョコとか綺麗じゃない訳がない! その時は綺麗に舐め取るけどね!」 「隅々までちゃんとな? 見えない所にチョコが残ってないかまで……おでこや鼻までチョコ塗れだな」 上機嫌に宣言する竜一へと顔を寄せ、ユーヌはぺろりと彼の額を舐めた。不意打ちに僅かに赤くした竜一が、隠れるように彼女の首筋へと顔を埋める。 「甘いにおいがする……」 「竜一」 くんくんと匂いを嗅ぐ恋人の頬に手をやって捕まえ、ユーヌはもう一度顔を寄せる。 「ふむ。食べた分だけ、竜一の唇の方が甘い気がするな?」 唇のチョコレート色を分け合って、口付けをしたその場所を悪戯っぽく舐めた少女は、表情は乏しくも眦を甘く緩めた。 甘い香りの漂うプールサイドで背伸びをし、珠緒は水に脚を浸して座る恵梨香の傍らに腰掛けた。 「チョコの香り、すっごいわー。こんだけやと、食べんでもお腹一杯やな、恵梨香っち!」 その呼び名は成人を迎える頃に意識して口調を変えた中で、珠緒が唯一、学生時代から変えなかった呼び名だ。 「恵梨香っちはきっついお仕事ごりごりしとるからなー、傷とか残したらあかんで?」 「……そうね」 案じる言葉を掛けながら、珠緒が温水に脚を浸してプールの縁に腰掛ける、ビキニ姿の恵梨香を眺める。彼女の答えが控えめなのは、任務遂行を最優先としているからかもしれない。 「そや、折角水着やしな! チェックしたるわー!!」 「え? きゃあっ!?」 がばっと覆い被さった珠緒に素肌を擽られ、恵梨香が悲鳴を上げてプールの中に逃げ込む。 「もうっ、何して……!」 「やーなんてーかなー。恵梨香っち、あんま笑わんやん? やからいっそ擽ってでも! とかな? はは、堪忍なー」 自身の身体を抱き締めながら顔を赤くする少女に、珠緒は謝罪とは裏腹に悪びれもせず笑う。そんな様子に肩を落としたものの、恵梨香はすぐに緊張を解いた。 「先輩。今日は誘ってくださって、ありがとうございます」 向き直って軽く頭を下げる少女に瞳を和ませて、珠緒はプールの水を軽く蹴る。 「うち、できるんは笑って歌うくらいやしな。とりあえず、帰る場所にはいるからなってことで……待ちぼうけとかさせたら、あかんよ?」 「……はい!」 「天使(フェザー)も居るから間違いねぇな、チョコの楽園だコレ!!」 うひょひょーい!! とプールに飛び込んで、恋人の水着姿に喜平のテンションは既に振り切れている。彼女の青地に髑髏模様というビキニさえ、喜平にとっては堪らない。 そんな恋人の浸るダークブラウンのプールを見回し、プレインフェザーの表情は少々複雑だ。 「アークって本当……良く言えばユニーク、普通に言えば、変――」 ――態、と付け足さなかったのは、彼女の優しさの表れである。 「恋人と一緒に来ちゃってるあたしもあたしか……」 少しはにかんでチョコレートの中へと身体を滑り込ませる彼女に、喜平の顔は益々輝く。 「それでなくても美味しそうなのに……!」 更にチョコに塗れるとか最早犯罪ですわい!! 声にならない歓声を上げながらも、視線はがっつりプレインフェザーに釘付けだ。もっともその想いは、どうやら真っ直ぐには届かなかったらしい。 「……なんだその目。人がチョコまみれなのがそんな楽しいか?」 「いやいやまさか! 全然!」 寧ろ色気にあてられて、と、そんな言葉を吐く前に。 「! わっ……」 「危なっ」 滑る湯船に足を取られてバランスを崩した彼女を咄嗟に抱き留める。 「ごめん、大丈夫?」 「お、おう……」 やばいちかい、すごい、おいしそうなにおいがする。 跳ね上がった喜平の心音もその動揺も知らず、恋人の腕の中で少女の緑の瞳が細められる。 「ちょっとくらい色気あって良い所なのに……なんか、チョコのせいで台無しだな」 少し頬を赤らめて離れようとした恋人を、喜平は反対に強く抱き寄せた。灰色の髪に顔を埋めて彼女の香りとチョコレートの香りに酔う。 「……すまんな、暫くは此の侭だ」 首筋で囁かれた声に、また少し頬を染め、プレンフェザーは視線を彷徨わせた。擽ったい、という小さなはにかみを聞いたのは、恐らく喜平だけだろう。 ● 温かいプールで泳いだ身体は、湿り気を帯びた空気と陽光のお陰か寒気を感じる事はない。 全身に纏う水滴はチョコレートの色も香りも伴わない、透き通った透明な雫だ。 「水着は夏によく見たッスけど、こうして一緒に泳ぐのは初めてッスかね。ちょっと新鮮ッスよ」 「ええ。リルさんは、背面泳ぎと潜りがお得意なんですね」 目いっぱい泳いでからプールサイドへと上がり、陽の光を浴びて休みながら、凛子は膝枕をするリルの頬に貼り付いた髪をそっと外す。 去年の水着大会でも纏ったビキニは泳ぐには心許ないかとも思ったが、一度泳ぎ出してしまえば気になる程でも無かったと凛子は思う。 眠たげに瞬くリルに引き寄せられて頬を引っ付けると、しっとりとした感触に目を細めた。 「ちょっと眠くなってくるッスね……甘ったるい匂いはチョコか凛子さんか、どっちッスかねぇ」 「少し休みましょうか。お昼には起こしてあげますよ」 優しく約束する凛子の膝に猫のように甘えながら、リルは大きく息を吸い込んだ。 「チョコより、凛子さんの匂いが好きッスよ」 軽く目を瞠った凛子が、すぐに照れ隠しにリルのひげを軽くつつく。 「リルさんに“好き”と言われると嬉しくなってしまいます」 擽ったさに、リルは小さく身じろいで笑った。日差しの下は温かく、心地好い匂いが漂っている。 透明な雫を散らしながら、ビーチボールが高い弧を描いて飛んでいく。 「こうやって遊ぶのって、いつ以来かしら?」 ボールの動きを追い掛けてシュスタイナが声を投げたのは、少し離れた位置で構える壱和だ。 「いつ以来でしょうか。すごく久々な気がします」 過去を振り返る言葉と共にボールを打ち返し、壱和がシュスタイナへと視線を移した。水中でプールの底を蹴り、ボールの落下地点へと移動しながら、シュスタイナは微笑んだ。 「最近、戦い以外で身体を動かす機会がなかったものね……っと」 「わっ!」 大きく打ち返したボールに伸ばした壱和の手は届かずに、反射的に尻尾を伸ばして打ち返す。 「尻尾は狡いわ」 跳ね返ってきたボールに手を伸ばしてキャッチし、シュスタイナはクスクスと笑った。 少しだけ気まずそうに笑う壱和へと、再び緩やかな弧を描いてボールを飛ばす。 「折角のバレンタインですもの。後でチョコケーキとか食べに行きましょうか」 気付かない内に本気でボールを追い掛けながら声を掛けると、壱和も大きく頷いた。 「はい♪ お腹も空いてきましたし、色々見に行きましょう」 バレンタインは、まだこれからだ。 プールサイドで足を止め、メリッサはチョコレート風呂と化したプールを見回した。 一緒に来た筈の友人をどうやって探そうかと悩む間もなく、すぐ傍に浮かんできた頭を黙って見詰める。おもむろにしゃがみ込んで引き上げると、案の定目を回したシーヴが現れた。 「あうあう、前が見えなかった……」 潜水してメリッサを驚かそうとしたまでは良かったが、不透明なチョコレートに同時に視界も奪われたのだ。 「シーヴ、少し重くなりましたか?」 その言葉を耳にするなり、体勢を整えたシーヴが両手で水鉄砲の形を作り、勢い良く噴き出させた。目標は眼前の“お姉様”――体重の事を指摘されたからではない、断じて。 「えいっ」 「きゃっ、……やりましたね」 「ひゃんっ!?」 メリッサm素早くプールの中に入って同じように手のひらで鉄砲を作り攻撃を返すと、シーヴが高く悲鳴を上げる。 「うーうー、チョコだから口で受け止めるもんっ」 「あら、そう上手くいくでしょうか?」 重みのあるプールの中では上手く躱せずに、シーヴが小さく唸った。 口を開けてチョコレートの攻撃に備える様子に少し意地悪をしたくなって、メリッサは彼女の額目掛けて銃を発射する。 「ひゃうんっ、まって、タイムっタイムっ」 「まだまだですね」 口に入らず額を撃たれ、悶絶して再び水中に沈みかけたシーヴへと手を伸ばして支えながら、メリッサは目を細めた。 うう、とまた小さく唸ったシーヴだったが、しっかりプールの底を踏んで姿勢を立て直すと大きく息を吸い込む。 「んー、体がチョコの匂いで良い気分っ! メリッサおねーさんも同じ匂いーっ♪」 「たまには、こういう水……いえ、チョコ遊びも楽しいですね」 してやられても尚、上機嫌で抱き着いてきたシーヴの頬に付いたチョコレートを掬い、好奇心から舐めてみる。 「うん……甘いです」 特有の風味に目を細めるようにして、メリッサは少しだけ表情を綻ばせた。 ● 甘い香りが満ちていた。恋の日には付きものの、甘くほろ苦いチョコレートの香り。 企業の陰謀でも友情の日の捻じ曲げでも、この国のこの日はチョコレートだ。 「……だとしても、わたくしは釈然としません……」 五月女の隣でチョコレート風呂にどっぷり肩まで浸かり込み、渋い顔で雲居がぼやく。 「言うな言うな。忙しいのは別にして、能天気に騒げる日も貴重だよ」 これからも忙しさは続くだろうが、息抜きは人生に必要なものだ。元凶たるフォーチュナは、そう言って笑ったのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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